ソープが摘発された|客は逮捕される?売春防止法と客の立場

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

 利用したことのある店、あるいは予約を入れていた店が摘発されたというニュースを見て、「自分にも警察が来るのではないか」と落ち着かない日を過ごしている方は少なくありません。

 結論から申し上げると、いわゆるソープランドの摘発で問われているのは、多くの場合「店側の行為」です。客が売春防止法違反で逮捕されるという構造には、現行法上なっていません。

 もっとも、「逮捕されない」ことと「何も起きない」ことは別です。ここを混同したまま自己流の対応をしてしまい、かえって立場を悪くする方がいます。この記事では、摘発が客にどこまで及ぶのか、そして本当に注意すべき分かれ目はどこかを、客側の相談を受けている弁護士の立場から整理します。

1.2026年に入り、ソープランドの摘発が相次いでいる

 2026年に入ってから、東京・吉原をはじめ、仙台、新潟、和歌山、兵庫などで、ソープランドの経営者や従業員が売春防止法違反(場所の提供)の疑いで逮捕されたと報じられています。40年以上続いた老舗が対象になった例もあり、「これまで黙認されてきたのに、なぜ今なのか」という受け止めが広がりました。

 背景としては、悪質なスカウトグループへの対策、2025年の改正風営法の施行、そして後述する売春防止法そのものの見直し議論などが重なっているとの指摘があります。ただし、いずれも報道や識者の分析に基づく見方であり、警察が方針を公表しているわけではありません。

 なお「摘発」は法律用語ではなく、明確な定義のある言葉ではありません。逮捕を伴うこともあれば、家宅捜索や立入りだけの段階を指して使われることもあります。報道で「摘発」と書かれていても、その場にいた全員が逮捕されたという意味ではない点は、まず押さえておいてください。

2.なぜ店が摘発されるのか|風営法と売春防止法の関係

 ソープランドは、風営法上「浴場業の施設として個室を設け、当該個室において異性の客に接触する役務を提供する営業」と位置づけられています。あくまで入浴に伴う役務を提供する営業として届出・許可がなされているのであって、性交を提供する営業として公認されているわけではありません。

 一方、売春防止法は、売春を「対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交すること」と定義し(2条)、売春することも、その相手方となることも禁止しています(3条)。ところが、この3条には罰則がありません。罰則は、その周辺にある行為に置かれています。

条文対象となる行為法定刑
5条公衆の目に触れる方法での勧誘・客待ち6月以下の拘禁刑または罰金
6条売春の周旋(あっせん)2年以下の拘禁刑または5万円以下の罰金
11条情を知って売春の場所を提供3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金(業として行った場合は7年以下の拘禁刑および30万円以下の罰金)
12条管理売春10年以下の拘禁刑および30万円以下の罰金

 ※5条の罰金額は、条文上は1万円以下ですが、罰金等臨時措置法による調整により実際には2万円以下として運用されています。

 一連の報道で使われている「場所の提供」は、この11条です。個室で売春が行われることを知りながら、店の個室を使わせたという構成であり、被疑事実の中心は店の運営側にあります。

3.客の立場|「買う側」を直接罰する規定は置かれていない

 上の表のとおり、売春防止法の罰則は、勧誘・周旋・場所提供・管理といった行為に向けられています。売春をした本人にも、その相手方となった客にも、罰則は用意されていません。

 つまり、成人同士の合意による行為である限り、店が11条で摘発されても、客が売春防止法違反で処罰されるという流れにはならないのが現行法の構造です。これは店側が用意した説明や「建前」のおかげではなく、法律のつくりがもともとそうなっているからです。

 ここで注意していただきたいのは、逆もまた真ではないという点です。「罰則がない=適法」ではありません。3条は買う側の行為も明確に禁止しており、法が容認しているわけではない、という位置づけにとどまります。

4.逮捕されなくても、客に起きることはある

 摘発の場面で客に現実的に起きるのは、逮捕ではなく「捜査への関与」です。

 現場に居合わせた場合、店の違法行為を裏づけるため、参考人として事情を聴かれることがあります。利用回数、料金、どのようなサービスだったか、店側から売春の説明があったか、といった内容に加え、氏名・住所・連絡先も聞かれるのが通常です。その場で調書が作られることも、後日改めて署に来るよう求められることもあります。

 その場にいなかった場合でも、押収された顧客名簿や予約データ、防犯カメラの映像、従業員の供述から、利用の事実が把握されることはあります。しばらく経ってから電話がかかってくるのは、この経路によるものです。

 参考人としての事情聴取は任意捜査であり、出頭も供述も強制されるものではありません(刑事訴訟法223条1項、198条1項ただし書の準用)。日程の調整を申し出ることもできます。ただし、任意だからといって着信を拒否し続けるといった対応が有利に働くとは限りません。連絡がつかない状態が続けば、それ自体が別の評価につながることもあります。

 なお、参考人には黙秘権を告知する法律上の義務がないとされています(198条2項は準用されていません)。憲法38条1項の保障は及びますが、告知がないまま話が進むこと、そして話の内容によっては途中で立場が変わり得ることは、知っておいて損はありません。

5.本当の分かれ目は「年齢」と「同意」

 客が刑事責任を問われるとすれば、それは売春防止法ではなく、別の法律によるものです。摘発を機に、客自身の行為が捜査の対象になる場面は、主に次のとおりです。

  • 相手が18歳未満だった場合:児童買春・児童ポルノ禁止法4条の児童買春罪にあたり得ます。5年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金で、相手の同意の有無は関係ありません。18歳以上だと信じていたかどうかは事実認定の問題であり、「18歳未満かもしれない」と思いながら行為に及んだ場合は故意が認められ得ます。店に年齢確認を任せていたという事情だけで、当然に免れられるわけではありません。
  • 同意がなかった、または途中で拒まれた場合:不同意性交等罪(刑法177条)は5年以上の有期拘禁刑で、罰金刑がありません。料金を払ったこと、そういう業態であることは、性交への同意とは別の問題です。
  • 撮影していた場合:性的姿態等撮影罪の対象となり得ます。撮影できていなくても未遂が処罰されます。
  • 公然わいせつ(刑法174条):ソープでは典型的ではありませんが、複数の客の目に触れる状況があれば問題となる余地があります。

 これらは店の摘発とは別のレイヤーです。心当たりがある場合は、自己判断で結論を出さず、早い段階で弁護士に相談されることをおすすめします。

6.摘発をきっかけに起きる金銭・書面のトラブル

 刑事の話とは別に、次のような相談も寄せられます。

 前払い分や回数券の扱いです。営業が止まれば未利用分は宙に浮きます。返金を求めること自体は可能ですが、店側の資力や連絡の途絶で、回収が難しくなる場面は現実にあります。

 「聴取ではこう答えてほしい」と店から求められるケースもあります。事実と異なる説明をすることは、事案によっては証拠隠滅等罪(刑法104条)などが問題になり得ます。頼まれても応じないことをおすすめします。

 摘発に便乗した金銭要求にも注意が必要です。「あなたの名前が名簿にある」「警察に伝える」といった言葉とともに支払いを求められた場合、その態様によっては脅迫罪や恐喝罪の問題となり得ます。もっとも、店からの請求がすべて違法になるわけではありませんので、その場で払う・サインする前に、根拠と金額を書面で確認してください。

7.「買う側」の処罰をめぐる議論が進んでいる

 法務省は2026年、売買春に係る規制の在り方を検討する有識者検討会を設置しました。3月の初会合以降、買う側の処罰規定を設けるかどうか、売春として禁止する行為の範囲(現行の「性交」の解釈)をどう考えるかといった論点が整理され、議論が続いています。

 現時点で結論は出ておらず、時期や内容を予測できる段階ではありません。ただ、前提そのものが動き得る局面にあることは、押さえておいてよいと思います。

8.心当たりがあるときの初動

避けたい対応

  • 連絡を無視し、着信を拒否し続ける
  • スマホのやり取りや履歴を削除する(復元されることがあるうえ、自分に有利な事情も失われます)
  • 相手の女性や店に直接連絡を取る
  • その場で支払う、内容を確認しないまま書面にサインする
  • SNSや掲示板に経緯を書き込む

とりたい対応

  • 日時・店名・やり取りを時系列で書き出す(あいまいな点は「あいまい」と記す)
  • 記録は消さずに保全する
  • 連絡窓口を一本化し、単独で交渉しない
  • 出頭を求められたら、署名・部署・担当者名と、被疑者か参考人かを確認する
  • 相手の年齢や同意に不安がある場合は、聴取の前に弁護士に相談する

まとめ

 ソープランドの摘発で問われているのは、原則として店側の行為です。売春防止法は買う側を直接罰する規定を置いておらず、客がその法律で逮捕されるという構造にはなっていません。

 一方で、参考人として名前と連絡先が残ること、相手の年齢や同意という別の問題が浮上し得ることは、「客は無関係」で片づけられない現実です。不安を抱えたまま独りで判断するより、事実関係を整理したうえで一度相談していただく方が、選べる選択肢は多く残ります。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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