想い出の青いサイフ

小橋広市

小橋広市

テーマ:認知症介護者の憂鬱

認知症のお袋が、実家で
ひとり暮らしをしてる頃の話。

お袋は財布を無くしたらしく
帰郷した私の顔を見るやいなや

財布がない、財布を盗まれた!
ヘルパーが盗んだに違いない!

と言い出しました。
帰っていきなりだもんで、
さすがに話すのが億劫になり
私はだまりました。

お袋はいつまでも
ブツブツ言ってます。

最初は千円と言ってたのに
1万円になり2万円なり、サイフの中は
増えるいっぽうです(笑)

一人暮らしで認知症になり、
お金に執着するのも無理はないので
否定もせずふんふんと聞いてました。

ただ、その時思ったんです。
本当にお金に
執着しているのだろうか・・・と

お袋に聴いてみました。

「お金が戻ったら機嫌がなおるのか?」

するとお袋は、

そりゃ、分からん!

あれ? もしかすると、
青い財布に思い入れがあるのかと思い、
また聴きました。

「財布が返ってきても、
お金がなかったらどうする?」

すると、

そりゃ財布が返ってくるだけでええ、
どっちみちお金は入ってなかったからなぁ

えぇ~ 2万円はどこへ(笑)

実は青い財布は、
お袋が認知症になる前、
私が誕生日プレゼントしたものです。

「あの財布は自分で買ったのか?」と
聴くと友だちにもらったと答える。

どうやら、
私がプレゼントしたことは
忘れているようでした。

もう少しで、
「認知症はお金に執着する」という
レッテルを貼るところでした。

お袋が何度も言ってる言葉には
大切な想いを含んでいることがあり、
こちらの概念や思い込みの決めつけは
お袋の尊厳をなくしてるのと同じ。


ペン集中


このハプニングで
お袋がとても愛おしくなりました。

同じような青い財布を探して、
財布の中に5000円を入れて
デイサービスの方から、
お袋に渡してもらいました。

京都に帰ってから
気になって電話すると、
財布にお金が入ってたと
電話口で泣いてました。


そんなお袋も、現在は、
実家の独居生活とお別れをして
特養の施設に入っています。

お袋は、今も青い財布は
息子に買ってもらったことを、
覚えているでしょうか(^o^)

 

【小さな実践】
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小橋広市(講師)

一般社団法人Self&Lifeコンディショニング協会

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