【男女トラブル】別れたいが相手が怖くて言い出せない、弁護士から伝えてもらえる?
結婚に向けて両家への挨拶や式場の下見を進めていたのに、相手の親が反対し、そのまま相手から結婚をやめると告げられた。このような経緯で破談になった方から、「親の反対が理由なら、誰にも責任を問えないのか」「相手の親に慰謝料を求めることはできるのか」というご相談をいただくことがあります。
結論から言えば、相手の親が反対したという事情だけで、慰謝料の請求をあきらめなければならないわけではありません。一方で、婚約が成立していたといえるか、反対の理由がどのようなものだったか、誰が最終的に結婚をやめる判断をしたのかによって、請求の見通しは大きく変わります。本記事では、親の反対による破談で慰謝料が問題になる場面を、請求の相手ごとに分けて整理します。
最初に確かめたい3つの点
親の反対による破談で慰謝料を考えるとき、判断の入り口になるのは次の3点です。
- 二人の間で婚約が成立していたといえるか。
- 婚約をやめたことに「正当な理由」があったといえるか。
- 請求の相手を婚約者本人とするか、反対した親とするか、その両方とするか。
このうち1点目と2点目は婚約者本人への請求の前提であり、3点目の親への請求は、それとは別の考え方で判断されます。以下、順に見ていきます。
そもそも婚約は成立していたか
婚約とは、将来結婚しようという当事者二人の合意です。法律上、決まった方式はなく、口頭の約束でも成立し得るとされています。ただし、相手が「本気の約束ではなかった」と争った場合には、合意があったことを示す事情が求められます。
裁判などで婚約の成立を裏づける事情として、一般に次のようなものが挙げられます。
- 婚約指輪の授受や結納。
- 互いの親への結婚の挨拶や、両家の顔合わせ。
- 式場の予約、新居の契約、結婚に向けた退職や転居などの準備。
- 友人や職場に婚約者として紹介していたこと。
- 結婚の時期や新生活について具体的にやり取りしたメッセージ。
これらのどれか一つがなければ婚約が否定される、というものではありません。ただ、交際中に「いつか結婚しようね」と話していた程度にとどまる場合は、婚約までは認められにくいことがあります。婚約の成立の考え方にはさまざまな論点がありますが、ここでは親の反対が問題になる場面に絞って話を進めます。
なお、「相手の親への挨拶で反対されたら、そこで破談になってしまうのでは」という段階でのご相談もあります。プロポーズを受けていても、親の承諾を前提にしていた事情があると、婚約の成立や内容の評価に影響することがあります。どの時点で、どのような約束をしていたかを振り返っておくことが大切です。
親の反対は婚約をやめる「正当な理由」になるか
婚約が成立していた場合、正当な理由なく一方的に婚約をやめた側は、相手が受けた精神的苦痛などについて損害賠償の責任を負うことがあります。そこで問題になるのが、「親に反対されたから」という理由が正当な理由にあたるかどうかです。
反対があったというだけでは、正当な理由になりにくい
結婚は当事者二人の合意によって成り立つものであり、親の同意は成人どうしの結婚の要件ではありません。そのため、多くの法律事務所の解説でも、親が反対したという事情だけでは、婚約をやめる正当な理由とは評価されにくいと説明されています。親を説得する、時間をかけて関係を整えるといった別の道があったのに、反対を受けてすぐに婚約をやめた場合には、やめた側の責任が問われる方向に傾きやすいといえます。
裁判例の中には、婚約者の男性が母親の同意を得られないことを理由に婚約をやめたものの、実際には本人の気持ちが変わっただけで、母親の反対は口実にすぎないと判断されたものがあります。「親が反対している」という説明がされていても、実情は本人の心変わりだったという場合には、なおさら正当な理由とは認められにくいでしょう。
反対の中身によっては、正当な理由と評価されることもある
一方で、親の反対の中身が、結婚生活を続けることが難しくなるような事情を指摘するものだった場合は別です。たとえば、多額の借金を隠していた、暴力や重大な隠し事があった、といった事情を親が知って反対したのであれば、反対の「理由」そのものが婚約をやめる正当な理由と評価されることがあります。
この場合、請求する側に落ち度があったと見られ、慰謝料の請求が認められにくくなるだけでなく、事情によっては逆に請求を受ける立場になる可能性もあります。請求を考える前に、相手やその親が何を理由に反対していたのかを、できるだけ正確に把握しておくことが欠かせません。婚約をやめる正当な理由の全体像は、結婚をやめたい|婚約の解消で慰謝料を払わずに済む「正当な理由」とはで整理しています。
出自や国籍などを理由にした反対
親の反対が、出身地や家柄、国籍、信仰などへの偏見に基づくものであった場合、それを理由に婚約をやめることは、正当な理由とは評価されにくいと考えられています。こうした事情は、次に述べる親自身の責任を考えるうえでも重く見られることがあります。
反対した相手の親にも慰謝料を請求できるか
婚約は二人の間の約束であり、相手の親は約束の当事者ではありません。そのため、相手の親に対しては「婚約を守らなかった」ことを理由に請求するのではなく、婚約関係を不当に壊したという不法行為(民法709条)として責任を問えるかが問題になります。
請求が認められる方向に働く事情
親が結婚に反対すること自体は、意見の表明として一定の範囲で許されるものです。親への請求が認められるのは、その範囲を超えて、婚約の解消に主体的に関わったと評価される場合に限られると考えておくのが現実的です。具体的には、次のような事情が問題になります。
- 婚約者に対して、婚約をやめるよう強く繰り返し働きかけた。
- 婚約者に事実と異なる悪評を吹き込み、結婚の意思を失わせた。
- 出自などへの偏見を理由に、結婚を阻もうとした。
- 本人どうしの話し合いを妨げ、親が主導して婚約の解消を決めた。
過去の裁判例では、結婚式の準備や招待状の送付まで進んでいたのに、婚約者の母親が強く反対し、婚約者が直前に婚約をやめた事案で、母親の反対がなければ婚約の解消に至らなかったとして、婚約者と母親の共同不法行為(民法719条)を認めたものがあります(徳島地裁昭和57年6月21日判決)。また、婚約者の親が出自を理由に強く反対し、婚約が解消された事案で、婚約者とその親の双方の責任を認めた裁判例も紹介されています(大阪地裁昭和58年3月28日判決)。
請求が難しくなる事情
反対に、親の関与が小さかった場合には、親への請求は難しくなります。たとえば、親が意見を述べただけで最終的には婚約者が自分の判断でやめた場合や、親の反対がなくても婚約者がすでに結婚の意思を失っていた場合です。また、婚約者本人への請求が認められる場面でも、親への請求まで当然に認められるわけではない点には注意が必要です。
親への請求は、婚約者本人への請求よりも立証のハードルが高くなりやすく、相手の家族との関係がさらにこじれるおそれもあります。親を相手方に加えるかどうかは、得られる見通しと負担を比べたうえで判断することをお勧めします。
慰謝料のほかに問題になる費用
婚約の解消に正当な理由がない場合、精神的な苦痛に対する慰謝料のほか、結婚の準備のために支出した費用などが損害として問題になることがあります。主な項目は次のとおりです。
| 項目 | 考え方の目安 |
|---|---|
| 式場・新婚旅行のキャンセル料 | 婚約をやめた側の負担として求めることが考えられる。式場との契約上は契約者が支払い、その後に相手へ求める形になることが多い |
| 新居の契約費用・家具家電の購入費 | 結婚を前提に支出したものかどうか、今後も使えるかどうかが考慮される |
| 結婚を機にした退職による収入の減少 | 退職と婚約の解消との結びつきや、再就職までの事情が考慮される |
| 結納金・婚約指輪 | 婚約の解消の原因がどちらにあるかで、返還の要否が変わることがある |
どこまでが認められるかは、支出の時期や必要性、婚約の解消との結びつきによって判断が分かれます。領収書や契約書、振込の記録など、支出を示す資料は捨てずに保管しておきましょう。結納金や結婚を前提に渡したお金の扱いは、結婚を前提に渡したお金・結納金は返還請求できるかで詳しく解説しています。
二人で話し合って別れた場合はどうなるか
親の反対をきっかけに、二人で話し合ったうえで「結婚は難しい」と合意して別れた場合は、一方的に婚約をやめたのではなく、合意による婚約の解消と見られることがあります。この場合、慰謝料の請求は認められにくくなります。
ただし、表向きは合意の形をとっていても、実際には相手や相手の親から強く迫られて、やむを得ず受け入れたという事情があることもあります。また、合意で別れた場合でも、結婚の準備にかかった費用をどう分けるかは別に話し合う余地があります。別れ際に交わしたメッセージや、解消の話し合いの経過は、後で「合意だったのか、一方的だったのか」を判断する材料になりますので、残しておくことが大切です。
請求を考えるときに残しておきたい記録
親の反対による破談では、「婚約が成立していたこと」「婚約をやめた経緯と理由」「親がどう関わったか」の3つを示す記録が重要になります。たとえば、次のようなものです。
- 結婚の時期や新生活について話し合ったメッセージ。
- 婚約指輪の購入記録、結納や顔合わせの写真。
- 式場・新居の契約書、キャンセル料の請求書、支出の領収書。
- 婚約者から破談を告げられたときのメッセージや、そのときの説明の内容。
- 相手の親からの手紙・メッセージや、親の発言を記したメモ。
- 結婚を理由に退職した場合の退職日や経緯が分かる資料。
親の発言は、直接のやり取りが残っていないことも多く、婚約者を通じて伝えられた内容しか分からない場合もあります。その場合も、いつ、誰から、どのような内容を聞いたのかを、早めにメモにまとめておくとよいでしょう。
請求を進めるときの注意点
破談の直後は気持ちの整理がつかず、相手の実家に出向いたり、親に何度も連絡したりしたくなることもあると思います。しかし、相手方の自宅に押しかける、繰り返し連絡を入れるといった行動は、話し合いを難しくするだけでなく、こちらの行為が問題視されるきっかけにもなりかねません。請求は、記録を整えたうえで、書面などで冷静に伝えることが基本です。
一般的な進め方としては、まず当事者間や代理人を通じた交渉を行い、まとまらない場合には書面で正式に請求し、それでも解決しなければ調停や訴訟を検討することになります。相手の親が交渉の窓口として出てくることもありますが、その親が婚約者本人の代わりに話をまとめる権限を持っているとは限りません。この点は【男女トラブル】相手の家族が代わりに交渉に出てきた|代理権の有無の確かめ方で解説しています。
また、損害賠償の請求には期限があります。不法行為として請求する場合は、損害と加害者を知った時から3年で時効にかかるのが原則です(民法724条)。婚約を守らなかったこと(債務不履行)を理由とする請求では、別の期間が問題になります。迷っているうちに時間が経ってしまうこともありますので、請求を考えている場合は早めに見通しを確かめておくことをお勧めします。
破談を告げた側から見た注意点
この記事の内容は、反対に、自分の親の反対を受けて婚約をやめた側にも関わります。「親が反対しているから仕方がない」と考えて一方的に別れを告げた場合、後になって慰謝料や準備費用を請求されることがあります。
親の反対の理由が、相手の借金や重大な隠し事など、結婚生活に関わる事情を指摘するものであれば、正当な理由と評価される可能性もあります。一方で、そうした事情がなく、単に親が気に入らないという理由だけで婚約をやめた場合は、責任を問われる方向に傾きやすいと考えられます。請求を受けたときの考え方は、婚約を一方的に破棄された|慰謝料を請求できるケース・できないケースもあわせてご覧ください。
よくあるご質問
相手の親に挨拶する前に破談になった場合も、請求できますか
親への挨拶の前でも、二人の間で結婚の約束が具体的にできていれば、婚約が成立していたと評価されることはあります。ただし、親への挨拶や指輪の授受などの事情がない分、婚約の成立を示す事情をほかの記録で補う必要が出てきます。結婚の時期や準備について話し合ったメッセージなどが手がかりになります。
相手が「親に逆らえない」と言っている場合、本人の責任は軽くなりますか
親との関係や事情は、金額などの評価で考慮されることはあり得ます。しかし、最終的に婚約をやめると判断したのは本人であるため、それだけで本人の責任がなくなるとは考えにくいところです。
相手の親だけに請求することはできますか
理論上は、親の行為が不法行為にあたる場合に、親だけを相手方とすることも考えられます。ただ、親への請求は認められるハードルが高く、婚約者本人の判断との関係も問われますので、通常は本人への請求を軸に検討することになります。
慰謝料の金額はどのくらいになりますか
婚約から破談までの期間、結婚の準備の進み具合、退職や妊娠の有無、婚約をやめた経緯などによって大きく異なり、一律の目安を示すことは難しいものです。準備費用などの財産的な損害は、慰謝料とは別に積み上げて考えることになります。
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親の反対による破談でお悩みの方へ
親の反対による破談では、婚約が成立していたか、反対の理由が何だったか、親がどこまで関わったかによって、請求できる相手も見通しも変わります。気持ちの整理がつかない中で相手の家族と向き合うのは負担が大きいものですので、記録を手元にそろえたうえで、どのように進めるかを一緒に考えることもできます。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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