「恋愛感情ではなかった」と主張したい|目的要件を欠く場合
本記事は2026年10月時点の法令(2025年12月30日施行の改正ストーカー規制法を含む)をもとに、元恋人のSNSを見ている側の立場から解説しています。
「別れた相手のSNSを、ついのぞいてしまう。これだけでストーカーになるのでしょうか」。刑事事件のご相談のなかで、このような質問を受けることがあります。反対に、元恋人の投稿を見られている気配があり、気味が悪いというご相談もあります。
インターネット上では「公開されている投稿を見るだけなら違法ではない」と説明されることが多く、その説明自体は誤りではありません。ただ、見ていることが相手に伝わる形になっていないか、どのような手段で見ているか、見た内容をもとに何をしているかによって、法的な評価が変わる場面があります。
この記事では、元恋人のSNSを見ている側の立場から、ストーカー規制法などの刑事の観点で、どこまでが法律の対象にならず、どこから問題になり得るのかを整理します。投稿された側の対応や、見た内容をもとに連絡をしてしまった場合の詳しい扱いは、それぞれの関連記事に委ねます。
公開されている投稿を見ること自体は、規制の対象に含まれていない
ストーカー規制法が規制しているのは、列挙された「つきまとい等」
ストーカー規制法は、恋愛感情その他の好意の感情や、それが満たされなかったことによる怨恨の感情を満たす目的で行われる一定の行為を「つきまとい等」として列挙しています(ストーカー規制法2条1項)。つきまといや待ち伏せ、監視していると思わせる事項を告げること、面会や交際の要求、拒まれたにもかかわらず連続してメッセージを送ることなどがこれにあたります。
誰でも閲覧できる状態で公開されている投稿を、相手に知られないまま自分の端末で見るという行為は、この列挙のどれにもあたりません。公開投稿の閲覧は、相手に何かを伝えたり働きかけたりする行為ではないため、それだけでストーカー規制法の対象になるわけではありません。見る回数が多いことや、毎日見ていることも、それだけで評価が変わるものではありません。
相談の現場でも、同じ疑問が繰り返し寄せられている
弁護士ドットコムにも、元配偶者や知人のSNSを足跡がつかないように見ていたところ「監視しているだろう、ストーカーだ」と言われた、ブロックされた後も別のアカウントで投稿を見ていた、といった相談が寄せられています。いずれも、相手に直接メッセージを送ったり書き込んだりはしていないという事情が添えられており、「見るだけ」で罪になるのかという不安が広く共有されていることがうかがえます。
法律事務所の解説でも、公開された投稿の閲覧だけで違法となることは通常ないとしたうえで、見ていることを告げる、ブロック後に別のアカウントで近づく、非公開の情報に手を伸ばすといった事情が加わると評価が変わり得る、と整理されているものが多く見られます。次の章からは、その「評価が変わる場面」を順に見ていきます。
見ていることが相手に伝わると、評価が変わることがある
「監視していると思わせる事項を告げる」行為
つきまとい等の一つに、相手の行動を監視していると思わせるような事項を告げたり、相手が知り得る状態に置いたりする行為があります(ストーカー規制法2条1項2号)。たとえば、元恋人の投稿で知った外出先や一緒にいた人について、「昨日〇〇にいたよね」「新しい職場はどう」とメッセージを送ることが考えられます。
また、相手が見ることを想定して、元恋人の投稿内容をなぞるような書き込みを自分のSNSに繰り返すことも、内容によっては相手が知り得る状態に置く行為と評価される余地があります。問題になるのは「見たこと」そのものではなく、見て得た情報を相手に伝わる形で示すことです。
足跡や閲覧履歴が残った場合はどう考えるか
InstagramのストーリーのようにSNSの仕組みとして閲覧者が相手に表示される機能では、見ただけで相手に知られることがあります。ただ、通常の閲覧で自動的に表示される足跡が一度ついたというだけで、監視していると思わせる事項を告げたと評価されることは考えにくいところです。
一方で、相手がブロックや非表示で拒んでいることが明らかなのに、別のアカウントを使って閲覧を続け、あえて足跡を残して存在を知らせ続けるような場合には、事情全体から評価が変わる可能性があります。足跡は法律上の行為類型として明記されているものではないため、どのような経緯で、どの程度繰り返されたかという個別の事情によって判断が分かれます。
処罰の対象になるのは「反復」と「目的」がそろったとき
つきまとい等にあたる行為があっても、一度きりであれば直ちに処罰されるわけではありません。同じ相手に対して、つきまとい等を繰り返すことを「ストーカー行為」といい(同法2条4項)、これが処罰の対象になります(同法18条)。もっとも、反復に至る前の段階でも、警察が警告を出したり、公安委員会が禁止命令を出したりすることがあります(同法4条、5条)。
あわせて、好意の感情やそれが満たされなかったことへの怨恨を満たす目的が必要とされています。別れた元恋人に対する行為は、この目的があるとみられやすい関係にあたります。なお、東京都の迷惑防止条例は、ねたみや恨みなどの悪意を満たす目的で行われる同様の行為も禁止しています(東京都迷惑防止条例5条の2)。連絡が1回だった場合の考え方は、連絡は1回だけだった|つきまとい等とストーカー行為の違いで詳しく解説しています。
見る手段によっては、ストーカー規制法とは別の問題になる
元恋人のIDとパスワードでログインして見る
交際中に教えてもらったIDやパスワードを使って、別れた後に元恋人のアカウントへログインし、メッセージや非公開の投稿を見る行為は、不正アクセス禁止法で禁止されている不正アクセスにあたる可能性があります(不正アクセス禁止法3条、11条)。交際中に本人から教えられていたとしても、別れた後もログインしてよいという承諾が続いているとはいえないのが通常です。
「見ているだけ」であっても、ログインという手段を使った時点で、公開投稿の閲覧とはまったく別の評価になります。アカウントの設定を変える、メッセージを消すといった操作をすれば、さらに別の問題が生じることもあります。
ブロックされた後に別のアカウントで見る
ブロックされた後に別のアカウントを作り、公開されている投稿を見ることそのものは、それだけでストーカー規制法のつきまとい等にあたるわけではありません。ただし、ブロックは相手が関わりを拒んでいるという意思表示とみられるため、その後に別のアカウントからフォローを申請したり、メッセージを送ったりすると、拒まれたにもかかわらず連絡を続けたものとして扱われやすくなります。
元恋人本人や共通の知人になりすましたアカウントで近づく場合には、利用規約違反にとどまらず、なりすまし行為そのものが別の問題を生むこともあります。なりすましについてはなりすましアカウントを作った|どんな罪に問われるかで取り上げています。
見た情報を手がかりに、現実の行動に移す
投稿の写真や位置情報から元恋人の住まいや勤務先、よく行く店を割り出し、その付近に行く、待つ、うろつくといった行動に移すと、つきまといや見張り、うろつきといったつきまとい等そのものにあたる可能性があります(ストーカー規制法2条1項1号)。
情報を調べること自体は直ちに違法ではなくても、それをもとに会いに行く、連絡するという行動に移した段階で評価が大きく変わります。SNSの閲覧をきっかけに位置情報まで追うようになった場合の扱いは、GPS・AirTagで居場所を追跡された|改正ストーカー規制法と位置情報無承諾取得の罪もあわせてご覧ください。
行為ごとに見た評価の目安
ここまでの内容を、行為ごとに整理すると次のようになります。いずれも目安であり、実際の評価は経緯や回数、相手との関係によって変わります。
| 行為 | 考えられる評価 |
|---|---|
| 公開されている投稿を、相手に知られずに見る | それだけでは法律の対象にならないことが多い |
| 足跡が自動的に一度ついた | それだけで監視を告げたとはいいにくい |
| 投稿で知った行動や居場所に触れるメッセージを送る | 監視していると思わせる事項の告知にあたる可能性(ストーカー規制法2条1項2号) |
| ブロック後に別のアカウントからフォロー申請やメッセージを続ける | 拒まれた後の連続した連絡として扱われる可能性(同項5号) |
| 元恋人のIDとパスワードでログインして見る | 不正アクセス禁止法違反の可能性 |
| 投稿から割り出した場所に行く、待つ | つきまといや見張りにあたる可能性(同項1号) |
「ストーカーだ」と言われたとき、警察から連絡が来たとき
弁解や謝罪の連絡を重ねないことが先決
元恋人から「SNSを見ているでしょう」「ストーカーとして警察に相談する」と言われると、誤解を解こうとして長いメッセージを送りたくなるかもしれません。しかし、相手が関わりを拒んでいる状況で連絡を重ねると、その連絡自体が新たなつきまとい等として扱われるおそれがあります。
まずは連絡を止め、相手のアカウントを見ることもいったんやめることが、ご自身を守るうえでも現実的な対応です。これまで閲覧だけにとどめていたのであれば、その事実が分かる状態を保ったまま、それ以上の行動を加えないことが大切です。相手からの連絡やご自身の送信履歴は、消さずに残しておきます。
警察からの連絡や警告への向き合い方
2025年12月30日に施行された改正ストーカー規制法により、警察は被害者からの申出がなくても警告を出せる仕組みが設けられました。そのため、元恋人が正式に申し出ていない段階でも、警察から事情を聞かれたり、警告を受けたりすることがあり得ます。
警告を受けたこと自体は刑罰ではなく、前科がつくものでもありませんが、その後も同じ行為を続ければ禁止命令や検挙につながることがあります。警告の位置づけについては警察から「警告」を受けた|前科はつくのか、次に何が起きるのかで、SNSでのメッセージが問題になる場合の流れはSNS・LINEの執拗な連絡はストーカーになる?警告・禁止命令の流れで解説しています。閲覧以外に何をしていたかによって見通しが大きく変わるため、警察から連絡が来た段階で弁護士に相談し、どこまでの行為をしていたのかを整理しておくことをおすすめします。
よくあるご質問
元恋人の鍵のかかっていない投稿を毎日見ています。何回見たら問題になりますか?
閲覧の回数によって違法かどうかが決まるわけではありません。相手に知られない形で公開投稿を見ているだけであれば、毎日見ていても、それだけでストーカー規制法の対象になるとはいえません。問題になるのは、見て知った内容を相手に伝える、連絡する、会いに行くといった行動が加わった場合です。
ストーリーに足跡がついてしまいました。ストーカーとして扱われますか?
通常の閲覧で自動的に足跡が一度ついたというだけで、ストーカーとして扱われることは考えにくいところです。ただ、ブロックされた後に別のアカウントで見続けて足跡を残し続けるなど、相手の拒絶を知りながら存在を知らせ続けるような経緯があると、評価が変わる可能性があります。気になる場合は、まず閲覧をやめることが安全です。
元恋人から「もうSNSを見ないで」と言われました。従う必要はありますか?
公開されている投稿を見ないという法律上の義務が、その一言で直ちに生じるわけではありません。もっとも、相手がはっきり拒んでいる以上、その後に閲覧を手がかりとした連絡や行動があれば、拒まれた後の行為として厳しく見られます。トラブルを大きくしないためには、閲覧もやめ、相手から距離を置くのが現実的です。
まとめ
- 公開されている投稿を相手に知られずに見ることは、それだけではストーカー規制法の「つきまとい等」にあたらない(ストーカー規制法2条1項)。
- 投稿で知った行動や居場所を相手に伝える形で示すと、監視していると思わせる事項の告知にあたる可能性がある(同項2号)。
- 処罰の対象となるストーカー行為は、同じ相手へのつきまとい等の反復が前提となる(同法2条4項、18条)。
- 反復に至る前でも、警告や禁止命令の対象になることがあり、改正により申出がなくても警告が出せるようになった(同法4条、5条)。
- 元恋人のIDとパスワードでログインして見る行為は、不正アクセス禁止法違反となる可能性がある(不正アクセス禁止法3条、11条)。
- ブロック後の別アカウントからのフォロー申請やメッセージは、拒まれた後の連続した連絡として扱われやすい(ストーカー規制法2条1項5号)。
- 「ストーカーだ」と言われたら、弁解の連絡を重ねず、閲覧もやめて、それまでの経緯を整理したうえで弁護士に相談する。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、刑事事件や男女間のトラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。元恋人から「SNSを見ているのはストーカーだ」と言われた方、警察から連絡や警告を受けた方は、これまでにどのような行為をしていたのかを一緒に整理するところから始めます。
元恋人に投稿を見られているようで不安を感じている方からのご相談にも対応しています。どちらの立場でも、早い段階でご相談いただくことで、取れる選択肢が広がります。


