家相学と建築風水は何が違う
こんな言葉をご存知ですか?
引き渡しの日に一番喜んでいた方が、半年後に一番元気をなくしている。
新築ブルーと呼ばれる状態です。念願の家を手に入れたのに、イメージと違う、支払いのことを考えると後悔する。そういう言葉が出てきます。
家に欠陥があるわけではありません。打合せも十分に重ねている。それでも起こります。やっかいなのは、本人が家のせいだとは言わないことです。引っ越しの疲れ、仕事、子どもの学校。理由はいくらでも見つかります。だから相談としても上がってきません。これは、性格の問題でも、贅沢を言っているのでもありません。そうなる仕組みがあります。
理由は2つ。
1つは、住み始めてから見つかるマイナス要因です。図面やパースでは見えなかったことが、暮らし始めると毎日目に入ります。スイッチの位置、朝の光の入り方、隣家の窓との関係。ひとつひとつは小さなことですが、もう直せないと分かった時点で重くなります。
もう1つは、楽しみが終わってしまうこと。家づくりの打合せは、半年から1年続きます。そのあいだ、家族は毎週のように次の話をしています。どこに何を置くか、壁を何色にするか。決めることが残っているうちは、家は育ち続けます。
引き渡しの日に、それが止まります。完成した家は、その日から古くなっていくだけのものに変わります。人は、完成したものより途中のものに気持ちが動きます。まだ続きがある、あと少しで形になる。その状態のほうが前を向けます。家も同じです。
そこで私が提案してきたのは、引き渡しの時点で全部を仕上げないことです。家事室、書斎、子ども部屋。この手の部屋は、間取りだけ確保して、内装を引き渡し後に回します。壁を塗るのも、棚を取りつけるのも、家族の休日の仕事にする。外構も同じです。庭とアプローチを完成形で引き渡さず、植える場所を空けておきます。
これは、予算が足りないから後回しにするのとは違います。打合せの段階で、引き渡し後にやることを家族で決めておく。工程表には載せない代わりに、いつ、誰が手を動かすかまで話しておきます。ここを曖昧にすると、ただの未施工になります。残すのは工事ではなく、次の楽しみです。
残す場所には向き不向きがあります。断熱、配管、下地のように後から触れない部分は、引き渡しまでに仕上げます。残していいのは、道具と休日があれば家族の手が届く範囲だけです。塗装、棚、照明の付け替え、庭。ここを取り違えると住みながらの工事になり、暮らしが落ち着きません。
この考え方を取り入れたある家族が、引き渡しのあとにやったのは、モノを減らすことでした。新築を機に、持っているモノを限りなく処分する。そのうえで、買い方の基準を2つ決めました。本当に必要なモノだけを買う。感情で買い物をしない。これを続けた結果、モノが増えなくなりました。
残しておいた場所は、物置になりませんでした。空けた場所を守れるかどうかは、そこに何を置かないかで決まります。打合せの終盤で、私が確かめるのはひとつです。完成図が、すべて埋まっていないかどうか。
すべて埋まっている家は、きれいですが、引き渡しの翌日から手を入れる場所がありません。決めることが1つも残っていない状態で、家族は暮らしに入っていきます。だから終盤の打合せで、あえて1か所を空けます。どこを残すかは家族に選んでもらいます。多くの場合、いちばん自分たちで触りたい場所が出てきます。
これから新築やリフォームの打合せに入る方に、ひとつだけお願いがあります。完成図を、全部埋めないでください。1か所でいい、引き渡しのあとに家族で手を入れる場所を残しておく。家は、建てて終わりではありません。住んでから育てるものです。


