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松田友和(まつだともかず) / 内科医

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コラム

GLP-1アナログ製剤に待望の内服薬が登場

2021年2月9日

テーマ:糖尿病治療薬

コラムカテゴリ:医療・病院

血糖コントロールを目的としたお薬にはたくさんの種類があります。その中でも血糖降下作用および体重減少作用が最も期待できるものに、GLP-1アナログ製剤と呼ばれるお薬があります。GLP1-アナログ製剤の中でも2020年に登場したオゼンピックという薬は、週1回の自己注射で、HbA1cを1.5~2.0%、体重を2~4kg減らすことが出来るのではないかと大変期待されています。凄い効果ですが、自己注射という壁がありました。しかし、この度このオゼンピックと同じ主成分にも関わらず、飲み薬であるリベルサスという薬が登場しました。

GLP-1アナログ製剤とは

食事を摂取した際に、すい臓からインスリンが分泌されます。すい臓から分泌されたインスリンが血糖値をコントロールしています。実は、食事を摂った際には腸管からもインクレチンというホルモンが分泌されて、血糖値の制御に関与しているということは、あまり知られていません。詳しくは、以前にご紹介した当コラムをご参照ください(2019年9月20日、2019年12月12日)。このインクレチンを利用した薬であるインクレチン関連薬のなかでもGLP-1アナログ製剤と言われるタイプのお薬には、今まで注射薬しかありませんでした。なぜなら、GLP-1はホルモン、つまり蛋白質のかたまりになります。身体の中の腸管から分泌されると、そのまま血中に分泌されホルモンとして活躍するわけですが、口から飲んだ場合には、胃腸で消化・分解されてしまうため、ほとんど血液中に入っていきません。実際に、口からそのままお薬として摂取しても、血液中で利用されるのは、0.01%未満と言われています。そのため、今までGLP-1アナログ製剤は注射薬しか存在しませんでした。

注射薬から内服薬への転換

GLP-1を内服薬にするためには、越えるべき大きな壁が2つあります。1つは、胃酸です。胃の中は胃酸によって、強力に酸性になっています。この胃酸によって、食べ物を消化しているわけですが、お薬にとっては迷惑な環境です。2つ目は、ペプシンという蛋白質分解酵素です。文字通り、食べ物を分解するために存在しているわけですが、これもお薬を無事に血中に届けるためには大きな障壁となります。これらをクリアするために、注射薬オゼンピックの主成分であるセマグルチドという蛋白質を、サルカプロザートナトリウム(SNAC)と呼ばれる経口吸収促進剤に混ぜるという方法が開発されました。このSNACは、胃酸によってもたらされている強力な酸を錠剤の周囲だけ中性化させることで、蛋白分解酵素の働きを弱めることができます。さらには、セマグルチド自身も胃の細胞に吸収されやすい状態に変化させることができます。ホルモンと呼ばれるたんぱく質を飲み薬に出来るということは画期的です。

内服方法には要注意

画期的な内服薬ですが、少し面倒なことがあります。それは内服方法です。錠剤自体を30分程度は胃の中にとどめておく必要がありますので、内服後30分は飲食禁止となります。さらに内服するときに、たくさんの水で内服してしまうと、一気に腸まで流れてしまうかもしれませんので、少量の水で内服する必要があります。
そのため、内服方法は、
1、1日のうちの最初の食事又は飲水の前に空腹の状態で服用
2、コップ約半分の水(約120mL以下)とともに1錠を服用
3、服用時及び服用後少なくとも30分は、飲食及び他の薬剤の経口摂取を避ける
となっています。
いままでのGLP-1アナログ製剤は、その効果は評価されていましたが、注射薬であるというハードルがありました。内服方法は少し面倒ですが、この不便さを我慢する価値のある効用が期待されています。このように患者さんや医療者に対して選択の幅が広がることが良いことであるのは間違いありません。まだ新発売になったばかりですので、これからどのように評価されていくのか注目していきたいです。

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