【親子問題】家族が警察に相談した場合の流れ|相談から捜査・逮捕・処分までの見通し
この記事は、2026年11月時点の民法(2020年4月1日施行の改正後の規定を含みます)と、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」の考え方をもとに作成しています。実際の扱いは賃貸借契約書の内容によって変わることがありますので、手元の契約書とあわせてご確認ください。
「子が一人暮らしの部屋を引き払うことになり、管理会社から連帯保証人の親にも退去の立会いに来てほしいと言われた。行かなければならないのか」というご相談があります。反対に、「子とはしばらく連絡が取れておらず、親が代わりに解約や退去を済ませてよいのか分からない」という声もお聞きします。
退去の立会いは借主本人が行うもの、保証人は費用を払う立場、という説明はよく見かけますし、それ自体は誤りではありません。ただ、親子の間に距離がある場合や、子が立会いに応じられない事情がある場合には、親がどこまで関わってよいのか、関わることで何を引き受けることになるのかが見えにくくなります。
この記事では、独立した子が借りている部屋の解約や退去に親が立ち会う必要があるのかを、契約の名義と親の立場ごとに整理します。親名義で借りた部屋を親の側から解約する手続については、子が親名義で借りた部屋を解約したい|契約者としてできることと退去までの順序で詳しく解説しています。
退去の立会いは法律で決められた手続ではない
立会いは契約実務の慣行として行われている
退去の立会いは、借主が荷物を運び出した後の部屋を、管理会社や貸主と借主が一緒に見て回り、傷や汚れの有無と修繕の負担を確認する場です。賃貸住宅ではほぼ当然のように行われていますが、民法などの法律に、立会いをしなければならないという定めはありません。
そのため、契約書に立会いについての取り決めがなければ、借主にも貸主にも立会いの義務はないと考えられています。契約書に「双方立会いのうえ室内を確認する」といった記載がある場合も、立会いをしなかったことだけを理由に、借主の負担が本来の範囲を超えて広がるわけではありません。
それでも立会いには意味がある
立会いをしないまま退去すると、部屋の状態について借主側の確認がないまま、後日、修繕費用の明細だけが届くことになります。その時点で「この傷は入居前からあった」と伝えても、裏付けが乏しく話し合いが長引くことがあります。
立会いは、傷や汚れがいつからあるものか、借主の使い方によるものかを、その場で確かめて記録に残す機会です。立会いは義務ではないものの、借主側の言い分を残しておく場として位置づけると、行くかどうかを判断しやすくなります。
連帯保証人の親に立会いの義務はあるか
連帯保証人は、借主である子が負う賃料や原状回復費用などの支払いを保証する立場です。部屋を明け渡すことや、立会いに出向くこと自体を引き受けているわけではありません。
管理会社から保証人の親に立会いの依頼が来るのは、借主本人と連絡が取りにくいときや、費用の精算をスムーズに進めたいときが多いようです。協力を求められているという位置づけであり、応じるかどうかは親の側で判断できます。
契約の名義によって親の立場は変わる
名義と親の関わり方の整理
親が立ち会う必要があるかどうかは、まず「誰が借りているのか」「親はその契約にどう関わっているのか」で考えると整理しやすくなります。
| 契約の形 | 解約・退去の当事者 | 親が立ち会う意味 |
|---|---|---|
| 子が借主、親が連帯保証人 | 子 | 子に頼まれて代理で立ち会う場合のほか、保証人として費用の中身を確かめる意味がある |
| 子が借主、保証会社のみを利用 | 子 | 子から頼まれた場合に代理として立ち会う。費用の負担は原則として親には及ばない |
| 親が借主で、子が入居者 | 親 | 契約者本人として、解約の申入れ・立会い・精算を親が担う |
子が借主の場合は、解約するかどうかを決めるのは子
子が自分の名義で借りている部屋は、子と貸主との契約です。子が成人していれば、解約を申し入れるか、いつ退去するかは子が決めることであり、親であっても子の意思と関係なく解約を申し入れることはできません。
親が手続を代わりに行うときは、子から代理を頼まれていることが前提になります(民法99条)。管理会社によっては、子の署名入りの委任状を求めることがあります。
親が借主の場合は、親が手続の中心になる
子のために親が自分の名義で部屋を借りている場合、契約の当事者は親です。解約の申入れも、退去の立会いも、敷金の精算も、契約上は親が担うことになります。
子がその部屋に住み続けたいと言っている場合には、解約の前に子の退去をどう進めるかを考える必要があります。この点も子が親名義で借りた部屋を解約したい|契約者としてできることと退去までの順序で順序を説明しています。
連帯保証人になっている親が確認できること
2020年4月1日以降に結ばれた賃貸借契約で、個人が連帯保証人になる場合には、保証の上限額(極度額)を書面で定めなければ保証契約は効力を生じません(民法465条の2)。親が保証人になっているときは、まず契約書で極度額がいくらになっているかを確認しておくと、退去時に請求される可能性のある範囲が見えてきます。
また、子から頼まれて保証人になった親は、貸主や管理会社に対して、賃料の支払状況や滞納の有無を問い合わせることができます(民法458条の2)。退去前に滞納がないかを確かめておくと、精算の場で慌てずにすみます。保証人を引き受けるときの注意点は、家を借りる際の保証人・保証会社の問題|無職の子のために親が引き受ける前にでも解説しています。
親が立ち会ったほうがよいのはどのような場面か
子が遠方や入院中で立ち会えない
子が転勤や入院で立会いの日に来られない場合、子から頼まれて親が代わりに立ち会うことはよくあります。この場合、親は子の代理として部屋の状態を確認することになります。
立会いを省略して退去することもできますが、親が保証人になっているときは、後で費用の請求が親に向くこともあります。子の了解を得たうえで親が立ち会い、部屋の状態を写真で残しておくと、後日の話し合いで役立ちます。
子と連絡が取りにくい、親との接触を避けている
子が借主である限り、子と連絡が取れないからといって、親の判断だけで解約を申し入れることはできません。管理会社に事情を伝え、子への連絡を続けてもらうことが出発点になります。
この段階で、親が鍵を開けて子の荷物を運び出したり、処分したりすることは避けたほうがよいでしょう。部屋の中の物は子の財産であり、子の了解なく動かすと、後で子との間で争いになることがあります。子との間に第三者を入れて連絡を取る方法については、弁護士に頼むと何が変わるのか|窓口を代えるという選択で解説しています。
子と顔を合わせると衝突が起きやすい
子との関係がこじれている場合、立会いの場で親子が顔を合わせること自体が負担になることがあります。立会いは子と管理会社だけで行ってもらい、親は保証人として後日、精算の内容を書面で確認するという分け方もできます。
親が必ず同じ場にいなければならないわけではなく、契約上の立場に応じて関わる時期と方法を選べます。親が保証人として費用の請求を受けた段階で、内容を確かめてから対応しても遅くはありません。
親が代わりに立ち会うときの準備と注意点
立会いの前にそろえておくもの
子から頼まれて親が立ち会う場合は、次のものを事前にそろえておくと、当日のやり取りが進めやすくなります。
- 子の署名がある委任状(どこまでを任されているかを書いておく)。
- 賃貸借契約書と重要事項説明書、特約の記載がある書面。
- 入居時に撮影した写真や、入居時のチェックリストの控え。
- 返却する鍵のすべて(合鍵を作っている場合はその分も)。
- 子から聞き取った、入居中に生じた傷や不具合の内容。
委任状で任される範囲を決めておく
委任状には、立会いに出席して部屋の状態を確認することまでを任せるのか、修繕費用の金額に同意することまで任せるのかを書き分けておくことをお勧めします。費用への同意まで任されている場合、親がその場で承諾すると、子がその金額を負担することになります。
子との関係が落ち着いていない場合は、確認までを任された形にしておき、費用については子と相談してから回答するほうが、後の行き違いを防ぎやすくなります。
その場で精算書に署名しない選択もある
立会いの場では、修繕箇所の確認書や、費用の負担に同意する書面への署名を求められることがあります。部屋の状態を一緒に確認したことと、費用の金額や負担の割合に同意することは、別のことです。
金額や内訳に疑問がある場合は、署名をいったん保留し、明細を書面で受け取ってから検討したいと伝えることができます。確認には応じつつ、費用への同意は持ち帰るという対応は、立会いの場でとれる選択肢の一つです。
鍵の返却と残された荷物の扱い
部屋の明渡しは、荷物を運び出し、鍵を返却することで完了するのが一般的です。鍵を返した日時と本数は、受領書をもらうか、やり取りを記録に残しておくと安心です。
子の荷物が部屋に残っている場合は、処分してよいか子に確認してから動くことが基本です。子の了解を書面やメッセージで残しておくと、後で「勝手に捨てられた」という話になることを避けやすくなります。
立会いの後に費用を請求されたとき
原状回復で借主が負担するのはどこまでか
借主は、退去にあたって部屋を元の状態に戻す義務を負いますが、普通に暮らしていて生じる傷みや汚れ(通常損耗)と、年数の経過による劣化(経年変化)は、借主の負担に含まれません(民法621条)。
国土交通省のガイドラインでも、壁紙やカーペットなどは入居年数に応じて価値が減っていくという考え方が示されており、長く住んだ部屋ほど借主の負担割合は小さくなる傾向があります。請求の明細を受け取ったら、どの項目が借主の使い方によるものとされているのかを一つずつ確かめることが大切です。
敷金との精算
敷金は、部屋の明渡しを受けた後、未払いの賃料や借主が負担すべき原状回復費用を差し引いた残りを返すものとされています(民法622条の2)。立会いの結果、修繕費用が敷金を上回る場合には、差額を請求されることがあります。
親が借主であれば敷金の返還を受けるのは親であり、子が借主であれば子です。誰に返金されるのか、振込先をどうするのかも、精算の段階で確認しておきましょう。
保証人として親に請求が来たとき
子が費用を払わない場合、連帯保証人である親に請求が届くことがあります。その場合も、請求の中身が原状回復の範囲に収まっているか、極度額を超えていないかを確かめてから対応を考えることになります。
親が保証人として支払った分は、後で子に返すよう求めることができます(民法459条)。ただ、親子の関係を考えると実際に請求するかどうかは悩ましいところです。子の借金と親の責任の関係については、子の借金を親が返す義務はあるのかもあわせてご覧ください。
よくあるご質問
子が退去を嫌がっているのに、親だけで解約を進めることはできますか。
子が借主の場合、解約を申し入れるかどうかは子が決めることなので、親の判断だけで進めることはできません。親が保証人であっても同じです。保証人の立場で負担が続くことが心配な場合は、管理会社に滞納状況を確認しつつ、子との話し合いの方法を考えることになります。子に独立を促す流れについては、子を家から独立させる具体的な手順で解説しています。
「立会いをしないと退去扱いにならない」と言われました。本当ですか。
立会いは法律上の義務ではなく、荷物を運び出して鍵を返却していれば、明渡しは済んでいると考えるのが一般的です。ただ、契約書に退去手続についての取り決めがある場合は、その内容も確認が必要です。立会いの日程が合わない場合は、日程の変更を相談するか、鍵の返却日時を記録に残したうえで、後日の精算に備えておくとよいでしょう。
親が立ち会ったら、修繕費を払う約束をしたことになりますか。
立ち会っただけで、親が費用を払う約束をしたことにはなりません。ただし、親が保証人である場合は、もともと保証の範囲で支払いの責任を負っています。また、子の代理として費用に同意する書面に署名すれば、その内容で子が負担することになりますので、署名の前に内容を確認することが大切です。
まとめ
- 退去の立会いは法律で決められた手続ではなく、契約書に定めがなければ借主にも貸主にも義務はないと考えられています。
- 連帯保証人の親は費用の支払いを保証する立場であり、立会いそのものを引き受けているわけではありません。
- 子が借主であれば、解約するかどうかを決めるのは子であり、親が代わりに手続を行うには子からの委任が必要です(民法99条)。
- 2020年4月1日以降の契約で親が保証人になる場合、極度額の定めが必要であり(民法465条の2)、保証人は滞納状況を問い合わせることができます(民法458条の2)。
- 通常損耗と経年変化は借主の負担に含まれず(民法621条)、敷金は未払い分などを差し引いて返還されます(民法622条の2)。
- 立会いの場では、部屋の状態の確認と、費用への同意を分けて考えることができます。
- 保証人として支払った分は子に求償できますが(民法459条)、親子関係を踏まえて対応を考えることになります。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、親子の問題に関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。遠方にお住まいの方からのご相談にも対応しています。
独立した子の部屋の解約や退去、保証人としての費用の請求など、子との関係を踏まえて動き方に迷われている親御さんは、一人で抱え込まずにご相談ください。子との連絡の窓口を弁護士が担うことで、親子が直接ぶつからずに手続を進められる場合があります。サービスの内容は弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応でご紹介しています。


