【ストーカートラブル】同性からのつきまとい|規制法の対象になるか

若井亮

若井亮

テーマ:ストーカートラブル

この記事は、2026年10月8日時点の法令に基づいて作成しています。ストーカー規制法は、令和7年12月30日施行の改正(紛失防止タグを用いた位置情報の取得等の規制、職権による警告の創設、勤務先・学校を援助の主体に追加など)を反映しています。刑罰は、令和7年6月1日以降の「拘禁刑」の表記によっています。迷惑防止条例は東京都の条例を例としており、他の道府県では内容が異なる場合があります。


「同じ部署の女性の先輩から、休日の行き先まで聞かれ、断ると家の近くで待たれるようになった」「学生時代の男友達から、毎日のように連絡が来て、返さないと責める内容のメッセージが続く」。ストーカー被害のご相談の中には、このように相手が同性であるものが一定数あります。

 こうしたご相談では、「同性だから、ストーカーとは扱ってもらえないと思っていた」「警察に行ったが、恋愛ではないなら難しいと言われた」というお話を伺うことがあります。ストーカー規制法が男女間の問題として語られることが多いのは事実であり、恋愛感情の有無が問題になるという説明も、それ自体は誤りではありません。ただ、この2つの話が一緒になると、本来使えるはずの手段まで見送られてしまうことがあります。

 この記事では、同性からのつきまといがストーカー規制法の対象になるのかを、条文の要件から整理します。あわせて、同性間の事案で判断が難しくなりやすい場面と、規制法の対象にならない場合に検討できる手段を説明します。SNSやメッセージの連絡が続く場合の警告・禁止命令の流れや、証拠の残し方の詳細は、それぞれの記事に譲ります。

同性からのつきまといも規制法の対象になる

条文は行為者と相手方の性別を限定していない

 ストーカー規制法は、「つきまとい等」を、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で行う一定の行為と定めています(ストーカー規制法2条1項)。

 この定義には、行為者と相手方の性別についての限定がありません。同性間の事案であっても、目的の要件と行為の要件を満たせば、警告や禁止命令、刑事処罰の対象になります。同性からのつきまといであることを理由に、規制法の対象から外れるわけではありません。

「その他の好意の感情」が指す範囲

 条文は「恋愛感情」に限らず、「その他の好意の感情」も目的として挙げています。そのため、交際を求めるような感情でなくても、特定の人と親しくありたい、特別な関係でいたいといった感情に基づく行為が、要件を満たすと判断される場合があります。

 また、好意が満たされなかったことに対する恨みの感情も目的に含まれます。親しかった相手から距離を置かれたことをきっかけに、責める連絡や待ち伏せが始まったという経過は、同性間の事案でもよく見られるものです。

規制の対象となる行為と「ストーカー行為」

 「つきまとい等」には、つきまといや待ち伏せ、住居や勤務先付近での見張り・うろつき、面会や交際の要求、拒まれた後の連続した電話やメッセージの送信、名誉を害する事項の告知などが含まれます(同法2条1項各号)。承諾のないGPS機器や紛失防止タグによる位置情報の取得等も、別に規制されています(同法2条3項)。

 これらを同じ相手に対して繰り返すと「ストーカー行為」となり、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象になります。1回の連絡と、繰り返された行為とで扱いが異なる点は、連絡は1回だけだった|つきまとい等とストーカー行為の違いで整理しています。

分かれ目は性別ではなく「目的」にある

友人・先輩後輩など、親しい関係から始まった執着

 同性間の事案では、相手が元交際相手ではなく、友人、職場の先輩や後輩、趣味の仲間といった関係にあることが少なくありません。そのため、相手の感情が「好意」なのか、単なる交友関係上の不満なのかが、外から見て分かりにくくなります。

 もっとも、他の人との交友を責める、行動を逐一報告させようとする、距離を置こうとすると強く反発するといった事情は、特定の相手との関係にこだわる感情をうかがわせる事情として評価されることがあります。関係の名前ではなく、相手がどのような感情からその行為をしているのかが、規制法の適用を考える出発点になります。

ねたみや対抗心から始まった場合

 一方で、仕事上の対立、金銭の貸し借り、ねたみや対抗心などから嫌がらせが始まった場合には、恋愛感情その他の好意の感情を充足する目的とはいえず、規制法の対象にならないことがあります。この点は異性間の事案でも同じです。

 ただし、「何に対する恨みなのか」によって結論が変わります。親しい関係を断られたことへの恨みであれば規制法の目的に含まれうる一方、仕事上の評価や金銭をめぐる争いへの恨みであれば対象外となりうる、という違いです。

目的は外形的な事情から判断される

 相手の内心は外から確かめられないため、目的は、二人の関係、これまでのやり取りの内容、行為の態様といった外形的な事情から判断されます。相談する側が、相手の目的を言い当てて説明する必要はありません。

 警察に相談するときは、「同性だから」「恋愛ではないから」と先に自分で結論を出さず、関係の経過と、届いたメッセージの文面などをそのまま示すことが大切です。目的の要件をめぐる考え方は、主張する側の視点から「恋愛感情ではなかった」と主張したい|目的要件を欠く場合でも解説しています。

同性間の事案で相談をためらわせるもの

「同性だから対象外」と受け取られたとき

 相談の場で、同性間であることを理由に対応が難しいと受け取れる説明を受けた場合でも、それだけで諦める必要はありません。前述のとおり、規制法は性別を要件としていないため、問題になるのは目的と行為の内容です。

 説明を受けた内容を記録しておき、規制法の要件のどこが満たされないと判断されたのかを確認すると、次に何を補えばよいかが見えてきます。

性的指向やご自身の事情をどこまで伝えるか

 相手との関係が交際関係であった場合や、相手の好意の性質を説明しようとする場合、ご自身の性的指向やプライベートな事情に触れざるを得ないことがあります。周囲に知られたくない事情であれば、相談をためらうのは自然なことです。

 警察官を含む公務員には職務上知った秘密を守る義務があり(地方公務員法34条)、弁護士にも守秘義務があります(弁護士法23条)。どこまで話すかはご自身で選べますが、目的の要件を判断するうえで関係の経過が重要になることは、知っておいていただきたい点です。

秘密を明かすと告げられている場合

 同性間の事案では、相手が、性的指向や交際の事実など、本人が周囲に明かしていない事柄を職場や家族に伝えると告げてくることがあります。

 こうした告知は、内容や状況によっては、名誉を害する事項の告知としてつきまとい等に当たる可能性や、脅迫罪(刑法222条)の検討対象になる可能性があります。実際に周囲に伝えられた場合には、プライバシーの侵害として損害賠償を求めることも考えられます。告げられた日時と文面は、削除せずに保存しておいてください。

規制法の対象にならない場合に検討できる手段

東京都の迷惑防止条例と「悪意の感情」

 東京都の迷惑防止条例は、ねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的で、不安を覚えさせるような方法でつきまとい等をすることを禁止しています(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例5条の2)。

 規制法と条例とでは、対象となる目的が次のように異なります。

項目ストーカー規制法東京都迷惑防止条例5条の2
対象となる目的恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことへの怨恨ねたみ、恨みその他の悪意の感情
行為者・相手方の性別限定なし限定なし
警告・禁止命令あり(職権による警告も可能)規制法と同様の行政上の措置は置かれていない


 同性の友人や同僚からの嫌がらせが、ねたみや対抗心から始まっている場合には、規制法ではなく条例の問題として相談することで、検討が進むことがあります。

刑法上の犯罪や軽犯罪法

 行為の内容によっては、規制法や条例とは別に、次の法律に当たる可能性があります。

  • 害を加える旨を告げられた場合の脅迫罪(刑法222条)。
  • 社会的評価を下げる事実を広められた場合の名誉毀損罪(刑法230条)。
  • 敷地や建物に無断で立ち入られた場合の住居侵入罪(刑法130条)。
  • 持ち物を壊された、汚された場合の器物損壊罪(刑法261条)。
  • 不安や迷惑を覚えさせるような仕方でつきまとわれた場合の軽犯罪法違反(軽犯罪法1条28号)。


 背景に人間関係のこじれがあっても、現に行われている行為が犯罪に当たるかどうかは別の問題です。相談の際は、関係の経緯と、実際に受けている行為とを分けて伝えると、伝わりやすくなります。

弁護士からの通知と民事上の手段

 弁護士が代理人として、相手に連絡と接触をやめるよう求める書面を送ることは、規制法が適用されるかどうかにかかわらず行うことができます。相手が知人や同僚である場合には、本人同士が直接やり取りせずに済む点にも意味があります。

 接触が続く場合には、裁判所に対し、接近や連絡を禁止する仮処分を申し立てる方法もあります(民事保全法23条2項)。警察による手続と裁判所による手続の使い分けは、接近禁止を実現する2つの道|ストーカー規制法(警察)と民事保全(裁判所)の使い分けで説明しています。精神的な苦痛については、損害賠償を求めることも考えられます(民法709条、710条)。

同居していた同性パートナーからのつきまとい

DV防止法が使える場合がある

 生活の本拠を共にする交際関係にあった相手からの暴力については、DV防止法の保護命令の規定が準用されます(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律28条の2)。この規定も、条文上は当事者の性別を限定していません。

 同居していた同性のパートナーから、別れた後に暴力や脅しを受けている場合には、ストーカー規制法とDV防止法のどちらが使えるかを検討することになります。両者の違いはストーカー規制法とDV防止法の違い|自分のケースはどっちで守られる?で整理しています。

住まいや財産の清算が絡む場合

 同居していた場合、家財や預けた物の返還、家賃の精算といった用件が残り、それを理由に連絡が続くことがあります。用件があること自体は不自然ではありませんが、清算の話と接触の問題を同じ場で扱うと、連絡を断つきっかけを失いやすくなります。

 清算は弁護士を窓口として進め、本人同士の連絡は止めるという形にすることで、用件を片付けながら接触を減らすことができます。

相談に向けて整理しておくこと

関係の経過と行為を時系列で記録する

 目的の要件が問題になりやすい同性間の事案では、行為そのものだけでなく、関係がどのように変わってきたかの記録が判断材料になります。知り合ったきっかけ、距離を置こうとした時期、その前後で相手の連絡がどう変わったかを、日付とともにまとめておくと役立ちます。

 メッセージは画面を撮影するなどして、相手の名前と日時が分かる形で残してください。相手を刺激しない形で連絡を断つことと、記録を残すことは並行して進められます。具体的な進め方はストーカーを刺激せず関係を断つ|安全な接触遮断と証拠の残し方をご覧ください。

勤務先や学校の協力を求める

 令和7年12月30日施行の改正により、被害者を雇用する事業者や、被害者が通う学校の長が、被害者への援助に努める主体に加えられました。相手が同じ職場や学校にいる場合には、勤務場所や時間の配慮、名簿や掲示物への氏名掲載の見直しなどを相談できることがあります。

 職場に相談する際に、どこまでの事情を伝えるかは、事前に整理しておくと安心です。相手が客や取引先である場合の会社の対応については、【ストーカートラブル】職場や店舗で客からつきまとわれる|従業員を守るために会社ができることもあわせてご覧ください。

よくあるご質問

相手は同性の友人で、恋愛感情があるかは分かりません。それでも相談できますか。

 ご相談いただけます。目的は、関係の経過や行為の態様といった外形的な事情から判断されるものであり、相談する側が相手の内心を特定する必要はありません。規制法の対象にならない場合でも、迷惑防止条例や刑法上の犯罪、弁護士からの通知といった別の手段を検討できます。

警察に相談すると、相手や周囲に自分の事情が伝わりますか。

 警察官には職務上の守秘義務があり、相談の内容がそのまま周囲に広まるものではありません。ただし、警告や禁止命令の手続に進む場合には、相手に対して一定の事実が示されることになります。どこまでの対応を求めるかは、相談の段階で確認しながら決めることができます。

同性の元交際相手から連絡が続いています。DV防止法とストーカー規制法のどちらを使うのですか。

 同居していたかどうか、暴力や脅しがあったかどうかによって異なります。同居していた交際相手からの暴力であればDV防止法の保護命令を、同居していない場合や連絡・待ち伏せが中心である場合にはストーカー規制法を検討するのが一般的です。両方を視野に入れて検討することもあります。

まとめ


  1. ストーカー規制法の「つきまとい等」の定義には性別の限定がなく、同性からの行為も対象になる(ストーカー規制法2条1項)。
  2. 対象になるかの分かれ目は、恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことへの怨恨という「目的」にある(同法2条1項)。
  3. 目的は、関係の経過やメッセージの内容などの外形的な事情から判断され、相談する側が相手の内心を特定する必要はない。
  4. 令和7年12月30日施行の改正で、被害者の申出がなくても警察が職権で警告できるようになった(同法4条)。
  5. ねたみや恨みから始まった嫌がらせは、東京都の迷惑防止条例の対象になりうる(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例5条の2)。
  6. 行為の内容によっては、脅迫罪(刑法222条)、名誉毀損罪(同法230条)、軽犯罪法違反(軽犯罪法1条28号)なども検討できる。
  7. 同居していた同性パートナーからの暴力にはDV防止法の準用規定があり、接近禁止の仮処分という民事上の手段もある(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律28条の2、民事保全法23条2項)。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、ストーカー被害に関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。相手が同性の友人や同僚であるために、どこに相談すればよいか分からないという段階でも、関係の経過を伺いながら、使える手段を一緒に整理します。

同性からのつきまといや執拗な連絡に悩んでいる方、警察で対応が難しいと言われて次の手段を探している方は、一人で抱え込まずにご相談ください。弁護士が窓口となることで、相手と直接やり取りをせずに対応を進めることができます。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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