【日本版DBS】何年前の前科まで確認されるのか|確認対象期間

若井亮

若井亮

テーマ:刑事事件

本記事は、2026年9月時点の法令と、こども家庭庁の「こども性暴力防止法施行ガイドライン」(2026年9月2日改訂)および「こども性暴力防止法に関するQ&A」(2026年4月)をもとに作成しています。施行前の制度のため、運用の細部は今後変わることがあります。


「10年以上前の罰金も、日本版DBSで確認されるのか」「執行猶予の期間はとうに終わっているが、対象になるのか」。2026年12月25日に施行されるこども性暴力防止法(いわゆる日本版DBS)について、こうしたご相談をいただくようになりました。

 確認の対象となる期間は、拘禁刑の実刑なら20年、執行猶予と罰金なら10年と説明されることが多く、それ自体は条文どおりです(こども性暴力防止法2条8項)。ただ、この年数は事件を起こした日や逮捕された日から数えるものではありません。数え始める日(起算点)は区分ごとに異なり、実刑であれば刑の執行を終えた日です。そのため、「何年前の事件か」と「確認の対象期間に入っているか」は一致しないことがあります。本記事では、起算点の考え方を中心に、期間の数え方を整理します。

「何年前か」は事件の日ではなく起算点から数える

 日本版DBSで確認されるのは、法律が「特定性犯罪」として定めた罪で有罪の裁判が確定し、次の期間内にある人です。法律はこれを「特定性犯罪事実該当者」と呼んでいます。

区分確認の対象となる期間数え始める日
拘禁刑の実刑20年刑の執行を終えた日、または執行を受けることがなくなった日
拘禁刑の執行猶予10年裁判が確定した日
罰金10年刑の執行を終えた日、または執行を受けることがなくなった日


 事件から裁判の確定までには通常一定の時間がかかり、実刑であればさらに服役の期間が加わります。たとえば、事件の1年後に懲役3年の実刑判決が確定し、その3年後に刑期を終えた場合、確認の対象となるのは刑期満了から20年で、事件から数えると約24年になります。反対に、執行猶予や罰金で終わった事件では、事件から10年あまりで期間を過ぎていることもあります。「何年前の前科まで」という問いには、起算点を特定したうえで答える必要があります。

区分ごとの起算点の確かめ方


実刑は「刑の執行を終えた日」から20年

 実刑の起算点は、判決の日でも出所した日でもなく、刑の執行を終えた日です。仮釈放で出所した場合は、仮釈放が取り消されずに残りの刑期が満了した日が、刑の執行を終えた日とされるのが一般的な理解です。

 刑の一部の執行猶予(刑法27条の2)が付いた場合は、法律が除外しているのが「全部の執行猶予」だけであるため、10年の区分ではなく実刑と同じ20年の区分に入ります。一部執行猶予の起算日は通常の実刑より考え方が複雑になるため、個別に確かめる必要があります。

執行猶予は「裁判が確定した日」から10年

 執行猶予の起算点は裁判が確定した日で、判決を言い渡された日とは異なります。判決は、控訴をしないまま控訴期間の14日(刑事訴訟法373条)が過ぎた時点で確定するため、言渡しの日と確定日にはずれが生じます。

 執行猶予の期間(1年から5年)が無事に過ぎると、刑の言渡しは効力を失います(刑法27条)。それでも日本版DBSでは、確定日から10年が過ぎるまでは確認の対象です。「猶予期間が終わったから対象外」とはならない点には注意が必要です。一方、猶予期間中に執行猶予が取り消されて服役した場合は、執行猶予の区分から外れ、刑の執行を終えた日から20年の区分に移ります。

罰金は「刑の執行を終えた日」から10年

 罰金の起算点は、裁判が確定した日ではなく、罰金を納め終えた日などの刑の執行を終えた日です。書面の審理だけで罰金を科す略式命令も有罪の裁判であり、確定すれば同じように扱われます。罰金を納められずに労役場に留置された場合は、その留置を終えた日が起算点になると考えられます。

「執行を受けることがなくなった日」とは

 実刑と罰金の起算点には、「執行を受けることがなくなった日」も含まれています。ガイドラインは、刑の時効が完成した場合(刑法31条)や、恩赦によって刑の執行の免除などを受けた場合を挙げ、刑の執行を終えた場合と同じに扱うとしています。

事件の時期から見た期間の目安

 起算点による違いを、架空の例で比べると次のようになります。年単位の目安であり、実際には日付単位で判断されます。

事件と処分の経過数え始める日確認の対象となる期間の目安
2008年の事件で懲役3年の実刑判決が2009年に確定し、2012年に刑期満了2012年の刑期満了日2032年ごろまで(事件から約24年)
2014年の事件で執行猶予付き判決が同年に確定2014年の確定日2024年ごろまで(施行時には期間経過)
2019年の事件で略式命令による罰金を同年に納付2019年の納付日2029年ごろまで
2018年に執行猶予付き判決が確定し、2021年に猶予が取り消されて服役、2023年に刑期満了2023年の刑期満了日2043年ごろまで


 同じ「10年ほど前の事件」でも、処分の種類とその後の経過によって結論は変わります。とくに実刑の場合や執行猶予が取り消された場合は、事件の時期から想像するよりも長く期間が続くことがあります。

「刑の消滅」を過ぎていても期間内なら対象になる

 刑法には、拘禁刑の執行を終えてから罰金以上の刑を受けずに10年、罰金の執行を終えてから5年が過ぎると、刑の言渡しが効力を失う「刑の消滅」の規定があります(刑法34条の2)。一般に「前科が消える」といわれるのは、この効果のことです。

 日本版DBSの期間はこれより長く、ガイドラインも、刑の言渡しが効力を失った人についても確認できるよう、対象を「裁判が確定した者」と定めていると説明しています。刑の消滅や執行猶予期間の満了によって法律上の効果が失われていても、期間内であれば該当者として扱われます。

 また、刑の消滅には「その間に罰金以上の刑を受けていないこと」という条件がありますが、日本版DBSの期間には、条文上こうした条件は付いていません。期間は特定性犯罪の裁判ごとに数えられ、特定性犯罪の前科が複数ある場合は、最も遅く満了するものの期間が終わるまで該当者に当たると考えられます。刑の消滅と前科の記録の関係については、前科と前歴はどう違い、どこに残るのか|期間と照会される場面で整理しています。

施行前の判決や改正前の罪名はどう扱われるか

 施行日より前に確定した判決でも、施行後の確認の時点で期間内であれば対象になります。改正前の懲役の判決は拘禁刑の判決とみなされ(同法附則3条)、2023年の刑法改正前の強制わいせつ罪や強制性交等罪など、現在は名称や内容が変わった罪も対象に含まれます(同法附則2条)。都道府県の条例についても、改正前の条例で定められていた罪を対象とする経過措置が設けられています(同法施行令附則2項)。

 反対に、期間を過ぎていれば、犯罪事実確認書には「該当しない」と記載され、過去に該当者であったことも事業者には分からない仕組みです(こども家庭庁Q&A)。期間が過ぎても検察庁の記録そのものが消えるわけではないとされますが、この制度で該当者と回答されることはなくなります。なお、該当する場合に確認書に記載されるのは区分と裁判の確定日で、罪名は記載されません(同法35条4項)。

期間の計算に入らないもの

 確認の対象は、特定性犯罪で拘禁刑または罰金の裁判が確定した場合に限られます。次のようなものには、そもそも期間の考え方が当てはまりません。

  • 不起訴(嫌疑不十分・起訴猶予を含む)で終わった事件。
  • 逮捕や取調べを受けただけの前歴。
  • 少年事件で家庭裁判所の保護処分を受けた場合(刑罰ではないため)。
  • 特定性犯罪に当たらない罪の前科。


 不起訴の扱いは不起訴ならDBSに記録されないのか|こども性暴力防止法で、どの罪が特定性犯罪に当たるかは【日本版DBS】確認される『特定性犯罪』の範囲|対象になる罪・ならない罪で扱っています。

期間の満了時期と確認のタイミング

 犯罪事実確認は、新たに対象業務に就くとき、施行時にすでに就いている人の確認(義務対象の事業者では2029年12月24日まで)、その後の5年ごとの再確認という形で、繰り返し行われます。該当するかどうかは、それぞれの確認の時点で期間が続いているかによって分かれます。期間の満了が近い場合は確認の時期によって結論が異なり得るため、満了日を把握しておくことには実際上の意味があります。

 採用の場面について、ガイドラインは、採用選考の段階で特定性犯罪の前科の有無を誓約書などで確認することが適当としています。国が示す誓約書の例では、法2条8項の特定性犯罪事実該当者に当たらないことを誓約する形がとられています。つまり、問われるのは刑が消滅したかどうかではなく、この期間内にあるかどうかです。刑が消滅して履歴書の賞罰欄に書く必要がないとされる場合でも、期間内であれば「該当しない」と誓約することはできず、事実と異なる回答は、後に経歴の詐称として扱われるおそれがあります。反対に、期間を過ぎていれば、該当しない旨を誓約することに問題はないと考えられます。誓約書の文言は事業者によって異なり得るため、何を問われているのかを確かめることも大切です。すでにその職に就いている方の確認時期は、【日本版DBS】現在その職に就いている人はどうなるのか|施行後の扱いで説明しています。

ご自身の期間を確かめるために確認したいこと

 期間の満了時期を把握するには、次の点を書類で確かめるのが確実です。

  1. 罪名と適用された条文が特定性犯罪に当たるかどうか。
  2. 処分の区分(実刑・一部執行猶予・執行猶予・罰金)と、執行猶予の取消しの有無。
  3. 判決または略式命令が確定した日。
  4. 刑期が満了した日、または罰金を納め終えた日。


 判決書などの書面が手元にない場合でも、確定した刑事事件の記録は検察庁で一定期間保管されており、閲覧を請求する方法があります(刑事確定訴訟記録法4条)。起算点の特定に迷う場合や、一部執行猶予・仮釈放・執行猶予の取消しなどが絡む場合は、弁護士に相談して経過を整理することも考えられます。

よくあるご質問


20年以上前の事件でも確認の対象になることはありますか

 あり得ます。実刑の場合、期間は事件の日ではなく刑の執行を終えた日から数えるため、事件から20年以上たっていても期間内ということがあります。一方、執行猶予や罰金で終わった事件は、事件から十数年で期間を過ぎていることが多いと考えられます。

期間内に別の罪で罰金を受けると、期間は延びますか

 特定性犯罪に当たらない罪で刑を受けても、日本版DBSの期間そのものが延びるわけではありません。ただし、新たな罪をきっかけに執行猶予が取り消されれば、20年の区分に移ります。また、新たな罪が特定性犯罪であれば、その裁判についても別に期間が数えられます。刑の消滅は期間中に罰金以上の刑を受けると成立しないため、両者を混同しないよう注意が必要です。

まとめ


  • 日本版DBSの確認対象期間は、実刑が20年、執行猶予と罰金が10年です(こども性暴力防止法2条8項)。
  • 期間は事件の日からではなく、実刑と罰金は刑の執行を終えた日から、執行猶予は裁判が確定した日から数えます。
  • 執行猶予の期間が満了していても確定日から10年が過ぎるまでは対象で、猶予が取り消されれば20年の区分に移ります。
  • 刑の消滅の後でも期間内であれば対象となり、施行前に確定した判決や改正前の罪名も含まれます。
  • 期間を過ぎれば確認書には「該当しない」と記載され、過去に該当者であったことは事業者に伝わりません。


 「何年前か」という問いへの答えは、判決の種類とその後の経過をたどらなければ出てきません。書類で起算点を確かめ、期間の満了時期を把握しておくことが、確認を受ける場面で落ち着いて判断するための出発点になります。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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