217【家賃改定】入居者が家賃改定裁判で負けたらどうなる? 退去して終わりではない・訴訟費用・給与差押えまで

竹下昌成

竹下昌成

テーマ:不動産投資 回収・調停・裁判


コラム217

【家賃改定】入居者が家賃改定裁判で負けたらどうなる? 退去して終わりではない・訴訟費用・給与差押えまで


■ 結論 「退去して終わり」では済まないことがあります


最初に結論です。

裁判で入居者が失う可能性のあるもの

①家賃差額

②裁判費用

③信用


■安心は「砂の城」

「拒否していれば家賃は上がらない」

「無視していれば、そのうち大家が諦める」

「最悪、退去すれば終わる」

そう考えているのであれば、
その安心は「砂上の楼閣」なのかもしれません。


家賃増額請求は、

これから先の家賃だけの問題ではありません。


増額請求が有効に行われ、

裁判所が増額を認めれば、

その効力が生じた時点から退去するまでの家賃差額が問題になる可能性があります。


つまり、

裁判の途中で退去したからといって、

それまでの家賃差額や裁判まで自動的になくなるわけではありません。


さらに、

裁判で負ければ訴訟費用が問題になることもあります。


判決後も支払わなければ、

給与や預金などへの強制執行もあり得ます。


協議



調停



裁判



判決



支払い



強制執行


制度はここまで用意されています。


今回は、

僕自身が現在行っている家賃増額裁判を実例として、

「家賃改定裁判で負けたら、その後どうなるのか?」

を考えてみます。


■ 僕自身が家賃改定裁判をしています


現在、

僕自身が家賃増額の裁判をしています。


福岡簡易裁判所

令和8年(ハ)第100●●●号

賃料増額請求事件。


現在の家賃54,500円に対して、

60,000円への改定を求めています。


差額は、

月額5,500円です。


判決は、

2026年9月3日に言い渡される予定です。


まだ判決前なので、

当然、

結果は分かりません。


このコラムでは、

今回の裁判を材料に、

判決後にどのような費用や手続きが発生する可能性があるのかを整理します。


判決が出たら、

実際の結果も追記する予定です。


■ 僕も調停や裁判が好きなわけではありません


「5,500円のために裁判までするの?」

と思う人もいるでしょう。


僕だって、

できれば裁判なんてしたくありません(笑)。


普通に話し合って、

双方が納得できる金額で決まれば、

それが一番です。


時間もかからない。

費用もかからない。

お互いに楽です。


だから、

最初から裁判所へ行くわけではありません。


家賃を改定したい理由を伝える。

資料を提示する。

話し合いを提案する。


それでも、

回答がない。

無視される。

話し合いに応じてもらえない。

あるいは、

「裁判で決めてください」

となる。


そうなれば、

貸主側にも選択肢はそれほど残りません。

協議で決まらなければ調停。

調停で決まらなければ裁判。


もしくは、「泣き寝入り」です。


■ 途中で退去したら裁判も終わる?


ここは、誤解されているところだと思います。


家賃増額請求は、

単に、

「来月から家賃を上げてください」

という話ではありません。


最高裁判所も、

賃料増額請求について、

増額請求の効力が生じた後に裁判で相当な賃料額が確定するという考え方を示しています。




つまり、

裁判になった後で退去したからといって、

それまでに発生した家賃差額の問題まで消えるわけではありません。


退去と、

それまでに発生した金銭問題は、

分けて考える必要があります。


だから僕も、

仮に裁判途中で退去されたとしても、

すでに発生している問題が残っているなら、

裁判は最後まで進めることになります。


「退去したから全部リセット」

ではありません。


■ 裁判で負けると家賃差額だけではない


裁判所が家賃増額を認めた場合、

まず問題になるのが、

それまでの家賃差額です。


でも、

それだけとは限りません。


判決で、

「訴訟費用は被告の負担とする」

などとされた場合には、

訴訟費用も問題になります。


そこで使われるのが、

「訴訟費用額確定処分」

という手続きです。


裁判をするために必要だった一定の費用について、

裁判所に具体的な金額を確定してもらいます。


今回の裁判でも、

僕は実際にかかった費用を整理しています。

訴訟手数料。

郵便費用。

書類の作成・提出費用。

資格証明書の取得費用。

期日の日当や旅費など。


どこまで認められるのかについては、

判決後に実際に申し立てて確認する予定です。


細かい金額は、

画像にまとめておきます。




■ 本体の判決とは別に債務名義ができることも


ここも、

一般の人にはあまり知られていないと思います。


裁判でお金の支払いを命じる判決が出れば、

その判決は、

強制執行の根拠となる「債務名義」になります。


少し乱暴な言い方をすれば、

債務名義とは、

「相手の財産を差し押さえるために使える、公的な文書の塊」

くらいにイメージすると分かりやすいと思います。


実際に強制執行するときには、

判決正本だけではなく、

執行文や送達証明書など、

必要な書類を揃えて申し立てます。


さらに、

訴訟費用額確定処分についても、

強制執行の根拠となる「債務名義」になります。


つまり、

本体の判決。

訴訟費用額確定処分。


別々に執行の根拠となるものを取得する場合があります。


裁判は、

判決文をもらって終わり、

という制度ではありません。


判決の内容を実現するところまで、

制度が用意されています。


■ 支払わなければ強制執行があります


では、

判決が出ても支払わなかったらどうなるのか。


次は、

強制執行です。


対象になり得るものとしては、

預金。

給与。

売掛金などの債権。

その他の差押可能な財産があります。


もちろん、

何を差し押さえるかは、

相手の状況によって変わります。


ただ、

サラリーマンであれば、

給与差押えは現実的な選択肢の一つになります。


■ 給与差押えは勤務先も関係する


給与を差し押さえる場合、

勤務先が「第三債務者」として手続きに関わります。


つまり、

勤務先にも差押命令が届きます。


これは、

単に銀行口座からお金が引かれるのとは違います。


会社が手続きに関与することになります。


その結果、

社内でどのように受け止められるのか。

人間関係や信用、

場合によっては仕事上の立場にどのような影響があるのか。


これは勤務先や本人の立場によって違うでしょう。


ただ、

少なくとも、

「家賃の話だから会社には関係ない」

とは言えなくなります。


■ 預金差押えにも別の問題があります


銀行預金も、

強制執行の対象になり得ます。


銀行が第三債務者になります。


その銀行と、

預金しか取引していない人もいるでしょう。


一方で、

住宅ローンや事業資金など、

別の取引をしている人もいます。


差押えが、

他の金融取引にどのような影響を与えるのかは、

それぞれの契約や金融機関の判断によります。


だから、

「差し押さえられた金額だけ払えばいい」

と単純には考えない方がいいと思います。


連帯保証人がいる場合も同じです。


保証契約の内容によっては、

本人だけの問題ではなくなる可能性があります。


一つの家賃問題を放置した結果、

もっと大きな問題につながることもあり得ます。


■ 差押えにも費用がかかります


強制執行も、

無料ではありません。


申立手数料。

送達費用。

書類作成費用。

資格証明書の取得費用など、

さまざまな費用が発生します。


今回、

僕自身の裁判を前提に、

複数の差押先へ申し立てる場合の費用も試算してみました。


これも、

細かい数字は画像にまとめています。



今回のケースだと月額5,500円の裁判で

①家賃は5,500円アップ

②裁判・執行費用は試算で約8万円

③信用も失う可能性がある

ということです。


さらに、

裁判で負けた後も支払わなければ、

手続きが一つ進むたびに、

さらに執行費用が発生する可能性がある、

ということでもあります。


■ 「そこまでやるの?」


「大家は、そこまでやるの?」


でも、

僕からすると少し逆です。


なぜ、

契約上の問題を放置しても大丈夫だと思うのでしょうか。


日本は契約社会です。


借主には、

家賃改定に反論する権利があります。


納得できなければ、

資料を出せばいい。

話し合えばいい。

調停で争えばいい。

裁判で判断してもらってもいい。


それは当然の権利です。


でも、

貸主にも同じように権利があります。


調停を申し立てる。

裁判を起こす。

判決を取る。

そして、

強制執行する。


そこまでやるのか。

ではありません。


当然です。


■ 「とりあえず無視」は危ない


テレビやネットなどで、

「大家から家賃値上げを言われても、そのまま従う必要はない」

という話を見かけることがあります。


それ自体は、

間違いではありません。


貸主から通知が来たからといって、

言われた金額を無条件で受け入れる必要はありません。


でも、

そこだけを切り取って、

「拒否していれば今の家賃のままでいい」

「とりあえず放置しておけばいい」

と考えるのは危険です。


交渉に応じない。

話が通じない。

私生活でも契約や支払いにだらしない。


そういう対応を続けていると、

家賃だけではなく、

もっと大きな問題につながる可能性があります。


きちんと話し合い、きちんと争えばいい。


無視とは、

まったく違います。


■ 賃借人にも生活がある。賃貸人にも生活がある


家賃改定の話になると、

どうしても、

「大家が家賃を上げる」

という部分だけが注目されます。


でも、

賃貸人側もビジネスをしています。


家賃収入から、

管理費、

修繕費、

固定資産税、

保険料、

借入金などを支払っています。

それが生活そのものになっている大家もいます。

空室や天災等のリスクも負担しています。


賃借人に生活があるように、

賃貸人にも生活があります。


大げさに言えば、

双方にとって、

生活や事業、

生死にも関わるお金です。


だからこそ、

一方的に無視するのではなく、

まず話し合うことが大切だと僕は思います。


■ 結論 ゴネ得にはならない


僕が言いたいのは、

家賃改定を言われたら、

大家の言うとおりにしなさい、

という話ではありません。


納得できなければ、

交渉すればいい。


反論してもいい。

資料を出してもいい。

調停で話してもいい。

裁判で争ってもいい。


でも、

無視する。

話し合いに応じない。

「裁判で決めてください」

という選択をしたのであれば、

その後に出た裁判所の判断も受け止める必要があります。


そして、

途中で退去すれば、

それまでの問題が全部消えるわけでもありません。


判決が出れば、

家賃差額。

訴訟費用。

訴訟費用額確定処分。


さらに、

支払わなければ、

給与や預金などへの強制執行。


手続きは続きます。

そして、「執行」に事前通知は不要です。


僕も、

調停や裁判が好きなわけではありません。


できれば、

話し合いで終わらせたい。


でも、

話し合いで終わらなければ調停。

調停で終わらなければ裁判。

判決が出ても履行されなければ強制執行。


致し方ありません。


今回の判決は、

2026年9月3日の予定です。


判決が出たら、

認定された家賃、

家賃差額、

訴訟費用、

訴訟費用額確定処分、

そしてその後の支払いまで、

実際の数字で追記していきます。


「家賃改定裁判で負けたら、実際にどうなるのか?」


自分自身の裁判を使って、

最後まで記録してみようと思います。

勝ってることを祈るばかりですが(笑)


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