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松本尚典

年商5億円の壁を突破したい社長のための経営コンサルタント

松本尚典(まつもとよしのり) / 経営コンサルタント

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コラム

年商1億円の壁を超える中小企業の経営者は、まず価格の基本を知ろう

2020年12月30日 公開 / 2022年9月21日更新

テーマ:価格 決め方  

コラムカテゴリ:ビジネス

コラムキーワード: マーケティング戦略マーケティング手法メンター

前回のコラムでは、転換率を向上させる政策について、マーケティングミックス 4P戦略の、Product(商品)戦略について発信しました。

今回から、マーケティングミックス 4P戦略の、Price(価格)戦略について、発信します。

原価法で、価格を決めていませんか?


まず、価格の理論的な話に入る前に、企業を経営する経営者が、絶対にわかっていなければならない基礎知識から入りましょう。

企業が製品を生産し、あるいは製品を仕入れ、これを販売する場合、これをいくらで生産または仕入れをし、いくらで販売するか?

この政策如何で、利益(ここでいう利益は、売上利益、つまり粗利益です)が決まってきます。

商品を生産しているメーカーの場合、まず、商品を開発することに開発費用がかかってきます。そうして開発した製品を、いよいよ生産することになった場合、まず、生産のための工場の設備投資に資金がかかってきます。これが、メーカーの、イニシャルコストの中心的な費用です。

さて。工場ができたら、原材料を仕入れますね。そして、そこに工場で働く労働者の人件費を投入します。

原材料と、人件費。これが、ランニングの二大コストです。こうして、製品が出来上がってきます。

さて、このような試験研究開発や、工場の設備投資などのイニシャルコスト。
そして、原材料の仕入れや、労働者の人件費などのランニングコスト。

これらの経費の合計を、生産される製品の個数で割ります。

そうしますと、そこで、製品一つを作るのに必要なコストがでてきます。これが、「製品原価」です。

企業会計の世界では、これらの原価は、製品ひとつひとつについて算出するのではなく、会計期間を通じて、製品製造にかかった原価を計算することになっています。これが、原価計算という、会計の領域の決まり事です。

ここでは、わかりやすいように、この原価計算の話ではなく、製品一つを作るのに必要なコストという考え方で、製品原価という言葉を定義しましょう。

そうしますと、メーカーが、いくらの価格をつけるべきかという指標が明確になってきます。
まず、少なくても、製品原価よりも高い価格をつける必要がありますね。そうでなければ、売上利益は、まったくでないことになってしまい、ビジネスが成り立ちません。

では、ここで、製品原価が100円の商品に対して、原価の20%の粗利益を経営者が出したいと考えるとします。その場合、120円の価格をつければよいでしょうか?

「そうすれば、20%の粗利益が出るよね!
1000個作れば、20,000円儲かるじゃん!」

こう考えられれば、話は非常に簡単です。
しかし、そうはいかないんです、ビジネスというものは。

1000個の商品を作ったからといって、1000個の商品が、すべて120円に代わって戻ってこないんです。

販売途中で壊れてしまったり、場合によっては盗まれてしまうかもしれない、という話は、一旦、おいておくとしましょう。それよりも、最も深刻な問題は、売れ残ってしまうことがある、ということです。その場合、これを売り切るためには、値段を下げるしかありません。

一方では、120円で商品の価格をつけたら、飛ぶように売れてしまい、買えないお客様から、「もっと欲しい」と言われるかもしれません。もっと、高く値段をつけておけばよかった、という事態になりかねません。

そして、このような売れ残りになる、あるいは、不足する状態になる製品の数は、生産段階ではまったく読めないんです。

そう、これが、価格というものを、どうつけたらよいのか、という、ビジネスを行う企業の社長の永遠の悩みなんですね。

価格戦略の難しさ、というものは、ここから生じてくるんです。
製品原価を基本にして、ここに一定の利益率を載せる方法を、原価法と呼びます。原価は、最低限の価格を把握するには、有用です。しかし、その原価に、希望的観測の利益を載せて、価格を決める、という安易な原価法の価格戦略をしていたのでは、絶対に、あなたの会社は、大きくなりません。

この原価法では、適切な価格戦略はうてないのです。

上代価格と、下代価格


ちなみに、先の例は、製品を自社で製造するメーカーでお話ししました。これは、商品を仕入れて販売する商社や、小売業でも、同じです。

商社や小売業が、他社が生産した商品を仕入れる価格を、「下代価格」と呼びます。一方、これをお客様に販売する価格を「上代価格」と呼びます。

下代に、一定の利益率を載せれば、その利益率に相当する粗利益が入ってくるよね、という話が通用しないのは、メーカーの場合と同じです。

仕入れた商品が、売れ残る、あるいは、足りなくなる数量が、仕入れの段階では読めないのです。

このような、読めないリスクを抱えながら、企業は、製品を製造し、あるいは仕入れなければなりません。コストを、販売予測の先に、投下してリスクを負う必要があるのです。

このリスクを見越し、更に、製品の売れ行きにあわせて、製品・商品に、どのような価格をつけたら、よいのか?

これが、価格戦略の問題です。

上記の話を、ミクロ経済学の教える用語を使って、この後、説明をしておきます。

ミクロ計経済学が教える、価格と利益の関係


そこで、ここから、ミクロ経済学が教える、「価格」のメカニズムをお話ししましょう。

わかりやすく、具体的な例として、ここでは、シュークリームを製造販売する会社の事例で説明します。まず、この会社は、ある日、100個のシュークリームを製造したとします。
この製造販売を、「供給」と呼びます。

シュークリームは、もちろん、この会社だけが製造しているわけではありません。ほかにも、多くのシュークリームを製造する会社があり、その会社が自由に製造販売していることを前提とします(この前提を、「自由市場」が機能していると言います)。

さて、ここに、シュークリームをこの店に来店して購買する消費者がいて、この消費者が合計120個のシュークリームを購買する意欲があるとします。この意欲のことを、「需要」と呼びます。

この場合、20個のシュークリームが不足しますね。つまりは需要過剰となります。この状態の場合、消費者は20個のシュークリームを買うことができません。自由市場が機能している場合、シュークリームの価格は高くなります。消費者のうち、その高くなった価格でも購入したいと思う消費者が、シュークリームを100個購入し、高いから諦める消費者が20個のシュークリームを買うのをあきらめる。このように、バランスがとれる価格が最適な価格ということになります。

一方、ここに、シュークリームをこの店に来店して購買する消費者が、合計90個のシュークリームしか購買する意欲、つまり需要がなかったとします。

この場合、10個のシュークリームが余ります。つまりは供給過剰となります。この状態の場合、消費者はすべてシュークリームを買うことができ、しかも、シュークリームは10個余ります。あまってしまうと、シュークリームは翌日まで日持ちしません。従って、生産者は、なんとか、この余るシュークリームを、おカネに変えようとします。自由市場が機能している場合、シュークリームの価格は下がってきます。消費者のうち、そこまで安くなったのなら、もう10個買ってしまおうという人が出てきます。消費者のうち、その安くなった価格なら、シュークリームをあと10個購入してもいいな、という、バランスがとれる価格が最適な価格ということになります。

以上、述べたことが、経済学が教える価格の基本メカニズムです。
つまり、需要と供給の、各々の数量が均衡する点で、価格が決まってくるということです。

需要が過多になろうと、供給が過多になろうと、価格の調整が働き、需要と供給が一致する点があります。

需要と供給の数量の調整は、あたかも、バネのようなものです。需要が上にいったり、供給が上にいったり。そのなかで、バネが止まるポイントが、需要と供給が一致して均衡する、均衡価格の決定される点です。

さて、ここに、シュークリームという商品に加えて、食パンという商品を加えて考えてみましょう。

シュークリームという商品は、生活必需品ではありませんね。おやつに、シュークリームを食べなくても、他に、ケーキを食べたって、ポテトチップスを食べたっていいわけです。ところが、食パンという商品は、シュークリームよりも、もう少し、生活必需品である性格が濃いと言えるでしょう。勿論、食パンを食べなくても、ごはんを食べればいいでしょうけれども、シュークリームのように、他の代替品がたくさんあるわけではありませんね。

そうすると、食パンは、シュークリームで述べたような、価格が変動することで、需要や供給がすぐに変動するでしょうか?

シュークリームが少しでも高くなれば、すぐに買うのを辞めるお母さんでも、食パンが少し高くなっても、我慢して買うのではないでしょうか?

このような性格があるとした場合、シュークリームは、食パンよりも「需要の弾力性が高い」、と言います。一方、食パンは、シュークリームよりも、「需要が非弾力的」である、と言います。

需要の弾力性の高いシュークリームは、例えば、シュークリームの原料である生クリームの価格が上昇し、供給がシフトした場合、価格の変動よりも、数量に、より多くの変動をきたすという性格があります。従って、需要の弾力性の高いシュークリームの場合、利益あげようとして、値上げをすると、それに、より敏感に売上数量が減少を起こしてしまい、売上が減少してしまいます。

一方、需要が非弾力的な食パンでは、例えば、食パンの原料である小麦の価格が上昇し、供給がシフトした場合、数量よりも、価格に、より多くの変動をきたすという性格があります。従って、需要の弾力性の低い食パンの場合、利益あげようとして、値上げをしても、それに敏感に売上数量が減少することは少なく、売上はあがって、利益が増加することになります。

一般的に、商品は、同じものであっても、短期的には需要は非弾力的で、長期的には弾力的に変動すると言われています。

つまり、同じ商品でも、価格の値上げによって、短期的には数量が減少することはないのに、長期的には減少することになりがちです。

ここまでの説明、ついてこられましたか?

次回は、この価格の基本原理の話から、企業が価格について、どうアプローチをしてゆくべきなのか、という、価格戦略の話に入ります。

お楽しみに。

続く

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