生成AI時代、中小企業が大企業に勝つ方法――「幸福の多様化」が生む新たな市場機会

松本尚典

松本尚典

テーマ:事業目標 設定の仕方


「幸福の多様化」時代は、中小企業にとって、大きなチャンスの時代


令和の時代の日本では、個人が感じる幸福のかたちが大きく多様化しています。人によって、幸福だと感じる経験、体験、消費、働き方、学び方、趣味、家族観、人生設計は大きく異なります。

これをビジネスの観点で言い換えれば、個人顧客の満足度を、従来のようなマスの尺度だけで測ることが難しくなったということです。

かつては、多くの人が同じ商品を求め、同じ生活水準の向上を目指していました。しかし現在は、一人ひとりが「自分にとって価値があるもの」「自分らしい幸福を実感できるもの」を選ぶ時代です。

この変化は、中小企業にとって大きなチャンスです。

個人顧客の満足を満たすソリューションを、多品種少量生産で生み出し、それをスピーディに展開して顧客満足につなげる中小企業のマーケティングが、マスで攻める大企業のマーケティングに勝つことができる時代になったからです。

さらに、生成AIの登場によって、この流れは一段と加速しています。

生成AIを正しく活用すれば、中小企業であっても、顧客ニーズの仮説立案、商品コンセプトの設計、広告コピーの作成、営業資料の作成、SNS投稿、顧客対応、事業計画の整理などを、以前よりもはるかに短時間で行うことが可能になります。

つまり、資本調達力やマス広告予算では大企業に劣る中小企業であっても、展開スピード、機動力、顧客理解、生成AI活用力を高めることで、大企業に対抗し、場合によっては勝つことができる時代が到来したということです。

「幸福の多様化」時代までの変遷


「幸福の均一化」の昭和


太平洋戦争が終結した後、高度成長を謳歌した時代の日本は、「一億総○○」という言葉が象徴するように、社会全体に均一化の傾向がありました。

この時代の日本では、所得格差が比較的小さく、多くの国民の所得が上昇し、生活水準も平均的に向上しました。男性の収入が安定し、女性は結婚後に専業主婦となることが一般的で、結婚が「永久就職」と表現される時代でもありました。

このような一律の所得上昇と、戦後型家族モデルを前提とした高度成長期には、多くの国民が、冷暖房の空調、カラーテレビ、自家用車、マイホームといった、共通の消費目標を持っていました。

その結果、消費行動は横並びになり、企業は大量生産された商品を大量広告によって広く販売することで成長することができました。

このような時代のマーケティングでは、マス・マーケティングが極めて有効でした。テレビCMなどの広告に多額の予算を投入できる大企業が、工場生産で効率的に生み出した商品を全国に展開し、圧倒的な勝ちをおさめる時代だったのです。

昭和時代は、幸福の均一化時代だったといえます。

人々は、隣の人と自分の生活を比べ、隣の人よりも少し高い消費生活をすることを目指しました。このような社会は大衆化社会と呼ばれますが、必ずしも、当時の人々の幸福度が高かったとは言い切れません。

バブル崩壊と、格差拡大の序曲


この戦後高度成長型の時代は、平成期に大きく崩れ始めます。

平成期にはバブルが崩壊し、同時に、グローバル化の波と、IT化・サービス化の流れが日本に押し寄せました。

社会のグローバル化やIT化は、従来の学校教育だけでは十分に獲得しにくかった知識、情報処理能力、語学力、ITリテラシー、専門性をビジネスの現場に求めるようになりました。

また、産業のサービス化は、雇用形態の多様化を生み出しました。正規雇用を前提とした年功序列・終身雇用モデルは大きく揺らぎ、従来型の「会社に入れば将来が安定する」という幸福の前提が変化していきました。

大学教育の大衆化により、大学卒業者は増加しましたが、その全員が従来型の大企業雇用に吸収されるわけではありませんでした。大企業の年功序列・終身雇用によって支えられていた幸福の均一化のファンダメンタルズは、社会の地殻の下で大きく変動していったのです。

戦後型家族モデルを選ばず、結婚しない男女も増え、少子高齢化も大きく進み始めました。

経済格差の拡大と、幸福の多様化


産業のサービス化が生み出した雇用形態の多様化は、正規雇用社会の年功序列・終身雇用に基づく幸福感を大きく変えることになりました。

経済的な観点だけから見れば、非正規雇用者は正規雇用者と比較して、仕事の将来性や所得上昇への期待を持ちにくい場合があります。仕事で成果を出しても、待遇面で十分に反映されにくい環境では、仕事への情熱や成長意欲を持ち続けることが難しくなることもあります。

その一方で、働き方の自由度を重視し、自分の時間を大切にしながら生活する価値観も広がりました。昭和期のように、結婚し、マイホームを持ち、他人と同じ生活水準の向上を求めるという一律の幸福モデルだけでは、人々の幸福を説明できなくなったのです。

同時に、IT化・DX化の進展によって、新たな成功者や新たな富裕層も誕生しました。巨大資本が有利だった昭和期には生まれにくかった新興ベンチャーの成功者も次々に登場し、彼らは均一化した消費ではなく、質の高い体験、独自性のあるサービス、自分だけの価値を重視するようになりました。

中間層中心だった日本社会は、令和期に入り、経済的な格差と価値観の多様化が同時に進む社会へと変貌を遂げました。

この変化を、経営者は悲観的に見るだけでは不十分です。

なぜなら、幸福の多様化は、同時にビジネスチャンスの多様化でもあるからです。

そして、生成AIは、この多様化した顧客ニーズを発見し、言語化し、事業化するための強力な武器になります。

生成AIを単なる文章作成ツールとして使うだけでは不十分です。経営者やビジネスパーソンは、生成AIを「顧客理解」「市場仮説」「商品開発」「営業戦略」「広告訴求」「業務効率化」を支援する経営ツールとして活用する必要があります。

リアルで幸福を味わうヒト


こうして経済格差が広がる中で、経済的に比較的豊かな人たちは、生活必需品を超えたリアルな体験、子供の教育、健康、趣味、旅、食、芸術、スポーツ、自己成長など、モノを超えた「コトの消費」を通じて幸福を追求するようになりました。

昭和の高度成長期のような横並びの消費ではなく、自分や子供の能力開発、自分らしさの追求、自分だけのリアルな体験にお金を使い、幸福を追い求める傾向が強くなったのです。

大量生産によって生み出されるモノへの消費は成熟し、個性、質、希少性、自分だけ感を演出する少量のコンテンツやサービスに、高額の消費が向かうようになりました。

このような少量生産や質を重視した「コト」の生産は、消費者と直接向き合いながら、その感覚を重視して商品・サービスを生み出すことができる中小ベンチャー企業に向いています。

経営トップや事業企画責任者が顧客と直接の接点を持ち、顧客の求める商品やサービスを機動的かつスピーディに生み出すことができる企業が成功する時代に突入したといえます。

ここでも、生成AIの活用が大きな意味を持ちます。

たとえば、顧客との対話記録、問い合わせ内容、SNSでの反応、営業現場の声、レビュー、アンケートの自由記述などをもとに、生成AIを使って顧客ニーズを整理すれば、経営者は従来よりも早く市場の変化を把握できます。

ただし、注意しなければならないのは、生成AIが出した回答をそのまま鵜呑みにしてはならないということです。

生成AIは、経営判断を代替するものではありません。経営者が顧客を直接見て、現場の空気を読み、仮説を立てるための補助線として活用すべきものです。

リアルで幸福を味わう層のニーズは、マスのアンケートだけでは本質が見えにくい場合があります。表面的な回答の奥にある、本当の願望、不満、憧れ、優越感、安心感、承認欲求を読み解く必要があります。

このような顧客心理を深く理解し、生成AIも活用しながら商品・サービスに落とし込める企業こそ、令和時代の成長企業になるのです。

リアルな幸福を味わえないヒトも、バーチャルな幸福を味わえる


平成から令和にかけて、日本でも経済的な格差が広がっています。

しかし、経済的に不安定な立場にある人が、必ずしも一律に不幸を感じているとは限りません。むしろ、平成から令和にかけての日本社会の特徴は、現実の所得や雇用形態だけでは測れない、多様な幸福の形が広がっている点にあります。

現実世界で大きな経済的成功を得ていなくても、趣味、創作、ゲーム、動画、配信、コミュニティ、推し活、SNS、バーチャル空間などを通じて、自分の世界で幸福感を味わうことが可能になっています。

このようなバーチャルな世界での幸福追求の代表例の一つが、「推し活」です。アイドル、舞台俳優、声優、アーティスト、配信者、キャラクターなどを応援し、その活動を支える行動は、今では広く社会に定着しています。

私が展開する事業の一つに、エンターテイメント事業があります。私自身、モデルや演劇女優が所属するモデル芸能事務所DRISAKUを経営しています。

モデル芸能事務所DRISAKU
https://urv-group.com/drisaku/


その関係で、私は多くの舞台俳優や女優から招待を受け、年間を通じて数多くの演劇を鑑賞しています。私は企業経営者であり、自分のスケジュールを比較的自分でコントロールできる立場にあります。そのため、一定期間行われる舞台公演に呼ばれると、比較的空席のある平日昼間の公演に足を運ぶこともあります。

そこで実感するのは、平日昼間の公演にも、熱心に舞台を応援する中高年の男性客が少なくないということです。

一般的な感覚では、この時間帯は会社で働いている人が多いと考えられます。しかし実際には、自分の応援する俳優や女優の舞台を観るために時間を調整し、劇場に足を運ぶ人たちがいます。

私は、このような人々の姿を、単純に批判的に見るべきではないと考えています。

なぜなら、その人たちは、自分にとっての幸福の姿を自ら選び、追求しているからです。

結婚、マイホーム、昇進、所得上昇という昭和型の幸福モデルとは異なる形で、推し活やエンターテイメントの世界を通じて、自分だけの幸福を味わっているのです。

そして、このような幸福の多様化は、ビジネスの視点から見ると、極めて重要な意味を持ちます。

人々がどこに感情を動かし、どこに時間を使い、どこにお金を払うのか。その構造を理解できれば、新しい商品・サービスの開発が可能になります。

生成AIを活用するビジネスパーソンにとっても、ここは重要な視点です。

生成AIに単に「売れる商品を考えて」と入力しても、深い答えは出てきません。重要なのは、「どの顧客が、どのような幸福を求め、どのような不満を抱え、どのような言葉に反応するのか」を問いとして設計することです。

つまり、生成AI活用の本質は、プロンプトの技術以前に、顧客理解の深さにあります。

リアル幸福層向けで成功するニセコ化戦略。バーチャルな幸福を味わうヒトにむけて成功するAKB型戦略 。


日本は今、太平洋戦争後の高度成長期と比べると、経済的な格差が拡大しています。物価上昇に賃金上昇が追いつかず、将来に不安を抱く人も少なくありません。

しかし、だからといって、日本人が一律に不幸になっているとは言えません。

リアルな経済社会の中で大きな成功を得ていなくても、バーチャルな世界や趣味の世界の中で、自分らしい幸福追求の場を築くことができるのが、今の日本社会なのです。

したがって、個人の幸福を支援するソリューションにも、多様な在り方が可能です。

リアルな成功者が、サービスの差別化を求める中で生まれたソリューションの一つが、北海道のニセコに代表されるニセコ化戦略です。

経済的に余裕のある富裕層は、価格の安さではなく、快適さ、特別感、上質な空間、洗練されたサービス、混雑からの解放、プライバシー、ステータスを求めます。

そのため、あえて高価格帯のサービス設計を行い、経済的に余裕のある顧客だけが快適に過ごせる空間をつくることで、高い利益率を実現するビジネスモデルが成立します。

このような質の高いサービスを徹底的に追求し、少数の富裕層を対象に高い利益を追求するビジネスモデルは、今後も有力な選択肢となるでしょう。

一方で、バーチャルな疑似恋愛的要素や応援心理を背景に、熱量の高いファンを動員するAKB型戦略も同時に成立します。

AKB型戦略の本質は、単にアイドルビジネスに限られるものではありません。顧客が参加し、応援し、選び、支え、自分も物語の一部であると感じる仕組みをつくることにあります。

ニセコ戦略とAKB型戦略は、まったく別の顧客層をターゲットにした、まったく異なるビジネスモデルです。しかし、この二つが併存し、ともに成功しうるのが、令和の日本市場なのです。

つまり、教科書的な成功法則は存在しません。

重要なのは、自社がどの顧客層に向けて、どのような幸福を提供するのかを明確にすることです。

ここで生成AIは、経営者やビジネスパーソンにとって強力な思考支援ツールになります。

たとえば、次のような問いを生成AIに投げかけることで、自社の戦略仮説を整理できます。

  • 「当社の商品は、顧客のどのような幸福を支援しているのか」
  • 「富裕層向けに高価格化する場合、どの価値を強化すべきか」
  • 「ファン化を進める場合、顧客参加型の仕組みをどう設計すべきか」
  • 「価格競争から抜け出すために、どのような体験価値を訴求すべきか」
  • 「営業資料では、顧客のどの感情に訴えるべきか」


このような問いを持って生成AIを使える企業と、単に文章作成だけに使う企業とでは、成果に大きな差が生まれます。

ヒトがどこに幸福を見出すかを見極めれば、ビジネスチャンスは無限大に広がる時代


ビジネスとは、ビジネスユーザーやコンシューマーユーザーにソリューションを創って提供し、その付加価値を利益に替える行動です。

ソリューションとは、課題に対する解決法です。

したがって、個人の幸福追求が多様化すれば、そこには多様な課題が生まれ、多様なソリューションが生まれる可能性があります。

昭和期の高度成長のように、幸福追求が一元的だった時代には、そのソリューションの大量生産とマス広告に大きな投資が可能な大企業が、圧倒的に有利でした。

しかし、令和時代に入り、格差が進み、幸福の在り方が多様化した今、ソリューションのアイデアの源泉は無限にあるといえます。

ただし、多様化しているだけに、ソリューションの寿命は短くなり、商品・サービスは多品種少量生産になり、広告対象も非常に限定的になります。

このような時代には、スピーディな低投資のソリューション開発、精度の高いターゲティング広告、顧客ニーズの継続的な把握、そして生成AIを活用した仮説検証の速さが、企業の競争力を大きく左右します。

ビジネスチャンスは無限大に広がる一方で、その開発と売り切りには圧倒的なスピードが求められます。

ここで重要なのは、生成AIを「便利な道具」として使うだけではなく、「経営の意思決定を速める参謀」として使うことです。

生成AIは、経営者やビジネスパーソンに対して、次のような支援を行うことができます。

  • 顧客ニーズの整理
  • 新規事業アイデアの壁打ち
  • 商品コンセプトの言語化
  • 営業トークの改善
  • 広告コピーの作成
  • SNS発信の企画
  • 競合との差別化ポイントの整理
  • 採用メッセージの設計
  • 社内マニュアルの作成
  • 経営計画のたたき台作成


しかし、生成AIを導入しただけで成果が出るわけではありません。

成果を出すためには、自社の事業構造、顧客層、強み、収益モデル、営業プロセス、組織課題を踏まえたうえで、生成AIをどこに、どのように組み込むかを設計する必要があります。

生成AIの使い方に課題を持っているビジネスパーソンの多くは、「ChatGPTで文章を作る」段階で止まっています。

本当に重要なのは、生成AIを使って、自社の顧客理解を深め、営業を強化し、商品開発を速め、経営判断の質を高めることです。

このようなソリューション開発ができる企業が、圧倒的な成長と勝ちの成果を手にする時代になったと、私は考えています。そして、私自身も、企業グループの経営と経営コンサルティングの現場で、その実践を続けています。

生成AIをどのように経営に活かせばよいのか。
自社の商品・サービスを、どの顧客の幸福に結びつければよいのか。
中小企業が大企業に勝つために、どの市場を狙い、どのようなスピードで展開すべきなのか。

これらは、一般論だけでは答えが出ません。

自社の事業、顧客、商品、営業体制、経営資源を踏まえた個別の設計が必要です。

  • 生成AIを使っているが成果につながっていない。
  • 新規事業や商品企画のスピードを上げたい。
  • 中小企業として、大企業とは違う勝ち方を見つけたい。
  • 自社の強みを、顧客に伝わる言葉へ変えたい。
  • 経営者として、生成AIを経営戦略に組み込みたい。


このような課題をお持ちの経営者・事業責任者・ビジネスパーソンは、ぜひ一度、松本尚典の個別相談をご活用ください。

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松本尚典
専門家

松本尚典(経営コンサルタント)

URVグローバルグループ 

経営者の弱みを補強して売上を伸ばし、強みをさらに伸ばして新規事業を立ち上げるなど、相談者一人一人の個性を大切にしたコンサルティングで中小企業を成長させる。副業から始めて、独立で成功したい人も相談可能。

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