マナーうんちく話256≪日本人とホタル≫

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:マナーの心得

もうすでにご覧になられた方も多いと思いますが、今年も蛍が飛び交うようになりました。闇夜に乱舞する光景は、いつもながら幻想的ですね。

ご承知の通り蛍は、初夏の風物詩として古くから親しまれ、日本書紀や源氏物語等にも登場しています。

特に私たちになじみが深い、大きい蛍を「源氏ボタル」、小さい蛍を「平家ボタル」と呼びますが、この名前は平安時代末期の源平合戦に由来すると言われております。

昔は人間の霊魂に例えられた気配が有りますが、江戸時代には「ホタル狩り」として一般庶民の風流のたしなみになったようです。
そして、環境保護が地球レベルの課題になった今では、蛍はすっかり、きれいで、豊かな、自然の象徴になりました。

ところで「蛍雪の功」という言葉をご存知でしょうか?

「蛍の光、窓の雪・・・。」という歌詞を思い浮かべられた方も多いと思いますが、一昔前までは、卒業式の定番の曲でしたが、今ではあまり聞かれなくなりました。たまに、閉店間近になって、この曲が流れることも有ります。

さて、「蛍雪の功」の意味ですが、昔は、夜の明かりは殆ど油に頼っていたわけですが、油が買えない貧しい人は、夏には蛍を沢山捕まえて蛍が放つ光で明かりを採り、冬には窓から差し込む雪で明かりを採っていました。
そうして、様々な苦労しながら、一生懸命勉強して、立派な人になったわけですね。

「幼い時の苦労は金を出しても経験せよ!」と言われますが、何もかも豊かになり、大事にされ、猫かわいがりのようにして育てられた人に比較して、多くの苦労を経験して育った人は、まさに筋金入りの人だと思います。

マナーの根幹をなす、「思いやりの心」もここから生まれるのではないでしょうか?


最近、新聞やテレビを見るにつけ、特に気になる事が有ります。

その一つは、若者に広がっている「新型うつ」です。
これには、明確な定義は無いようですが、従来のうつとは大きく異なるようです。例えば、「趣味や娯楽の時は元気一杯の人が、いざ仕事となると鬱になる」とか、「鬱になったのを先輩や上司のせいにするとか」・・・。
そんな具合だから、周囲の理解が得られないばかりか、治療も大変難しいようです。

さらに、深刻な傾向にあるのが若者の自殺です。
警察庁の調査によると、最近、若者の自殺が急増しているようです。
日本は豊かな国ですが、ひと昔より、世界的に自殺大国であったのは承知の通りです。しかし、人生において一番精気がみなぎっている、若者の間で自殺が増加していることは、どう考えても尋常ではありません。

「蛍20日に蝉3日」と言われます。
蛍にせよ、蝉にせよ、幼虫時代が非常に長くて、さなぎを経て成虫になり、地上で暮らすようになるわけですが、地上での命はせいぜい1週間から3週間位だと言われております。

「命のはかなさ」を例えた表現ですが、蛍も蝉も、その極端に短い地上での生活を、共に精いっぱい謳歌し、義務をキチンと果たして、潔く死んでいきます。

蛍は、一生懸命光りを灯し、相手を呼び寄せ、交尾を行い、子孫を残します。蝉は、大きな鳴き声で、一生懸命生きる姿勢を示しながら、子孫を残します。

共に、悩んだり、くよくよしたり、鬱になったりする暇は無いようですね。まして、自ら命を絶つようなまねはしません。

最近、豊かさや便利さと引き換えに、人間として、たくましく、そして心豊かに生きる力が、次第に失せてきたような気がしてなりません。

明治時代に小学唱歌集に掲載された「蛍の光」を思い起こし、若い時に、ある程度の苦労を経験しながら勉強して、大人になってから、豊かさや便利さを享受すれば、さらにハッピーな生活が送れると思うのですが・・・。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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