知っておきたいDX用語 ダイナミックプライシングって、何よ?
ブロックチェーン技術の凄さと、暗号資産は、別物
2009年1月。
Satoshi Nakamotoと名乗る匿名の人物が論文を発表したブロックチェーンテクノロジーをベースに、ビットコインが誕生し、ここに暗号資産の歴史が始まりました。世界経済が、リーマンショックの後遺症に揺れていたタイミングでした。
当時、僕は、2007年にウオール街を離れて、日本の大手企業の役員の立場にいましたが、独立を見据えて、古巣の金融事業にも情報網を張っていましたので、このブロックチェーンという新しいテクノロジーに強い興味を抱きました。応用情報処理技術士の資格も保有していた僕の常識では、情報システムの基本的な姿は、クライアントサーバーシステムに留まっていた当時、その常識を破るブロックチェーンというテクノロジーに、僕も大きな可能性を感じ、それ以来、事業の展開の可能性を、この分野に模索してきました。
しかし、金融業界で、金融系経営コンサルタントとして、ウオール街で生きてきて、しかも、情報処理技術者の国家資格も持っていたエンジニアでもある、複眼的な僕の目からみると、当時の世論は、このブロックチェーンという優れたテクノロジーに対する評価と期待が、金融資産としての暗号資産の評価と、混同されていたのではないかと感じました。
僕もブロックチェーンというテクノロジーは、情報技術としての、その偽造改ざんが不可能な画期的な性格は、未来の情報テクノロジーの到来を予想させるものとして、極めて優れたものだと感じました。おそらく、情報処理を専門とする技術者で、それを疑うヒトは誰もいないほど、それは画期的なテクノロジーだと思います。
しかし、他方で、その技術の実用化のトップをきって登場した、ビットコインと、そこからそのあとを追って登場した、様々な仮想通貨・暗号通貨は、金融経済を専門とするヒトからは、極めて不評なものでした。
国家の政策関与なしに、現代の通貨はありえない
高度に発展した現代の経済を支える通貨は、古代に発生した「和同開珎」などの原始的な通貨とは全く異質なものです。
需要と供給が自立的に通貨価値を決め、価格が「カミの手によって」理想的に自動化されるなどという論理は、アダムスミスの国富論のなかに書かれている古典派の経済学時代の幻想であって、国家が経済政策の主体として、物価・為替・賃金を巨額な国家予算を投じて調整する複合経済が当たり前の現代においては、単なる「昔話」にしか過ぎません。
従って、仮想通貨・暗号通貨が、もし、国家の通貨発行権力から独立して通用し、国家の経済政策に服さない経済圏を誕生させるとしたら、その未来は理想的な未来ではなく、通貨価値が市場のプレーヤーの思惑によって恣意的に操縦され、物価が乱高下を起こし、為替の取引も、労働の結果得られる賃金の価値すら信用できなくなる、暗黒の未来でしかありえません。
したがって、そのような暗号通貨・仮想通貨に群がるのは、マネーロンダリングの絶好の手段を手に入れたとほくそ笑む反社会的勢力か、あるいは、経済の最も簡単な教科書すら理解できずに、投資と投機の区別もつけられない愚かな大衆投資家しかありえないと僕は思いました。
中国が、デジタル人民元を発行するといった、国家が通貨発行政策として、ブロクチェーンや、更に今後登場する優れたデジタル技術を用いて通貨を発行する未来は、すぐそこまできています。
しかし、国家の通貨公権とは独立した暗号通貨・仮想通貨は、一時的なブームがあっても、最終的に大混乱を引き起こし、そこに参入した愚かな大衆投資家に大損害を与えるブラックな存在でい続けると思います。
この考えは、いまだに変わりません。したがって、暗号資産は未来に大きな経済的ポジションを獲得するとは、僕は思っておりません。
ビットコインに助けられた経験
でも、実は、かくいう僕も、ビットコインに、過去、1回だけ大きく助けられた事実があったことも、ここで書いた置かなければなりません。
僕は、現在、インドに2つの野菜工場を経営する会社のオーナーです。一方で、URVグローバルグループは、インドのチェナイとバンガロールに、商品である野菜輸出の業務を行うためのオフィスを構えております。
この活動の前哨戦として、2015年に株式会社URVプランニングサポーターズを創業した当時から、僕はインドの可能性を予測して、現地に契約リサーチャーを配置して、情報収集を続けて、事業機会を模索していました。
そのインドで、2016年11月、インドのモディ首相が、抜き打ち的にデノミを強行しました。インド国内に溢れる偽造通貨を一掃する区的で、既存のルピーの高額紙幣の効力を、突然、廃止したのです。
インド国内に激震が走りました。
高額紙幣は、一瞬のうちに利用ができなくなり、銀行で新通貨に変えなければ支払いもできなくなるという、SF映画のような事態が、本当に起きたのです。
一方で、銀行は押し寄せる大衆を前にシャッターを閉ざして閉行してしまい、新通貨を取得する方法がありません。
この時、僕は急激に勃興する新興国の荒治療の恐ろしさを痛感したのでした。
URVグローバルグループのインドの現場の経理部門においても、リサーチャーの給与に支払うためのルピー紙幣が機能しなくなりました。銀行での振込手続きも動きません。
インド国内では、債務の支払い停止が頻発し、どこの企業も決済支払いや給与支払が停止されて、インドは大混乱に陥ってしまいました。
僕としても、何とか、現地で活動を続けて、リサーチャーに支払う給与を、僕が資産を保有する欧州のプライベートバンクからインドに、緊急に送らなければなりませんでしたが、銀行が動かず、SWIFTが機能しなくなり、国際送金もできませんでした。
そこで、僕は、初めて、ビットコインによる送金を試みたのでした。国家から独立した、ビットコインの送金だけが、この時、機能したのです。
その結果、インドの企業が取引の支払いや給与の支払いをとめる中、URVグローバルグループは、すべての支払いを予定通り行うことができ、チェンナイにおける評判と信用は、大きく向上しました。
ビットコインをはじめとする仮想通貨は、政府や銀行が機能しなくなったような、緊急事態が勃発したとき、その緊急対応策として、思いがけずに機能することもあるのだという経験を僕もした事例でした。