事業の目標を、売上と利益だけに設定する危険性を知っていますか?
新規事業の構想は「収益モデル」と「収穫モデル」の2軸で考える
新規事業を成功させるためには、収益モデル(どう稼ぐか)だけでなく、収穫モデル(どう回収するか)を同時に設計することが不可欠です。
多くの事業計画は収益モデルの検討に偏り、「最終的に誰がいくらで買うのか」という視点が抜け落ちています。本記事では、新規事業における収益モデルと収穫モデルの違い、そして両者を統合する重要性を解説します。
事業を「収益モデル」だけで考える落とし穴
新規事業を構想し、事業計画を立てる際、多くの人が陥る誤りは、事業を収益モデルだけで検討してしまうことです。
収益モデルとは何か?
収益モデルとは、事業がどのように継続的にお金を生み出すかを設計する仕組み
です。
具体的には、
•ビジネスモデルの設計
•収入構造の設計
•仕入れ・販売費・一般管理費との対応
•利益構造の算出
•損益分岐点の分析
•内部留保の蓄積予測
などを含みます。
代表的なビジネスモデルには次のようなものがあります。
•サブスクリプション(月額課金)
•売切型(商品販売・ライセンス販売)
•成果報酬型(手数料・マッチング・広告・従量課金)
これらのパターンに基づいて収益と経費を対応させ、利益を算出し、初期投資の回収時期やストック利益の蓄積可能性を分析するのが、収益モデル中心の事業計画です。
収益モデルの分析は、事業が継続的に回り続けるかどうかを判断するための重要なプロセスです。
しかし、ここに大きな見落としがあります。
「食べられる事業」と「跳ねる事業」は違う
収益モデルが成立していれば、事業で生計を立てることは可能です。時間をかければ内部留保も積み上がります。
しかし、その事業が大きく跳ねるかどうかは、収益モデルだけでは判断できません。
起業する能力のある人であれば、大企業で安定した収入を得る選択肢もあります。現代の日本において、「起業しなければ生きていけない」という状況は一般的ではありません。
それでもあえてリスクを取って起業するのであれば、
•その事業は大きく成長するのか
•エグジットによって大きな回収が可能か
•長期的に資本価値を最大化できるか
という視点を持たなければ、起業の合理性は弱くなります。
単に「食べられる事業」をつくるだけでは不十分なのです。
収穫モデルとは何か?
収穫モデル(Harvest Model/Exit Model)とは、事業を最終的にどのように大きく回収するかを設計する戦略です。
収益モデルが「日々の利益の積み上げ」を設計するのに対し、収穫モデルは「出口戦略」を設計します。
代表的な収穫手法
•M&A(事業売却)
•IPO(株式公開)
•事業譲渡
•スピンオフ
収穫モデルでは次の問いを考えます。
•誰がこの事業を欲しがるか?
•何が価値として残るか?(顧客・データ・技術・ブランド)
•いつ、どの規模で回収するか?
この「ゴール設計」こそが収穫モデルです。
| 観点 | 収益モデル | 収穫モデル |
|---|---|---|
| 時間軸 | 短〜中期 | 中〜長期 |
| 主眼 | キャッシュイン | 価値の最大回収 |
| 問い | どう儲かるか | 誰が高く買うか |
| 失敗例 | 売上はあるが伸びない | 黒字だが売れない |
「エグジットはまだ先」と考えることの危険性
新規事業を立ち上げる起業家や中小企業経営者の多くが、次のように考えます。
「まだ零細段階なのにエグジットを考えるのは早すぎる」
しかし、本当にそうでしょうか?
結論から言えば、エグジット(収穫モデル)は事業の初期段階から設計すべきものです。
エグジットを後回しにする思考こそが、新規事業が伸びない最大の原因の一つです。
新規事業が失敗する典型パターン
企業規模に関係なく、多くの新規事業が失敗する理由は明確です。
① 収益モデルしか設計していない
•投資額
•初期損益
•損益分岐点
までは設計している。
しかし、
•誰が買うのか
•いくらで売れるのか
•何が資本価値になるのか
が設計されていない。
この場合、事業は「小さく回る」ことはあっても、スケールしません。
競合が激化すれば収益モデルは崩れ、損益分岐点に到達しない可能性もあります。
② 収穫モデルだけが先行している
一方で、「IPOを目指す」「10倍で売却する」という夢だけが先行し、足元の収益構造が弱いケースもあります。
現代のビジネス環境は不確実性が高く、競争環境の変化も激しいため、収益基盤が弱いままでは「夢はあるが資金が続かない」状態に陥ります。
優れた新規事業の条件
優れた新規事業は、
収益モデルで生き延び、収穫モデルで跳ねる
この両立ができています。
どちらか一方では不十分です。
新規事業構想で使える実践フレーム
収益モデルと収穫モデルを同時に設計するためには、意図的に思考を分離する必要があります。
おすすめの方法は、2枚の紙に分けて設計することです。
① 収益モデルの問い
•今月どのように売上を立てるか
•利益構造はどうなっているか
•いつ損益分岐点を超えるか
② 収穫モデルの問い
•3〜7年後に誰が欲しがるか
•いくらで評価されるか
•なぜ買収対象になるのか
最後に、この2つの設計が同じ方向を向いているかを確認します。
これが新規事業設計の基本構造です。
BtoBとBtoCで異なる収益モデルと収穫モデル
新規事業の設計は、BtoBとBtoCで大きく異なります。
BtoBビジネスの場合
特徴
•顧客が明確
•単価が高い
•契約は論理的・合理的
•継続率が比較的高い
そのため、
収益モデルの積み上げが収穫モデルに直結しやすい
という特徴があります。
数年後、
•安定した契約基盤
•ストック収入
•顧客ネットワーク
が資産価値として評価され、M&A対象になりやすい構造です。
重要ポイント
BtoBでは、
•スケールメリットがあるか
•人依存モデルになっていないか
•再現性があるか
が重要です。
人の力に依存したモデルでは、エグジットにつながりません。
BtoBでは、最初から「売れる事業」を設計することが成功の鍵になります。
BtoCビジネスの場合
BtoCは構造がまったく異なります。
特徴
•顧客数は多い
•単価は低い
•感情的購買が中心
•離脱が早い
•初期はほとんど儲からない
そのため、
収益モデルの延長線上に収穫モデルは成立しません。
BtoCでは、まず収穫モデルを設計し、その後に収益モデルを設計する必要があります。
なぜBtoCは収穫モデルが先か?
BtoCは、最初は利益が出にくい構造です。
もし早期に収益化を急げば、
•課金が成長を止める
•ユーザー拡大が止まる
•ネットワーク効果が生まれない
という失敗に陥ります。
BtoCで重要なのは、最初に「現象」をつくることです。
•ユーザー数の急拡大
•データの蓄積
•ブランド認知の形成
•コミュニティの成立
これらが将来の買収価値になります。
つまりBtoCでは、
現象 → 資本価値 → 収穫
という順番で設計する必要があります。
まとめ:新規事業成功の本質
新規事業で本当に重要なのは、
•収益モデル(どう稼ぐか)
•収穫モデル(どう回収するか)
を同時に設計することです。
収益だけでは跳ねません。
収穫だけでは持ちません。
両立こそが、持続可能かつ資本価値を最大化する新規事業の条件です。
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