Googleは、本当に解体されるのか?
1.P.ドラッカーの名言
ピータードラッカー(P.F.ドラッカー)の古典的な経営の名著と言われる、「現代の経営」。
この経営コンサルタントのバイブルと言われる著書の中の、「事業のマネジメント」という章の中で、ドラッカーは、次のように述べておられます。
「企業の目的が、顧客の創造であることから、企業には二つの基本的な機能が存在する。すなわち、マーケティングとイノベーションである。」
ドラッカーは、マーケティングとイノベーションを企業が存続をするうえで、不可欠な機能だと位置づけ、その推進が、マネジメント(経営者)にとって、不可欠であると説きました。
マーケティングとは、単に営業活動をすることではありません。
事業の顧客を創造するため、生産から販売までの、すべてのプロセスを、市場が要求するに適合させる活動を言います。
市場に適合させる対象は、製品の生産であり、販路開拓であり、価格であり、プロモーションであり。
企業活動の支援部門を除くすべての領域を、市場に適合させることが、マーケティングの要請です。
一方、イノベーションというのは、より優れ、より経済的な財やサービスを創造することです。企業は、市場に適合する財やサービスを生産し、適切に広告し、販売するだけでは、存続し続けられないと、ドラッカーは言います。
つまり、企業は、いまの製品よりも、より優れたものを創造し、供給を行い続けなければならないと説きます。
しかし、このマーケティングと、イノベーションという機能は、決して、両者が対立するものでも、別々に行われるものでもありません。
企業活動の中に、両社が相まって、複雑に作用しあいながら、企業が進んでいく必要があるものです。
ただ、このように言ってもみても、経営者の皆さんから、どうも、マーケティングとイノベーションのイメージがつきにくいと、僕は、よく質問されます。
イノベーションと、マーケティングが作用しあうということは、どんなことなのでしょうか?と、これも経営者からよく聞かれます。
そんなとき、僕は、そのイメージを次のような例えで説明しています。
今日は、イノベーションと、マーケティングが作用しあうことを、あくまでも、イメージとして、どう把握するとわかりやすいか、ということを、例え話で、説明するコラムを発信したいと思います。
2.化学反応と、物理反応
皆さん、中学生・高校生のときに、理科で、物理と化学を勉強したと思います。
さて、ここで質問です。
物理と化学って、どう違うのでしょうか?
もう少し、丁寧な質問に変えると、物理変化と化学変化とは、どう違うのでしょうか?
結論から言いますと、化学と物理の違いが、企業経営では、マーケティングとイノベーションの違いに対応しますと、僕はクライアントの社長にお話しします。
物理変化とは、例えば、水が氷に変化する、または水が水蒸気に変化するような変化のことを言います。
液体である水(H2O)は、1気圧の環境で、温度0℃で、固体である氷に変化します。このように、液体が固体に変化することを、凝固と言います。また、水は1気圧の環境で、温度100℃で、水蒸気である気体に変化します。液体が気体に変化することを、蒸発と言います。
このような凝固は蒸発によって、物質は見た目で変化します。しかし、水(H2O)が他の物質に変化するのではありません。水のままです。
このような変化を物理変化と言います。
一方、化学変化とは、水素(H2)と酸素(O2)が、水(H2O)に変化するような変化を言います。
水に変化した水素は、もはやH2ではありません。H2Oという別の物質に、分子レベルで変化するのです。
我々の住む宇宙は、すべて、この物理変化と化学変化のいずれかの変化の結果、形成・維持されているものです。熱量保存の法則や、物体の運動法則などの物理法則と、化学変化が、宇宙の形成の基本原理となっています。
宇宙の解明は、物理変化と化学変化(あえていえば、そこから地球という特殊な環境で生じた生物の進化の原理を加えて)で、説明ができるのです。
さて、話を経営に戻しましょう。
企業の構造もまた、マーケティングとイノベーションの運動によって根本原理が構成されています。企業の場合、このマーケティングとイノベーションがその根本にあり、財務や労務や法務、情報システムなどが、この活動を支援する関係にあります。
3.マーケティングだけでは、企業に存続は成し遂げられない
マーケティングという活動を行っていない企業が、存続ができないことは、おそらく異論がないでしょう。
例えば、特定の大企業の下請けの仕事を100%こなしているだけの企業が、その大企業に言われるがままの商品をつくり、大企業の指定した価格で商品を卸していた場合、その企業の利益は、中長期的に、限りなくセロに近づいてしまいます。
元請けの大企業は、必ず下請けを競争原理で淘汰しようとし、自社に有利な条件を求めますから、上記のような下請け企業は、必ず、利益が極限まで下がってしまい、存続ができなくなるのは、時間の問題です。
従って、仮に下請けで受注をしている企業でも、元請け企業やその他の企業への販路を新規開拓する活動を行って、特定の元請け企業からの販売高に対する受注率を、引き下げる活動を行わなければ、存続できません。
マーケティング活動
・自社の商品の販売先を新規開拓する活動
・自社の商品の原価を見直し、消費者の観点から、価格を見直す活動
・自社の商品販売の販路を開拓し、新たなエリアの顧客に販売を拡大する活動
・自社のプロモーション方法を見直し、新たな消費者に商品を気付かせる活動
このような活動は、誰が考えても、理解できることで、マーケティングが企業の存続にとって、不可欠なのは、理解できると思います。
しかし、それだけでは、やはり存続条件は、充分ではありません。
イノベーション活動
・自社の持っている技術を見極め、強みを把握し、そこから、その技術や強みを別の商品として転用する活動
・自社の商品を、消費者の利用という観点から深堀りし、別の用途を開発して提案販売する活動
・新たな技術や能力・経営資源を獲得し、新規の商品開発や新規事業に進出し、既存事業とのシナジー効果を高める活動
商品には商品ライフサイクルがあり、必ず終わりがきます。
特定の顧客には、取引の歩留率があり、特定の顧客には必ず取引の終わりがきます。
そのため、マーケティング活動に加え、イノベーション活動を両輪で行い続ける企業でなければ、存続はできません。
宇宙が、物理変化と、化学変化を繰り返して、存続しつづけるように、企業もまた、マーケティング活動と、イノベーション活動を繰りかえして、存続を続けるものなのです。
続く
松本尚典の中小企業経営者支援コンサルティングサービス
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