マナーうんちく話1961《新型コロナで心配!日本の「お酌文化」。どうする?》

平松幹夫

平松幹夫

例年だとビアガーデンが恋しくなる時期ですが、飲み会自体が影を潜め寂しい想いの人も多いと思います。

そして飲み会には付き物の「お酌」もそうですね。
新型コロナ禍では「非接触」が常識になりそうで、互いに酒を酌み交わすのが難しくなってきた感があります。

ところで職種、地域、年齢などによりいろいろな捉え方があると思いますが、日本の「お酌」文化をどう思いますか?

また最近は何かとハラスメントに敏感な時代になりましたが、職場の飲み会の席で、上司が部下にお酌を指示したらパワハラに該当するのでしょうか・・・。

法律的な解釈はさておき、飲み会に参加すること自体が苦痛なのに、その席でお酌までさせられたら、たまらないと思う人もいるでしょう。

そこで改めて《お酌》の意味や意義に触れておきます。

「お酌」とは、お客様にお酒を勧める時の行為で、お酒を杯に注ぐことです。
前回日本酒に触れましたが、もとは神道に由来する日本古来の文化です。

例えば神前結婚式の際行われる「三三九度」や「親族固めの儀式」などでは、巫女がそれぞれの杯に酒を注いでくれます。

また正月に家族そろって「お屠蘇」を頂く際にも、家長はそれぞれにお酌をします。

これらは一様に相手の幸せを祈念して行われる神聖な行為だと考えます。

さらに戦国時代においては、殿様が家来に労をねぎらうために行っていたともいわれています。

だからお酌自体の歴史をたどれば、私は素晴らしい日本人ならではの文化だと思っています。

今はだいぶ様子が変わってきたものの、職場の飲み会で共に酒を飲み、互いに酒を酌み交わすことで、絆を深め合う意義は大変大きいと考えます。

恐らく形は異なっても、酒を介して人と人が絆を深め合う風習はどこの国でも存在するのではないでしょうか・・・。

従って飲み会などで酌をしたり、されたりする行為は、「仲間と一緒に酒を楽しむことができることに感謝するとともに、友好を深める意味」があり、お酌を前向きに捉えて頂きたいと思います。

しかし好きでもない人に酒をつぎたくないとか、夫でもない男性に酒を注ぎたくないと思う人がいて、お酌自体をいやがるようでしたら無理強いはよくないでしょう。
またマイペースで、自分流で飲みたいと思う人もいるでしょう・・・。
新型コロナの影響でますますこの傾向は強くなるでしょうね。

ただ何十年もホテルの飲食部門で働き、いろいろな酒のシーンを見てきましたが、お酌文化は絆を深めるにはとても大きな効用があると思っています。

注意していただきたいのは、酒が強い人(好きな人)と、弱い人(嫌いな人)ではお酌の感覚が全く異なります。常に相手の事を思い、無理に進めることはくれぐれも避けて下さいね。

最近お茶を入れたり、お酌をすることをネガティブに捉え、職場でも嫌われているようですが、美味しいお茶を入れて頂き怒る人はいないでしょう。
お酌をしてもらって酒がまずくなった思いをした人も少ないでしょう。

いずれも相手が喜ぶ行為であり、とても尊いことだと思います。
だから私はお茶を入れたり、お酌をしたりすることには積極的です。
自分が心を込めて入れたお茶やコーヒーを美味しく飲んでいただけることはとても幸せなことです。お酌をして相手が喜んでくれたら自分もうれしいです。

新型コロナで何もかも大きくかわり、日本古来の素晴らしい文化も危機的状況に陥っているのは寂しい限りです。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

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