撤退率著しい飲食業の利益をアップし、継続させる、飲食コンサルティングの世界
目次
2026年7月、フィリピン・マカティにTHE BWB Makatiが開業
THE BWB Makatiのコンセプトは、「高い焼肉店」をつくることではなかった
THE BWB Makatiから分かる、海外飲食進出の6つのポイント
2026年7月、フィリピン・マカティにTHE BWB Makatiが開業
2026年7月1日。
フィリピン・メトロマニラのマカティ市に、日本式高級焼肉店、THE BWB Makatiがグランドオープンしました。
このプロジェクトは、単に、「日本の焼肉店をフィリピンへ持っていく」という海外出店ではありません。
誰を顧客にするのか、どの都市・商圏へ出店するのか、どの価格帯で勝負するのか、日本の何を残し何を現地市場に合わせるのか、どの食材を日本からフィリピンという輸入を閉ざした国へどう輸出するのか、現地人材をどう採用し教育するのか、どこまで初期投資を行うのか、という海外事業の経営判断を、一つずつ積み上げて立ち上げたプロジェクトです。
僕自身、2024年からこのプロジェクトに関わり、市場調査からスタートして、事業計画立案、現地法人設立と事業基盤の確立、店舗物件リサーチ、設計施工監理、商品・メニュー開発、食材調達、人材採用・教育、マーケティング、そして開業準備オペレーションまで、約2年間にわたって現場で取り組んできました。
海外飲食進出とは、日本で成功した店を外国へコピーすることではありません。自社の強みを残しながら、「その都市の、その顧客のための事業」へ再設計することです。
THE BWB Makatiは、その考え方を実際の店舗に落とし込んだ事例です。
なぜ、フィリピンの「マカティ」を選んだのか?
フィリピンは、2024年の国勢調査で人口約1億1273万人を抱える国です。しかし、「人口が多い。」「これから成長する国だ。」という理由だけで、飲食店の進出先を決めることはできません。
海外飲食事業で見るべきなのは、国全体の人口ではなく、自社の商品を購入できる顧客が、どの都市・どの商圏に集まっているのかだからです。
THE BWBで狙ったのは、フィリピン国民全体ではありません。
高価格帯の日本食へ継続的に支出できる、高所得者富裕層に絞りました。そこで候補地となったのが、メトロマニラのマカティ。そして隣接するBGCなどを含む、高所得者・ビジネス層が集まる経済圏でした。
マカティには、オフィス、高級住宅、コンドミニアムが集積しています。
THE BWB Makatiの立地選定で重要だったのは、「フィリピンだから。」ではありません。「THE BWBが想定する価格を支払い、その価値を理解できる顧客が、日常的に活動している商圏だから」です。
これは、僕が「飲食店 海外進出入門講座 Vol.3」でお伝えしている、「国で選ぶのではなく、都市・商圏で選ぶ。」という考え方そのものです。
フィリピンを「富裕層と貧困層だけの国」と考えない
フィリピンについて、「貧困層が多い。」「格差が大きい。」というイメージだけで市場を見ることも適切ではありません。
確かに所得格差は存在します。
一方で、日本を遥かに超える高所得富裕層が集積しています。
したがって重要なのは、「フィリピン人は、いくらまで払えるのか。」という国民全体への問いではありません。「THE BWBが狙う顧客は、何に価値を感じ、どのような体験なら高い価格を支払うのか。」という問いです。
これが、海外飲食マーケティングの出発点になります。
THE BWB Makatiのコンセプトは、「高い焼肉店」をつくることではなかった
このプロジェクトがスタートしたのは、2024年です。
クライアント企業から求められたのは、成長余地のある海外市場へ飲食事業を進出させること。
そして、単なる日本食レストランではなく、現地の高所得者層から選ばれる、高付加価値の飲食事業をつくることでした。
そこでTHE BWB Makatiでは、単に高価格な和牛を提供する店ではなく、「日本そのものを体験する高付加価値レストラン」を目指しました。
1.焼肉と日本料理を組み合わせる
THE BWBは、一般的な日本式焼肉店をそのまま海外へ持ち込む業態ではありません。ブランド和牛を中心とした焼肉に、日本料理、季節感、コース料理、上質なサービス、上質な空間を組み合わせます。
焼肉を、「肉を自分で焼いて食べる料理」ではなく、一回の食事全体を設計した高付加価値の体験へ変えることを狙いました。
2.日本の「四季」を店舗体験に組み込む
フィリピンと日本では、季節、生活文化が違います。
そこで、料理だけではなく、店舗空間、盛り付け、器、ユニフォーム、サービスなどを通じて、日本の四季や文化を感じてもらうことをコンセプトに取り入れました。
現在のTHE BWB Makatiは、予約制を基本とし、プライバシーを重視した個室を中心とする店舗として運営されています。
つまり、料理単体ではなく、店へ入ってから帰るまでを一つの商品として設計するという考え方です。
3.日本産食材そのものを競争力にする
海外で高付加価値の日本食を展開する場合、何を現地調達し、何を日本から持っていくのかは非常に重要です。
THE BWBでは、日本産のブランド和牛をはじめ、日本の優れた食材を重要な商品価値として位置付けています。
4.タレ・ソースまで商品設計の一部と考える
高級和牛だけを仕入れれば、高級焼肉店になるわけではありません。肉、タレ、ソース、醤油などを組み合わせて、一つの商品になります。
THE BWBでは、コースを構成するタレやソース類についても独自に開発し、簡単に競合が再現できない商品設計を目指しました。
ここは、海外事業では特に重要です。
高価格な食材を仕入れることは、競争優位ではありません。その食材を使って、他店が簡単に再現できない商品・サービスを作ることが競争優位です。
5.価格ではなく、「価格を納得できる理由」をつくる
高所得者層を対象にするからといって、価格を高くすればよいということではありません。
高価格帯の顧客ほど、食材、料理、空間、サービス、希少性、ストーリー、プライバシー、時間まで含めて評価します。
重要なのは、「高い店」をつくることではありません。高い価格を設定するなら、「なぜ、この価格なのか」を料理・サービス・空間のすべてで説明できる店をつくることです。
THE BWB Makati店舗入り口
THE BWB Makatiで実際に必要だった海外進出業務
海外飲食進出の難しさは、一つ一つの仕事が難しいということだけではありません。法律・不動産・建築・飲食・物流・人材・マーケティングという、まったく異なる専門分野を、一つの開業日へ向けて統合して動かすことにあります。
海外飲食進出では、「予定通りにいかないこと」を予定に入れる
海外で実際にプロジェクトを進めると、日本で作ったスケジュール通りに進まないことがあります。
行政手続き、契約、建築、輸送、採用、設備、輸入など、複数の工程が相互に関係するからです。
例えば、設備が遅れれば、施工が遅れる。
施工が遅れれば、スタッフ教育の日程が変わる。
開業日が変われば、食材輸出や広告開始日も変える。
という連鎖が起こります。
そこで重要なのは、海外だから仕方がないと諦めることではありません。
海外事業のプロジェクト管理では、「予定通りに進むこと」を前提にするのではなく、「何かが遅れたときに、どう組み替えるか」を最初から設計します。
必要なのは、語学力だけではありません。問題が起きたときに、原因を分解し、優先順位を決め、現地の専門家と調整し、代替案を作り、意思決定する経営能力です。
海外事業では、現地スタッフを「作業者」と考えない
飲食店を一店舗だけ開業するのであれば、日本人スタッフが現場へ入り、自分たちで運営することもできるかもしれません。
しかし、それでは、海外事業としてスケールしません。
重要なのは、現地で人材を採用し、教育し、責任を与え、店舗運営を任せられる人材へ育てることです。
接客であれば、マニュアルを暗記させるだけではありません。
なぜ、このタイミングで料理を出すのか、なぜ、この説明をするのか、なぜ、この所作が必要なのか、まで理解してもらう必要があります。
調理も同じです。
レシピを渡すだけでは、品質は安定しません。
海外飲食事業で本当に輸出しなければならないものは、料理そのものだけではありません。品質を再現する「仕組み」です。
THE BWB Makatiから分かる、海外飲食進出の6つのポイント
THE BWB Makatiの立ち上げを経営者の視点から整理すると、海外飲食進出には、少なくとも6つの重要なポイントがあります。
1.「国」より先に「顧客」を決める
フィリピンだから出店したのではありません。THE BWBの商品・価格・体験を受け入れる顧客層を考え、その顧客が集積する市場として、マカティを選びました。これは、海外進出入門講座Vol.3で説明している考え方です。
2.日本の商品を、そのまま持っていかない
日本の強みは残します。しかし、商品、価格、量、サービス、空間、予約方法、マーケティングは、現地市場に合わせて再設計します。海外進出とは、日本の店を輸出することではなく、日本の強みを海外市場向けの商品へ編集し直すことです。
3.高付加価値業態ほど、サプライチェーンまで設計する
日本産食材を使いたいというだけでは事業になりません。
誰から買うのか、どこで加工するのか、どう輸出するのか、誰が輸入するのか、どこで保管するのか、店舗へどう配送するのか、まで設計します。
海外飲食事業は、店舗ビジネスであると同時にサプライチェーンビジネスでもあります。
4.開業費用だけではなく、開業後の資金まで持つ
店が完成した瞬間、投資が回収できるわけではありません。開業後に、顧客を獲得し、売上を作り、利益を出し、キャッシュを生み、初期投資を回収する必要があります。
この領域は、もちろん、業務の委託をうける、私のような外部のコンサルタントが請け負うことはできません。、クライアントの責任者と現地責任者に引き継ぎます。それを、いかに、スムーズに引き継ぐかがポイントです。
5.現地人材を育てられなければ、多店舗展開できない
海外飲食事業で店舗数を増やすには、料理だけではなく、人材育成そのものを仕組みにする必要があります。
採用、初期教育、OJT、評価、管理職育成、品質管理までを店舗モデルの一部として設計します。
6.「開店」はゴールではない
海外進出プロジェクトでは、グランドオープンが大きな節目になります。そして、同時に開業をお引受けする業務委託型進出コンサルにとっては、ここが、委託先への引継ぎの地点になり、委託先のビジネスを成功させなければなりません。
重要なのは、その後、顧客が継続的に来店する、適正な客単価を維持する、利益を生む、人材が育つ、品質を維持する、初期投資を回収するという状態をつくり、クライアントに成功させる基礎を創ることです。
海外飲食進出の成功とは、「海外に店を開けたこと」ではありません。現地で継続的に利益とキャッシュを生み出せる事業を構築したことです。
THE BWB Makatiは、「海外なら簡単に儲かる」という事例ではない
この事例を、「フィリピンは成長市場だから、日本食を出せば成功できる。」という話として読んでいただきたくありません。
むしろ逆です。
海外だからこそ、市場を調べる。顧客を絞る。投資額を決める。商品を再設計する。食材を確保する。現地人材を育てる。リスクを管理する。
そして、国によって、都市によって、業態によって適切な答えは変わります。海外飲食進出に「成功する国」があるのではありません。自社の商品・顧客・資金・人材に合った市場を選び、その市場に合わせて事業を作れる企業が成功します。
日本市場だけに集中するか、海外という成長ベクトルを加えるか
日本国内にも、インバウンドが大量に訪問してきています。飲食企業が成長する機会があります。
したがって、「人口が減る日本では飲食業に未来がない。」という単純な話ではありません。
また、海外へ出れば成長できるというものでもありません。
重要なのは、国内か海外かという二者択一ではありません。
国内で確立した事業基盤を持ちながら、次の成長市場として海外を加えるべきかを経営者が判断することです。
私は、海外進出は、「日本市場から逃げるための戦略」ではなく、「企業の成長市場を世界まで広げる戦略」だと考えています。
海外飲食進出を検討する経営者が、最初に確認すべきこと
海外飲食進出を検討している場合、いきなり現地法人を設立したり、物件を探したりする必要はありません。
その前に、
なぜ海外へ進出するのか
どの商品・業態を展開するのか
誰を顧客にするのか
その顧客はどの都市・商圏にいるのか
いくらの客単価を設定できるのか
いくら投資できるのか
何年で投資を回収するのか
日本から何を持っていくのか
現地で何を調達するのか
誰が現地事業を経営するのか
どこまで損失を許容できるのか
を整理します。
THE BWB Makatiでも、店舗を作る前に、このような経営判断を積み重ねてきました。
フィリピン・東南アジアへの飲食進出を検討している経営者の方へ
「フィリピンや東南アジアへ飲食店を展開したい」
「日本の飲食ブランドが海外で通用するか確認したい」
「高所得者向けの日本食事業を海外で展開したい」
「どの国・都市・商圏を調査すべきか分からない」
「海外出店に必要な投資額と運転資金を整理したい」
「現地法人・物件・食材輸出・人材まで含めて考えたい」
「日本で成功した業態を、どこまで海外向けに変更すべきか判断したい」
という経営者の方は、
まず、海外へ出ることを決めるのではなく、海外へ出るべき事業なのかから検討してください。
そして、進出国ありき、で事業を始めないことが重要です。海外飲食進出は、「外国に店を出すプロジェクト」ではありません。自社の強みを、海外市場で利益を生む事業へ変換する経営プロジェクトです。
海外進出・貿易を検討する中小企業経営者向け|初回120分海外事業カンファレンス
国内事業が一定程度確立し、海外を次の成長市場として検討している中小企業のオーナー経営者を対象に、海外進出ありきではなく、海外進出の目的、商品・業態、ターゲット顧客、候補国・候補都市、初期投資・運転資金、投資回収、現地法人・進出方法、食材調達・輸出、人材体制、事業リスクまでを経営全体から整理します。
進出国がまだ決まっていない段階でも構いません。「本当に今、海外へ進むべきなのか」というところから検討します。
https://direct.mbp-japan.com/menu/detail/1587


