マナーうんちく話521≪お心肥し≫
ホテルに入社して最初に配属された部署がフレンチレストランでした。
外人客も多々ありましたが、日本人客と外人客の食事の風景には、大きな違いが有ることに気がつきました。
外人客はとても楽しく食しますが、日本人客は寡黙に食べる人が多かった気がします。そして姿勢です。
姿勢は、人種、性、年齢などにより異なるので、一概にこれが正しい姿勢とは
いえませんが、見た目で有る程度判断できます。
概して、外人客は背筋が真っすぐで見た目も美しいですが、日本人客は背中が曲がり見た目は貧相です。
日本の和食のテーブルマナーは、素晴らしい精神文化を持っていますが、姿勢を正し楽しく食す点は、西洋のマナーを見習いたいものです。
世の中には、陽気な人もいれば、陰気な人もいます。
心の、暖かい人もいれば、クールな人もいます。
賢い人もいれば、愚かな人もいます。
それなりに、時間を費やして付き合わないと、その人の人柄は理解できません。
そうすることが可能であればいいですが、時と場合によっては、わずかな時間で、判断しなければならないケースも有ります。
面接試験、お見合い、商談などです。
その際、どうするか?の判断材料になるのが、見た目です。
第一印象ともいいますが、いずれにせよ、それを決める要因は、いくつかあります。「身嗜み」「初対面の挨拶」「会話の仕方やその内容」等でしょう。
そして、これらに共通する要素は姿勢です。
身嗜みを整えることは大切ですが、正しい姿勢が保たれてこそ、身嗜みが引き立つものです。
挨拶もそうです。
姿勢を正してする挨拶は、相手に好感を持たれます。
さらに、会話しかりです。
美しい姿勢で、笑顔で、相手の目を見て、話したり聞いたりすることが大切です。
国際化が進展して、英語の必要性が高まっていますが、いくら英語が流暢にしゃべれても、猫背で、うつむき加減では様になりません。
英語と共に、姿勢を正し、美しいスマイルでの挨拶を学ぶべきだと考えます。
例えば握手です。
握手をしながら、頭をペコペコ下げる人は多いですが、卑屈に見えます。
姿勢を正し、笑顔で、相手の目を見て、凛々しくするべきです。
また、日本は世界に誇る多くの伝統文化を持っていますが、華道も、茶道も、武道も、「礼に始まり礼に終わる」と言われています。
昔から、礼を重要視する日本人の姿勢が、年々悪くなってきた感じがします。
畳の上で正座をし、立ったり座ったりする動作を、「立ち居振る舞い」と言いますが、日本人の立ち居振る舞いは、世界一美しいと言われました。
しかし、今は正座が苦手な人の方が多くなった気がします。
私が担当しています「和の礼儀・作法講座」では、姿勢の在り方をとても大切にしますが、姿勢は日常生活の在り方です。
食事をする時だけでも、姿勢を正す癖をつけられることをお勧めします。
レストランなどで、脚を組んで食事をする若い女性が目立ちます。
はたから見て、とても褒められたものではありません。
正座ができ、歩く時にはうつむかず、まっすぐ前を向いて颯爽と歩き、食事の時には姿勢を正し、美しく食べる人はマナー美人です。
正座と直立の中間、つまり、立ったり、座ったりする際に経由する動作で、爪先を降り立てた状態で、膝まづいて座る「き座」があります。
食事中にしびれがきれた時、玄関で靴を揃える時等にも、とても役に立つ美しい姿勢です。是非実行してみてください。