【不貞慰謝料】訴訟になった場合の流れと期間の目安

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

不貞慰謝料の話し合いがまとまらないとき、次の選択肢として出てくるのが訴訟です。請求する側であれば訴えを起こすかどうかの判断が、請求を受けている側であれば訴状が届いた後の見通しが問題になります。どちらの立場でも最初に気になるのは、終わるまでにどれくらいかかるのかという点ではないでしょうか。
 この記事では、不貞慰謝料の訴訟がどのような順番で進むのかを整理したうえで、どの場面に時間がかかりやすいのかを説明します。期間については、実務でよく言われる感覚だけでなく、最高裁判所が公表している統計も手がかりにします。
 なお、訴状が届いた後の答弁書の出し方や期日を欠席した場合の扱い、判決を得た後の回収の手続、途中で請求をやめる場合の手続については、それぞれ別の記事で扱っています。本記事は「時間」に絞って整理します。

この記事で整理すること

 訴訟の期間は、事件の内容よりも「どこまで手続を進めるか」「どういう形で終わるか」に左右される面があります。以下の順に見ていきます。

  • 「裁判にかかる期間」という言葉が指している四つの区間。
  • 第一審がどのような順番で進み、どこで時間を使うのか。
  • 統計から見た第一審の平均審理期間と、その数字の読み方。
  • 終わり方(判決・和解・取下げ)によって期間が大きく変わること。
  • 期間を延ばす要因と、当事者の側で動かせる部分・動かせない部分。


「どれくらいかかるか」は四つの区間に分かれている

 「裁判は1年くらいかかる」という説明を目にしても、どこからどこまでを数えた1年なのかは書かれていないことが少なくありません。ところが、区間ごとに時間の決まり方はまったく違います。まず、この四つを分けておくと見通しが立てやすくなります。

区間時間の長さを決めている主なもの性質
請求してから訴えを起こすまで証拠の準備、相手方との交渉、依頼する弁護士の選定自分の側の判断で動かせる部分が大きい
訴えを起こしてから第1回期日まで裁判所での訴状の審査、相手方への送達、期日の指定1か月から2か月程度とされることが多い
第1回期日から第一審が終わるまで主張と証拠の整理、人証調べ、和解の協議統計が「審理期間」と呼んでいるのはこの区間
第一審が終わってから支払いを受けるまで控訴の有無、判決の確定、任意の支払いか強制執行か判決が出ても支払いが済むとは限らない


 後で触れる統計の数字は、原則として3番目の区間を測ったものです。つまり「平均9か月」と言われても、それは訴えを起こした日から数えた期間であり、証拠を集め始めた時点や、相手方に通知を出した時点からの時間ではありません。請求を思い立ってから解決までの実感としての時間は、これより長くなるのが通常です。

第一審はどのような順番で進むのか

 期間の話に入る前に、時間を使っている中身を押さえておきます。不貞慰謝料の訴訟は、次のような順番で進みます。

訴えの提起と第1回期日

 請求する側が訴状を裁判所に提出し、裁判所が形式を確認したうえで相手方に送達します。あわせて第1回の期日が指定されます。相手方の住所が分かっていて郵便が届く状態であれば、この段階でとどこおることはあまりありません。逆に、相手方の所在が分からない場合は、ここで数か月を要することがあります。

主張と証拠の整理

 第1回の期日の後は、双方が書面を出し合いながら、何が争われているのかを絞り込んでいきます。不貞慰謝料では、肉体関係があったといえるか、既婚であることを知っていたか、婚姻関係がすでに破綻していたか、時効が完成していないか、といった点が争点になります。
 この段階の進み方は、書面の往復の回数によって決まります。一方が書面を出し、相手方がそれを読んで反論の書面を用意する。この1往復におおむね1か月から2か月かかるため、期日の間隔もその程度になるのが通常です。期日を何回重ねたかが、そのまま期間に置き換わっていくと考えると分かりやすいでしょう。

人証調べ

 書面のやり取りだけでは判断がつかない場合、当事者本人や証人に法廷で話を聞く手続が行われます。民事訴訟法182条は、証人と当事者本人の尋問について、できる限り争点と証拠の整理が終わった後に集中して行わなければならないと定めています。整理の段階を経てから、まとめて行われるということです。
 尋問を行うかどうかは、期間に大きく影響します。尋問の日を決めるだけでも先の期日を押さえる必要があり、その準備にも時間がかかるためです。

判決または和解

 尋問まで終わると、判決に向かうか、和解の協議に入るかという場面になります。裁判所から和解の話が出ることは珍しくなく、実際にも和解で終わる事件は相当数にのぼります。判決に向かう場合は、口頭弁論を終結してから判決の言渡しまで、さらに1か月から2か月程度が見込まれます。

統計から見た第一審の期間

 最高裁判所は、裁判の迅速化に関する法律にもとづき、2年ごとに「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」を公表しています。令和7年7月に公表された第11回の報告書によると、令和6年に地方裁判所で終わった民事第一審訴訟事件は139,370件、平均審理期間は9.2か月でした。審理期間別の内訳は次のとおりです。

審理期間事件の割合
6か月以内58.1%
6か月を超え1年以内17.8%
1年を超え2年以内16.5%
2年を超えるもの7.6%


 1年以内に終わった事件が全体の4分の3ほどを占める一方、2年を超えた事件も一定数あります。なお、平均審理期間は令和3年と令和4年が10.5か月、令和5年が9.8か月、令和6年が9.2か月と、直近では短くなる方向で推移しています。

この数字をそのまま当てはめることはできない

 ここで注意が必要なのは、この9.2か月という数字が、地方裁判所の民事事件すべてを合わせた平均だという点です。相手方がまったく争わずに1回の期日で終わる事件も、専門的な争点をいくつも抱えた事件も、同じ母数に入っています。不貞慰謝料の事件だけを取り出した数字ではありません。
 そのため、この平均値を自分の事件に当てはめるより、次に見る「終わり方別の数字」のほうが手がかりになります。

終わり方によって期間は大きく違う

 同じ報告書は、事件がどのような形で終わったかによって、審理期間を分けて示しています。令和6年の民事第一審訴訟事件の内訳は次のとおりです。

終わり方件数(割合)平均審理期間
判決(全体)70,423件(50.5%)8.2か月
うち双方が争ったうえでの判決33,598件13.4か月
うち相手方が争わないまま出された判決36,785件3.4か月
和解44,080件(31.6%)12.9か月
取下げ19,553件(14.0%)5.9か月


 注目したいのは、同じ「判決」でも、双方が争ったうえでの判決が13.4か月であるのに対し、相手方が争わないまま出された判決は3.4か月と、4倍近い開きがあることです。判決全体の平均が8.2か月にとどまっているのは、後者がおよそ半数を占めているためです。

争われた場合は1年前後という帯に入りやすい

 不貞慰謝料で訴訟にまで至る事件は、金額や事実関係について双方の言い分が食い違っていることがほとんどです。相手方が代理人を立てて反論してくる場合、統計上は「双方が争ったうえでの判決」か「和解」の帯に入っていくことになります。この二つはいずれも13か月前後です。訴訟を検討する際は、1年前後という時間を織り込んでおくのが現実的でしょう。

和解で終わっても短くなるとは限らない

 和解と聞くと、途中で折り合って早く終わる解決を思い浮かべるかもしれません。しかし統計上、和解で終わった事件の平均審理期間は12.9か月で、双方が争ったうえでの判決とほとんど変わりません。和解の話が出るのは、争点が整理され、場合によっては尋問まで終わった後であることが多いためです。
 もちろん、早い段階で条件がまとまり、半年ほどで終わる事件もあります。和解が「早い解決」に直結するわけではない、という程度に理解しておくとよいでしょう。

期間を延ばす要因と、縮める要因

 事件ごとの違いは、次のような要素から生まれます。金額の大小そのものよりも、手続をどこまで進める必要があるかが効いてきます。

要素期間への働き方補足
争点の数多いほど延びやすい不貞の有無に加えて破綻や時効の主張が重なると、書面の往復が増える
人証調べを行うか行うと延びやすい尋問は整理が終わった後にまとめて行われる(民事訴訟法182条)
被告が1人か2人か2人だと延びやすい配偶者と不貞相手の双方を相手にすると、応答が二系統になる
相手方が争うかどうか大きく左右する争う姿勢を示さない場合は短期で終わることがある
相手方の所在分からないと延びやすい送達ができないうちは期日を開けない
和解の協議一概には言えない早くまとまれば短縮するが、協議を重ねて決裂すると延びる


 このうち、事前に読みにくいのは相手方の対応です。訴えを起こす時点では、相手方が全面的に争うのか、早期の和解を望むのかは分かりません。期間の見通しに幅が出るのは、この部分を先に決められないためです。

自分の側で動かせる部分と、動かせない部分

 期間の全体を短くしようとするとき、手をつけられる場所は限られています。実際には、訴えを起こす前の準備の段階に、動かせる部分の多くが集まっています。

動かせる部分

 証拠をそろえてから訴えを起こすか、集めながら進めるかは、自分の側で決められます。主張を裏づける資料が最初から整理されていれば、争点の絞り込みが早く進み、書面の往復も少なくて済みます。提出すべき書面を期限までに用意することも、進行を止めないという意味では期間に効いてきます。
 また、何を求めるのかを早い段階で定めておくことも、結果的に時間を左右します。金額だけを争うのか、接触を避ける約束まで求めるのかによって、和解のまとめやすさが変わるためです。

動かせない部分

 期日の日程は裁判所が指定するものであり、当事者の都合だけで詰められるものではありません。裁判所の事件数や、双方の代理人の予定を調整した結果として、次の期日が1か月半から2か月先になることもあります。相手方が反論のために時間を求めた場合も、こちらから拒むことは通常できません。
 「早く終わらせたい」という希望そのものは、手続を短くする理由にはならないという点は、あらかじめ理解しておく必要があります。

「2年以内」という目標が置かれている

 裁判の迅速化に関する法律2条1項は、第一審の訴訟手続については2年以内のできるだけ短い期間内に終局させることを目標とする旨を定めています。前に見た統計は、この目標にもとづく検証の一環として公表されているものです。
 また、民事訴訟法147条の2は、裁判所と当事者が適正かつ迅速な審理の実現のために訴訟手続の計画的な進行を図らなければならないと定め、147条の3は、事件が複雑である場合などに、当事者双方と協議したうえで審理の計画を定めることとしています。不貞慰謝料の事件で審理の計画が正式に立てられる例は多くありませんが、期日のたびに次に何をするかを確認しながら進むという点は共通しています。

第一審が終わっても、手続が終わるとは限らない

 判決が言い渡されても、それだけで支払いが実現するわけではありません。判決に不服がある側は控訴することができ、控訴されれば高等裁判所で審理が続きます。判決が確定した後も、相手方が任意に支払わなければ、あらためて強制執行の手続を検討することになります。
 控訴の期間や、判決を得た後に支払われない場合の進め方については、別の記事で扱っています。ここでは、第一審の終了と、金銭を実際に受け取る時点との間に、なお時間が生じうるという点だけ押さえておいてください。

請求を受けている側から見た期間

 請求を受けている側にとって、期間の意味は請求する側とは違ってきます。手続が長引けば、その間ずっと事件を抱えることになり、費用も積み重なります。認められた場合に支払う金額についても、遅延損害金は時間の経過とともに増えていきます。
 一方で、争う理由がある場合に、期間を短くしたいという理由だけで主張を控えるのは本末転倒です。破綻していた、既婚であることを知らなかった、時効が完成している、といった主張には、それを裏づけるための書面や証拠が必要であり、その分の時間は必要な時間だといえます。
 考え方としては、争うべき点があるかどうかを先に見極め、そのうえでどの終わり方を目指すのかを決めることになります。争う点が乏しいのであれば、早い段階での話し合いによる解決が、期間の面でも費用の面でも負担が小さくなることがあります。

よくある質問

 期間についてよく寄せられる質問を三つ挙げます。

交渉より訴訟のほうが早く終わることはありますか

 あります。相手方が交渉に応じないまま連絡が途絶えている場合、交渉を続けても時間だけが過ぎていきます。訴訟であれば、相手方が応答しなくても手続は進みます。交渉が動かない状態が続いているときは、訴訟のほうが結果的に早いという判断になることもあります。

毎回、裁判所に行く必要がありますか

 代理人を立てている場合、本人が出席を求められるのは、主に尋問が行われる期日です。書面のやり取りが中心の期日については、代理人が対応するのが通常です。

途中で終わらせることはできますか

 できます。判決を待たずに和解で終える方法や、訴えを取り下げる方法があります。ただし、取下げには段階によって相手方の同意が必要になるなど、手続上の条件があります。この点は別の記事で整理しています。

まとめ


  1. 「裁判にかかる期間」は、提訴前・提訴から第1回期日まで・審理・判決後の四つの区間に分かれ、統計が示すのは審理の区間だけである。
  2. 令和6年の民事第一審訴訟事件の平均審理期間は9.2か月だが、これは地方裁判所の民事事件全体の平均である。
  3. 終わり方によって期間は大きく異なり、双方が争ったうえでの判決は13.4か月、和解は12.9か月、相手方が争わないまま出された判決は3.4か月となっている。
  4. 不貞慰謝料で相手方が反論してくる事件は、1年前後という帯を見込んでおくのが現実的である。
  5. 和解で終わったからといって、期間が短くなるとは限らない。
  6. 期間を左右するのは、争点の数、人証調べの有無、被告の人数、相手方の対応、送達ができるかどうかである。
  7. 動かしやすいのは訴えを起こす前の準備であり、期日の間隔や日程は当事者の側では決めにくい。
  8. 第一審が終わっても、控訴や回収の手続が残ることがある。


ご相談について

 訴訟を起こすかどうか、あるいは届いた訴状にどう対応するかは、見込まれる期間や費用と、得られる結果とを並べて考える必要があります。弁護士法人若井綜合法律事務所では、不貞慰謝料に関するご相談をお受けしています。
 現在の状況でどのような進め方が考えられるのか、どのくらいの時間を見ておくべきかも含めて、池袋または新橋の事務所でご相談を承ります。お困りの際は、お早めにご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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