日本は決してダメな国ではない! ここから成長する経営者は、日本市場をこう活用する

松本尚典

松本尚典

テーマ:売上あげる 売れる化 コツ



1、GDPでランクが下がり続け、少子高齢化が世界一進み、政治家がダメダメな日本?


GDPのランキングで、2011年にアメリカ合衆国に次ぐ第2位の地位を中国に明け渡してから、12年後の2023年。日本は、第4位のドイツにGDPで追い抜かれて、世界で4位の経済力に落ちたことが明らかになりました。そして、2027年には、5位のインドにGDPで追い抜かれて、5位に落ちると予測されています

日本の上場企業の株価は、2024年2月現在、各社の業績の良さを反映して最高値に向けて上昇しています。しかし、これは、日本の優良上場企業が、軒並み、海外マーケットで売り上げをあげて利益をえている結果です。このようなグローバルな優良企業の業績に反して、日本国内でエリアマーケティングを集中する中小零細企業の業績は悪く、倒産件数も大きく伸びています。

日本を市場としてみた場合、少子高齢化が進み、市場は今後縮小し続け、そのため、あらゆる商品に対する需要は落ち続けるでしょう。そうなれば、日本国内マーケットは、競争過多となり、競合が激しいレッドオーシャン化してゆくことは、ほぼ間違いありません。

そして、これを食い止める政策で市場に介入する政策を大胆に打つべき与党の政治家が、犯罪的な脱税行為のスキャンダルで政策機能が滞り、それを批判する野党の政治家には、批判すれども、政権交代を実現できるビジョンも信頼もない、というのが、この国の政治の姿です。

若者の未来に対する失望は、婚姻率や出生率の大幅な低下によって明確にあらわれており、それが更にこの国の失速を加速させるでしょう。

そうみてくると、この日本という国は、ダメダメであって、もう捨てるしかない、という結果になりそうです。

しかし、果たして、日本は、捨てるべき国なのでしょうか? 僕は、今後の勝てる日本の事業家は、この国の優れた強みを基礎に、それを海外に売って勝ってゆく道を選ぶべきである、というのが、持論なのです。

僕自身も、この考え方で、今、世界で、売上と利益をあげています。

2、日本市場の最大の強みは、その「厳しい消費者」にある!


確かに、2020年代には、日本の人口減少の将来像は絶望的になるでしょう。現在の政府が国民向けにPR的に発信している人口8000万人で食い止める政策を、現実的であるとする専門家は、ほとんどいません。

総務省ですら、日本の人口減少の最悪なシナリオは、4000万人まで減少という長期予想を発表しているほどです。

2024年現在の日本の人口は約1億2000万人です。この人口が、3分の2から、3分の1まで減少し、更に高齢化も進行するならば、その減少に国民一人当たりの生産性が追いつくはずはなく、したがって、この国のマーケットとしての価値は、間違いなく「下り坂のエスカレーター」に乗っているように落ちていくことは確実です。

しかし、日本人が減少するということは、反面で、「この国は、日本人にはとても住みよい環境になる」ことを意味しています。

人口4000万人といえば、明治維新の時代と、ほぼ同じです。この市場を巡って、国内向けのサービス産業は、更に競争を繰り返し、都市も地方も環境は非常に向上するでしょう。いわば、今の北欧の社会のような国に、この国が向かっていくことを意味します。

常に労働力の過小現象が続き、国民の失業率が減り続けるでしょう。

国家財政や地方財政は、国民から税を回収するのではなく、グローバル化した日本企業が海外で稼ぐ利益に課税するようになり、インバウンンドで日本にやってくる外国人からも消費税を課税するので、おそらく、国民の減少によっても日本が破綻することはないでしょう。巨額の財政赤字が減ることはないでしょうが、それによって、日本が破綻することまでは、おそらくは起きないでしょう。

このような環境の中で、生み出され続ける、優れた商品・サービスこそ、日本の大きな資源になると僕は考えています。

人口減少が進めば、売りたい企業が多くなり、消費者の目は、どんどん厳しくなります。この厳しい消費者の目は、おそらく、世界で最も高い水準の商品・サービスを生み出し続けるはずです。

そう、人口減少が進み、住環境が向上する日本は、更に厳しくなる消費者の目に磨かれた、優れた商品を生み出すには、最も適した国になると、僕は、確信しています。

マスマーケットとしての価値は下がり続けますが、一方で、商品開発やサービスを生み出す生産地としての価値は、上がり続ける、というのが、今後の日本という国だと僕は確信しています。

3、日本で成功したダイソンと、日本を攻められないサムソンの差


世界のメーカーの、日本での成功と失敗事例から、以上の日本市場の位置づけが正しいことをみていきましょう。

ダイソンの成功事例


家電製品で、日本市場進出を最も成功させた事例が、掃除機のダイソンです。
ダイソンは、1993年にイギリスで創業された企業で、その5年後の1998年に日本にいち早く進出しました。

創業者であるジェームス・ダイソン氏は、日本進出を非常に戦略的に位置づけました。

彼は、


  • 「日本は世界で最も厳しい消費者の国。」
  • 「日本の消費者は、クレームをほとんどいうことなく、商品が気に入らなければ、一切買わなくなる特徴を持つ、最も難しい国。」
  • 「日本で成功した商品は、世界のどこでも売れる。」


と位置付け、欧州で販売する商品と比較にならないほど、手間をかけた製法の商品で、日本に挑みます。そして、日本で最も優れた掃除機メーカーというブランドに成長し、世界に進出を果たしました。

このようなダイソンの姿勢が、ダイソンを、その後、中国メーカーでダイソンの類似商品を創るメーカーが出てきても、その追随を許さないメーカーへと成長を遂げます。

サムソンの失敗事例


一方で、このダイソンと異なる戦略で失敗したのが、韓国のサムソンの日本市場進出です。

韓国の財閥系メーカーでも、ロッテが日本に広く受け入れられているのと対照的に、サムソンは、家電でまったく日本市場で消費者の評価を受けていません。

サムソンは、日本に韓国国内や欧米で販売しているのと同様の商品で臨みました。しかし、韓国内や欧米で成功したサムソンも、日本市場では、日本のメーカーから格段見劣りしていると消費者に考えられ、全く成功をしていません。

サムソンは、日本の消費者を他国の消費者レベルだと勘違いして、失敗した事例です。

4、日本で磨かれた良質な商品・サービスを、成長する世界の市場で売ろう


日本のマーケット規模は今後、下がり続け、この国をマスマーケティングの市場としてモノを売るとすれば、それは、非常に困難な時代がやってくるでしょう。上場企業の株価があがっている企業の実態は、ほとんどが海外市場でモノを売っている企業であることが、それを物語っています。

では、だからといって、1980年代のアメリカ企業のように、今の日本の大企業が日本を捨てて、海外に行ってしまっているかといえば、そうなっていません。日本の優良大企業の多くが、いまだに日本を基盤にする日本企業のままです。

日本は、アメリカのような産業の空洞化がおきていません。

それは、日本市場が世界で最も厳しい市場であり、そこで商品開発を行うことに適した環境だからです。

今後、優れた中小企業も、日本の大企業と同じ道を歩むでしょう。日本で磨かれた良質な商品・サービスは、世界が認め、称賛されます。その商品・サービスがあれば、今後、勃興する新興国の中間層マーケットで、高い評価をえられます。

中国やインドが、いかに名目GDPが高くなろうと、多くの中国資本やインド資本が、日本企業のように、磨き抜かれた商品を世界に提供できるわけではありません。

日本の中小企業の強い企業は、今後、日本を基盤にして、世界に合弁企業や現地法人を作り、日本で磨き抜かれた商品やサービスを、世界に向けて販売し、外貨で売り上げを獲得する企業に成長するはずです。

その道こそが、自分の会社を、勝ち組の成長企業にしてゆく道だと僕は考えています。

そして、その道を僕の企業で実践し、そのノウハウをクライアント企業に指導しています。

日本という、世界一厳しい市場で商品を作り、それを大きく成長する政界のマーケットで売る・・・。
この戦略をとれる中小企業が、明日の成長企業となるでしょう。


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松本尚典(経営コンサルタント)

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