【風俗トラブル・ホストクラブ】ホストクラブの請求書に覚えのない項目があったら?

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

本記事は、2025年6月28日に施行された改正風営法と、2020年4月に施行された改正民法の内容を反映し、2026年10月時点の情報にもとづいて書いています。


ホストクラブから届いた請求書や、会計のときに見せられた伝票に、頼んだ覚えのないボトルや、聞いていた金額と違う料金が並んでいることがあります。酔っていて記憶があいまいだったり、担当のホストとの関係を考えて言い出せなかったりして、そのまま払うべきなのか迷う方は少なくありません。
 この記事では、覚えのない項目が載っていたときにどう考えればよいか、まず何を確かめればよいかを、2025年の改正風営法も踏まえて整理します。

覚えのない項目が混じるのは、どのような場面か

 ひと口に「覚えがない」といっても、その中身はさまざまです。どの場面にあたるかで、確かめるべきことも変わります。

よくある場面確かめたいこと
注文した覚えのないボトルやシャンパンが載っている誰が、いつ、どのような言葉で注文したのか
酔っていた時間帯の注文が並んでいるその時間のやり取りや写真が残っていないか
「後で返す」「立て替えておく」と言われて入れたものがある誰が支払う約束だったのか
単価やサービス料、税の率が説明や料金表と違う入店時の説明、メニュー、料金表の内容
来店していない日付の伝票があるその日に自分がどこで何をしていたか
前回までの売掛の繰越や、支払いが遅れたことによる上乗せが含まれている元の金額と、上乗せの計算方法


注文していないものに代金を払う義務はあるのか

 飲食の代金は、客が注文し、店がそれを受けるという合意があって初めて発生します。そのため、客が注文していないものについては、原則として代金を支払う義務は生じないと考えられます。
 ただし、担当から「入れていい?」と聞かれて「いいよ」と答えた場合のように、はっきり頼んだつもりがなくても、やり取りの内容から注文したと評価されることがあります。また、伝票にサインをしていると、その内容を認めたことを示す証拠として扱われやすくなります。一方で、サインがあるだけで支払義務が確定するわけではなく、中身を確かめられない状況で署名させられた事情などがあれば、争う余地は残ります。

改正風営法で「注文していない飲食等の提供」が明確に禁止された

 2025年6月28日に施行された改正風営法では、ホストクラブなどの接待飲食営業を営む店がしてはならない行為として、料金に関する虚偽の説明、客の恋愛感情などにつけ込んだ飲食等の要求、客が注文していない飲食等の提供が定められました。
 これらは主に営業停止などの行政処分の対象となるルールで、違反があったからといって、それだけで代金の支払いが当然に免除されるとは限りません。それでも、注文していないものを提供して代金を求めることが法律上も許されない行為と位置づけられた意味は大きく、店と話し合う際や、警察・行政に相談する際の手がかりになります。改正の全体像は【2025年6月施行】改正風営法で何が変わったか|色恋営業と売掛金の規制で解説しています。

説明と違う料金は、合意した内容の問題になる

 風営法では、店は料金を客に見やすいように表示しなければならないとされています。入店時に説明された料金や料金表と違う単価が請求書に載っている場合、まず問題になるのは「どの金額で合意していたのか」です。合意していない金額を一方的に請求することはできません。
 また、店の説明に事実と異なる内容があった場合や、恋愛感情などを不当に利用して注文させた場合には、消費者契約法にもとづいて契約の取消しを主張できることがあります。売掛全体について支払義務を見分ける考え方は、【風俗トラブル・ホストクラブ】ホストクラブの売掛を請求された|改正後に『払う必要のある売掛』を見分けるもあわせてご覧ください。

酔って覚えていない時間帯の注文

 「酔っていて覚えていない」という事情だけでは、注文がなかったことにはなりにくいのが実情です。ただし、判断ができないほど深く酔っていた状態での注文や、店側が酔いを利用して高額な注文をさせた事情があれば、その注文の効力を争える場合があります。いずれにしても、その時間帯のLINEや写真、一緒にいた人の話など、当時の様子が分かる手がかりを集めることが出発点になります。詳しくは泥酔状態で身に覚えのない請求・トラブル|記憶がない場合の対応で取り上げています。

担当のホストが立て替えた形で請求されている場合

 店への支払いを担当のホストが立て替えたとして、ホスト個人から請求を受けることもあります。この場合も、立て替えたとされる金額のもとになった飲食の中身が問題になる点は変わりません。もとの伝票に覚えのない項目が含まれていれば、立替金とされる金額もその分だけ根拠を欠くことになります。店の請求書とホスト個人から示された金額を並べ、どの日のどの項目に対応するのかを一つずつ確かめることが大切です。

支払いが遅れたことによる上乗せには上限がある

 「期日を過ぎたら1割増し」のように、未払いの売掛に毎月大きな上乗せをしている請求書もあります。店と客の契約では、消費者契約法により、支払いが遅れたことによる損害金は年14.6%を超える部分が無効とされています。上乗せの計算方法が書かれていない場合は、その内訳を確認することが大切です。

覚えのない項目に気づいたら、まず確かめること


  1. 日付、品名、単価、数量、サービス料、税が分かる項目ごとの明細を、書面やメッセージで求めます。
  2. LINEのやり取り、店内で撮った写真や動画、SNSへの投稿、カードや振込の記録など、自分の側の記録を集めます。
  3. 覚えのある項目と覚えのない項目を、日付ごとに分けて一覧にします。
  4. その場で新しい借用書や念書、分割払いの約束書に署名することは控えます。
  5. 異議を伝えるときは、電話や対面のやり取りだけで済ませず、文面で残る形にします。


 ここで大切なのは、すべてを一律に拒むのではなく、認める部分と認めない部分を分けることです。実際に弁護士が対応した事例でも、店から示された計算書を1枚ずつ確認し、注文していない項目を除いたうえで、残った分だけを支払うと提示して決着したものが報告されています。覚えのある分まで含めて支払いを止めてしまうと、店が訴訟を起こした場合に不利な事情として扱われるおそれもあるため、線を引いて伝える方が話がこじれにくくなります。

時効についての古い情報には注意が必要

 インターネット上には「飲み代は1年で時効になる」という説明が今も残っています。これは2020年3月までの民法にあった短期の時効の規定で、2020年4月の改正で廃止されました。現在は、原則として請求できることを知った時から5年で時効となります。
 2020年3月以前に生じた飲食代には改正前のルールが適用されるなど、いつの代金かによって扱いが変わるため、古い売掛が含まれている場合は個別に確認が必要です。

請求の仕方が行き過ぎていると感じたら

 覚えのない項目を指摘したところ、大声で責められたり、家族や勤務先に知らせると言われたりすることがあります。改正風営法では、注文や支払いをさせる目的で客を威迫する行為に罰則が設けられています。こうした言動があった場合は、日時と内容を記録しておくことが大切です。詳しくは【風俗トラブル】売掛の取立てで威迫された|22条の2と刑事罰が使える場面で解説しています。
 なお、保証人になっていない限り、家族が本人の売掛を支払う義務はありません。「今日中に払えば済む」と期限を切られても、明細を確かめる前に支払う必要はありません。

相談先と、弁護士に依頼した場合にできること

 一人で店と向き合うのが難しいときは、外部の窓口を使うことができます。

  • 消費生活センター(消費者ホットライン188)では、料金や契約をめぐるトラブルの相談ができます。
  • 新宿区では、区内のホストクラブなどで高額請求を受けた女性やその家族を対象に、弁護士による法律相談を予約制で行っています。
  • 脅されている、つきまとわれているなど身の安全に関わる場合は、警察の相談窓口(#9110)や最寄りの警察署に相談できます。


 弁護士に依頼した場合は、弁護士が窓口となって店に明細の開示を求め、認める範囲と認めない範囲を書面で示して交渉します。ご本人が店や担当のホストと直接やり取りする必要がなくなるため、関係を断ちたいと考えている方にとっても負担を減らせます。すでに支払ってしまった分についても、事情によっては返還を求められることがあり、その考え方は【風俗トラブル・ホストクラブ】支払った高額な代金の返還を求めたい|公序良俗と暴利行為という道筋で解説しています。

よくあるご質問


伝票にサインしてしまったら、もう争えませんか

 サインは内容を認めた証拠として扱われやすくなりますが、それだけで争えなくなるわけではありません。サインをしたときの状況や、伝票の中身を確認できたかどうかなどを整理したうえで、個々の項目ごとに検討します。

担当のホストが「自分が払っておく」と言っていた分はどうなりますか

 誰が支払う約束だったかによって変わります。店に対して担当が支払う約束だったのであれば、客が店に支払う義務があるとは限りません。LINEなどにその言葉が残っていれば重要な手がかりになりますので、削除せずに保存しておいてください。

覚えのない項目があるので、全額の支払いを止めてもよいですか

 覚えのない項目について支払いを留保することは考えられますが、覚えのある分まで止めると、話し合いがこじれる原因になりやすくなります。認める部分は支払う意思を示し、争う部分を明確にしたうえで伝えるのが一般的な進め方です。

 ホストクラブの請求書に覚えのない項目があっても、明細と自分の記録を突き合わせることで、払うべき部分とそうでない部分を分けて考えることができます。署名や支払いを急がず、まずは事実を整理するところから始めてみてください。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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