<病気不安症> 検査では異常がない。しかし、きっと重い病気に違いない。
最近よくお目にかかるさまざまな問題についてこれから少し取り上げています。 今日取り上げるのは<選択制緘黙>
ただし私は臨床心理士で、医者ではありません。ですから、疾患を診断する立場ではありません。また、もしあなたこれから述べていくような症状に当てはまるとしても、自己判断せず、お近くの信頼できる病院に行って専門の診断をしてもらってください。
さて今回は「緘黙」という状態を説明します。「緘黙」とはもともと「口を閉じて話をしない」という意味ですが、しかし本人としては「話さない」という意思に基づく沈黙ではなく、「話したくても離せない」状態なのです。ある状況に置かれると、自分の意志に関係なく、いくら声を出そうとしても声が出ません。
声が出ないだけでなく、身体も動かせなくなる場合もありこれは「緘動」とも言われます。どちらもその背後には「不安」があります。ただし今日説明するのは「選択性」の緘黙です。 この「選択性」というのはある特定の状況(例えば幼稚園や学校など)でだけ話せなくなる、と言う意味です。以前は「場面緘黙」と呼ばれていました。その他の状況、例えば家では普通にしゃべっているため家族には気づかれにくいことがあります。担任の先生に普段お様子を教えてもらって始めて気がつくということもよくあります。
米国精神医学会の「精神疾患の分類と診断の手引き」(DSM-5)によると次のような診断基準となっています。
A.他の状況で話しているにも関わらず、話すことが期待されている特定の社会的状況(例:学校)において、話すことが一貫してできない。
B.その障害が、学業上、職業上の成績、または対人的コミュニケーションを妨げている。
C.その障害の持続期間は、少なくとも1か月(学校の最初の1か月だけに限定されない)である。
D.話すことができないことは、その社会的状況で要求されている話し言葉の知識、または話すことに関する楽しさが不足していることによるものではない。 などなどです。
こういう場合無理に話させようとしたり、会話を強要しても効果がないばかりか、逆に本人の緊張を煽るだけになってしまうことがあります。ですからこういう状況でお困りの場合は会話以外の方法(絵画療法や箱庭療法、遊戯療法等)でのカウンセリングが有効な場合があります。どうぞご連絡ください。
ただし、話すことができない状況は必ずしも緘黙だけではありません、例えば自閉スペクトラム症や統合失調症、心理的なストレス要因が身体症状として変換される失声症という場合もありますので、是非専門家の判断を受けてください。その後、心理的な背景が予想される場合はご連絡いただければお力になれるかもしれません。
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