成長する企業を作るために知らなければならない、資金調達法の極意
1、会社成長に欠かせない資金調達
企業の経営活動の本質は、調達した資金を、ヒト・モノ・情報などの経営資源に投資して、売上を確保し、その資金を再投資して、利益を増やしてゆくことにあります。
したがって、企業の価値を高める方法は、投資に対する利益を確保する率(投資利益率・ROIC)を高めることに尽きるといえます。
したがって、企業価値を高める起点となるのが、資金です。
資金の調達が上手く、その資金を事業で運用する方法が上手いことが、名経営者の条件ということになります。
自己資金に、それの数倍の調達した資金を加え、高い投資利益率で回すことで、企業はレバレッジの効いた高い投資収益率を生み出して、高い成長を実現することができます。僕も、そうやって事業を拡大してきました。
したがって、何で資金を利益化するか(事業戦略)の優秀さとともに、どう資金を調達するか(資金調達力)、が、優れた経営者に求められる資質なのです。
どんなに、優れた事業戦略や事業計画をかけても、資金調達が下手で臆病な経営者は、その戦略や計画は、単なる画にかいた餅となります。
会社成長には、事業戦略や事業計画とともに、資金調達が重要なファクターとなるのです。
2、借入・投資・補助金は、それぞれ財務諸表にどう影響を及ぼすか?
では、その資金調達には、どのような方法があるのでしょうか?
企業の資金調達には、大きくわけて、3つの方法があります。
- 借入
- 投資
- 補助金
以下では、まず、この3つの方法について、それぞれの特徴と、それが経営者の成績表である財務諸表に、どう影響を及ぼすかについて、みていきたいと思います。
借入
日本政策金融公庫や、信用保証協会の保証制度を利用した制度融資(地方銀行や信用金庫からの借入を利用する方法)で、資金を借り入れる方法です。
借入を起こしやすい企業は、収益構造に安定性が高いストック型収益中心の企業や、財務諸表の資産に豊富な資産(含み資産を含む)を持っている企業です。金融機関は、中長期で元本の回収ができるかを最も重視して審査をします。そのため、資産がしっかりしているか、あるいは、収益モデルが安定性の高いかが、融資で資金調達ができるかどうかのポイントになります。
借入で調達した資金は、1年以上の返済期間の部分に関しては貸借対照表の長期負債となり、流動負債に組み入れられないため、流動性比率を悪化させることがないというメリットがあります。
一方で、社長から出資手続きをえることなく会社に入れた資金は、短期借入金として流動負債とみなされるため、流動性を悪化させ、与信にマイナスの影響を与えます。
一方、借入によって調達した資金は、金利が発生し(金利は営業外費用として、法人税務上、損金に組み入れることができます)、返済を開始しなければなりません。借入の元本返済は、負債をマイナスするため、経費や損金に算入ができません。元本返済は、利益から行っていく必要があるのです。
借入によって調達した資金は、金利を上回る投資収益率で事業投資をして、収益化しないと、資金調達によって、会社の価値をあげることはできません。
投資
投資を受け入れる方法は、以下のようなものがあります。
- 投資ファンド
- 事業会社
- エンジェル投資
- クラウドファンディング
投資ファンドからの投資を受けやすい企業
投資ファンドから投資を受けいれやすい企業は、金融機関から借入がしやすい企業とは異なります。
安定性ではなく、高い成長性が見込めるかがポイントになります。
初期投資に大きな資金が必要となり、事業モデルができあがれば、高い成長性と収益性が見込める事業であれば、それをしっかりと現実性の高い事業計画に落とし込むことで、投資ファンドから、投資を受けることができます。
一方で、安定収益型の企業の場合、成長性が高くないことが多く、融資をうけられても、投資を受けられるとは限りません。
投資ファンドが投資する狙いは、上場により企業価値に市場での価格をつけて、その価値を最大化することにあります。したがって、投資ファンドから投資を受ける企業は、単に、売上と利益を急成長させるビジネスモデルを実践することを目標にするだけでなく、事業の社会性の追求や、コンプライアンスなどの面で、エクセレントな経営を目指すものでなければなりません。上場を実現できることが、大きなポイントになります。
事業会社が投資をする目的
一方、事業会社が投資をする基準は、投資ファンドのように上場による企業価値の上昇という点ではなく、自社の事業グループの一員として、その企業の事業と自社の事業にシナジーがある、という点が重視されます。
ベンチャー企業は、投資ファンドからの投資を狙いますが、実際は、投資ファンドからの投資よりも、事業会社からの投資を受けるほうが、難易度は下がります。
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エンジェル投資は、実は、一番、経営の足を引っ張るリスクがある
エンジェル投資とは、社長の知り合い(親戚や友人など)から、投資を受けることです。エンジェル投資の場合、投資家は、リターンや株主価値の売却を求めているというわけでは必ずしもなく(ヒトによっては、儲け話だと思って乗ってくるヒトもいますが)、社長との人間関係で投資をしてくれるわけです。
しかし、だからこそ、逆に、会社経営がはじまり、一番、問題を引き起こすのが、エンジェル投資です。
先にあげた投資ファンドや事業会社は、会社の経営に口を出してきますが、投資目的が利益の追求であるプロである分だけ、その思惑がはずれた場合でも、ビジネスライクに判断をします。
しかし、エンジェル投資は、そこに人間関係がからむだけに、その関係に問題がおきたり、投資家側に相続が発生したりすると、投資であるにも関わらず、カネを返せ、といった問題が起きることも珍しくありません。
エンジェル投資に頼る社長は多いのですが、最も、あとになって経営の足を引っ張るのもまた、エンジェル投資だと思ったほうがよいでしょう。
クラウドファンディングが向く事業
最近、クラウドファンディングが一般的になり、様々なサービスが提供されているため、クラウドファンディングに安易に走る経営者が散見されます。
その様子をみていると、「投資ファンドや事業会社から投資を受けられるような事業計画を立てることができず、銀行からの借入れも難しい」という企業が、消去法で、クラウドファンディングに手を出しているようにも見えます。
クラウドファンディングが成功できるサービスは、何よりも、その「投資家が一般の多数のヒト」であることから導けます。
わかりやすく、一般的に多数派のヒトに受けいれやすい商品であって、かつ、今までに市場にないものである必要があります。
そして、このような商品やサービスは、開発が非常に難しいわけです。
ほかのヒトが思いつかずに、自分だけが開発に至り、それが多くのヒトに、すうっと受けられるような商品を、この競争の激しく、消費者の懐が閉まっている時代に出すことができるということは、投資ファンドからお金を引き出したり、金融機関から融資を受けたりすることよりも、はるかに難しいわけです。
そのため、圧倒的多数のクラウドファンディングは、資金調達としては失敗しています。
尚、以上のような方法で投資を受けた場合、新株を発行して払い込みを投資家に行っていただきますので、投資資金は負債のように返済が必要ありません。純資産を構成します。
一方で、第三者からの投資を受けた場合、利益から配当を出すことが求められ、利益が出さない場合、投資家は株主として、経営者の責任を追及してきます。この点を覚悟しておく必要があります。
補助金
補助金は、国や地方公共団体の政策に従い、ヒトの雇用や一定の経費支出に対して、その負担の一部を補填するものです。
あるヒトの雇用や特定の経費を年間計画的に支出できる場合には、費用の補填策となります。
但し、その採択や経費の証拠書類の要件が極めて厳しく、相当に、当該補助金の基準を知り尽くしている専門家と取り組まないと、実際の入金まで辿り着けません。
安易に考えて申請に手を出してしまうと、補助金自体に足をとられてしまいます。
特に、最近は、コロナ禍における持続化「支援金」が、非常に簡単な手続きで受け取れたことから、名称が似ている持続化「補助金」の申請を安易に行う傾向があります。
しかし、この2つは全く異なる制度であり、持続化補助金の利用は、非常に要件が厳しいものです。加えて、零細企業にとっては、支出経費が先出になり、そこから、半年以上たたないと入金が確保できません。
このような点で、融資や投資よりも、ずっと、入金サイトが長いことを念頭において利用しないと、問題が起きてしまいます。
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補助金がおりた場合、費用がマイナスされるのではなく、営業外収益に加算されます。したがって、法人税の課税対象の利益となることに注意してください。一方、消費税の預かりは発生しません。
3、資金供給側の立場に立って考える、「失敗する理由」
資金調達に失敗する経営者をみていて、共通するのは、「自分の都合のよい方向からしか資金調達を考えていない」ことがあげられます。
銀行をはじめとする金融機関は、慈善活動で資金を貸しているわけではなく、金利を稼ぐために、商品としてのカネを貸しているわけですから、金利を負担しながら元本を確実に返済できる企業にしか、融資を行わないことは当然です。
投資をする企業は、投資を受ける企業を支配し、その成長の収益や、成長の結果の企業価値のアップを利用することを目的としていますから、成長性の高い事業にしか投資をしません。
クラウドファンディングに参加する個人投資家もまた、自分の中に、それぞれ投資の基軸をもって動いていますから、その個人の多数を引き付ける商品やサービスでなければ、成功をしません。
資金調達という機会を通して、経営者は、それぞれの資金を出す供給者の目線にたって、自分の事業モデルを見つめなおすきっかけにするのがよいでしょう。
安定的なストック収益型事業なのか
高い成長性を将来見込める事業なのか
世の中にまだない、多数の消費者が求めるソリューションを生み出す事業なのか
しっかりと計画した経費支出を補填するための資金なのか
他の企業が大資本を投じて作りあげた成功モデルを、単に後ろから真似をするようなことを、消費本のベンチャーやアントレが行っても、成功するはずがありません。
資金調達をするということは、おカネがないわけなのです。カネという経営資源がない経営者が成功するためには、もっともっと、自分のアタマを使って、投資家や金融機関がおカネを出したくなるような事業を生み出す必要があるのです。
4、資金調達が難しい企業は、内部留保で資金を作れ
資金調達は、以上に述べてきたように、企業にとって難しいものです。融資であれ、投資であれ、ヒトからお金を出してもらうには、事業の安定性や成長性に対する一定の与信が必要になります。
与信を受けるためには、実績が必要となります。
創業融資のように、国の政策で融資条件が軽く、創業時に与信がなくても融資が受けられたとしても、資金というものは、一時的に借り入れられれば終わるものではありません。返済が進んだ後に、「借り戻し」の手法を使って、資金の融資を受けるためには、与信が必ず必要となります。
与信を構成する要素は、適切な財務の管理に基づく利益の内部留保の蓄積に他なりません。
事業計画というものは、あくまでも、「とらぬ狸の皮算用」であって、どんなに事業計画をもっともらしく作っても、最終的には、「経営者の成績表」と言われる財務諸表が正しく企業の実態を反映して作成され、毎年、利益が適切に出されて、それが積みあがって内部留保ができていることが極めて重要なのです。
これができていない企業が、いくらもっともらしい事業計画を作っても、それは、あたかも、成績表の悪い子供が、「これから頑張る!」と言っているようなもので、大人がそれを信用してはくれないのと、同じなのです。
融資や投資が受けられないという事態に至った経営者の方は、金融機関や投資ファンドを逆恨みするのではなく、自分の経営の仕方を根本的に見直すとよいでしょう。
利益を出して内部留保を蓄積することは、最大の資金調達法であるとともに、次の機会に与信を受けられる最適な方法なのです。
松本尚典の中小企業経営者支援コンサルティングサービス
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