企業の存続に不可欠な、マーケティングとイノベーションとは?
1、バーティカルマーケティングの重要性と、その限界
バーティカルマーケティング手法とは?
商品やサービスの販売促進をかける活動で、一般的にマーケティングの中心は、バーティカルマーケティングと呼ばれる活動におかれます。
顧客のペルソナを設定し、セグメンテーションを設定して、顧客をターゲティングします。そして、そのターゲットに向けて、商品サービスの広告を行い、営業活動などを行う活動が、バーティカルマーケティングです。
商品のライフサイクルが成熟化してくると、競合があらゆる周辺領域から参入してきます。競合への優位性を構築するためには、マーケティング手法として、セグメンテーションを行うのが常道です。
わかりやすい例で、フィットネスクラブという業態で説明しましょう。
大手が価格破壊で大量店舗をコンビニ的にフィットネスクラブで開業する戦略で参入してきた場合、資金力がないフィットネスクラブ企業は、どう行動するべきでしょうか?
例えば、顧客を高所得者に絞り込んだ高級フィットネスクラブに特化し、少数の店舗に資本を集中して、設備の高級化・サービス品質の向上などを行い、会員一人当たりの客単価を大きく向上させる戦略に打って出る方法に舵を切るなどの行動を行います。
この場合、顧客層を高所得者層にセグメントし、高額の会費を負担できる層にターゲットを絞って、出店戦略を限定し、商品であるクラブ施設やサービスを、そのターゲットにあわせて、売上高の向上を図るなどのマーケティング施策を打つ必要がでてくるわけです。
このように、セグメントとターゲティングを起点にして、その実行性を高める手法がバーティカルマーケティングです。
バーティカルマーケティングの限界とは?
しかし、このバーティカルマーケティングには、限界があることが指摘されています。セグメントとターゲティングを繰り返してゆくうちに、これ以上、セグメントができない限界状態に至ってしまうのです。
商品ライフサイクルでいえば、この状態が衰退期ということになり、その後は、バーティカルマーケティングを進めても、業界全体の収益は、過当な価格競争の中で失われてゆきます。
消費者は、価格.comのような情報ツールで、単なる価格だけで商品を選ぶようになり、企業は、消耗戦に入ります。中小企業は利益絵率の低さから撤退し、マーケットには、粗大な大企業だけが残る「死の海」へと変貌してゆくことになります。
この状態を脱するためには、水平思考といわれる、ラテラルマーケティング、つまり、イノベーションを進めなければなりません。
2、ラテラルマーケティングの例
では、ラテラルマーケティングとは何でしょうか?
ラテラルマーケティングは、水平思考のマーケティングと呼ばれています。
具体的な例で、みたほうがわかりやすいでしょう。
コンビニエンスストアーのトップランナーであるセブンイレブンは、もともと、そのブランド名が、朝7時から夜11時まで開店している便利な店、というところから名づけられました。
商品ラインナップを、生活に必要な売れ筋に限定し、商品の深みを抑えて在庫を減らし、商品棚が在庫スペースという店舗設計発想からコストを抑えるビジネスモデルとして発展しました。商品ごとにバーコードをつけて、ポスレジが収集する情報を本部が解析し、徹底的に売れ筋商品だけに品ぞろえを限定し、強い物流網を利用して合理的な店舗経営を実現することで、フランチャイズシステムを実現し、広域に店舗を大量拡大しました。
これが、コンビニエンスストアーの成功モデルです。
しかし、この仕組みが出来上がると、様々な企業がコンビニエンスストアー業態に参入しました。ポスシステムによる情報分析と流通の合理化による商品の選定だけでは、競争に勝てなくなってきました。バーティカルマーケティングに限界があらわれたのです。
セブンは、そこからセブン銀行の事業に参入しました。買い物をする顧客が、店舗のATMで、銀行として活用するビジネス形態に展開をしたのです。
コンビニエンスの本部が、銀行業にシフトするのは、確かに高いシナジーがありますが、コンビニエンスストアー本部のビジネスモデルとは異なる機能性をコンビニ店舗に付け加える、横展開の発想からしかでてきません。
このような発想が、水平思考のマーケティングと呼ばれる、ラテラルマーケティング発想です。
3、バーティカルマーケティングとラテラルマーケティングは、クルマの両輪
バーティカルマーケティングと、ラテラルマーケティングは、どちらが優れているとか、どちらか一方を選択するというものではありません。
企業が成長をし、継続するためには、常に、双方のマーケティング発想をとらなければならないのです。
バーティカルマーケティングは、企業経営者がやる気を出せばできるし、その手法を提供するマーケティング業者や、広告業者はいくらでもいます。
しかし、ラテラルマーケティングは、僕のような、自分の事業でラテラルマーケティングをし続けている、経営コンサルタント以外は、その支援をしてくれるところはありません。
経営者は、通常、自ら、ラテラルマーケティングを進めて実行に移すことになります。ただ、それは、非常に難しく、実行に移すことができない人が多いのが現状です。
僕は、自分自身の事業展開の、過去→今→未来を、一枚の系統図にまとめて、常にカバンに入れて持ち歩いています。そして、時間ができるとそれを眺め、その系統図の中に、ラテラルマーケティングの発想から生まれるコンテンツを、その系統図に書きたしています。
ラテラルマーケティングの発想から生まれる事業は、新規投資を伴うものも多く、かつ、未来の発想であるがゆえに、確実な収益が伴うかどうかは、やってみなければわかりません。
また、思い付きをすぐカタチにしても、チープなビジネスモデルにすぎない場合が多く、その発想を、現実のビジネスモデルのカタチにまで深化させなければならないことが多いのです。
そのため、ラテラルマーケティングで生み出す発想は、僕はすぐにカタチにせずに、それを一旦、系統図に書き込み、寝かして、いわば、熟成する期間をとります。
もちろん、その過程で、思い付きのまま、死んでいく発想もあります。
ラテラルマーケティングは、夜空に輝く星くずのように、たくさんの発想がでるなかで、それが実行にうつされていき、収益が生み出されるのは、ほんの一部なのです。
しかし、それでも事業家である以上、水平思考のマーケティング・イノベーションの発想を出し続け、それを深め続けることが不可欠なのです。
僕は、ラテラルマーケティングは、事業家の義務ではなく、自由な権利であるととらえて、その発想を楽しむようにしています。
僕自身、夜にお気に入りのレストランや酒場で、一人呑みをするのが好きなのですが、その時間が、ラテラルマーケティング発想を生み出す時間帯でもあります。
4、バーティカルマーケティングとラテラルマーケティングのシナジーが新規事業のベクトルを生み出す
バーティカルマーケティングは、商品の販売促進として、企業が常に取り組まなければならない課題です。一方、バーティカルマーケティングの基礎であるセグメントとターゲティングには限界があり、その繰り返しが永遠に販売促進と企業の成長を齎すものではありません。
一方、ラテラルマーケティングを実行に移すためには、バーティカルマーケティングよりも先行投資がかかることが多いため、バーティカルマーケティングに限界を感じてから、はじめてラテラルマーケティングに着手したのでは、投資を行うに足る利益が枯渇してしまい、ラテラルマーケティングは、机上の計画に終わりがちです。
バーティカルマーケティングが利益を生み出している時点で、そこから脱却するラテラルマーケティングを計画し、実行できるかどうかが、企業の恒常的な成長の最大の鍵であると言っても過言ではありません。
僕が、経営コンサルティングという自分のライフワークを基礎に、副業で飲食事業を創業し、一方、経営コンサルティングのシナジーと展開エリア拡大を行って、マーケティング事業を創業し、海外進出支援事業を立ち上げ・・・、と、事業の領域拡大という形で、ラテラルマーケティングをし続けてきたのは、自分の事業を永続的に成長し続けるための不可欠な方法がそこにあると信じているからです。
その甲斐もあり、僕は、自分の100%支配する企業グループの総売り上げを成長させ続け、株主価値を上げ続けることに成功しています。
もし、僕が、自分のライフワークであり、本業でもある経営支援事業に集中してしまって、バーティカルマーケティングだけに拘泥していれば、おそらく、僕の能力の限界、イコール売り上げの限界をきたし、僕の事業は、せいぜい、年商数千万円程度の零細な事業家で終わっていたと思います。
バーティカルマーケティングとラテラルマーケティングは、どちらか一方を行えばよいというものではなく、常に同時に進めるべきものなのです。
5、ラテラルマーケティング思考を鍛える生活
バーティカルマーケティングは、日常的な業務の延長線の中で、その手法が見えてきます。セグメントを行い、そのセグメントに対するターゲティングを考え、そこに向けた商品の開発と、広告やプロモーションを打つことは、特別な発想を要求される活動ではありません。
一方、ラテラルマーケティングは、日常的な業務の延長戦の中では、その手法はみえません。消費者の消費行動を見つめなおし、または時代の流れをよみ、そこから、水平思考で、商品やサービス・ビジネスモデルを生み出さなければなりません。
では、このようなラテラルマーケティングに必要な水平思考を鍛えるには、どのようなことが必要なのでしょうか?
僕は、自分で、日常的にラテラルマーケティングを生み出してきた経験者として、水平思考を生み出す生活の改革の視点をお教えしたいと思います。
都市のウオッチと、ちょいメモの導入
今、電車に乗ると、多くのヒトがスマホを見続けています。それをのぞき込んでみると、ゲームをやっているヒトが非常に多いわけです。
ゲームは、開発会社の思惑通り、ヒトをある種の中毒症状に陥らせます。それによって、ゲーム以外の周囲の変化や、他者の行動から視線を奪います。
ラテラルマーケティングを意識するヒトは、まず、都市の変化やヒトの行動、広告などの観察から、様々な情報をえることが大切です。スマホとゲームをやめて、周囲を観察しましょう。
そして、その変化や気になるものを、ちょっとメモするための「ちょいメモ」をポケットに持ち歩き、そこに気づいた変化をメモしましょう。
僕は、必ず、外出するときは、コンビニで売っている小さいメモを、ズボンの左の後ろポケットにいれ、気になることを、どんどん、メモをする癖を身に着けています。
これが、大きなラテラルマーケティングのヒントに繋がったことが、僕には何度もありました。
読書の勧め
情報の収集は、今、SNSや動画・ネットで行う時代になりました。しかし、一方、これらの情報はファイクニュースもあふれ、かつ、表層的なSEO対策や「目立つ」ことを目的とした粗悪な情報が多いのが実情です。一定の知性と力量がある著者が、自分の文責を明記して書いている出版の本は、その深みがまるで異なります。
AIにはない人間の力量は、知と知の間を自在に連携させて、新たな知を創造するチカラであり、ラテラルマーケティングのように、他者にはないものを生み出す力は、出版の書籍を一定量、読み続けることによって生まれるものです。
よい本を選定し、これを読み続ける読書を生活に採り入れることは、ラテラルマーケティングにとって、非常に重要な出発点を与えてくれます。
発想の豊かなヒトとの、しっかり交際の勧め
ラテラルマーケティングの出発点は、都市のウオッチや机上の読書だけから与えられるものではありません。
発想の豊かなヒト・自分にはない経験を積んでいるヒトとの、しっかりとした交際は、ラテラルマーケティングの有力な気づきやモデルを与えてくれます。
僕は、酒や旨いものが好きなもので、様々な経営者の会合や紹介で出会った異業種の中から、発想は豊か経験が豊富な方を、会食にお誘いし、じっくりとお話を伺うことを、やっています。このような交際費は、ラテラルマーケティングによって生み出される利益の有力な投資だと位置付けています。
仕事から離れ、仕事のアタマを維持する
ラテラルマーケティングには、構想力が必要です。構想力というのは、発想や情報を基礎に、組み立てるチカラです。
この構想という仕事を行っていると、「煮詰まる」時が必ず来ます。ラテラルマーケティングは、バーティカルマーケティングと異なり、定例的な業務ではなく、発想と構想の仕事です。この発想や構想は、AIにはできない人間ならではの仕事であるだけに、常に、それができ続けることはありません。
ラテラルマーケティングの基礎的な発想は、天から与えられる啓示のように、突如として降臨するものですが、その降臨をえるためには、何百時間、アタマを悩ませる忍耐が求められます。
僕は、よく、クライアントの経営者の方から、
「なんで、松本さんは、あんなに事業の発想が沸き上がるのですか?」
と聞かれます。
少なくとも、事業の発想というものは、何か天才的なひらめきによってえられるものではありません。課題を認識し、読書やヒトの話を聞くという地道な情報収集を積み上げ、それを、「寝かす」ことが必要です。
ここでいう「寝かす」というのは、課題と情報をアタマの中にしまって、一旦、その構想から離れてみるということです。
仕事のアタマを維持しつつ、一旦仕事から離れる、ということが、「寝かす」ことが重要なのです。絶対に、構想にとって有害なのは、会議室で集まって、「構想を出さねばならない」という追いつめられたノルマ的な状態の中で、それを行うことです。
このような形で行った構想は、絶対に、チープな場当り的なものになります。
仕事のアタマを維持しつつ、仕事から離れるというのは、矛盾しているように思うかもしれませんが、これ、非常に大切なのです。
緊張をほぐし、仕事から離れつつ、アタマの潜在的な場所に、大量に蓄積した情報があって、それが、リラックスをしているうちに、有機的に結合することがよくあります。
これが、発想や構想が降臨する瞬間です。
カンファレンスシステム
ラテラルマーケティングの発想や構想を自分で生み出すことは、なかなか至難の業だ、という方は、ラテラルマーケティンングで成功をしている事業家の方をブレインにつけて、カンファレンスを実施し、発想や、構想の着想をえるのが、近道です。
僕自信、自分の事業のラテラルマーケティングの着想を、ヒトと協議をしている最中にえた経験は、多数あります。
尚、もし、そのような方が周囲にいないようであれば、僕が実施している無料相談を最初はご利用ください。1時間のカンファレンスを無料で、ご提供しています。
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