風俗のプレイ・器具で相手にケガをさせてしまったら|客側が負う責任と初動対応

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

 「同意のうえでのプレイだったのに、終わった後で出血していると言われた」
 「器具を使ったら痛がられ、店から治療費と休業補償を請求されている」

 サービスの流れのなかで相手がケガをしてしまうケースは、決して珍しいものではありません。悪意がなかったとしても、その場で高額な請求を受けたり、後日、警察から連絡が来たりすることがあります。

 この記事では、性風俗を利用する男性の立場から、プレイや器具で相手を負傷させた場合に問われうる責任と、その場でとるべき対応を整理します。

1.「同意があったから大丈夫」とは限らない

 まず押さえておきたいのは、相手の同意があっても、それだけで責任がなくなるとは限らないという点です。

 この点について最高裁は、被害者が身体の傷害を承諾していた場合に傷害罪が成立するかどうかは、承諾があったという事実だけで決まるものではなく、承諾を得た動機や目的、傷害の手段・方法、損傷の部位・程度といった事情を総合して判断すべきだという考え方を示しています(最高裁昭和55年11月13日決定)。

 風俗のプレイに引き直すと、次のような点が問題になります。

  • 同意の「範囲」を超えていないか:叩く・縛るといったプレイ自体に合意があったとしても、それは「どんな結果でも受け入れる」という同意ではありません。事前の説明にない器具を使った、強度を大きく上げた、といった事情があれば、同意の範囲外と評価されるおそれがあります。
  • 途中で拒絶されていないか:開始時に合意があっても、途中で「やめて」「痛い」と示された後も続けた場合、その時点以降について同意があったとは言いにくくなります。
  • そもそも同意があったと認められるか:その場の口頭のやり取りだけだと、後から「強要された」と主張されたときに水掛け論になりがちです。店のメニューやオプションとして正式に申し込んでいたかどうかで、事後の見え方は変わってきます。

 なお、「抜きあり」「過激オプション」といった営業形態やサービス内容への期待は、身体に触れることや強い刺激を与えることへの同意とは別物です。

2.プレイ中の負傷で問われうる罪

 ケガをさせた場合に問題となる罪は、ひとつではありません。**「わざとか、不注意か」「わいせつ行為を伴うか」「身体の自由を奪う要素があるか」**という三つの軸で整理すると、全体像がつかみやすくなります。

罪名法定刑
過失傷害罪(刑法209条)30万円以下の罰金または科料
重過失致傷罪(刑法211条後段)5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
傷害罪(刑法204条)15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
不同意わいせつ致傷罪(刑法181条1項)無期または3年以上の拘禁刑
不同意性交等致傷罪(刑法181条2項)無期または6年以上の拘禁刑
逮捕監禁致傷罪(刑法220条・221条)傷害の罪と比較して重い刑により処断

 ※2025年6月1日施行の改正刑法により、従来の懲役刑・禁錮刑は「拘禁刑」に一本化されています。

 ここで注意が必要なのは、「ケガをさせるつもりはなかった」という言い分が、そのまま過失の主張として通るとは限らないことです。傷害罪は、傷害の結果を意図していなくても、相手に有形力を加えている認識があれば成立しうると考えられています。単なる不注意にとどまるのか、有形力の行使といえるのかは、行為の態様によって評価が分かれる部分です。

 また、不注意による負傷であっても、注意義務違反の程度が著しいと評価されれば、罰金・科料にとどまる過失傷害罪ではなく、重過失致傷罪が問題になり得ます。

 さらに、相手の同意なくわいせつ行為に及んだ結果としてケガをさせた場合には、刑法181条の致傷罪という重い類型に移ります。この類型は罰金刑が定められておらず、裁判員裁判の対象でもあります。ケガの結果が加わることで、扱いが大きく変わる点は意識しておくべきでしょう。

3.器具を使うプレイで、特に問題になりやすい4つの点

 テーマの中心である「器具」については、素手のプレイとは違った論点が加わります。

(1)危険性を認識していたと評価されやすい

 器具を使う以上、それが身体にどのような負荷を与えるかは、ある程度予測できたはずだと見られやすくなります。「うっかり」と説明しても、危険性が分かりやすい器具ほど、注意義務違反の程度が重く評価される方向に働きます。

(2)持ち込みか、店の備品か

 自分で持ち込んだ器具の場合、サービスの想定外の道具を自ら持ち込んで使ったという事情が、判断に影響します。店が用意した器具であっても、使い方や強度、時間の管理は使った側の問題として残ります。

 一方で、器具そのものの破損や不具合が原因でケガが生じたのであれば、器具を管理していた店側の責任が問題になる余地もあります。ただし、使い方が主な原因であれば、店の管理に問題があったからといって客側の責任がなくなるわけではありません。原因がどこにあるのかは、記録や現物の状態を踏まえた個別判断になります。

(3)拘束・目隠し・呼吸を制限する類のプレイ

 手錠やロープで拘束する、目隠しをするといったプレイは、身体の自由を奪う要素を含むため、拘束の態様によっては逮捕監禁の評価が入り得ます。相手が異変を伝えにくく、こちらも気づきにくいため、結果が重くなりやすいという現実的なリスクもあります。呼吸を制限するプレイは、軽微な事故で済まないおそれがあり、法的評価も厳しくなりがちです。

(4)衛生面と、外傷以外の「傷害」

 伸びた爪、指輪やアクセサリー、器具の使い回しによる感染など、器具そのもの以外の要因も問題になります。法律上の「傷害」は目に見える外傷に限られず、人の生理的機能を害することを広く含むと理解されています。そのため、性感染症を感染させた場合も、事情によっては傷害の問題として扱われ得ます。

4.刑事の問題とは別に、民事の賠償責任が生じる

 刑事事件にならなかった場合でも、民事上の損害賠償責任(民法709条・710条)は別に検討されます。請求される項目としては、次のようなものが典型です。

  • 治療費・検査費・薬代・通院交通費
  • 働けなかった期間の休業損害
  • ケガによる精神的苦痛に対する慰謝料
  • 後遺症が残った場合の後遺障害慰謝料など

 金額は、ケガの部位・程度、治療期間、後遺症の有無、行為が故意によるものか不注意によるものかといった事情で大きく変わります。法律で決まった一律の金額表があるわけではありません。

 なお、休業損害については、収入を証明する客観的資料がそろわないことも多く、基礎収入をどう算定するかが争点になりやすい項目です。相手方の提示額をそのまま前提にする必要はありません。

5.「店への支払い」と「本人への賠償」は分けて考える

 風俗トラブルで混乱しやすいのが、店から請求される「罰金」と、ケガをした本人への賠償が別物だという点です。

 店の規約にある「罰金」は刑罰ではなく、違約金の俗称にすぎません。私人が刑罰を科すことはできず、その金額に当然に支払義務が生じるわけでもありません。金額の妥当性は、公序良俗(民法90条)や、強迫による意思表示の取消し(民法96条)といった観点から個別に検討することになります。

 そして実務上より重要なのは、店に支払っても、ケガをした本人との示談が当然に成立するわけではないということです。店との間で話をつけたつもりでも、後日、本人から改めて請求されたり、被害届が出されたりする可能性は残ります。

 請求の際に「警察に言う」「家族や会社に知らせる」といった言葉が伴う場合、その態様によっては脅迫罪(刑法222条)や恐喝罪(刑法249条)が問題になり得ます。ただし、それはそれとして、実際にケガをさせている以上、賠償の問題自体は残ります。不当な要求には応じない一方で、負うべき責任には誠実に向き合うという切り分けが必要です。

6.その場でとるべき対応・避けたい対応

避けたい対応

  • その場を離れる・逃げる(証拠隠滅や逃亡と評価され、事態を悪化させるおそれがあります)
  • 言われるまま、その場で現金を渡す・ATMへ同行する
  • 内容を確認しないまま示談書や念書に署名する
  • 免許証や携帯電話を預ける、コピーを渡す
  • やり取りの記録やメッセージを消す
  • 相手本人に直接連絡して謝罪や交渉を試みる

とるべき対応

  • **まず相手の状態を確認する。**出血や強い痛みがあれば、従業員を呼ぶ、必要に応じて救急要請を検討するなど、手当てを優先します。
  • **何がいつ起きたのかを時系列で書き留める。**使った器具、事前にどこまで合意していたか、拒絶があったかどうかは、後の判断で重要になります。
  • **予約履歴やメッセージ、オプションの申込内容を保存する。**同意の範囲を示す資料になり得ます。
  • その場で金額を確定させない。「持ち帰って検討する」と伝えて構いません。
  • **早い段階で弁護士に相談し、連絡窓口を一本化する。**当事者同士の直接交渉は感情的な対立を生みやすく、条件面でも不利になりがちです。

まとめ

  • 相手の同意があっても、同意の範囲や態様によっては責任を問われるおそれがあります
  • 「わざとではない」という説明が、そのまま過失の主張として通るとは限りません
  • 器具を使うプレイでは、危険性の予見や拘束の要素が加わり、評価が厳しくなりやすい傾向があります
  • 刑事責任とは別に、治療費・休業損害・慰謝料といった民事の賠償責任が生じ得ます
  • 店への支払いと、本人への賠償は別問題です

 その場で判断を迫られると、冷静な検討は難しくなります。まずは相手の手当てを優先し、支払いや署名は保留したうえで、早めに専門家に相談することをおすすめします。

 弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗トラブルについて利用者側の立場からご相談をお受けしています。ご相談内容の秘密は守られますので、一人で抱え込まずにご連絡ください。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

風俗・男女トラブルの不当要求から依頼者を守る弁護士

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ東京
  3. 東京の法律関連
  4. 東京の男女・夫婦問題
  5. 若井亮
  6. コラム一覧
  7. 風俗のプレイ・器具で相手にケガをさせてしまったら|客側が負う責任と初動対応

若井亮プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼