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小橋広市

元建築家。女性の起業サポートするコーチングのプロ

小橋広市(こばしひろ) / 講師

一般社団法人Self&Lifeコンディショニング協会

コラム

認知症初期の方から金銭管理を受け継ぐ方法

2019年9月30日 公開 / 2020年10月25日更新

テーマ:認知症介護者の憂鬱

コラムカテゴリ:スクール・習い事

「遠距離認知症介護者の日記」のテーマの記事は、お袋が認知症になった初期の頃を記録として残すためにアップしています。

芽生え


ここから2014年4月10日の話


今回、実家に帰った目的は2つ、お袋のMRIの検査と循環器の検査で病院に連れて行くことがひとつ。いつも行っている病院が新築移転したので、お袋が病院の雰囲気に戸惑っていたが、幸い、私と一緒にいたので安心しているようだ。

もうひとつの目的は、少し徘徊が始まったのと薬の管理ができなくなったので、ケアマネジャーにケアプランを依頼し、薬の管理をしてもらうため、毎日、1時間程度、ヘルパーさんに訪問していただくことを検討してみた。

まぁ、こんな調子で少しずつだが、良い方向に進んでいるように思う。

それに、最近、私とお袋の信頼関係が元通りになったように感じる。そもそもお袋が私を信頼できなかった理由は現金の紛失騒動で、身の回りから現金がなくなるのは、私が盗んだと言うのがお袋の見解。

お袋としては、手元に現金がないと不安なので、ある程度の現金を貯金からおろして隠しておくわけだが、短時間で自分が隠したことを忘れる。

私が帰郷した時に一緒に隠した現金を探すと、部屋のいたるところから現金が出てくる。私が帰った時に出てくることが多いので、お袋にしてみれば身近な私が犯人ということになっている。

あの手この手で説明したが、その妄想は酷くなるばかり。そこで私は、実家に送付される請求書を全て、私の自宅に転送してもらって、支払った後の領収書をお袋に確認させ、私が支払っている事実を根気よくお袋の脳に刷り込むようにした。

実家に帰った際、食料や足りないものを購入し、お袋の財布から直接、現金が出ていかないようにして普段の小遣いだけをお袋の財布に入れた。

何度も何度も支払うものは何もないことを刷り込み、普段の生活に支障がないようにした。

私は当初、お袋がお金に執着を持っていると考えていた。それは大きな間違いで、お袋は自分の財布から現金が出るのが不安だったことが分かり、それを取り除いたことで、ずいぶんココロが軽くなったようだ。

今回のことは認知症に限らず、問題が起きた時、ついこちらの立場で物事を考えてしまいがちになるが、相手が何を求めているのかを、相手の立場で考えることで大切なことが観えてくるような気がした。



ここから現在


認知症になる前に本人がお金の管理をしていた場合、それを家族に引き継ぐ際、本人の理解を得るまで、かなり難儀をします。

認知症になると、身近にいる人を「どろぼう」呼ばわりしたり、お金に対する執着が高まるように言われますが、これには正当な理由があります。

認知症になると、段々、物事が認知できなくなり、自分や他者の言動を忘れます。本人も自分の立ち位置が分からなくなるので、何かしら社会から取り残された不安が感情に現れます。

そして周りの変化に敏感になります。あるモノがなくなっていたり、生活に直接影響を及ぼすお金が手元にない不安は、私たちが計り知ることはできません。

このような認知症の方の小さな不安を理解した上で介護にあたらないと、たとえ親子であっても信頼関係は崩壊します。当然、信頼関係がなくなるとお互いが嫌な思いでコミュニケーションを取るので負の悪循環です。

認知症の方が感情をあらわにするのは、必ず理由があります。1つでも良いので理由が腑に落ちると、認知症を新たな個性として捉えられるようになります。


参考になれば幸いです。



【小さな実践】
認知症の方が感情をあらわにする時、その理由の質問に「なんで」という聞き方をするより「分かる分かる」という共感をしてみる


 

この記事を書いたプロ

小橋広市

元建築家。女性の起業サポートするコーチングのプロ

小橋広市(一般社団法人Self&Lifeコンディショニング協会)

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