【男女トラブル】同棲中に相手が勝手に家具や家電を売った
「別れた相手の母親から『息子が渡したお金を返してほしい』と電話が来た。応じなければいけないのか」「元交際相手の兄を名乗る人から、返さないなら勤務先に連絡すると書かれたメッセージが届いた」。男女間のトラブルのご相談では、このように当事者本人ではなく家族から返金を求められたというお話をうかがうことがあります。反対に、「娘が交際相手に渡したお金を取り戻したいが、親が連絡してもよいのか」というご家族側からのご相談もあります。
交際中のお金については、「デート代やプレゼントは贈与なので返さなくてよい」と説明されることが多く、その説明自体は誤りではありません。ただ、家族から連絡が来た場面では、贈与か貸付かを考える前に、そもそも誰が返金を求められる立場にあるのか、誰に払えば話が終わるのかを確かめておかないと、払ったのに解決しないということが起こり得ます。
この記事では、元恋人の家族から「お金を返せ」と連絡を受けた方を主な読者として、請求する権利の所在、家族が代わりに請求できるかどうか、返事をするときに気をつけたい点を整理します。贈与と貸付の区別や時効の詳しい内容は、関連する別の記事に譲ります。
最初に確かめるのは「そのお金が誰のものだったか」
家族から連絡が来ると、家族そのものに請求されているように感じられますが、返金を求める権利があるかどうかは、お金の出どころと、誰が誰に渡したかで決まります。返金を求める権利があるのは、原則としてお金を渡した本人です。
元恋人が自分のお金を渡していた場合
交際中に元恋人が自分の収入や預金から渡したお金であれば、仮に返金を求める権利があるとしても、それは元恋人本人の権利です。親やきょうだいであっても、家族であることだけを理由に、自分の権利として返金を求めることはできません。家族が連絡してきた場合、その家族は「本人の代わり」として話しているのか、「自分の考え」で動いているのかを分けて考える必要があります。
家族のお金が関わっていた場合
事情が異なるのは、家族のお金が関わっていた場合です。たとえば、交際中に相手の親から直接お金を借りていた場合には、貸し借りの当事者は相手の親とご自身ですから、親は自分の権利として返済を求めることができます。この場面の整理は「【男女トラブル】相手の家族から借りたお金|交際解消と同時に清算する」で詳しく扱っています。
https://mbp-japan.com/tokyo/wakailaw/column/5237824/
また、元恋人が家族のお金を無断で持ち出して渡していたと言われる場合もあります。この場合、まず問題になるのは家族と元恋人との間の関係ですが、受け取った側が事情を知っていたかどうかなどによって、受け取った側に返還を求められる余地が生じることもあります。家族の言い分をそのまま受け入れるのではなく、いつ、誰の口座から、どのような名目で渡されたのかを確かめることが出発点になります。
連絡してきた人の立場ごとに、基本的な考え方をまとめると次のとおりです。
| お金のやり取り | 返金を求められる人の基本 | 確かめておきたいこと |
|---|---|---|
| 元恋人が自分のお金を渡した | 元恋人本人 | 家族が本人から頼まれているか |
| 相手の家族が自分に直接貸した | 貸した家族本人 | 貸し借りの合意があったか、金額と時期 |
| 元恋人が家族のお金を持ち出して渡した | まず家族と元恋人の間で問題になる | お金の出どころ、受け取ったときの事情 |
| 元恋人が18歳未満だった | 親権者が法定代理人として動ける | 渡されたときの年齢、親の同意の有無 |
| 元恋人が亡くなっている | 相続人が権利を引き継ぐ | 相続人であることの確認 |
元恋人が18歳未満だった場合には、親権者が法定代理人として請求の窓口になることができ、未成年者が親の同意なく行ったお金のやり取りは取り消される可能性があります(民法5条1項・2項。自由に使ってよいとされたお金などは別です)。取り消されると、受け取ったものを返す義務が生じ得ます(同法121条の2第1項)。また、元恋人が亡くなっている場合には、相続人がその権利を引き継ぎます(同法896条)。こうした事情があるときは、通常の交際中のお金とは考え方が変わります。
家族は元恋人の「代わり」として請求できるのか
元恋人自身のお金だった場合でも、家族が元恋人から頼まれ、本人の代わりとして連絡してくることはあります。そのときに確かめたいのが、代わりに話す権限、つまり代理権があるかどうかです。
親であっても当然に代理権があるわけではない
成年に達した人について、親が当然にその人の代理人になるという仕組みはありません。成年年齢は18歳であり(民法4条)、それ以降は本人が自分の権利を自分で行使するのが原則です。家族が代理人として話を進めるには、本人から代理権を与えられている必要があり、代理人が権限の範囲内で本人のためにすることを示して行った行為が、本人に対して効力を持ちます(同法99条1項)。
「親だから」「きょうだいだから」というだけでは、本人の代わりに請求し、受け取る権限があることにはなりません。代理人として話しているのであれば、本人の署名がある委任状を見せてもらうなど、書面で確かめる方法が考えられます。家族が交渉の場に出てきたときの確かめ方は「【男女トラブル】相手の家族が代わりに交渉に出てきた|代理権の有無の確かめ方」で詳しく整理しています。
https://mbp-japan.com/tokyo/wakailaw/column/5235770/
家族が自分の考えで動いている場合
家族からの連絡の中には、元恋人本人は返金を求めていないのに、家族が心配や憤りから独自に動いているものもあります。この場合、家族とどれだけ話をしても、元恋人本人との関係は何も決まりません。後日、元恋人本人から改めて請求される可能性も残ります。
家族が弁護士でないことは、それだけで問題になるわけではありません。弁護士でない人が他人の法律事件の交渉を扱うことが禁じられるのは、報酬を得る目的で、業として行う場合です。家族が報酬を受けずに身内のことで連絡してくることは、通常これには当たらないと考えられます。問題は、連絡してくることそのものではなく、その人と話を進めて解決につながるかどうかにあります。
権限のない家族に払っても、元恋人との関係が終わらないことがある
家族からの連絡が続くと、「いくらか払って終わりにしたい」と考える方も少なくありません。しかし、払う相手を確かめないまま支払うことには注意が必要です。
受け取る権限のない人への支払いの扱い
お金を返す義務がある場合、その支払いは、本来受け取る権限のある人に対してしなければ、原則として義務を果たしたことになりません。受け取る権限がないのに、取引上の社会通念に照らして権限があるような外観を持つ人に支払った場合には、支払った側が権限のないことを知らず、知らないことに過失もなかったときに限って有効とされます(民法478条)。
つまり、家族に代理権があるかを確かめずに支払った場合、後から元恋人本人に「自分は受け取っていない」と言われ、改めて請求されるおそれがあります。家族に払ったお金を家族から取り戻せるかどうかは、また別の問題になってしまいます。
支払いで話を終えるために整えておくこと
仮に何らかの支払いをして終わらせる場合には、次の点を整えておくことが考えられます。
- 元恋人本人が当事者として署名する合意書にするか、本人の委任状を確認したうえで代理人と合意する。
- 支払う金額と、それが何の支払いなのかを書面に明記する。
- この合意で一切の清算が済み、今後互いに請求しないという趣旨の条項を入れる。
- 支払いは振込など記録が残る方法で行い、振込先が誰の口座かを確かめる。
書面の効力や作り方の注意点は「【男女トラブル】交際相手との間で作った書面|『誓約書』『覚書』の効力」でも扱っています。
https://mbp-japan.com/tokyo/wakailaw/column/5235726/
そもそも返す義務があるお金なのか
誰が請求できるかを確かめた後に考えるのが、そのお金に返す義務があるかどうかです。返す義務の有無は、家族の言い分や相手の呼び方ではなく、渡されたときの事情と記録によって判断されます。
贈与と扱われやすいもの
贈与は、当事者の一方が財産を無償で与える意思を示し、相手が受け入れることで成立します(民法549条)。書面によらない贈与でも、すでに渡し終えた部分については解除できません(同法550条)。交際中のデート代や食事代、誕生日などのプレゼント、好意から出してもらった生活費などは、贈与と扱われることが多いと考えられます。
貸し借りと扱われやすいもの
一方で、返すことを約束して受け取ったお金は、借用書がなくても貸し借り(消費貸借)として扱われることがあります(民法587条)。たとえば、「来月返すから貸してほしい」とメッセージで頼んでいた場合や、受け取った後に一部を返していた場合などです。ただし、貸し借りであったことを示す責任は、原則として返金を求める側にあります。
交際中のお金の性質については「交際中に立て替えた生活費・プレゼント代は返してもらえる?」でも整理しています。
https://mbp-japan.com/tokyo/wakailaw/column/5229751/
家族への返事で避けたいこと
家族から連絡が来たとき、すぐに返事をしなければいけない法律上の義務はありません。返事をする場合も、内容によっては後から不利に働くことがあるため、言葉を選ぶことが大切です。
返事の前に控えたい対応
次のような対応は、急いで行わない方がよいと考えられます。
- その場で「返します」「払います」と書いたり言ったりする。
- 金額や分割の回数を口頭で約束する。
- 家族と会って話し合う約束を一人で決める。
- 相手の家族を責めたり、感情的に反論したりする。
- これまでのメッセージや振込の記録を消す。
返事をするのであれば、「ご本人からのご請求であれば、ご本人か正式な代理人から書面でご連絡ください」という程度にとどめることが一つの方法です。権利の有無や金額について、家族とのやり取りの中で認める必要はありません。
時効との関係
お金を返すよう求める権利には消滅時効があり、権利を行使できることを知った時から5年、権利を行使できる時から10年で時効にかかるのが基本です(民法166条1項)。ただし、返す義務があることを認めると、時効は新たに進行を始めます(同法152条1項)。家族に向けて「返します」と伝えた言葉が、記録の残り方によっては、義務を認めた事情として扱われる可能性も否定できません。時効の考え方は「男女トラブルの時効早見表|請求の種類別に何年で消えるか」で詳しく扱っています。
https://mbp-japan.com/tokyo/wakailaw/column/5230780/
求め方が度を越えている場合
家族が返金を求めること自体は、直ちに違法になるわけではありません。一方で、求め方によっては、民事の問題を超えて刑事上の問題になり得ます。
問題になり得る求め方
たとえば、「返さなければ勤務先に知らせる」「家族に全部話す」などと告げて支払いを迫る場合には、恐喝罪(刑法249条)や脅迫罪(同法222条)が問題になることがあります。脅迫罪は、本人だけでなく、その親族の生命、身体、自由、名誉または財産に害を加えることを告げた場合も対象になります。また、深夜の繰り返しの電話や、勤務先への頻繁な連絡、自宅への押しかけなども、内容や程度によっては別の法的問題につながります。
記録と相談先
求め方に不安を感じたら、メッセージの画面、着信の日時と回数、届いた書面などを、消さずに保存しておくことが大切です。身の危険を感じる場合には警察に相談し、緊急でない相談であれば警察相談専用電話の#9110を利用する方法もあります。家族とのやり取りが続いて生活や仕事に影響が出ている場合には、弁護士が窓口となって、連絡の受け先を一本化することも考えられます。
よくあるご質問
元恋人の家族からの連絡は、無視してもよいですか?
家族からの電話やメッセージに、返事をしなければならない法律上の義務はありません。ただし、元恋人本人や代理人の弁護士から内容証明郵便が届いた場合や、裁判所から書類が届いた場合は扱いが異なります。特に裁判所からの書類には期限が定められていることがあり、対応しないと不利な結果につながるおそれがあります。家族からの連絡と、本人側からの正式な請求とは、分けて考えることが大切です。
元恋人本人に、直接事実を確かめてもよいですか?
本人の意思を確かめたいと考えるのは自然なことです。ただし、別れた相手に繰り返し連絡をすると、それ自体が新たなトラブルの原因になることがあります。確かめる場合も、短く用件だけを伝える、やり取りを記録に残すなどの配慮が必要です。直接の連絡が難しい場合には、弁護士を通じて確認する方法もあります。
家族に一部だけ払えば、話は収まりますか?
一部を払うことで一時的に連絡が落ち着くことはありますが、それで話が終わるとは限りません。家族に受け取る権限がなければ、元恋人本人との関係は残りますし、一部の支払いが返す義務を認めた事情として扱われ、残りの請求につながることもあります。支払いを考える場合は、払う相手と合意の内容を確かめてからにすることをおすすめします。
まとめ
- 返金を求める権利があるのは、原則としてお金を渡した本人であり、家族であることだけでは請求の権利は生じません。
- 相手の家族から直接借りていた場合や、元恋人が18歳未満だった場合、亡くなっている場合などは、家族が自分の権利または法定代理人・相続人として動けることがあります(民法5条・896条)。
- 成年の元恋人について親が当然に代理人になる仕組みはなく、代理として話しているかは委任状などで確かめます(民法4条・99条1項)。
- 受け取る権限のない家族に払っても、元恋人本人との関係では支払いと認められないことがあります(民法478条)。
- 返す義務の有無は、贈与か貸し借りかによって分かれ、渡されたときの事情と記録で判断されます(民法549条・550条・587条)。
- 家族への返事で「返します」と伝えると、時効との関係で不利に働く可能性があります(民法152条1項・166条1項)。
- 勤務先や家族に知らせると告げて支払いを迫るなど、求め方が度を越えている場合は、刑事上の問題になり得ます(刑法222条・249条)。
元恋人の家族から返金を求められてお困りの方へ
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https://mbp-japan.com/tokyo/wakailaw/column/5238329/
元恋人の家族からの請求にどう向き合えばよいか迷っている方はもちろん、ご家族が交際相手に渡したお金について取り戻せるかを知りたいとお考えの方も、まずはご相談ください。


