相手が18歳未満だった|「知らなかった」は通用する?児童買春・児童ポルノ禁止法
この記事は、2026年10月時点の民法・消費者契約法・弁護士法の規定をもとに、風俗店を利用した客の側が、店から「女性が辞めたのはあなたのせいだ」として金銭を求められた場面を整理したものです。結論は個別の事情によって変わります。
風俗店を利用した後、店から「あなたのせいで女の子が辞めた。店の損害の責任を取ってほしい」と連絡を受けることがあります。在籍していた女性の売上を何か月分も示され、数十万円から百万円を超える金額を求められる例も見られます。
突然このように言われると、自分の行動が原因なら払うしかないと考えてしまうかもしれません。しかし、女性が退店したという事実と、その損害を客が負担しなければならないかどうかは、別の問題です。この記事では、店が求めているお金の中身を分けて考え、払う前に確かめておきたい点を順に説明します。
「退店の責任」として求められているお金の中身
「退店した責任を取れ」という請求は、多くの場合、性質の異なる次のような損害をまとめたものです。
- 女性が在籍していれば店に入ったはずの売上。
- 代わりの女性を募集・採用するための広告費などの費用。
- 女性本人が受けた精神的な苦痛や、働けなくなった期間の収入。
このうち、はじめの2つは店自身の損害、3つ目は女性本人の損害です。店はこれらを区別せず、「責任」「罰金」「迷惑料」といった言葉でひとまとめに示すことが少なくありません。誰のどのような損害を求められているのかを分けて捉えることが、対応を考える出発点になります。
店自身の損害を客に求められる場面は限られる
不法行為による賠償の基本
客に賠償を求めるには、民法709条の不法行為として、客の違法な行為があったこと、損害が生じたこと、その行為と損害との間に相当な因果関係があることを、請求する側が示す必要があります。「女性が辞めた」という結果があるだけでは足りず、客の行為が原因であり、その行為から退店に至ることが通常予想される範囲のものだったかが問われます。
女性が害されたことによる店の損害は「間接損害」
女性本人が被害を受け、その結果として店の売上が減ったという損害は、法律上間接損害と呼ばれる類型にあたります。従業員がけがをしたことによる会社の減収について、最高裁昭和43年11月15日判決は、会社が実質的に個人と一体であるような特別な関係がある場合に賠償を認めた例として知られています。一般には、直接の被害者ではない事業者の損害が賠償の対象になる場面は限られると考えられています。
また、風俗店と女性との関係は雇用ではなく業務委託の形をとることが多く、いつ辞めるかは女性本人が決めることです。退店の理由も、体調、家庭の事情、店の待遇、他店への移籍などさまざまで、客とのトラブルだけが理由とは限りません。こうした事情から、店の売上の減少分をそのまま客に負担させるという主張は、法的には通りにくい面があります。
退店までの経緯を確かめる
因果関係を考えるうえでは、退店までの経緯も手がかりになります。トラブルから退店までにどれくらいの期間があいているか、女性が以前から辞める意向を示していなかったか、店のホームページに女性の在籍表示がまだ残っていないかといった点です。そもそも本当に退店したのかを客の側から確かめる手段は限られるため、店の説明だけを前提に話を進めないことが大切です。
金額の根拠も請求する側が示すもの
仮に何らかの損害が認められる場合でも、金額は店の言い値で決まるものではありません。「月の売上〇万円×〇か月」という計算が示されても、その売上から女性に支払うはずだった報酬や経費が差し引かれているか、代わりの女性が入るまでにどれくらいの期間を見込むのが妥当かなど、検討すべき点は多くあります。帳簿や出勤記録などの裏付けがないまま示された金額を、そのまま受け入れる必要はありません。
女性本人の損害は別に考える
一方で、客の行為によって女性本人が傷ついた場合には、本人に対する責任が生じることがあります。たとえば、禁止されている行為を強いた、強い言葉を浴びせた、本名や住所を調べて接触した、店の外で待ち伏せしたといった事情があれば、精神的な苦痛に対する慰謝料や、働けなくなった期間の収入(休業損害)が問題になり得ます。
ただし、この場合も請求できるのは女性本人であり、金額は行為の内容や被害の程度に応じて決まります。働けなかった期間や収入についても、資料による裏付けが必要です。退店したことそのものを理由に、将来にわたる収入をすべて求められるわけではありません。請求項目ごとの考え方は治療費・検査費・休業損害は認められるのか|請求項目別の検討で、強い言葉を向けたことを理由とする請求については【風俗トラブル】女性への暴言を理由に店から請求された場合は?で詳しく説明しています。
また、店が女性本人の分まで交渉し、示談金を受け取ろうとする場合には、弁護士でない者が報酬を得る目的で他人の法律事務を扱うことを禁じた弁護士法72条との関係も問題になります。誰が誰の立場で請求しているのかは、話をまとめる段階で重要な確認事項です。
規約に「退店させたら〇万円」とある場合
店のホームページや利用規約に「女性が退店した場合は〇〇万円を請求します」といった定めが置かれていることがあります。こうした定めは、損害賠償額の予定(民法420条)や違約金の約束として扱われますが、まず、利用前に客に示され、合意の内容になっていたかが問題になります。
さらに、客と店との契約には消費者契約法が適用されるため、消費者の利益を一方的に害する条項(同法10条)にあたる場合や、公序良俗(民法90条)に反する場合には、効力が否定されたり制限されたりする余地があります。規約の効力については損害賠償額の予定(民法420条)は風俗の規約でも有効かと【風俗トラブル】店から『うちの規約では』と言われた|規約の効力を確かめる順序をご覧ください。
なお、店が「罰金」という言葉を使っても、私人が刑罰としての罰金を科すことはできません。名目にかかわらず、実際の損害があるかどうかで考えることになります。この点は「罰金」を請求された|私人が罰金を科すことはできないでも説明しています。
名目ごとの整理
| 店が示す名目 | 請求できる立場 | 主に確かめる点 |
|---|---|---|
| 女性が辞めた分の売上 | 店 | 客の行為と退店との因果関係、間接損害として認められる特別な事情があるか、金額の裏付け |
| 求人広告費・採用費 | 店 | 退店との因果関係、実際に支出したか |
| 慰謝料 | 女性本人 | どのような行為があったか、被害の程度 |
| 休業損害 | 女性本人 | 働けなかった期間と収入を示す資料 |
| 規約上の違約金・罰金 | 店 | 利用前に示され合意していたか、消費者契約法などで制限されないか |
請求を受けたときに気をつけたいこと
その場で払わず、書面にも署名しない
店から強く求められても、その場で支払ったり、金額を書いた念書や示談書に署名したりすることは控えたいところです。一度支払いや署名をすると、後から金額を争うことが難しくなるほか、「まだ損害がある」として追加の請求につながることもあります。
内訳と根拠を書面で示してもらう
請求額については、店の損害と女性本人の損害を分けた内訳と、その根拠となる資料を書面で示してもらうよう求めることが考えられます。金額が連絡のたびに変わる場合の向き合い方は【風俗トラブル】請求額が連絡のたびに増えていく|金額が動く請求への向き合い方で整理しています。
伝え方にも注意を向ける
「払わなければ家族や職場に伝える」などと告げられた場合、伝え方によっては脅迫罪や恐喝罪が問題になることがあります。こうした言葉を受けても、すぐに要求に応じる必要はありません。やり取りは通話の録音やメッセージの保存によって残しておくと、後の交渉で役立ちます。
解決するなら当事者と条項を整える
実際には、店の損害と女性本人の損害をまとめて一つの解決金とし、示談で終えることも少なくありません。その場合は、店だけでなく女性本人も当事者として合意しているか、示談書に定めた以外の請求をしないという清算条項が入っているかを確認することが大切です。条項の考え方は風俗トラブルの示談書に必ず入れる6条項|抜けると後で効かないで説明しています。
弁護士が窓口になると変わること
弁護士が代理人として入ると、店との連絡は弁護士を通じて行うことになり、ご本人が直接やり取りする負担が軽くなります。請求の中身を店の損害と女性本人の損害に分け、根拠のある部分とない部分を整理したうえで交渉を進められる点も大きな違いです。ご自身で交渉するか弁護士に任せるかの判断材料は【風俗トラブル】店との交渉を自分でするか弁護士に任せるか|分かれ目になる5つの事情に、周囲に知られずに進めるための考え方は家族・職場に知られずに風俗トラブルを解決する方法|弁護士が解説にまとめています。
まとめ
- 「退店の責任」という請求には、店自身の損害と女性本人の損害が混ざっていることが多いです。
- 女性が害されたことによる店の売上の減少は間接損害にあたり、客に負担を求められる場面は限られると考えられています。
- 女性本人に対する慰謝料や休業損害は別に問題になり得ますが、金額は行為の内容と資料によって決まります。
- 規約に定められた金額も、合意の有無や消費者契約法などによって効力が制限されることがあります。
- その場で支払いや署名をせず、内訳と根拠を確かめてから対応を考えることが大切です。
女性が辞めたことを理由とする請求は、言葉の強さに比べて、法的な裏付けが整っていないことも少なくありません。一方で、ご自身の行為によって女性本人に負担をかけた部分があるなら、その範囲で誠実に向き合うことが、結果として早い解決につながります。どこまでが応じるべき部分なのかを見極めるためにも、早めに専門家の意見を聞いてみてください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


