公務員・教員の場合|身分上の処分と刑事処分の関係
風俗店を利用した後で店舗やキャストとの間に行き違いが生じ、「その日のことは日記に書いてある」「SNSにも投稿している」と画面を示されることがあります。示された側からすると、誰でも読める場所に日付入りで残っているように見えるため、動かしにくい記録だと感じられるかもしれません。
もっとも、写メ日記やSNSの投稿は、目の前でやり取りをしている当事者ではない人が、別の目的で書いた文章です。誰が書いたのか、いつ書いたのか、どこまでが見たままなのかは、画面を眺めているだけでは分かりません。
この記事では、第三者の投稿が「証拠」として持ち出されたときに、それが何を示せるものなのか、示された側として何を確かめておくとよいのかを整理します。
この記事で扱う範囲
- 店舗やキャストとの金銭のやり取りで、写メ日記やSNSの投稿を示された場合の見方を扱います。
- 家庭内で投稿を示され、事実の説明を求められた場合にも触れます。
- 捜査機関から投稿を示された場合の位置づけにも簡単に触れます。
- 投稿の削除を求める手続そのもの、投稿者を特定する手続の詳細、店舗側の記録が捜査で押収された場合の扱いは、別の解説に譲ります。
「証拠として持ち出された」が指す場面は一つではない
同じ投稿でも、誰が、どの場面で持ち出したのかによって、その後に起きることが変わります。まずは自分が置かれている場面を見分けておくと、その場で何に答え、何を保留するかの判断がしやすくなります。
| 場面 | 投稿を示す人 | 示したうえで求められやすいこと |
|---|---|---|
| 店舗やキャストとの金銭のやり取り | 店舗の担当者、キャスト、その代理人 | 支払いや、事実を認める内容の書面への署名 |
| 家庭内での追及 | 配偶者や家族 | 説明や、離婚・慰謝料に関する話し合い |
| 捜査機関からの質問 | 警察官 | 記憶していることの説明 |
「証拠」という言葉が同じ意味で使われているとは限らない
交渉の場で「証拠がある」と言われるとき、その言葉は、裁判所に提出して事実を認めてもらえる材料という意味で使われているとは限りません。話し合いを前に進めるための言い方として使われていることもあります。
一方、家庭内で示された場合には、法的な手続に進むかどうかとは別に、家族との関係そのものに影響します。捜査機関から示された場合は、話した内容が書面として残るという点で、また性質が異なります。場面ごとに、投稿の重みも、答え方の慎重さも変わってきます。
写メ日記・SNS投稿という記録の性質
集客のために書かれた文章である
写メ日記は、風俗ポータルサイトに用意されたキャスト向けの投稿機能で、写真と短い文章を組み合わせて発信するものです。指名や再来店につなげることが目的であり、その日の出来事を後から確かめるために用意された仕組みではありません。
読み手を意識して書かれる以上、印象に残る部分が強調され、説明が省かれることもあります。書かれている内容がそのまま事実の記録として扱えるかどうかは、投稿の目的も含めて見る必要があります。
投稿は後から直せる
多くの投稿機能では、公開した後に本文を書き換えたり、投稿そのものを削除したりできます。画面に表示されている日付は投稿された日付であって、書かれている出来事があった日付を示しているとは限りません。日をまたいでまとめて書かれることも、後から追記されることもあります。
書いた人が名義の本人とは限らない
写メ日記については、店舗のスタッフが代わりに更新することや、文章の作成を外部の代行に頼むことも行われています。SNSのアカウントについても、複数の人が同じアカウントを扱っている場合があります。
名義と実際に書いた人が一致しているかどうかは、公開されている画面からは分かりません。この点は、次に述べるとおり、投稿を証拠として使おうとする側の負担にも関わってきます。
第三者が書いたものは、それだけでは確かめようがない
誰が書いたのかを示すところから始まる
民事の裁判では、文書を証拠として提出する側が、その文書が作成者の意思に基づいて作られたものであることを示す必要があります(民事訴訟法228条1項)。当事者どうしがやり取りしたメッセージであれば、相手の端末や送受信の記録から確かめられる場面もありますが、第三者の投稿はその足場が手元にありません。
示された側が成立を認めない場合には、その理由を明らかにすることが求められます(民事訴訟規則145条)。「知らない」と述べるだけでは足りず、どの点をなぜ争うのかを言葉にする必要があるという意味です。
画面のコピーは投稿そのものではない
撮影した画像や印刷したものは、投稿そのものではなく、ある時点の表示を写し取ったものです。写真などの文書でない物件も証拠として扱われますが(民事訴訟法231条)、そこに写っているのが元の投稿と同じ内容かどうかは、別に確かめられる必要があります。表示範囲を選んで撮ることも、加工することもできるためです。
示された画面に、投稿者の名義や投稿の一覧の中での位置が写っているかどうかも、見ておきたいところです。本文だけが切り取られている場合、どのアカウントの、いつの投稿なのかが画面からは追えません。相手に確かめる際は、その投稿がどこに掲載されているものかを尋ねる形で足ります。
書いた人の協力が続くとは限らない
投稿の内容を裏づけようとすると、書いた本人が説明することが必要になる場面があります。ところがキャストが在籍を離れたり、連絡が取れなくなったりすることは珍しくありません。店舗が交渉の窓口に立っている場合でも、投稿を書いた本人が最後まで関与するとは限らない点は、押さえておいてよい事情です。
示されたときに確かめておきたいこと
その場で反論を組み立てる必要はありません。次の点を頭の中で確認しておくだけでも、後から事実関係を整理する助けになります。
- 画面のどの範囲が示されているのか。前後の投稿や、同じ日の別の投稿が省かれていないか。
- その記述が自分のことだと言えるのか。名前や特徴がどこまで書かれているか。
- 表示されている日付を、出来事があった日付として扱えるのか。
- 元の投稿が今も公開されているのか、すでに削除されているのか。
- 誰が、どのような経緯でその画面を用意したのか。
特に、書かれている人物が自分だと言えるのかどうかは、最初に立ち止まりたい点です。源氏名や店舗名と違い、客の側は名前が伏せられていることが多く、来店時間帯や見た目の特徴といった書き方にとどまることがあります。その記述だけで人物が絞り込めるのかは、示された画面を離れて考える必要があります。
示された場でこちらが話したことのほうが、後から重く扱われることがある
投稿に沿って説明すると輪郭が埋まる
投稿そのものは曖昧でも、示された側が「その日は行ったが、そういうことはしていない」と応じた瞬間に、来店した事実と日付が言葉として補われます。投稿の弱い部分を、こちらの説明が埋めてしまう形です。
その場で反応しないことが不利に働くわけではありません。事実関係を確かめてから改めて回答すると伝えることは、話し合いを拒むこととは違います。
書面への署名を求められたとき
投稿を示しながら、その場で書面への署名を求められることがあります。書面に書かれた内容は、後から事実関係を争おうとするときに動かしにくい材料になります。示談書や合意書に何が書かれているかの読み方は、別の解説に譲りますが、投稿を示された当日に署名まで済ませる必要はない、という点は共通します。
投稿を消させようとすることの問題
削除の求めは、事実の確認とは別の話
自分のことが書かれていると感じた場合に、削除を求めたくなることがあります。ただし、削除されても、示された画面のコピーが相手の手元に残っていれば、話し合いの材料としては残り続けます。削除は公開を止める手当てであって、示された事実関係を整理することとは別の作業です。
投稿者に直接連絡することの影響
書いた本人に連絡を取って取り下げを求める行為は、相手の受け取り方によっては、圧力をかけられたという主張につながることがあります。金銭の話が進行している場面では、その連絡自体が新たな争点になりかねません。窓口が店舗や代理人に一本化されている場合は、そちらを通すほうが行き違いを防げます。
投稿者を特定する制度は、事実を確かめるための仕組みではない
インターネット上の投稿については、発信者の情報の開示を求める制度が設けられていますが、権利が侵害されたことが明らかであることなどが要件とされています。何があったのかを確かめたい、書いた人と話したいという目的は、この要件と直接には結びつきません。制度の詳細は別の解説に譲ります。
投稿がこちらの説明を支える側に働くこともある
投稿は、示した側にとってだけ有利な材料とは限りません。同じ日の別の投稿に別の予定が書かれていたり、話し合いで説明された時間帯と投稿の内容が合わなかったりすることがあります。公開されている記録である以上、こちらからも読むことができます。
そのため、投稿を見つけた時点で慌てて画面を閉じるのではなく、示された部分だけでなく前後も含めて保存しておくことに意味があります。後から削除されると、こちらが確かめたい部分まで見られなくなります。
家庭内で投稿を示された場合
配偶者や家族から投稿を示された場合は、話し合いの相手も、その先に控えている問題も変わります。ここで求められているのは、多くの場合、手続の勝ち負けではなく、これまでの経緯についての説明です。
投稿の粗探しが目的にならないようにする
投稿の書き方の曖昧さを指摘していくと、争点が「投稿が正しいかどうか」に移っていきます。家庭内では、その論争自体が関係をさらに悪くすることがあります。投稿の性質を理解しておくことは有用ですが、それを説得の道具として使うかどうかは別の判断です。
示された画面は保存されていることが多い
家族が投稿を見つけた場合、その画面はすでに保存されていると考えておくほうが自然です。後日、離婚や慰謝料の話に進んだときに材料として出てくることもあります。示された段階で事実関係を整理しておくことは、そうした場面でも役に立ちます。
捜査機関から投稿を示された場合
刑事の手続では、他人が書いた書面をそのまま事実の認定に使うことに制限が置かれています(刑事訴訟法320条1項)。書いた人が法廷で話せない事情があり、その内容が欠かせないもので、特に信用できる状況の下で書かれたといえる場合など、限られた条件の下で例外が認められています(同法321条1項3号)。
もっとも、取調べの場で示される投稿は、事実を認定する材料としてよりも、記憶を確かめるための材料として使われることが多く、そこで話した内容は書面に残ります。投稿に引きずられて曖昧な記憶を言葉にしてしまうと、後からの訂正が難しくなります。参考人として聞かれる立場と、被疑者として聞かれる立場の違いについては、別の解説をご覧ください。
よくあるご質問
投稿を削除してもらえば、問題はなくなりますか
公開されている状態は止まりますが、すでに保存された画面のコピーは相手の手元に残ります。また、削除を求めた経緯そのものが、話し合いの中で取り上げられることもあります。削除と、事実関係をどう整理するかは分けて考えるほうが進めやすくなります。
「投稿を証拠に裁判を起こす」と言われました
交渉の場でそうした言い方がされることはあります。実際に手続に進むかどうかは相手の判断ですが、投稿を提出する側には、誰が書いたものかを示す負担があり、書いた本人の関与も求められる場面があります。言われた内容をそのまま前提にして急いで応じる必要はありません。
自分のことが書かれているのかどうか分かりません
その点を確かめないまま説明を始めると、書かれている人物が自分であることを前提にした話になってしまいます。まずは、どの記述をもって自分だと言われているのかを相手に確認するところから始めるほうが、話が整理されます。
まとめ
- 写メ日記やSNSの投稿は、集客のために書かれた文章であり、出来事を確かめるために用意された記録ではない。
- 公開後の編集や削除ができるため、表示されている日付が出来事の日付とは限らない。
- 名義の本人ではなく、店舗のスタッフや代行が書いている場合がある。
- 民事では、文書を提出する側がその成立を示す必要があり、第三者の投稿はその足場が手元にない(民事訴訟法228条1項)。
- 争う場合には、成立を否認する理由を明らかにすることが求められる(民事訴訟規則145条)。
- 画面のコピーは投稿そのものではなく、範囲の選び方によって見え方が変わる。
- 示された場で説明したことが、投稿の曖昧な部分を補ってしまうことがある。
- 削除を求めることや投稿者に直接連絡することは、事実関係の整理とは別の問題を生むことがある。
ご相談について
投稿を示されて金銭の支払いを求められている場合、その投稿が何を示せるものなのかは、示された画面だけでは判断が難しいところです。やり取りの経緯、示された範囲、相手が誰であるかによって、取るべき対応は変わります。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、池袋と新橋に事務所を置き、風俗店の利用をめぐるトラブルについてのご相談をお受けしています。その場での回答を求められて判断に迷われている段階でも、状況を伺ったうえで、確かめておくべき点を整理してお伝えします。


