デリヘル嬢から誘われた本番でも罪になる?「同意していた」が通用しない理由
風俗店を利用したあと、店とは別の人物から連絡が入る。「あんたの名前も勤務先も、こっちは全部聞いている」「会社に知られたくなければ、話し合いに来い」——。相手が暴力団や半グレをにおわせる名乗り方をしてくると、それだけで頭が真っ白になり、言われるままに金額を約束してしまう方は少なくありません。
しかし、相手が誰であっても、「情報を持っている」ことと「あなたに支払義務がある」ことはまったく別の問題です。そして、相手が実際に何者かによって、使える制度が変わってきます。
この記事では、風俗店経由で自分の情報が反社会的勢力側に渡った疑いがある場面を想定し、恐喝的な要求とつきまといにどう対応するかを整理します。
1. 最初に押さえたい二つのこと
① 情報を持たれていることは、支払義務の根拠ではありません
名前や勤務先を知られていることと、法的な支払義務があることは別です。金銭を請求できるのは、あくまで何らかの権利の裏づけがある場合に限られます。「知っているから払え」は、その裏づけになりません。
② 相手が誰かによって、取れる手段が変わります
指定暴力団の構成員なのか、いわゆる半グレなのか、単に反社を名乗っているだけなのか。この違いによって、警察・公安委員会が使える制度が変わります。ただし、どれに当たるかをご自身で見極める必要はありません。判定は警察や弁護士の役割で、利用者側がすべきことは、挑発せず、記録を残し、早めに相談先につなぐことです。
2. 相手の立場によって、使える制度が変わる
(1)指定暴力団の構成員である場合
暴力団対策法(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律)は、都道府県公安委員会が指定した「指定暴力団」の構成員に適用される法律です。この法律は、指定暴力団員がその暴力団の威力を示して行う27類型の行為を「暴力的要求行為」として禁止しています(9条)。
このなかに、今回のケースと正面から重なる類型があります。
9条1号:人に対し、その人に関する事実を宣伝しないこと、またはその人に関する公知でない事実を公表しないことの対償として、金品等の供与を要求すること
いわゆる口止め料の要求です。「風俗店を利用したことを会社や家族に知られたくなければ金を払え」という要求は、要件を満たせばこの類型に当たりうるものです。
これに該当する場合、公安委員会または警察署長から中止命令(11条)が、繰り返すおそれがあるときは公安委員会から再発防止命令(12条)が出されることがあります。中止命令に違反した場合は刑事罰の対象で、暴力的要求行為に対する中止命令違反には3年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金(併科あり)が定められています。
刑事事件として立件する前の段階でも、行政上の命令によって要求を止められる可能性があるという点が、このルートの特徴です。
あわせて、次の制度も用意されています。
- 被害回復の援助(13条)……中止命令等が出された場合、相手方が被害回復を求めるにあたって警察に援助を申し出ると、相手への連絡、連絡先の教示、交渉場所としての警察施設の利用などの援助を受けられます
- 代表者等への損害賠償責任(31条・31条の2)……指定暴力団員が、その暴力団の威力を利用した資金獲得行為によって他人の生命・身体・財産を侵害したときは、行為者本人だけでなく代表者に対しても損害賠償を請求しうる仕組みがあります
なお、9条には「依頼を受け、報酬を得る約束をして事故の示談交渉を行い、損害賠償として金品等の供与を要求すること」という類型(19号)もあります。店やその関係者が女性従業員に代わって示談金を請求してくるという構図が絡む場合、この視点が問題になることもあります。
(2)半グレ・トクリュウの場合
半グレと呼ばれる集団については、警察庁が2013年に暴走族の元構成員などを中心とする集団を「準暴力団」と位置づけ、取締りを強化してきました。さらに2023年7月以降は、SNSや求人サイトを通じて緩やかに結びつき、離合集散を繰り返す集団を含めて**「匿名・流動型犯罪グループ」(通称トクリュウ)**と位置づけています。準暴力団もこの枠に含まれます。
これらの集団の特徴として、警察庁は、暴力団のような明確な組織構造を持たず、中核部分が匿名化され、メンバーが入れ替わりながら多様な資金獲得活動を行うため、組織の把握やメンバーの特定が容易でないことを挙げています。違法な資金獲得で得た資金を風俗営業等の事業活動に投じる例も指摘されています。
重要なのは、これらは暴力団対策法の「指定暴力団」ではないため、同法の中止命令などのルートは基本的に使えないという点です。この場合は、刑法上の犯罪としての立件と、民事上の請求という一般的なルートで対応することになります。
(3)反社を「名乗っているだけ」の場合
相手が実際にはどの組織にも属しておらず、こちらを畏怖させるために暴力団や半グレをにおわせているだけ、というケースもあります。この場合も、脅して金銭を要求する行為自体が犯罪になりうることに変わりはありません。
ただし、相手を試したり、素性を確かめようとしたりするのは避けてください。挑発と受け取られ、事態が悪化するおそれがあります。
3. 「反社かどうか」にかかわらず成立しうる犯罪
相手の属性を問わず、次のような行為は犯罪に当たりうるものです。
| 行為 | あたり得る罪 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 害を加える旨を告げて怖がらせる | 脅迫罪(刑法222条) | 2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 |
| 脅して義務のないことをさせる | 強要罪(刑法223条) | 3年以下の拘禁刑 |
| 脅して金品を交付させる | 恐喝罪(刑法249条) | 10年以下の拘禁刑(未遂も処罰) |
| 帰らせない、囲んで解放しない | 逮捕・監禁罪(刑法220条) | 3月以上7年以下の拘禁刑 |
※2025年6月1日施行の刑法改正により、懲役・禁錮は「拘禁刑」に一本化されています。
畏怖して支払ってしまった場合でも、そのことによって支払義務が確定するわけではありません。後から返還を求める余地が残る場合もありますので、支払ってしまった後でも相談する価値はあります。
そして構造的な問題として、一度支払っても、それで終わるとは限りません。「別の名目でもう一度」「関係者の分も」と要求が続く例は珍しくなく、支払能力があると判断されたことが次の要求を呼ぶこともあります。
なお、請求されている金額そのものが妥当かどうか(何を根拠に、いくらを請求されているのか)の検証は、別のコラム「風俗の後日高額請求・不当請求|客ができる対処法」で詳しく扱っています。
4. 情報がどこまで渡っているかを整理する
対応の前提として、相手が実際に何を知っているのかを把握しておくと、判断がしやすくなります。
- 氏名・電話番号・メールアドレス
- 身分証の券面情報(住所・生年月日・顔写真)
- 勤務先・役職
- 利用日時、利用店舗、指名した相手
- LINEや店のアプリ上のやり取り
- 決済情報(カード名義など)
そのうえで、これ以上の情報を渡さないことが基本になります。相手が知らない情報を、こちらの説明や弁解のなかで自分から明かしてしまうケースは実際に起こります。
風俗店側が保有する顧客情報については、個人情報保護法上、本人からの開示請求・訂正請求・利用停止等の請求といった手段が用意されています。この点は「風俗店・キャストに個人情報を握られた|悪用・晒しを防ぐには」で整理していますので、あわせてご覧ください。
5. つきまとい・押しかけへの対応
自宅前で待たれる、勤務先に電話が入る、繰り返し訪ねてくる——といった段階に進むこともあります。
こうした行為は、態様によって**住居侵入罪・建造物侵入罪(刑法130条前段)、不退去罪(同条後段)、業務妨害罪(同233条・234条)**などの問題になりえます。
一方、ストーカー規制法は「恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情」を充足する目的で行われることを要件としています。金銭要求が前面に出ている場面では、この目的要件を満たさないと判断される可能性があり、脅迫・恐喝や上記の罪、あるいは民事上の差止めで対応するほうが実態に合う場合があります。
つきまとい一般への対応や証拠の残し方については、別のコラム(「ストーカーを刺激せず関係を断つ|安全な接触遮断と証拠の残し方」など)をご参照ください。
6. 相談先の使い分け
風俗トラブルというと相談先が限られる印象を持たれがちですが、反社会的勢力が絡む場面では、風俗とは別系統の窓口が使えます。
| 窓口 | 特徴 | |
|---|---|---|
| 警視庁 暴力ホットライン(03-3580-2222・24時間) | 暴力団から脅されている、因縁をつけられて金品を要求されているといった相談を受け付ける専用窓口 | |
| 警察相談専用電話 #9110 | 緊急性が高くない段階での相談。相談したという記録が残ります | |
| (公財)暴力団追放運動推進都民センター(0120-893-240・平日9時〜16時) | 相談は無料・秘密厳守。暴力団のほか、匿名・流動型犯罪グループに絡む困りごとも対象。警視庁および東京三弁護士会の民事介入暴力専門の弁護士と連携しています | |
| 弁護士 | 窓口の一本化、交渉、書面対応、民事・刑事双方の見通し |
各都道府県に暴力追放運動推進センターが置かれており、弁護士や警察OBなどの暴力追放相談委員が対応し、相談内容の秘密保持が法律上義務づけられています。必要に応じて警察や弁護士会に引き継がれる仕組みです。
※電話番号・受付時間は変更されることがあります。ご利用前に各機関の公式サイトでご確認ください。
7. 「風俗を利用した自分が相談していいのか」という迷いについて
このタイプの相談で最も多い躊躇が、これです。
**成人の方が、合法な範囲でサービスを利用したこと自体は、原則として処罰の対象ではありません。**そのため、被疑者としてではなく、被害者として相談することができます。
ただし、次の場合は別のレイヤーの問題が重なります。
- 本番行為や、同意のない行為があった
- 撮影に関する問題がある
- 相手が18歳未満であった可能性がある
こうした事情がある場合でも、**隠したまま対応を進めるのは避けたほうが賢明です。**事実関係を伏せた対応は、後から不利に働くことが少なくありません。弁護士には守秘義務がありますので、まず正確に伝えたうえで方針を立てるのが現実的です。
また、「脅されて支払ってしまったことで、自分が暴力団排除条例違反になるのではないか」と心配される方もいます。東京都暴力団排除条例24条の利益供与の禁止は、事業者がその事業に関し、暴力団の威力を利用する対償として利益を供与する場合などを規制する規定であり、脅されて支払った利用者の立場とは前提が異なります。個別の評価は事情によりますので、不安があれば弁護士にお尋ねください。
8. やること/避けたいこと
やること
- 安全の確保を最優先にする(その場に留まらない、人のいる場所へ移動する、危険が差し迫っていれば110番)
- 要求内容・日時・人数・言われた言葉を、できるだけそのまま記録に残す
- 着信履歴、SNSやLINEのやり取りは削除しない(画面を撮影して二重に保存する)
- 相手が知っている情報を書き出しておく
- 早い段階で警察・暴追センター・弁護士のいずれかにつなぐ
- 家族や勤務先に知られる懸念があるなら、その懸念自体も相談時に伝える
避けたいこと
- その場で金額を約束する、支払う、書面にサインする
- 相手の素性を確かめようとする、挑発する
- 自分ひとりで交渉して解決しようとする
- 相手の指定した場所へ単独で出向く
- 記録を消す(不利な内容が含まれていても、消したこと自体が問題になりえます)
- 支払ってしまったからと諦める
おわりに
反社会的勢力が絡む場面では、「相手が怖い」ことと「自分に落ち度があるかもしれない」ことが重なって、身動きが取れなくなりがちです。しかし、この二つは切り分けて考えることができます。
要求に応じる義務があるかどうかは法的な問題であり、恐怖の程度によって決まるものではありません。そして、仮に自分の行為にも問題がある場合であっても、それは脅して金銭を要求してよい理由にはなりません。
早い段階で窓口を一本化し、直接のやり取りを止めることが、事態の拡大を防ぐうえで有効です。ひとりで抱え込む前に、ご相談ください。


