マナーうんちく話520≪電車内でお化粧するの、どう思う?≫
冠婚葬祭の知識とマナー3】 不安定な状態を安定させる通過儀礼
人が生まれ成長していく段階で、どちらにも属しない大変不安定で不気味な時期に、「新しい意味を加味して安定させる儀式」のことを通過儀礼と言います。
例えば、和室における障子や襖は、たとえそれが紙や木だけで成り立っていても、それ自体が立派な境界になります。しかし、子どもと大人の境は、有ることは有るのですが目には見えません。この目に見えない、子どもから大人に至る過渡期は、心身ともに非常に不安定で怖いものであるとされていました。
その不安定で不気味で恐ろしいものを、元服(成人式)という儀礼を執り行うことにより、不安を安心に変えていたわけです。
勿論長い人生において、過渡期となる不安定で恐ろしい時期は、成人式の頃だけではなく沢山あります。そしてこのような考え方は、日本だけのものではありません。つまり世界中には実に多くの通過儀礼が存在し、いずれも非常に大切な儀式とされ、厳粛に執り行われています。ただ、「通過儀礼」と言う言葉はそんなに古くはなく、丁度100年くらい前にフランスの民族学者により唱えられた言葉だとされています。
要は、古今東西、人の一生において、ある時期から、ある時期に移行する時に、必ず通過儀礼が執り行われるということです。
冠婚葬祭の分野では大きなウエイトを占めます。
今では、日本人の意識、家族構成、社会構造の変化に連れ、多くの儀礼が失われていったことも事実ですが、誕生、七五三、成人、結婚、長寿、死等の儀式は、古来より未だに受け継がれています。それどころか、七五三、成人式、結婚式、葬式等は生活様式が豊かになるにつれ、以前より盛大に執り行われている感もあります。
さらに、情報機器の急激な進展にもかかわらず、占い・オミクジ・お守り等も相変わらずの人気ですし、厄年のお払いに行く人や、各種祈願祭なども後を絶ちません。また、大安にこだわることもすたれていません。
そして、通過儀礼により、その人の社会的立場が大きく変わることが多々あります。
例えば武家社会における元服の儀式は、改めて大人の仲間入りであり、一人前になったことを社会から認知されることはご存知の通りです。さらに、明治維新から終戦までの期間の「徴兵制度」もある意味では通過儀礼とも言えます。徴兵検査に合格し、兵役に服すことで、当時は、一人前の日本男子として、世間から認められていたようです。
また、独身の人が結婚して夫婦になることも典型的な通過儀礼です。加えて世界一の長寿国になった日本では、長寿を祝う通過儀礼が増えそうです。高齢社会は死と向かい合っている人も多くなりますので、葬式も増加傾向にあります。
今の日本では、栄養状態が良くなり、医療や医療制度も発達し、子どもが誕生して成長する過程において、それほど心配することは有りませんが、昔は、子どもの誕生、成長はとても大変なことでした。そこで人々は常に、「子どもが無事生まれ、元気で立派に成長することと、幸せに年を重ねること」を祈念したわけです。多様な通過儀礼の本来の意味が、ここに存在します。
このように、日常生活における身近な通過儀礼の本来の意味を理解すれば、一概に、古い迷信とか、虚礼とか、わずらわしいでは済ませられない気がしますし、現在抱えている多くの課題の、解決のヒントが多々存在しているのではないでしょうか?