事業性融資推進法で、銀行の企業融資の姿勢が大きく変わる

松本尚典

松本尚典

テーマ:資金調達 借入 M&A エクイティ


2026年、経営者が必ず押さえておくべき重要情報――事業性融資推進法


2026年5月、企業経営者にとって極めて重要な法律が施行されます。それが「事業性融資推進法」です。

企業経営者の最重要な仕事は、大きく分けて二つあります。
一つは、事業および組織のマネジメント、もう一つが、資金調達です。

資金調達には、内部留保や投資による自己資本の活用と並び、他人資本、すなわち金融機関からの借入があります。銀行は、投資ファンドや事業投資家とは比較にならない規模の資金を供給できる存在です。そのため、企業が事業を推進するうえで、運転資金や事業投資資金を、いかに高い信用力で、かつ低利で調達できるかは、経営者の総合力を示す重要な指標だといえるでしょう。

しかし、日本の銀行融資は、これまで主に過去の経営実績と担保力を重視してきました。投資ファンドのように、企業の将来性やIPOの可能性に賭けてリスクを取る融資を、銀行は基本的に行ってきませんでした。

将来性のある経営者よりも、過去に利益や資産を蓄積してきた企業に融資をしたがる――それが、これまでの銀行の姿勢だったのです。

ところが、VUCAと呼ばれる不確実性の高い時代において、未来の成功は、もはや過去の成功の延長線上にはありません。日本が、米国・中国、さらには台頭するインドやインドネシアと競争しながら国際的な競争力を維持していくためには、将来の成長可能性が高い事業に、銀行の莫大な資金を戦略的に振り向ける発想が不可欠です。

その国家経済戦略の一環として、銀行の企業融資の姿勢転換を促す法律が、事業性融資推進法です。

この法律の施行は、銀行の与信判断や融資審査に大きな影響を与えます。

「失われた30年」が終わり、金利のある世界が再び到来する中で、銀行は、低金利時代に緩やかだった融資審査を、すでに厳格化し始めています。

こうした環境変化を踏まえ、企業経営者は、事業性融資推進法施行後の融資審査の変化に、今こそ強い関心を向ける必要があると、僕は考えています。

事業性融資推進法とは?


事業性融資推進法(正式名称:事業性融資の推進等に関する法律)とは、中小企業やスタートアップが、担保や経営者保証に過度に依存することなく、事業の実態や将来性を評価した融資(事業性融資)を受けやすくすることを目的とした法律です。

この法律は、銀行に対し、従来の融資審査のあり方の見直しを求めています。

「赤字企業でも融資が簡単に受けられるようになる」という意味ではありません。

これまで、過去の営業利益の蓄積が乏しい企業や、担保力が弱い企業であっても、将来の成長性や、将来利益をもとに算定される企業価値に着目し、成長資金や経営改善資金を調達できる可能性が広がることが期待されています。

事業の将来性が正当に評価される金融支援環境を、法制度として後押しする点が、この法律の本質です。

銀行の融資審査基準は大きく変わる

金融機関側も、この法律の施行により、従来の財務分析中心の評価から、事業の将来性やキャッシュフロー予測を重視した評価へと、徐々にシフトすることが求められます。

その結果、企業と金融機関との対話やフォローアップが深化し、経営改善支援や早期警戒的な対応が可能になります。

企業側から見れば、これまで以上に金融機関との関係構築、すなわち、定期的な現状報告と将来性の説明が重要になります。

政府系金融機関から創業時に融資を受けたまま、決算書や税務申告書を金融機関に提出せず、関係が希薄になっている企業も少なくありません。しかし今後は、そうした企業よりも、金融機関に対して継続的に情報提供を行い、将来ビジョンを伝え続ける企業のほうが、次の融資を受けやすくなるでしょう。

有形資産が少なく、無形資産を強みとする企業や、成長性の高いスタートアップにとって、借入による資金調達機会は、確実に拡大していきます。これにより、将来性のある中小企業の再生支援も、より柔軟に行えるようになると考えられます。

金融機関と中小企業経営者との信頼関係構築、そして長期的な協働関係の進展が期待されます。

企業価値担保が登記できるようになると、何が変わるのか


事業性融資推進法の最大の特徴は、従来の「不動産担保」や「個人保証」に代わる仕組みとして、企業が有する事業全体の価値(無形資産を含む)を担保とする「企業価値担保権」が新設される点にあります。

これまで、IPOやM&Aの場面では企業価値が重視されてきましたが、中小企業の日常的な経営の現場では、必ずしもなじみのある概念ではありませんでした。

本法では、この企業価値担保権を法的に認め、登記可能とする制度整備が進められます。

これにより、特許・商標などの知的財産権、ブランド力、契約資産、顧客基盤といった無形資産を有する企業が、その価値を担保として融資を受けやすくなります。

原則として、企業価値担保権を設定した場合には、経営者個人の保証を求めない仕組みが採用されます(例外もあり)。これにより、経営者の私財リスクは大きく軽減されます。

また、事業継続を重視した資金配分が考慮され、雇用や取引関係の維持に不可欠な債権(労働債権や商取引債権等)が優先的に保護される仕組みも組み込まれています。

事業性融資推進法時代――ベンチャー企業は、どう資金調達で勝つか?


事業性融資推進法は、融資が過去の財務実績や有形資産担保に過度に依存してきた状況を、大きく変える可能性を秘めています。

言い換えれば、将来性の高い成長戦略を有する企業、ブランドや商標といった価値を築いてきた企業、強固な顧客基盤を持つ企業ほど、資金調達がしやすくなる時代が到来するということです。ベンチャー企業にとっても、より戦略的な成長資金の調達が可能になります。

同時に、経営者には、メインバンクとの関係をより強固にし、自社の将来性や無形資産の価値を、継続的に伝え続ける姿勢が、これまで以上に求められます。

僕は長年、国内グループ各社の運転資金を融資いただいている金融機関に対し、毎期、決算および税務申告後に、こちらからアポイントを取り、決算書類を速やかに提出するとともに、今後の事業戦略やマーケティング見通しを報告してきました。

こうした情報は、銀行担当者によって記録・共有されるため、グループ各社が資金を必要とする際には、迅速な融資判断が行われてきました。その結果、これまで一度も融資を断られたことはありません。

このような金融機関との関係構築は、今後、すべての経営者にとって、より一層重要な経営課題となっていくでしょう。

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