マナーうんちく話251≪電話のかけ方のマナー≫
敬語には知性と教養が現れると思っています。
ホテルでの接客の仕事やマナー講師の経験を通じ、常に感じていることです。
ビジネスにしてもプライベートにおいても、私たちが交わす会話には原稿はありませんが、話す相手、状況、場所などに応じて話題は刻々と変化します。
敬語もしかりで、自分の話すリズムの中で相手に好感を与えるために、スムーズに敬語が出てくるようになるには、それなりの努力も言葉のセンスも必要です。
しかし大変難しいのが現状で、いくつになっても自信が持てません。
幸いビジネスシーンにおける敬語は、ある程度形にはまっていて、その基本さえ理解すれば、美しい響きを伴うようになるので助かります。
今回は頻度の高い「御社」「貴社」「我が社」「弊社」「当社」の使い方に触れます。
「御社」も「貴社」も、両方とも「あなたの会社」という意味ですが、シーンにより使い分けが必要です。しかし心配無用で、実はこの使い分けはとてもシンプルです。
「御社」は話し言葉で使用しますが、「貴社」は手紙やメールや書類など書き言葉に使用します。この原則を理解しておけば会社のみならず、銀行、協同組合、社団法人・財団法人、郵便局などにも応用できます。
例えば「学校」であれば、話し言葉では「御校」、書き言葉では「貴校」です。これと同じ要領で「信用金庫」なら「御庫」「貴庫」、銀行なら「御行」「貴行」です。
郵便局は「御局」「貴局」、病院は「御院」「貴院」、事務所は「御所」「貴所」、社団法人やNPO法人は「御法人」「貴法人」、財団法人は「御財団」「貴財団」になります。
また個人事業主の場合は名前に「様」を付ければいいでしょう。
税理士や弁護士など先生と呼ばれるにふさわしい場合は○○「先生」です。
ところで、実は私が就職したての頃は、まだ「御社」という表現はなく、どちらも「貴社」だったと思います。
しかし「貴社」だったら新聞記者や汽車などと紛らわしいので、話し言葉は「御社」にしようと約30年頃前になったようです。
一方自分の会社の場合は「当社」と「弊社」が一般的ですが、「当社」は自分の会社を丁寧に言い表す丁寧語で、主に自社の社員に向けて発します。
書き言葉でも話し言葉にも使用しますが、相手と同じ立場か、自分のほうが上の立場にある人が用いるケースが多いようです。
「弊社」は謙譲語で、取引先や顧客など社外に向けて発します。
つまり相手より自分を格下とみなし、相手を立てる必要があるからです。
このように同じ意味でも使うべきシーンが異なるということですが、一応これだけ明確にしておけば、ほとんどの場合は大丈夫でしょう。
また「我が社」という言い方もありますが、当社と同じで謙遜の意味はありません。従って同等の立場で表現すればいいと思います。
さらに時々「小社」を用いることがありますが、これは自分の会社が小さいと感じているときなどが多いようです。
ただ「小社」は「商社」「勝者」などと間違いやすいので「弊社」でいいと思います。
色々の表現がありますが、基本は「当社」と「弊社」をきちんと理解することです。