中小企業経営者の、よきメンターとなるために
1、2024年、世界は緩和マネーが溢れている
日本でも、物価が上がっています。
2024年第一四半期における、政治に対する国民の要求の最大ポイントは、物価を抑えてほしい、という点になっています。
日本は、1990年以来、長いデフレ期が続いたため、日本人はインフレに慣れていません。インフレになり、物価が上がると、国民は、賃金引き上げを要求します。しかし、全面的な賃上げは、市場に通貨が増える要因になりますので、インフレは更に加速し、物価は更に上昇しますので、それでは国民生活は一向に豊かになりません。
物価を抑える政策は、市場にあるカネの量を抑え、金利を引き上げて企業の投資や個人消費を抑える必要があります。しかし、この政策は、非常に危険であり、1980年代後半から1990年代に行われていた、日銀のこの政策によって、インフレを急激に抑えすぎたため、大量な不良債権を生み出し、日本経済が長期的に苦しむ「失われた20年」に突入する契機になってしまいました。
この轍を踏まないため、日銀は、ゼロ金利政策を解除することに慎重になっており、政府も、
賃上げを企業に奨励しています。ここに生じてくるのが、緩和マネーが市場に溢れる現象です。
世界に目を転じてみると、アメリカをはじめとする先進国の中央銀行は、金利を引き上げてきまして、今、その高金利時代が転機を迎えつつあります。アメリカのFRBが、金利引き上げつつあるのです。しかし、通常、このような状態になれば、市場のカネは減少するのですが、今は、そうなっていません。
世界には、圧縮されない緩和マネーが溢れている状態です。
緩和マネーが溢れているのは、先進国の各国中央銀行の資産の保有状況から推測ができます。欧州のECB、米国のFRB、そして日本の日銀。このすべての先進国中央銀行の資産総計が、2000年代で最高な状態に、コロナ禍で至り、コロナ禍が解消しても、高止まりを続けているのです。コロナ禍の緊急事態にピークに達した資産は、現在も最高時の8割の水準に高止まりしています。
中央銀行は、市場にオカネを供給するため、市場から資産を買い受けます。そのため、中央銀行の資産の量は、市場に、どれだけオカネが供給されているかを示す指針になります。
現在の状態は、日本を除く各国の金利が高い水準にあり、ここから利下げの局面に入るという「引き締め」状態にあるにもかかわらず、世界には、コロナ禍で緩和供給されたオカネが潤沢に供給されたままの状態になっています。
2、経済法則に反して、何故、緩和マネーが、世界に溢れているのか?
では、何故、コロナ禍で緩和されたオカネが、いまだに市場に溢れているのでしょうか?
アメリカFRBの状況
まず、その最大の原因は、アメリカにあります。FRB(連邦準備制度理事会)は、現在、コロナ禍で、市場に資金を供給するため、大量に購入した米国債や、住宅ローン担保債権を圧縮して、市場から資金を回収する措置を進めています。
その規模は、月間950億ドルの規模で進んでいます。しかし、コロナ禍前に水準からみると、まだ、残高は3.4兆ドル多い水準にあります。
アメリカでは、市場に溢れるマネー量を引き締めてはいるものの、その水準は、高止まりしている状態です。
2024年は、大統領選挙を控え、景気に対する微妙なかじ取りを迫られる時期です。すでに、アメリカでは金利上昇が打ち止めになり、今後、金融緩和局面に入ると予想されます。
つまり、アメリカは、コロナ禍で緩んだ市場のマネーが、圧縮仕切らない段階で、緩和に入らざるをえない状態と言えます。
アメリカに追随する欧州と、日本
欧州のECBは、概ね、FRBのあとを追うように政策を進めており、アメリカと同様、緩和マネーが欧州に溢れています。
一方、先進国で唯一、ゼロ金利政策をとり続けてきた日本の日銀は、今、ようやくゼロ金利から脱却して、「金利のある」世界に戻ろうとしています。本来であれば、これは金融引き締めとなり、緩和マネーが収縮するはずです。
しかし、日銀は、金利を引き上げると同時に、長期国債の買い入れは、これまでと同様のスピードで継続すると発表しています。
3、2024年のいま、緩和マネーは、どこに向かっているのか?
アメリカと欧州が金利を引き下げ、日本が金利をあげれば、円安と相まって、先進国のマネーは、日本に流入しやすくなります。
同時に、これまで金利を引き上げてきた、日本を除く先進国の金融政策は、コロナ前に新興国にあふれていた投資マネ-を、先進国に回帰させる機能をはたしてきました。この転換は、再び、投資マネーが、新興国の高成長国に向かうことを、容易に想像させます。
今後、日本に緩和マネーが流れ込み、そのマネーが、より高い成長を求めて、新興国に投資される動きが強まるものと、予想できます。
4、中小企業の経営者も、これからは「マクロ経済志向」に強くなれ
経営コンサルタントとして、様々な規模の経営者の方と仕事をさせていただくと、思うことがあります。
大企業、とりわけ、上場企業の経営者の方というのは、非常に勉強をされていて、マクロ経済や自社を取り巻く外部環境に精通されています。一方で、企業規模が大きく、現場の情報にあまり接していないため、自社の内部環境をよく知らない方も散見されます。
一方、中小企業の経営者の方は、企業規模が小さく、かつ創業のオーナーが多いため、自社の内部環境、その強みや弱みは、よく把握されています。ところが、あまり勉強をされない方が多く、マクロ経済や、自社を取り巻く外部環境を、ほとんど知りません。
中小企業の経営者には、視野が狭く、目先のことしか、目がいかない方が多いのです。
しかし、中小企業の経営では、大企業以上に、外部環境の影響を受け易く、マクロ経済を知らなければならないのです。
その意味から、僕は、自分のクライアントの経営者の方には、カンファレンスを通して、マクロ経済や、金融の基本的なナレッジもお教えするようにしています。
金利と為替の関係や、マネーサプライの変動がなぜ起こり、その結果、自社の経営環境にどのような影響が及ぶか、という点は、忙しい中で、本で勉強しても、なかなか、自社の経営に実践的に活かせる知識が身につかないからです。
中小企業の経営者こそ、今後は、マクロ経済に強くなり、その知識を自社の経営の武器にすべきなのです。
5、具体的に、どう行動すれば、緩和マネーを売上に吸収できるか?
しかし、マクロ経済の知識をえて、それに強くなっただけでは、一銭の利益にもなりません。
中小企業経営者は、マクロ経済の知見を基礎に、現在の経済情報を収集して、それを自力で分析し、未来の経済変動を予測しながら、マクロ経済が指し示す未来のマネーの動きに従って、自分の会社の具体的な企業戦略や、事業ベクトルを、マナーが流れる方向に向けてゆかなければなりません。
マネーが流れこむ先には、大きな事業に対する追い風が吹きます。他の企業に先んじて、そこに事業のベクトルを向ければ、資金力が十分でない中小企業でも、勝ち馬に乗って上昇をすることができます。
2024年の緩和マネーの現状を見ると、コロナ禍の終焉から1年を経過して、そのコロナ禍対策で溢れたマネーが回収されず、市場に溢れています。
そして、今後の日銀の金利引き上げ政策をみていると、おそらく、先進国のマナーが流れ込む先の一つが、日本になるでしょう。
しかし、2024年4月現在、海外投資家が円を売り、日本企業が円を買い戻す動きが弱く、円は安値をつけています。短期的には、この円安が修正される動きを見せるでしょうが、長期的には、円は更に安くなるでしょう。
そうなると、日本に流入する緩和マネーを稼いでも、日本円安と、それに伴うインフレの進行は、日本の中小企業の稼ぐ利益の上昇率を越えてゆくでしょう。
従って、日本円であげた利益を海外進出に投資して、外貨売上と利益を稼ぐ動きに出る戦略が必要です。
その主戦場は、金融緩和が進む米国からの資金が流れこむ、グローバルサウスの諸国となるでしょう。
このような流れを予測し、動く中小企業が、明日の勝ち組となっていくでしょう。
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