「残業代ゼロ」法案が掲げる「新しい働き方」とは? が、JIJICOに掲載されました。
温暖化による異常気象のせいなのか、大型台風の直撃が増え、土砂崩れや冠水による被害が多くなっているような気がします。今年も18号、19号と2週立て続けに日本列島を縦断する台風が発生しました。特に18号では、10月6日月曜日早朝から関東地方に、激しい風雨をもたらせ、学校の休校や会社の休業を余儀なくされたところも多かったのではないでしょうか。そのため19号に関しては、早めに対応して、10月14日火曜日を休校にしたり、休業にしたところもあったようです。
ただし、会社を休業させる場合、注意することがあります。その注意点を解説したいと思います。
台風による休業に給与の支払い義務は?
労働基準法第26条に「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。」とあります。不可抗力による例外以外は、「使用者の責に帰すべき休業」に該当し、会社は、平均賃金の60%を支払う義務が生じます。不可抗力による例外とは、「天災事変の場合、休電による場合、法定の規定に従って行うボイラー検査のための休業」と具体的に行政通達が出されています。台風は当然、天災ですからこれにより休業を余儀なくされたのであれば、休業手当の支払い義務もなくなります。
19号の場合、関東地方では、13日未明には抜けてしまい、鉄道の運休などもなく、大きな被害や混乱もありませんでした。従業員やお客様の安全のため、前日に事業所を休業させる決定をされたところも多かったのではないでしょうか。しかし、実際には、充分出勤することもできた訳です。このような場合は、どうなるのでしょう。事前に被害が予想されたのだから天災事変による休業となり、休業手当の支払い義務はないのでしょうか。いや、それでも出勤することが出来たのですから、休業手当の支払い義務は生じると考えられます。実際に電車が止まってしまって出勤ができないとか、工場が冠水してしまって閉鎖せざるを得ないなどと言った場合で無ければ、不可抗力による例外になり得ないのです。
出勤することが出来たのであれば休業手当の支払いは必要
以上により、整理すると、勢力の大きな台風で大きな被害が予想される場合、お客様や従業員の安全を考え、前日に休業を決めたとしても、実際に当日になって、出勤できない状況であれば、休業手当を支払う必要は無いが、出勤して仕事が出来る状況であったならば、休業手当の支払い義務が生じる、ということになります。
労働基準法が、労働者を守るための最低限の労働条件を定めたものであるので、賃金を失うことに対して、使用者に厳しくしているということがあります。台風により安全を考えて休業する場合も、休業手当の支払いが生じる場合が大いにありますので、注意が必要です。