【風俗トラブル】アフターピル代や検査代を払ってほしいと言われたら、払うべき?

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

デリヘルや店舗型の風俗店を利用した後、女性や店から「アフターピル代を払ってほしい」「性病の検査代を負担してほしい」と求められることがあります。一つひとつの金額は大きくなくても、身に覚えのある事情があると「払わないと警察に行かれるのでは」と不安になり、言われるままに応じてしまう方も少なくありません。この記事では、こうした費用を求められたときに、払う理由があるのかをどう見極め、払うとすればどこに気をつけるべきかを整理します。

この記事は、2023年7月施行の改正刑法(不同意性交等罪など)と、2026年2月に始まった緊急避妊薬(アフターピル)の薬局での販売を前提に記載しています。個別の事情によって結論が変わることがありますので、具体的な対応はご相談のうえでご判断ください。


最初に切り分けたいのは「実費の負担」か「示談金」か

 アフターピル代や検査代を求められる場面は、大きく分けると次の3つの形があります。どの形にあたるかで、考え方も、確認すべき点も変わります。

請求の形よくある言われ方考え方の出発点
実費の負担を求められる「ピル代と検査代だけ出してほしい」金額と、実際にかかったかどうかの確認が中心になります
示談金の内訳として含まれている「ピル代・検査代・休業補償・慰謝料で合計○○万円」実費以外の名目の根拠と、総額の妥当性が問題になります
罰金や違約金に上乗せされている「規約違反の罰金とは別に検査代も払え」店の規約による請求と、女性の費用負担を分けて考える必要があります


 実費だけを求められている場合は、金額を裏付けで確かめやすく、話し合いで区切りをつけやすい類型です。一方で、実費が入口となり、休業補償や慰謝料などの名目が後から加わっていく場合には、総額が当初の何倍にもなることがあります。まずは、相手が何を、いくら、どのような理由で求めているのかを、言われたとおりに書き留めておくことが出発点になります。

払う理由があるかを左右する事情

 法律上、支払う義務があるかどうかは、そのときに何が起きたのかによって異なります。代表的な場面ごとに見ていきます。

女性の同意がない、または同意の範囲を超えた行為があった場合

 女性が望んでいない行為をした場合には、民法709条の不法行為として、女性が負った損害を賠償する責任を問われることがあります。アフターピルの費用や性感染症の検査費用は、その行為がなければかからなかった費用として、損害に含まれる可能性があります。

 また、この場合は金銭の問題にとどまらず、不同意性交等罪などの刑事手続につながることも考えられます。費用の負担だけで済ませようとせず、刑事面も含めた見通しを立てたうえで対応を決めることが大切です。

避妊具が破れた・外れたなど、互いに予期しない出来事だった場合

 行為そのものに双方の合意があり、避妊具の破損などが偶然に起きた場合には、利用者に過失があったといえるかどうかが問題になります。過失が認められなければ、法的な支払義務が当然に生じるとは限りません。

 ただし、実際には「支払義務があるか」とは別に、実費の範囲で負担を申し出て、早く穏便に区切りをつけるという選択をされる方も多くいます。その場合でも、後で名目を変えて請求が続かないよう、何の費用をいくら払ったのかを明確にしておくことが欠かせません。

店のルールに反する行為を、女性も合意のうえで行っていた場合

 女性側から持ちかけられたなど、双方が合意して行為に及んでいた場合には、原則として慰謝料などの支払義務は生じにくいと考えられます。もっとも、後になって「同意はなかった」と主張が変わることもあるため、当時のやり取りの記録が残っているかどうかが重要になります。

店が「罰金」「規約違反」として請求してくる場合

 店が独自に定めた罰金は、利用者がその金額に合意していない限り、そのまま支払義務の根拠になるとは限りません。罰金とアフターピル代・検査代がひとまとめに請求されている場合は、それぞれの名目を分けて説明を求めることが、適正な金額を考える前提になります。

金額が妥当かを確かめる手がかり

 実費の負担に応じる場合でも、請求された金額が実際の費用と見合っているかは確認しておくべきです。

 緊急避妊薬は、2026年2月から一部の薬局で処方箋なしで購入できるようになりました。メーカーが公表している希望小売価格は、ノルレボが1錠7,480円、レソエル72が1錠6,930円です。医療機関で処方を受ける場合は、診察料が加わることや、医療機関ごとに価格が異なることから、これより高くなることもあります。

 性感染症の検査費用は、検査する項目の数や医療機関によって幅があります。また、感染の有無は行為の直後には判定できないことが多く、一定の期間をおいて検査を受けるのが一般的です。そのため、「検査代」としてまとまった金額を先に求められた場合には、何の検査を、いつ受ける予定なのかを確認しておく意味があります。

確認したいこと理由
領収書や明細の写しがあるか実際にかかった金額を確かめるため
受診・購入の日付行為との時期的なつながりを確かめるため
検査の項目と時期再検査を理由とした追加請求の見通しを立てるため
実費以外の名目が含まれていないか休業補償や慰謝料が混ざっていないかを見分けるため


 領収書の写しを求めると、相手が気分を害するのではと心配される方もいます。しかし、支払う側が金額の裏付けを求めることは、不当な要求ではありません。氏名などの個人情報は伏せたうえで見せてもらう方法もあります。

払う場合に押さえておきたいこと

 実費を負担すると決めた場合でも、払い方によっては、それが新たな請求の足がかりになることがあります。インターネット上の法律相談でも、ピル代・検査代・休業手当として高額な支払いに応じた後、検査結果の確認を理由にもう一度会うよう求められたという相談が寄せられています。次の点を押さえておくと、支払いを一度で区切りやすくなります。

  1. 何の費用として、いくら払うのかを書面に残すこと。
  2. 誰に支払うのか(店か、女性本人か)を確定させること。
  3. 今回の支払いで双方の関係が清算されたことを確認する条項(清算条項)を入れること。
  4. 検査結果が出た後の扱いを、支払いの時点で取り決めておくこと。
  5. 振込など記録が残る方法で支払い、受領の記録を残すこと。


 とくに注意したいのは、店と女性本人の両方から別々に請求される可能性です。店にだけ支払って書面を交わしても、女性本人がその合意の当事者になっていなければ、女性から別に請求を受けるおそれが残ります。誰が合意の当事者になっているかは、書面を確認するうえで見落とされやすい点です。

払う前に避けたい対応

 不安が大きいときほど、その場を早く終わらせたい気持ちから、次のような対応をとってしまいがちです。

  • その場で手持ちの現金を渡し、受領の記録を何も残さないこと。
  • 求められるままに借用書や念書に署名すること。
  • 身分証や名刺の写しを渡し、自宅や勤務先の情報を広げること。
  • 事実関係を確認しないまま、包括的に非を認める謝罪文を送ること。
  • 連絡を一切無視し、相手の受け止め方を確かめないまま時間を過ごすこと。


 とくに謝罪文は、気持ちを伝えるつもりで書いたものが、後に「同意のない行為を認めた証拠」として扱われることがあります。謝罪をする場合でも、何について謝るのかを整理したうえで書くことが大切です。

費用を払えば刑事手続の心配はなくなるのか

 アフターピル代や検査代を支払ったことで、女性が被害届を出さないと約束したことにはなりません。実費の負担は、あくまで費用の清算です。刑事手続への影響まで見込むのであれば、女性本人との間で、処罰を求めない意思(宥恕)を含めた示談が成立しているかどうかが重要になります。

 反対に、実費を負担したことが直ちに罪を認めたことになるわけでもありません。ただ、どのような趣旨で支払ったのかがあいまいなままだと、後で双方の受け止め方が食い違うことがあります。支払いの趣旨は、書面に記しておくのが望ましいといえます。

よくあるご質問


女性がアフターピルを飲んだと言っていますが、領収書を見せてもらえません

 領収書がないことだけで請求が嘘だとは限りませんが、金額を確かめられないまま支払うことは避けたいところです。購入した店舗や日付だけでも教えてもらえないか、個人情報を伏せた写しを出してもらえないかを尋ねてみる方法があります。それでも応じてもらえない場合は、市販薬の価格などを目安に、支払う金額を提案することも考えられます。

検査の結果が出るまで、支払いを待ってもらうことはできますか

 待ってもらうこと自体は可能ですが、その間の連絡の取り方や、結果の伝え方を決めておかないと、やり取りが長引く原因になります。結果が出た時点で清算する前提であれば、その旨を先に書面で確認しておくと、追加の請求を防ぎやすくなります。

費用だけ払えば、店から求められている罰金は払わなくてよいですか

 アフターピル代や検査代と、店の規約に基づく罰金は、別の根拠による請求です。費用を払ったからといって罰金の請求が消えるわけではありませんが、罰金のほうも、合意の有無や金額の妥当性によって支払義務が否定されたり、減額されたりすることがあります。両方を同時に整理したほうが、全体として区切りをつけやすくなります。

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少額の請求でも、払い方を決める前にご相談ください

 アフターピル代や検査代は、金額だけを見ると「払って済むならそのほうがよい」と感じやすい請求です。しかし、何を根拠に、誰に、どのような書面を交わして支払うかによって、その後に請求が続くかどうかが大きく変わります。実費の負担で区切りをつけたい場合も、刑事手続への影響が気になる場合も、支払う前の段階で状況を整理しておくことが、結果的に負担を小さくすることにつながります。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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