【風俗トラブル】女性にケガをさせたと言われて治療費を請求されたら?
この記事は、2026年10月時点の法令(2023年7月施行の改正刑法による不同意性交等罪、2025年6月施行の拘禁刑など)を前提に、利用者(客)側の立場から解説しています。
デリバリーヘルスやホテヘルを利用した直後、キャストが店に連絡を入れ、ほどなくしてボーイやドライバー、店長が部屋に入ってくる。こうした状況についてのご相談は少なくありません。「本番をされたと言っている」「撮影していたのではないか」と告げられ、その場で話をまとめるよう求められると、早く終わらせたい気持ちから相手の言うとおりにしてしまう方もいます。
結論から申し上げると、部屋の中で相手の話を聞くこと自体は避けにくい場面もありますが、金額や責任の有無を「その場で決める」話し合いは、できる限り控えた方がよいと考えます。この記事では、その理由と、部屋の中で伝えてよいこと・控えた方がよいこと、部屋を出た後の動き方を順に整理します。
行為の直後に店側が部屋に来るのはどんな場面か
店のスタッフが部屋に来るきっかけは、多くの場合、キャストからの連絡です。キャストが「禁止されている行為をされた」「同意していない」「スマートフォンで撮影されたかもしれない」などと店に伝え、待機していたドライバーや近くにいる店長が駆けつける、という流れがよく見られます。店舗型の店では、部屋ではなく店の事務所に呼ばれることもあります。
このとき店側からは、事実の確認というより、謝罪、身分証の提示、念書や示談書への署名、示談金の支払いなどを、続けて求められることが少なくありません。相手が複数で、しかも密室にいるため、利用者の側は冷静な判断がしにくい状況に置かれます。
その場で「決める」話し合いを控えた方がよい理由
事実が整理されないまま、金額だけが決まりやすい
部屋の中では、何があったのか、どこまでが争いのない事実なのかが整理されないまま、話が「いくら払うか」に移りがちです。本当に禁止行為があったのか、あったとしても同意があったのかどうかは、本来、慎重に確かめるべき事柄です。その確認を飛ばして金額だけが決まると、後から内容を見直すのに手間がかかります。
店はキャスト本人と同じ立場ではない
性的な行為をめぐって損害を受けたと主張できるのは、基本的にはキャスト本人です。店が独自の損害として請求できる範囲は限られることが多く、「店の規約違反の罰金」として示される金額が、そのまま支払うべき金額になるとは限りません。
また、弁護士でない者が報酬を得る目的で他人の法律問題について示談交渉をすることは、弁護士法72条で禁じられています。2026年2月には、無店舗型の風俗店の店長らが、客との示談交渉や示談金の受け取りに関与したとして弁護士法違反の疑いで逮捕されたと報じられました。店が交渉に出てくること自体がただちに違法となるわけではありませんが、店と話をまとめても、キャスト本人との関係が整理されていないことがある点には注意が必要です。
その場の言葉や書面が、後で証拠として扱われる
動揺した状態で口にした「すみません、入ってしまったかもしれない」といった言葉や、言われるままに書いた念書は、後に刑事・民事のいずれの場面でも、事実を認めた材料として扱われるおそれがあります。脅されて書いた書面であれば、民法96条の強迫を理由に取り消せる余地はありますが、それを主張して認めてもらうには相応の手間と時間がかかります。最初から書かない方が、選べる手段は多く残ります。
部屋の中で求められやすいことと、応じる範囲の考え方
部屋の中でよく求められることと、そのときの考え方を表にまとめます。いずれも、状況によって適切な対応は変わります。
| 求められること | その場での考え方 |
|---|---|
| 事実を認める発言・謝罪 | 不快な思いをさせたことへの謝意を示すことと、事実を認めることは分けて考える |
| 身分証の提示・撮影 | 法律上の義務はないが、連絡先をまったく示さないと話が終わらないこともある。渡す情報は必要な範囲にとどめる |
| 念書・示談書への署名 | 内容を確認できる状況でなければ、署名は控え、持ち帰って検討すると伝える |
| 現金の支払い・ATMへの同行 | その場での支払いは、後から金額の見直しを求めにくくなる |
| スマートフォンの中身を見せる | 見せる義務はない。撮影を疑われている場合は、扱いを弁護士に相談してから決める |
| 財布やスマートフォンを預ける | 預けると、条件をのむまで返してもらえない状況になりやすい |
身分証や所持品の扱いについては、身分証の提示・撮影を求められた場合|応じる義務と拒否の帰結、【風俗トラブル】財布やスマホを店に預けさせられた|所持品を返してもらう方法でも詳しく解説しています。
部屋の中で伝えること・してよいこと
その場での対応は、おおむね次の順序で考えると整理しやすくなります。
- 相手の名前と立場(店長、スタッフなど)と、店の名称を確認する。
- 可能であれば、やり取りをスマートフォンで録音する。
- 起きたことについて、記憶があいまいな点を断定的に認めない。
- 「弁護士に相談したうえで、後日あらためて回答します」と伝える。
- 署名や支払いを求められたら、内容を持ち帰って検討すると伝える。
- 店の連絡先を控え、こちらからの連絡手段を必要な範囲で伝える。
自分が当事者として加わっている会話を録音することは、一般に違法とはされていません。録音は、後から「何を言われ、何を求められたか」を確かめる手がかりになります。ただし、相手を刺激しないよう、無理に録音していることを告げる必要はありません。
また、「弁護士に相談する」と伝えると、相手の態度が硬くなることもあります。それでも、その場で結論を出さないという姿勢は、自分の身を守るうえでも、相手との話し合いを適正な形に戻すうえでも意味があります。即時の支払いを強く迫られた場面の考え方は、【風俗トラブル】「今すぐ払えばこの場で終わる」と言われた|即時払いを求められたときの判断でも取り上げています。
部屋から出してもらえない・威圧されるとき
退室したいと伝えても出入口をふさがれる、大声で怒鳴られる、といった状況が続く場合、相手の行為は監禁罪(刑法220条)や、金銭を要求する態様によっては恐喝罪(刑法249条)にあたる可能性があります。身の安全に不安があるときは、110番通報も選択肢に入ります。
一方で、警察が来ると、店側が主張する出来事についても事情を聞かれることがあります。警察を呼ぶかどうかの判断や、その場での説明の仕方に迷う場合は、その場から帰してもらえない|監禁と不退去の境界、複数の店員に囲まれた場面|その場での言動が後に持つ意味もあわせてご覧ください。
部屋を出た後にしておきたいこと
部屋を出た後は、記憶が新しいうちに、次の点を記録に残しておくことをおすすめします。
- 利用した店の名称、日時、ホテル名と部屋番号。
- 部屋に来た人数、名乗った名前と立場。
- 言われたこと、求められたこと、自分が答えたこと。
- 署名した書面や渡した身分証があれば、その内容と枚数。
- 録音や画面の記録など、手元にあるデータの保存場所。
その後、店から電話やメッセージが続くことがありますが、内容を確かめずに即答する必要はありません。弁護士にご依頼いただければ、弁護士が窓口となって店とのやり取りを引き受け、必要に応じてキャスト本人との合意も含めた形で、話し合いを整えていきます。すでに念書や示談書に署名してしまった場合でも、内容や署名した経緯によっては見直しを求める余地があります。
よくあるご質問
その場で話をまとめないと、かえって被害届を出されませんか
その可能性がまったくないとは言えません。ただ、その場で金額を払ったからといって、刑事手続が進まないことが約束されるわけでもありません。被害届や告訴の扱いは、キャスト本人の意思によるところが大きく、店との口約束だけでは確実な歯止めにならないことがあります。早めに弁護士を通じて話し合いの場を整える方が、結果として落ち着いた解決につながりやすいと考えます。
すでに部屋で念書にサインしてしまいました
署名した書面があっても、それだけで書かれた金額をすべて支払う義務が確定するとは限りません。書面の内容、署名に至った状況、相手方が誰なのかによって、見直しを求められる範囲は変わります。詳しくは脅されて署名した念書・示談書は有効か|「無効」と「取消し」の違いをご覧ください。
部屋に入られる前の段階なら、どうすればよかったのでしょうか
ドアの外にスタッフが来た段階での考え方は、【風俗トラブル】ホテルの部屋に店のスタッフが来た|ドアを開ける前に考えることで解説しています。すでに部屋に入られた後であっても、この記事でご紹介したとおり、その場で決めないという対応は取ることができます。
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行為の直後に店のスタッフが部屋に来ると、その場で終わらせることが最善のように感じられるかもしれません。しかし、部屋の中で決めたことは、後から見直すのに手間がかかります。話を聞くことと、その場で決めることを分け、まずは安全に部屋を出ることを優先してください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


