マナーうんちく話269≪顧客満足より従業員満足≫
シルバーウイーク明けの職場では様々な挨拶が交わされていると思いますが、最近「お疲れ」系の挨拶が増えているようですね。
職業形態、雇用形態、勤務形態等が多様化する中、この「お疲れ」系の挨拶は、今後ともさらに増加すると思います。
しかし、本当にこの言い方でいいの?と問われれば自信が持てないのが実情ではないでしょうか?
後輩や先輩の場合はまだいいですが、相手が上司の場合は特に気になるところです。例えば、上司と職場の廊下ですれ違った場合、どのように接すればいいのでしょうか?
上司と行き会う場合は、手前で立ち止まり、すれ違う時には敬礼の姿勢をとります。つまり頭を約30度下げて、上司が通り過ぎたらゆっくり頭をあげます。
この場合上司は、軽く会釈程度に頭を下げて通り過ぎればいいでしょう。
以上が理想の形ですが、いずれもそれなりに、マナーの心得が必要になります。
堅苦しくて親近感は湧いてきませんね。
だったら、敬礼する代わりに「お疲れ様」の言葉を発する方が良いのではと考えます。
「お疲れ様」は、相手の労をいたわる言葉ですから、立場や職責に関わらず、どちらからでも気軽に発することが出来ます。加えて、仲間意識が目覚めます。
今の日本は、何かと慌ただしくて皆疲れているから、それに相応しい言葉が「お疲れ様」ではないでしょうか?
部下から「お疲れ様」と声をかけられたら、上司も「お疲れ様」で答えて頂ければいいですね。
また、非正規社員や派遣社員や変則勤務などで、先に退社する時にも「お疲れ様」と言いますが、これは本来の労をいたわる意味より「別れの意味」の方が強くなりますので、できれば「お先に失礼いたします」がお勧めですが、それが職場の慣習になっているようでしたら、それでいいと思います。
言葉は時代と共に変わります。
また、マナーも不易流行的側面があります。
例えば、「お早う」は、朝早くから働く人をねぎらう言葉でしたが、今では昼夜を問わず出勤時の挨拶になっている所もあります。
ちなみに、「今日は」は、「今日はご機嫌いかがですか」の短縮語です。
ところで、挨拶の目的は、「相手の存在を確認した」という意味と、「相手との良好な人間関係の構築や維持」です。
だから、言葉の正確さより、相手を思いやる心が大切です。
確かに、服装のお洒落が問われるように、言葉のお洒落はとても大切です。
そのためには、美しい言葉遣いが大切です。
美しい言葉遣いをするには、言葉の数や本来の意味を理解することです。
しかし、自信がありますか?
日本語は世界屈指の美しい言葉で有り、難しい言葉で、広辞苑には20万を超える単語が収録されています。「敬語」の数も半端ではありません。
それを、どんな時に、どんな人に、どのような言葉を選び、どのように組み立てるか?は、知性や教養に富んだ人でも至難の業です。
言葉の美しさや正確さを競うより、先ず自分を磨き、心を豊かにすることをお勧めします。特に日本人の話し方は味気ないのが多いような気がします。
中身は伝わっても、情感は伝わらないと言うことです。
相手に好感を与えるには、相手を察する力が必要です。
つまり初めに言葉があるのではなく、先に「心ありき」ということです。
心を磨けば、それに言葉が付いてきます。
だから、上司とすれ違った時でも、「お疲れ様」でも、「どうも」でも、自信を持って発することが出来ます。