年商1億円の壁を超えるには?需要の価格弾力性を「利益を生む価格戦略」に活かす方法
前回のコラムでは、お店やWebサイトなどに集まった見込み顧客のうち、実際に問い合わせ・購入・契約などの行動へ進んだ割合である「転換率」について説明しました。
まだお読みになっていない方は、まず前回の記事をご覧ください。
年商1億円の壁を超えるには?中小企業が「転換率・コンバージョン率」を高める方法
https://mbp-japan.com/tokyo/yoshinori-matsumoto/column/5072130/
今回から、この転換率を高めるための具体的なマーケティング施策を、マーケティングミックスの4Pに沿って考えていきます。
今回は、その最初のPである、
Product(商品・サービス)
です。
結論から申しあげると、
転換率を高めるProduct戦略とは、「高性能な商品を作ること」ではありません。
「対象とする顧客にとって、選ぶ理由が明確な商品を作ること」です。
転換率向上策 その1 Product(商品)戦略 商品とは何か?
ここでいう「商品」は、形のあるモノだけを意味しません。
企業が顧客へ提供し、その対価として売上を得る、
商品。
サービス。
情報。
技術。
体験。
サポート。
ノウハウ。
などを広く含みます。
例えば、僕が行っている経営コンサルティングも、形のある商品ではありません。
経営者が抱えている、
売上が伸びない。
利益が残らない。
組織が作れない。
人材が育たない。
新規事業をどう進めればよいか分からない。
海外進出をどう判断すればよいか分からない。
という経営課題に対して、
経営状況を整理する。
問題の原因を分析する。
複数の選択肢を提示する。
経営者と一緒に意思決定する。
実行状況を確認する。
必要に応じて計画を修正する。
という価値を提供しています。
したがって、僕のコンサルティングという「商品」の中心は、
単なる経営情報ではありません。
経営者が、よりよい意思決定を行い、その意思決定を実行へ移すための支援
です。
同じことは、あらゆる商品・サービスにいえます。
顧客が買っているのは、商品そのものだけではありません。
その商品によって、
何ができるようになるのか。
何が楽になるのか。
どの問題が解決するのか。
どのような満足が得られるのか。
という「価値」を買っています。
「高品質な商品を作れば売れる」という発想から離れる
Product戦略の話をすると、
「だったら、品質をもっと上げれば売れるのではないか」
と考える方がいます。
もちろん、品質は重要です。
しかし、ここで経営者が注意しなければならないのは、
「品質」という言葉は、企業側と顧客側で意味が違う場合がある
ということです。
技術者から見れば、
処理速度が速い。
精度が高い。
機能が多い。
耐久性が高い。
素材が優れている。
ということが、高品質かもしれません。
しかし、顧客が求めているものが、
操作が簡単。
すぐに使える。
必要な機能だけがある。
場所を取らない。
説明を読まなくても使える。
ということであれば、多機能化が逆に購入を妨げることすらあります。
例えば、小規模企業向けの業務システムを考えてみましょう。
開発会社は、
100種類の機能があります。
高度な分析ができます。
複雑な設定ができます。
と技術的な優位性をアピールするかもしれません。
しかし、社員5人の会社の経営者が本当に求めているのが、
「今日から使えて、請求書作成と入金管理だけ簡単にできればよい」
ということであれば、100種類の機能は価値にならないことがあります。
むしろ、
「自分には難しそうだ」
と思われて、転換率を下げる可能性があります。
企業側の「高性能」
と、
顧客側の「自分にとって価値が高い」
は、必ずしも同じではありません。
売れる商品は、「誰の、何を解決する商品なのか」が明確
では、転換率を高める商品には、どのような特徴があるのでしょうか。
最も基本になるのは、
「誰の、どのような課題・欲求を満たす商品なのか」が明確であること
です。
例えば、
「企業向け経営コンサルティング」
という商品だけでは、対象が広すぎます。
一方、
「年商3000万円から4億円程度で、次の成長段階を目指しているオーナー経営者向け」
と対象を絞れば、
「自分のための商品かもしれない」
と認識してもらいやすくなります。
さらに、
社長依存を減らしたい。
年商1億円の壁を超えたい。
組織を作りたい。
マーケティングを仕組み化したい。
新規事業を立ち上げたい。
という課題まで明確にすると、顧客との適合度はさらに高まります。
これは、あらゆる商品で同じです。
誰に売るのか。
その顧客は何に困っているのか。
何を実現したいのか。
そのために自社は何を提供するのか。
競合ではなく、自社を選ぶ理由は何か。
この5つが明確になるほど、Product戦略は強くなります。
ペルソナは有効。ただし「架空の人物を作ること」が目的ではない
マーケティングでは、対象顧客を具体化する方法の一つとして、「ペルソナ」という考え方があります。
ペルソナとは、典型的な顧客像を具体的に描いたものです。
例えば、
年齢。
職業。
会社規模。
役職。
生活スタイル。
価値観。
悩み。
購入目的。
情報収集方法。
などを具体化します。
しかし、ここで注意が必要です。
ペルソナを、
「45歳、東京都在住、趣味はゴルフ」
という架空人物のプロフィールを細かく作る作業にしてしまってはいけません。
商品戦略にとって重要なのは、
その属性が、なぜ購入行動に影響するのか
です。
例えばBtoBなら、
年商。
業種。
従業員数。
経営課題。
意思決定者。
予算。
導入時期。
現在利用している代替手段。
の方が重要な場合があります。
つまり、
「どんな人か」
だけでなく、
「どんな状況で、どんな問題を解決するために、この商品を買う人なのか」
まで具体化する必要があります。
中小企業の商品戦略は、「広く平均点」より「狭く強く」が有効な場合がある
資金力の限られる中小企業が、
あらゆる顧客。
あらゆる用途。
あらゆる価格帯。
を対象に商品を開発することには限界があります。
対象市場が広がれば、
商品開発費。
営業費。
広告費。
人材。
物流。
在庫。
など、必要な経営資源も大きくなるからです。
そこで、中小企業の商品戦略では、
「多くの人に、まあまあよいと思われる商品」
ではなく、
「特定の顧客に、これが欲しかったと思われる商品」
を狙う方法が有効な場合があります。
例えば、
「すべての中小企業向け業務ソフト」
ではなく、
「従業員10人以下の建設会社が、現場からスマートフォンだけで日報を入力できる業務ソフト」
というように対象を絞ります。
対象市場は狭くなります。
しかし、その顧客にとって、
「まさに自分たちのための商品だ」
という認識が生まれれば、転換率は高くなりやすくなります。
キングジムに学ぶ、「全員に好かれる商品」を狙わない発想
この考え方を理解するうえで参考になるのが、独創的な商品開発で知られるキングジムです。
キングジムでは、宮本彰氏が社長を務めていた時代の商品開発について、
開発会議で大多数が否定的であっても、
「自分なら絶対に欲しい」
と強く評価する人が一人いれば、その需要を無視しない、
という考え方が語られていました。
代表的な例の一つが、デジタルメモ「ポメラ」です。
ネット通信も、多機能なアプリもなく、
「文章を入力する」
という用途へ大きく絞った商品でした。
多くの人にとっては、
「パソコンがあればよい」
という商品だったかもしれません。
しかし、
文章を書くことに集中したい。
すぐに起動したい。
持ち運びたい。
という一部の顧客にとっては、非常に明確な価値がありました。
この事例から学ぶべきなのは、
「10%の人に売れば必ずヒットする」
という公式ではありません。
市場規模、価格、原価、競合、リピートなどによって必要な顧客数は違います。
重要なのは、
多数決で平均的な商品を作るのではなく、少数であっても非常に強い需要が存在する市場を見つける
という発想です。
「ニッチ市場」と「小さすぎる市場」は違う
ただし、
「顧客を絞ればよい」
という話にも注意が必要です。
対象を絞りすぎて、
年間10人しか顧客候補がいない。
一人当たり1万円しか払わない。
という市場では、事業として成立しない可能性があります。
したがってProduct戦略では、
ニーズの強さ。
顧客数。
客単価。
購買頻度。
粗利益。
競合状況。
顧客獲得コスト。
まで見る必要があります。
例えば、
対象顧客が全国で5000社。
年間500社が商品を購入する可能性がある。
1社当たり50万円の粗利益を得られる。
のであれば、巨大市場でなくても十分に魅力的な事業になる可能性があります。
中小企業に必要なのは、「市場を小さくすること」ではありません。「自社が強く選ばれる範囲まで市場を絞ること」です。
ヒット商品は、「思いつき」ではなく顧客検証から作る
もう一つ重要なのは、
「この商品は絶対売れる」
という経営者の直感だけで、大きな投資をしないことです。
商品アイデアが生まれたら、
顧客へヒアリングする。
試作品を使ってもらう。
小ロットで販売する。
限定地域でテストする。
LPを作って反応を見る。
予約販売を行う。
既存顧客へ提案する。
といった方法で、実際の市場反応を確認します。
ここで重要なのは、
「この商品、欲しいですか?」
と聞くだけではありません。
人は、アンケートでは、
「いいですね」
と答えても、おカネを払うとは限らないからです。
そこで、
実際に問い合わせたか。
予約したか。
試したか。
購入したか。
継続したか。
という行動を見る必要があります。
「欲しいと言った顧客」
より、
「実際におカネを払った顧客」
の方が、はるかに強い市場情報です。
商品は、一度作って完成ではない
商品戦略では、
「完成品を作ってから市場へ出す」
という発想だけではなく、
市場へ出してから改善することも重要です。
販売してみる。
顧客の反応を見る。
購入しなかった理由を聞く。
利用状況を見る。
クレームを見る。
継続利用されるかを見る。
競合商品と比較する。
その結果をProductへ戻します。
この循環によって、
商品の機能。
サービス内容。
提供方法。
プラン。
保証。
サポート。
などを改善します。
強い商品は、最初から完璧だった商品ではなく、顧客から学び続けて改善された商品である場合が少なくありません。
年商1億円を超える段階では、「社長だけが作れる商品」から脱却する
ここで、企業成長という観点からもう一つ重要な問題があります。
年商数千万円までの会社では、
社長自身の技術。
社長自身の人脈。
社長自身の経験。
社長自身の提案力。
そのものが商品になっているケースがあります。
これは創業期には強みです。
しかし、会社が年商1億円、その先へ進もうとすると、
「社長がいなければ商品を提供できない」
状態が、成長のボトルネックになります。
例えばコンサルティングのように、一社一社の課題に応じて内容を変えるサービスであっても、
ヒアリング項目。
分析方法。
資料。
進捗管理。
顧客との連絡方法。
成果確認。
など、標準化できる部分はあります。
一方で、
最終的な経営判断。
個別企業に合わせた戦略。
重要な意思決定への助言。
など、個別性を残すべき部分もあります。
つまり、
標準化すべき部分は標準化する。
顧客ごとに変えるべき部分は、徹底して個別化する。
という設計が必要になります。
これはProduct戦略であると同時に、年商1億円を超えるための組織戦略でもあります。
「商品」ではなく、「商品構成」も設計する
Product戦略では、一つの商品だけを見るのではなく、商品構成も考えます。
例えば、
初めて購入する顧客向けの商品。
主力商品。
上位商品。
継続商品。
追加商品。
を設計します。
経営コンサルティングであれば、
情報を読む。
↓
初回カンファレンスを受ける。
↓
継続的な経営コンサルティングを利用する。
という顧客との関係設計も、一つのProduct戦略です。
小売業なら、
入口商品。
主力商品。
上位商品。
関連商品。
という構成を作ることができます。
こうすることで、
「一つの商品を一回売って終わる会社」
から、
「顧客の課題に応じて、長期的な関係を作れる会社」
へ変わります。
この設計は、次に扱うPrice戦略や、客単価、リピート率にもつながります。
年商1億円を超えるProduct戦略 経営者が確認する7つの問い
ここまでの内容を、経営者が実際に使える形に整理しましょう。
1.この商品は、誰のための商品なのか?
2.その顧客は、何を解決・実現したくて購入するのか?
3.競合や代替手段ではなく、自社商品を選ぶ理由は何か?
4.顧客が必要としていない機能を、過剰に加えていないか?
5.対象市場は、利益を出せるだけの規模があるか?
6.実際の顧客行動で、需要を検証したか?
7.社長個人に依存せず、商品・サービスを提供できる仕組みになっているか?
この7つに明確に答えられれば、Product戦略の基本はかなり整理できます。
中小企業の商品戦略は、「大企業より高性能」を目指す必要はない
中小企業が、大企業と同じ市場で、
開発予算。
研究者数。
生産規模。
広告費。
販売網。
によって正面から競争すれば、不利になる場合があります。
しかし、
大企業が対応しにくい細かな顧客ニーズ。
特定業界だけの課題。
地域固有の需要。
小ロット。
高い専門性。
経営者自身の経験。
迅速な意思決定。
顧客との近い距離。
などは、中小企業が強みを発揮しやすい領域です。
年商1億円の壁を超える中小企業の商品戦略とは、大企業より「すごい商品」を作ることではありません。
「自社が最も強く選ばれる顧客と用途を見つけ、そこへ経営資源を集中すること」です。
この視点でProductを磨くことができれば、
転換率。
客単価。
リピート率。
紹介。
にもよい影響が生まれます。
次は、「価値にいくらの価格をつけるか」を考える
Productが決まったら、次はPriceです。
せっかく顧客に選ばれる商品を作っても、
安すぎて利益が残らない。
高すぎて顧客が購入できない。
競合と同じ価格なのに違いが伝わらない。
という状態では、事業は成長しません。
次のコラムでは、
「価格は、原価に利益を足して決めればよいのか?」
というところから、年商1億円を超える中小企業のPrice戦略を考えていきます。
年商1億円の壁を超える中小企業の経営者は、まず価格の基本を知ろう
https://mbp-japan.com/tokyo/yoshinori-matsumoto/column/5074080/
年商1億円から先の商品戦略を、経営全体から見直したい経営者の方へ
「商品には自信があるのに売れない」
「問い合わせはあるのに契約にならない」
「競合との違いをうまく説明できない」
「商品が増えすぎて、何が主力なのか分からなくなった」
「社長自身なら売れるが、社員では売れない」
こうした問題は、単なる商品開発の問題ではありません。
ターゲット。
商品。
価格。
マーケティング。
営業。
ブランド。
組織。
人材。
収益構造。
まで含めて、どこに成長のボトルネックがあるのかを整理する必要があります。
URVグローバルグループでは、Product・Price・Place・Promotionの4P戦略から、Webサイト、SEO・AEO・GEO、広告、ブランディング、コンテンツなど、企業の商品価値を顧客へ届けるマーケティング施策を総合的に支援しています。
マーケティング支援事業
https://urv-group.com/services/marketing/
そして、Product戦略だけでなく、経営戦略、組織、営業、人材、財務まで含めて、会社全体の成長戦略を見直したいオーナー経営者の方には、経営者伴走コンサルティングをご用意しています。
年商5億円の壁を突破するための経営者伴走コンサルティング
年商3000万円から4億円程度のオーナー社長を対象に、松本尚典が、商品戦略、売上・利益の構造分析から、経営戦略、マーケティング、営業、組織、人材、財務、実行計画まで、経営者の意思決定と実行に継続して伴走します。
https://mbp-japan.com/tokyo/yoshinori-matsumoto/service1/5002501/
初回120分経営カンファレンス
継続的な経営コンサルティングをご検討いただいているオーナー経営者を対象に、現在の商品・サービス、顧客、売上・利益、競争環境、組織上の課題を整理し、どこに成長のボトルネックがあるのか、本コンサルティングが課題解決に適しているかを双方で確認します。
https://direct.mbp-japan.com/menu/detail/936


