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影に飲み込まれてはいけない

岸井謙児

岸井謙児

テーマ:こころの散歩道

毎日コロナのニュースがメディアから流れてきます。

このコロナのニュースに毎日さらされると、なんとなく漠然とした不安や先行きの見えないうつうつとしたムードになってしまう方はいらっしゃいませんか?

コロナが重症化して死亡者が毎日何万人も出ている、さらに日本も第2波が此れから途方もない勢いで自分達に襲い掛かってくるのではないだろうか、もしそうなったら経済的にも耐えられそうもない、まして命にかかわる状態になりはしないか。そういう不安が「影」となって私たちを飲み込もうとしていることに、今私は危機感を感じています。





私たちは自分の人生を自分の自覚のもとに、意識的に生きていると思っています。確かに、何かを判断しなければいけない時は色々と考えて、自分なりの結論を出すことが多いものです。



しかしそのような「意識的な生」とは、すべてを明らかに見せてくれる太陽の光の下で、いろいろな事の正体を明らかに見極めることができてこそ、可能な生き方です。科学や文化という物は、「古来人間にとって理解できないもの」の正体を「意識という光」によって論理的・客観的に目に見えるようにしてくれました。

しかし考えてみれば「古来人間にとって理解できないもの」とは人間自身を含む自然そのものでしょう。
ここ数年~数十年のスパンで振り返るだけでも、私たちはさまざまな自然現象に太刀打ちできずに様々な被害を受けてきました。「被害」というのは人間側にとっての見方であり、自然にとっては「ありかたそのもの」でしかないのですが。

その「意識の昼間の光」によって理解できる世界の反面には「無意識(自然)の夜の影」が広がっているのだ、ということを教えてくれたのがユングという心理学者です。彼は「意識=科学」と、その対立物としての「無意識=自然」の有り方について人生をかけて考え抜いた学者でした。

詳しいことは省き、きわめて簡単に描けば「意識」と「無意識」は対立軸の対極の有り方であり、「光がある所に必ず影が生じる」ものなのです。そして素晴らしいことに、ユングによれば、どちらか一方が肥大し始めると、他の一方が働き出して、両者のバランスをとる機能が人間には備わっているというのです。これは一種の自己治癒力です。

しかしそのバランス維持機能が上手く働かずに「意識が肥大」すると、自分は何でも知っている、わかっている、というどうしようもない「うぬぼれ」と「自己愛」に満ちた有り方になり(どこかの大統領みたいに)、逆に意識の光に対立する影としての「無意識」が広がっていわゆる「影に飲み込まれた状態」になると、思考が停止し、感情的なムードや集団的な群衆心理に染まってしまうことになると彼は言います。


hope


「影」に飲み込まれてはいけません。確かに「新型コロナウイルス」の正体は目に見えないし、その恐怖は正しく恐れなければいけません。しかし影に飲み込まれて、真っ暗闇で先行きの見えない不安や恐怖に飲み込まれてはいけないのです。影に巻き込まれると、これまで自分の生き方で自分が意識的に選んでこなかった半面の生き方が、場合によっては今の自分自身の有り方を否定するような勢いで、新たな影となってさらに色濃く襲い掛かってきてしまいかねません。

そうなると「今の自分を否定するような感情・ムード」が今の自分自身を飲み込んでしまう結果になることもあるのです。

もしあなたに少しでもその兆しが感じ取れるならば、その時に必要なことは

1)まず自分が集団的な不安や否定的で絶望的な感情に、それこそ「感染」してしまってはいないか。

2)その結果、思考停止に落ち込み、メディアからの情報や自分自身へのネガティブなセルフトークを無批判に受け入れてしまっているようになってはいないか

 を一度冷静にふり返るとともに、

3)何より群集心理から一歩離れて、自分の個人の生き方を充実させるような時間や活動を「意識」的に持つように心がけましょう。


影に飲み込まれて大きなネガティブな感情に溺れてしまわず、自分自身を取り戻し、「死」につながるネガティブな感情の対極にある「生」の感じられる時間や趣味などの活動を通じた、「生き生きとした前向きな気持ち」を大事に生きることが必要なのではないか、と今私は自分自身に言い聞かせています。

あなたも今一度、冷静に自分を見つめなおしてみませんか。



・・・・・三浦春馬さんのご冥福をお祈りいたします。私は彼の「ブラッディ・マンデイ」を夢中になってみていました・・・・

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岸井謙児
専門家

岸井謙児(臨床心理士)

カウンセリング・オフィス岸井

カウンセリング暦35年。子供から大人まで、うつ・対人関係の悩み・発達障害・不適応・ひきこもりに関わる問題に丁寧に、かつ誠実に対応します。また全国から電話・スカイプなどでも相談を多数受け付けています。

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