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松田友和(まつだともかず) / 内科医

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コラム

世界中で最も多く内服されている糖尿病治療薬の話

2020年3月18日

テーマ:糖尿病治療薬

コラムカテゴリ:医療・病院

世界中で最も多くの糖尿病患者さんに内服されているのは、メトホルミンという種類のお薬です。世界中では、1億人以上の方が内服していると言われています。米国、ヨーロッパなどの多くの国では、糖尿病治療薬のガイドラインにて、2型糖尿病患者さんに対する第一選択薬(最初に処方する薬)に指定されていることが大きな要因です。
日本では、「メトグルコ」という商品名で発売されています。錠数は圧倒的に多く、1年間で約15億錠が処方されています。欧米のガイドラインとは異なり、日本のガイドラインでは、個々の病態に応じて処方内容を選択する、となっていますが、メトホルミンが重宝されていることは欧米と変わりがありません。

このようにメトホルミンが世界中で最も多く内服されている理由を、
歴史、効果、コストの3点から紹介させていただきます。

〇歴史
メトホルミンをはじめとするビグアナイド薬の歴史は、中世ヨーロッパ時代にまでさかのぼります。この時代から、糖尿病の症状である口渇や多尿に対して、ガレガソウ(フレンチライラック)が有効であることが知られていました。このことをヒントに1950年代になって、いくつかのビグアナイド薬と言われる薬が開発され、糖尿病治療薬の第一選択薬として広く用いられるようになりました。
しかし、1970年代になって、メトホルミン以外のビグアナイド薬に乳酸アシドーシスという重篤な副作用の報告が相次いだため、ビグアナイド薬は第一選択薬から外されます。その流れで、日本でもビグアナイド薬の使用が控えられるようになっていきました。
その後の検討にて、ビグアナイド薬と一言にいっても、乳酸アシドーシスを起こしやすいものと起こしにくいものがあることが明らかになり、1990年代にはいり、ヨーロッパ、米国にて相次いで、ビグアナイド薬の1つであるメトホルミンが第一選択薬に位置付けられました。

〇効果
第一選択薬と言うからには大きな理由があります。それは勿論、糖尿病治療薬として効果があるということです。メトホルミンの価値を高めた2つの臨床試験を紹介します。
1つ目は、1998年にイギリスから発表されたUKPDS(United Kingdom Prospective Diabetes Study)です。この研究により、メトホルミンは、体重の増加や低血糖の発症が少ないことや、心筋梗塞などの糖尿病の合併症により死亡を減らすことができることを明らかにしました。
2つ目は、2002年に米国から発表されたDPP(Diabetes Prevention Program)です。この研究により、生活習慣を改善させることやメトホルミンを内服することは、人種や性別によらず、糖尿病の発症を予防できる、あるいは遅延させる効果があることを示しました。

〇コスト
比較的安価であるということも、欧米で第一選択薬として扱われている理由の1つです。
日本では、「メトグルコ」という商品名ですが、250mg製剤1つで、10.1円という薬価になっています。もともと安価ですので、後発品(ジェネリック)にしても、価格はほとんど変わらないという珍しい現象が生じています。1日に500mg~1500mg程度使用するケースが多いのですが、1日当たり20円~70円くらいになります。3割負担の方ですと、1か月当たり180円~700円でしょうか。費用対効果(コストパフォーマンス)の良さも多く内服されている大きな要因と言えます。

最後に、メトグルコの弱点も紹介しておきます。
まずは、用法の問題です。最近は、飲みやすさの観点から、1日1回飲めばよいという薬が増えてきているのですが、メトグルコは1日2回~3回に分けて内服することが一般的です。通院している患者さんをみていても、飲み残し、飲み忘れが多くなってしまう方も見受けられます。
もう1つは、副作用としての下痢(軟便)や吐き気の問題です。特に、便が緩くなったと感じる方が一定数いらっしゃいます。少量から始めたり、飲み慣れてくると治まってきたりすることが報告されていますが、合わない場合は中止してしまうケースも散見されます。

今回は、世界中で最も多く内服されている糖尿病治療薬であるメトホルミン(日本での商品名:メトグルコ)をご紹介しました。勿論、多くの人が内服している薬が、ご自身にも合うというわけではありません。このコラムでも様々なお薬を紹介してきましたし、これからも紹介していきます。ご自身にあった治療薬を一緒に見つけていきましょう。

この記事を書いたプロ

松田友和

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松田友和(糖尿病内科まつだクリニック)

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