「事業承継会社の社長就任」という選択をするサラリーマンのメリット・デメリット
目次
M&AではEBITDAも重要だが、それだけで企業価値は決まらない
避けたいのは、「価値ある会社なのに、承継先がないまま廃業する」こと
会社を清算すれば、内部留保がそのままオーナーへ戻るわけではない
日本の中小企業で進む、経営者の高齢化と事業承継問題
日本社会全体で、少子高齢化が大きな問題になっています。そして、この問題は中小企業経営にも直接影響しています。
帝国データバンクの2025年調査では、全国の社長の平均年齢は60.8歳。東京商工リサーチの2025年調査では63.81歳となり、いずれの調査でも社長の平均年齢は過去最高となっています。
調査対象や集計方法が異なるため数字には差がありますが、日本企業の経営者の高齢化が進んでいるという方向は明確です。
一方、中小企業庁の2025年版中小企業白書を見ると、後継者不在率は減少傾向にあり、事業承継への取り組みには一定の進展も見られます。
しかし、中小企業経営者の年齢水準は依然として高く、60歳以上の経営者が過半数を占めています。
つまり、「後継者問題は少しずつ改善しているから大丈夫」という段階ではありません。
経営者自身が、誰に会社を引き継ぐのか、いつまで自分が経営するのか、その時株式をどうするのか、社員や顧客をどう守るのか、を早い時期から考える必要があります。
事業承継とは、「高齢になった社長が引退するための準備」ではありません。会社の経営権・株式・経営資源を、次の世代へどう移すかという経営戦略です。
後継者問題を、経営者の健康不安が出てから考えるのでは遅い
中小企業経営者の中には、「まだ自分は元気だから大丈夫。」「あと10年くらいは経営できる。」「そのときになったら税理士や銀行に相談する。」と考えている方もいます。
しかし、事業承継やM&Aは、「そのとき」になってから簡単にできるものではありません。
例えば親族承継なら、後継者本人に本当に経営する意思があるのか、後継者に必要な能力を育成できているか、社員や取引先から受け入れられるか、株式をどのように移転するのかを考える必要があります。
社内承継なら、候補者がいるか、経営者として育てられるか、株式を取得する資金をどう用意させるという問題があります。株式を安く承継させれば、贈与税として莫大な金額が課税されるリスクがあります。
M&Aなら、買主候補から評価される会社になっているか、社長依存を下げられているか、財務・法務・労務上の問題は整理されているか、主要契約が承継できるか、経営者保証をどうするか、など、多くの準備が必要です。
出口戦略は、「辞める時期を決めること」ではありません。辞める時期が来たときに、複数の選択肢から最もよい方法を選べる会社を、いまから作っておくことです。
後継者問題は、「子どもに継がせるか」だけではない
事業承継というと、「息子や娘に会社を継がせる。」という親族承継を最初に想像する経営者も多いでしょう。
しかし現在は、選択肢をもっと広く考える必要があります。
代表的には、
親族内承継
役員・社員への社内承継
MBOなどを活用した経営陣への承継
第三者へのM&A
外部資本を受け入れた共同経営
一部株式の資本提携
IPO等の資本市場への接続
などの方法があります。
どの方法が最も優れているということではありません。会社によって違います。経営者によっても違います。
例えば、会社を家族に残したい、社員へ引き継ぎたい、経営を続けながら大企業と資本提携したい、株式の一部だけ資金化したい、100%譲渡して次の人生へ進みたいというように、経営者が求めるゴールも異なります。
重要なのは、「誰に継がせるか」を最初に決めることではありません。どの承継方法でも選べる企業価値と組織を作っておくことです。
起業時から「どう稼ぐか」と「最終的に何を残すか」を考える
事業の出口は、60代や70代になって初めて考えるものではありません。
新規事業を始める段階から、
この事業はどうやって稼ぐのか。
投資した資金をどう回収するのか。
育てた結果、会社に何が残るのか。
という視点を持つことが重要です。
収益モデル
=どう稼ぐか
投資回収モデル
=どう元を取るか
企業価値・出口モデル
=事業を育てた結果、会社に何を残すか
という3つの視点です。
出口戦略は、「将来、会社を売るためだけの設計」ではありません。自分が投じてきた資本・時間・知識・人材を、最終的にどのような企業価値へ変えていくのかを考えることです。
成長期こそ、売上・利益だけでなく「企業価値」を高める
会社が成長期に入ると、経営者の関心は、売上、利益、採用、資金繰りへ集中します。
もちろん、それは重要です。
しかし、この段階から、「この1年の経営によって、会社そのものの価値はいくら高くなったか」という視点も持つべきです。
例えば、売上は増えた、しかし社長が営業し続けなければ維持できないという会社と、営業組織を作り、社長が現場営業から離れても売上が伸びる会社では、同じ売上でも事業の再現性が違います。
また、売上の60%が1社へ集中している会社と、顧客基盤が分散している会社でも、事業リスクが違います。
M&AではEBITDAも重要だが、それだけで企業価値は決まらない
M&Aの検討では、EBITDAという指標が使われることがあります。
EBITDAとは一般に、利払い前、税引前、減価償却前の利益水準を見る指標です。企業ごとの、資金調達方法、税負担、設備投資や減価償却などの影響を一定程度取り除き、事業そのものの収益力を比較する目的などで利用されます。
特にM&Aでは、EBITDAに一定の倍率を掛けて企業価値を検討する方法が利用される場合があります。
しかし、EBITDAが高ければ、それだけで高く売れるわけではありません。
例えば、特定顧客への依存度、社長依存、人材の定着、契約の継続可能性、市場の成長性、設備更新の必要性、運転資金、有利子負債、法務・労務上のリスクなども評価に影響します。
避けたいのは、「価値ある会社なのに、承継先がないまま廃業する」こと
日本では現在、利益を出しているにもかかわらず休廃業・解散する企業が相当数あります。
東京商工リサーチの2025年調査では、休廃業・解散した企業のうち、直前期が黒字だった企業は52.8%でした。
つまり、会社が赤字だから廃業した企業だけではないということです。
経営者が高齢になった。
後継者がいない。
M&Aの準備をしていない。
社内に任せられる幹部がいない。
という事情によって、事業を終えるケースも存在します。
ここで私が特に避けたいと考えるのは、利益がある、顧客がいる、社員がいる、技術がある、ブランドがある。それでも、引き継ぐ人がいないから廃業する。」という状態です。
「黒字だから大丈夫」ではありません。会社が利益を出せることと、会社を次世代へ引き継げることは、別の問題です。
ただし、「黒字廃業=失敗」と一律に考えてはいけない
一方で、黒字会社を廃業することが、すべて経営上の失敗というわけでもありません。
例えば、経営者自身が十分な資産を築いた、しかし社員が承継意思がない、適切な買主も見つからない。残されたリスクを考えると、計画的に会社を閉じる方が合理的というケースもあります。
廃業も、場合によっては適切な経営判断です。
問題なのは、他に選択肢があったにもかかわらず、準備をしなかったために廃業しか選べなくなることです。
会社を清算すれば、内部留保がそのままオーナーへ戻るわけではない
会社を解散・清算した場合、会社の資産を換金する、債権を回収する、債務を支払う、税金等を清算する、そして残った財産を株主へ分配するというプロセスになります。
ここで注意したいのが税務です。
残余財産をオーナー株主が受け取った場合、単純に、「全部が給与所得になり、最高55%で課税される」というものではありません。
株主が受け取った残余財産には、みなし配当として扱われる部分、株式の譲渡所得等として扱われる部分、などが生じる場合があり、会社の資本金等の額、株式取得価額、残余財産の金額などによって税務上の扱いが変わります。
したがって、M&Aで株式譲渡する場合、親族へ承継する場合、会社を清算する場合では、オーナーに残る金額が同じになるとは限りません。
会社の出口を考える際には、「企業価値」だけでなく、「税引後でオーナーに何が残るか」まで比較する必要があります。
事業承継とM&A、どちらを選ぶべきか?
では、事業承継とM&A。どちらがよいのでしょうか。
答えは、会社と経営者によって違います。
例えば、
親族内承継が向いているケース
・後継者本人に経営意思がある
・必要な能力を育成できる
・株式承継の方法を設計できる
・社員や取引先との関係も引き継げる
社内承継が向いているケース
・経営能力のある幹部がいる
・社員や顧客から信頼されている
・株式取得や資金調達の方法を設計できる
M&Aが向いているケース
・親族・社内に適切な後継者がいない
・他社の経営資源によって成長余地が大きくなる
・オーナーが株式価値を資金化したい
・より大きな企業グループで事業を継続した方が企業価値を高められる
資本提携が向いているケース
・経営者自身はまだ経営を続けたい
・資金・販路・技術・人材など外部資源が必要
・100%売却より段階的な提携を望んでいる
重要なのは、「親族承継かM&Aか」を感情だけで決めるのではなく、複数案を比較することです。
事業承継・M&Aに備えて、今から整える7つのこと
- 社長依存を減らす
- 後継者・幹部候補を育てる
- 特定顧客への依存を下げる
- 利益とキャッシュを安定して生み出す
- 株式・契約・許認可・知財などを整理する
- 財務・労務・法務上の課題を早めに解消する
- 自社の企業価値を定期的に確認する
この7つは、会社を売るためだけの準備ではありません。いずれも、会社そのものを強くする経営です。
だからこそ、M&Aを結果的にしなかったとしても取り組む意味があります。
5年前から準備できる経営者と、5か月で売らなければならない経営者では、選択肢が違う
例えば、現在60歳、70歳頃までには第一線を退きたい、と考えている経営者なら、10年間あります。
その間に、幹部を育てる、社長依存を下げる、顧客基盤を分散する、不採算事業を整理する、利益率を高める、企業価値を算定する、親族承継を検討する、M&A候補企業を探す、資本提携を試すことができます。
反対に、健康問題によって半年以内に経営を離れなければならないとなれば、選択肢は大幅に減ります。
出口戦略で最も大きな資産は、「時間」です。準備を早く始めるほど、経営者は多くの選択肢を持つことができます。
中小M&Aでは、「誰に頼むか」も重要な経営判断
M&Aを検討する際には、仲介会社、FA、金融機関、税理士、弁護士、事業承継・引継ぎ支援センターなど、さまざまな支援先があります。
重要なのは、「M&Aを勧めてくれる人」を探すことではありません。自社にとって本当にM&Aが最善なのかも含めて検討できる支援体制を作ることです。
中小M&Aでは、手数料、利益相反、買主候補の信用力、経営者保証を外せるか、最終契約内容、表明保証、クロージング後の義務など、確認すべきことが多数あります。
特に経営者保証については、「会社を売ったから自動的に保証から外れる」とは限りません。
最終契約と金融機関との調整まで確認する必要があります。
事業承継・M&A・企業価値向上を、会社が元気なうちから考えたい経営者の方へ
「後継者がまだ決まっていない」
「子どもへ継がせるべきか迷っている」
「幹部への社内承継が可能か分からない」
「M&Aした場合、自社がどの程度評価されるのか知りたい」
「黒字だが、自分が引退すれば会社を続けられない」
「会社を売るのではなく、資本提携によってさらに成長させたい」
「数年後の出口を考えながら、今から企業価値を高めたい」
こうした課題は、実際に引退する段階になってから考えるのではなく、会社が成長している段階から検討する方が、選択肢を広げられます。
URVグローバルグループの成長企業M&A
会社の「終活」としてのM&Aだけではなく、事業承継、事業提携、資本提携、成長企業M&Aまで、企業価値を次の成長へつなぐ方法を検討します。
企業価値向上、M&A準備、相手企業の探索・交渉から、M&A成立後のPMIまで支援します。
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年商5億円の壁を突破するための経営者伴走コンサルティング
年商3000万円から4億円程度のオーナー社長を対象に、2026年3月期・グループ総売上高48億円の企業グループを経営する現役オーナーCEOである松本尚典が、事業承継、企業価値向上、M&A、組織、財務、経営戦略まで、経営判断と実行に継続して伴走します。
https://mbp-japan.com/tokyo/yoshinori-matsumoto/service1/5002501/
初回120分経営カンファレンス
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https://direct.mbp-japan.com/menu/detail/936


