マナーうんちく話587≪「ひょうたん」と「幸せ婚」≫
冠婚葬祭の知識とマナー21】 意外におおらかだった明治以前の恋愛事情
前回、「縁結びの神様」に触れましたので、その続きとして、これから当分の間、恋愛・結婚・離婚事情などについてユニークなお話を展開していきたいと思います。
既婚の人も、未婚の人にもなにかと参考になっていただけるのではと思いますので、お気軽にお付き合いください。
平松の経験や主観によるところが多々ありますので、念のためご了承ください。
とりあえず、昔と現在の「恋愛事情」からのスタートです。
入試以来すっかり遠のいている方も多いと思いますが、「古典」の時間を振り返って下さい。
「古事記」では、いきなり神様が恋愛をして「国」が産まれました。
さらに、日本の現存する最古の歌集である「万葉集」。
天皇や貴族から一般庶民まで、4500種以上の歌が編纂されており、「雑歌(ぞうか)」「挽歌」「相聞歌」と、3種に分類されているのはご存知の通りですが、その中の「相聞歌」こそ、実は男の女の恋愛の歌なので有ります。
さらに「源氏物語」は、藤原氏と源氏の政治闘争の物語であるとともに、文句なしの恋愛小説ではないでしょうか。
このように、1000年も1200年も前に書かれた恋や恋愛の物語。
形は様々ですが、特徴を一言で表現すれば、「おおらかさ」だと思います。
江戸時代しかりです。
江戸時代の恋愛は、実に理想的な恋愛で、自分と相性が合う人を求め、男も女も年頃になると、おおらかな恋愛を楽しんでいたというのが定説のようです。まさに自由恋愛そのものですが、当時は自由な中にも凛とした礼儀・作法が存在し、それを無視するととんでもないことになったそうです。
また、自由恋愛が旺盛だった江戸時代の結婚観は、男女の交わりにも比較的おおらかで、婚前交渉も当たり前で、いまでいう「出来ちゃった婚」も結構多かったようです。
しかし、これらはあくまで庶民のスタイルで、武家階級となるとそうはいきません。
現代では考えられないような、家と家の政略結婚等も存在したのは周知の通りです。
武家階級はとにかく「家」を存続させるために、家の跡取りが外部より妻を迎えるわけですが、その妻が結婚前に、誰それなしに自由恋愛していたのではたまりません。
従って、武家階級の娘さんたちは相当厳格な環境にあったようです。
その名残は、現在の結婚式でも花嫁が身につける「白打ち掛け」にも見ることができます。
白打ち掛けは、「純潔」を象徴する衣装だったわけですね。
以前にも述べましたが、ヨーロッパのウエディングドレスの感覚に似ています。
士農工商の身分制度のもと、下級階級だったが自由恋愛を謳歌できた一般庶民と、特権階級ながら何かと制約の多かった武家階級、どちらが幸せだったのでしょうか?
それにしても、何もかも豊かで、何ら制約を受けないで、大いに自由恋愛を謳歌できる環境にありながら、恋愛に前向きになれない現代の若者。複雑ですね。どう思います?