自傷行為と、汚らわしい自分との関係

宮本章太郎

宮本章太郎

テーマ:人間関係・コミュニケーション

望まれない出産で生まれてきた子は
自分の事が好きになれません。
親がその子の存在を望んでない(認めてない)からです。

一旦存在価値の話は置いといて、極端に考えてみましょう。

例えば科学の実験で、生命を誕生させる研究をしてたとします。
あくまで科学の実験として、人間を作り出してみようという試みです。

その実験段階で作り出された“仮人間”は
試作段階から始まり、何体もの失敗種が作り出されます。

そしたらそんな失敗作には用事はないので
次々と処分されていくんですね。
例え失敗であろうと、仮にも人間なんですよ。
しかし失敗作が一人の人間として存在してはいけないんです。

こうして日々研究が積み重ねられ
ようやくあと一歩のところで実験が成功する段階までやって来ました。

その一歩手前の段階で作り出された仮人間である実験体は
見た目も中身も、ほぼ完全なる人間そのものなんです。

しかし実験としては、まだ一部に欠陥があるのか
仮人間である事には変わりありません。

ですがこの仮人間
外見だけでなく、どこからどう見ても人間そのものです。
今パッと近くにいる人を見てください。
その人が仮人間かもしれないというくらい、見分けがつかないんです。
でも人間として扱われる事はありません。

そしたらこの仮人間は、周りの人間の事はもちろんですが
自分の事をどう思うでしょうか?
自分という存在を、どのような存在だと捉えるでしょうか?

・・・さて、それではここで話を戻しましょうか。

ここまで読んでいただいて
どのように話の内容が繋がってるのかは
あえてご説明しなくてもお気づきだと思います。

この仮人間は、自分という存在を認めてもらえてない。
存在自体を望まれてないし、むしろ否定されています。
人間として、自分である事すら許されてません。
周りから求められてるのは、完全なる“完璧な人間”だからです。

そんな人間になれなかった失敗作でしかない自分は
まるで資源ゴミ同然の、何か汚い物でしかないんですね。

でもその、“汚い物”として存在しているものは
間違いなく自分自身なんです。

まずまともな人間なら、自分がゴミ同然にしか扱われないなんて
心が受け入れられるはずがありません。

つまりここに、自分という存在の否定が起こります。

そんな汚い物、汚らわしいものは自分ではない。
自分だなんて認めたくない。
こんな物が自分であるという事実が受け入れられず
心が苦しいんです。

このように自分を受け入れられず
自己一致出来てない(出来ない)状態が
自傷行為に繋がるんですね。

よく自分を傷つける事で、自分という存在を確かめられるし
気持ちが落ち着くなんて言いますが
やはり、“何か汚い入れ物”に入れられた自分を実感出来たところで
そんな自分を汚らわしいと思ってますし
自分を好きになる事はありません。
(自傷行為をする人が汚い人間だと言ってるのではないですよ)

そりゃ誰だって嫌じゃないですか?
お前なんか人間じゃないと、ただの汚いゴミ同然のようにイジメられたら。
しかもそんなゴミのような物が自分だなんて
誰が認められますか?
汚らわしく感じて嫌になるに決まってます。

そしたらそんな汚い物は処分したいと思うのが人の心です。

自傷行為というのは、本人が何か、心に病を抱えてるからではありません。
そういう風に、周りの人間がその人を一人の人間だと認めず
追い込んでいった結果なんです。
(もちろん周りの人間だけに問題があるわけではありません)

そしたらどのようにこの問題に向き合っていけばいいのかが
自然と見えてくるはずです。

私はいくらでも一緒に寄り添っていく事は出来ますが
最終的に答えを求めて動くのはあなたです。
私でもなく、周りの人間でもなく
あなた自身が答えを求めなければ
自分から救いの手を伸ばさなければ
誰もあなたの期待に応えてはくれません。

イジメ自殺の問題でも、皆さんそれぞれ、口ではあれこれ言ってますが
結局誰も助けてはくれず、最後は悲惨な結末を迎えてますよね。
自傷行為だって、未遂を超えてしまったらそれで最後です。
冷たいようですが、自分から手を伸ばさないと誰も助けてくれません。
皆思ってるだけで、行動に移せず、助けてあげられないんです。

確かに難しい問題ではありますが
あなたが本当に今の状態から抜け出したいなら
あるいはそういう状態の人を何とかしてあげたいと思うなら
まずは勇気を出して、受話器に手を伸ばしてみてください。

その伸ばされた手は、黙って見過ごしません。
必ず掴んで一緒に向き合っていきます。
それが心理カウンセリングです。

秘密は守られます。



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