【風俗トラブル】風俗店から「女性が退店した責任を取れ」と言われたら?
お店を辞めてしばらくたってから、店長やオーナーから「当日欠勤の罰金が残っている」「規約違反の違約金を払ってほしい」と連絡が来ることがあります。すでに辞めた店とはもう関わりたくない一方で、入店時に誓約書へサインした覚えがあると、払わなければならないのではと不安になる方も少なくありません。この記事では、店を辞めた後に罰金や違約金を請求された方に向けて、支払う必要があるかを考える手がかりと、請求を受けたときの動き方を整理します。
本記事は2026年10月時点の法令をもとにしています。お店との契約が「雇用」にあたるか「業務委託」にあたるかによって考え方が変わるため、個別の結論は契約書の内容と働き方の実態をうかがったうえで判断することになります。
辞めた後に届きやすい請求の名目
| 請求の名目 | よくある言い方 | 考える出発点 |
|---|---|---|
| 当欠・遅刻の罰金 | 在籍中の当日欠勤分がまだ精算されていない | あらかじめ金額を決めた罰金の定めが有効か |
| 退店の違約金 | 1か月前に申し出なかった、決められた期間を働かなかった | 辞めること自体にお金を払わせる約束が有効か |
| 規約違反の罰金 | 客との連絡先交換、店外で会った、裏引きをした | 書かれた金額が実際の損害と見合っているか |
| 同業他店での勤務 | 辞めた後に近くの店で働いたので違約金を払え | 働く場所を制限する約束がどこまで有効か |
| 入店特典・保証の返金 | 期間を満たさずに辞めたので特典を返せ | 返還の条件がはっきり合意されていたか |
名目はさまざまですが、どれも「お店との約束を守らなかったのだから払え」という形をとっている点で共通しています。支払う必要があるかどうかは、この約束がどのような契約にもとづくもので、法律上どこまで効力を持つかによって分かれます。
「罰金」という名前に法律上の強制力はない
まず押さえておきたいのは、お店が個人に対して刑罰としての罰金を科すことはできないという点です。罰金は裁判を経て国が科すものであり、お店が「罰金」と呼んでいても、法律上は契約で決めた違約金や損害賠償の請求として扱われます。
そのため、名目が罰金であるか違約金であるかよりも、「どの約束にもとづく請求なのか」「その約束は有効なのか」「実際にどのような損害が生じたのか」という中身を見ていくことになります。考え方の基本は「罰金」を請求された|私人が罰金を科すことはできないでも解説しています。
働き方が「雇用」とみられる場合|労働基準法16条
お店との関係が雇用契約にあたる場合、労働基準法16条は、使用者が労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償の額をあらかじめ決めておいたりする契約を禁じています。「当日欠勤1回につき2万円」「3か月以内に辞めたら10万円」といった定めは、この規定に反するとされる可能性が高い典型例です。違反した使用者には刑事罰(6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金。労働基準法119条)も定められています。
また、労働基準法24条は賃金を全額支払うことを原則としているため、罰金を理由に最後の給料を差し引いたり、支払わなかったりする扱いも問題になります。雇用であれば、期間の定めのない契約は辞める意思を伝えてから2週間で終了するのが原則で(民法627条1項)、「辞めるなら違約金」という約束で引き留めることは認められにくいと考えられます。
契約書の名前だけでは決まらない
風俗店やナイトワークでは、契約書の表題が「業務委託契約」になっていることが多くあります。ただし、労働者にあたるかどうかは書面の名前ではなく、働き方の実態で判断されます。たとえば、次のような事情は労働者性を考える際の材料になります。
- 出勤日や時間を店が指定し、変更に制約がある。
- 遅刻や欠勤に罰金が科されている。
- タイムカードなどで時間を管理されている。
- 接客の内容や手順について細かく指示を受けている。
- 自分の代わりに別の人を出勤させることが認められていない。
2025年には、東京地方裁判所が、業務委託とされていたキャバクラのキャストを労働者と認め、罰金などの控除を無効とした判決(令和7年6月25日)が報道されています。業種や働き方によって結論は変わりますが、「業務委託だから労働基準法は関係ない」と店から言われても、そのまま受け止める必要はありません。
業務委託とされる場合でも、書かれた金額がそのまま通るとは限らない
実態としても業務委託にあたる場合、当事者が違約金や損害賠償の額をあらかじめ決めておくこと自体は、民法上認められています(民法420条)。ただし、その金額が実際に生じうる損害とかけ離れて過大であったり、辞める自由を事実上奪うような内容であったりする場合には、公序良俗に反するとして(民法90条)、全部または一部が無効とされる余地があります。
同業他店で働かないという約束も同様です。働く場所の制限は職業選択の自由にかかわるため、制限の期間や地域の範囲、制限に見合う代償の有無などに照らして、合理的な範囲を超える部分は効力が認められにくくなります。
また、継続的な業務委託で報酬から一方的に差し引く扱いについては、2024年11月に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法との関係が問題になる場合もあります。どの規定が当てはまるかは契約期間や取引の内容によって異なるため、書面と報酬明細を手元にそろえて確認していくことが大切です。在籍中の罰金の扱いについてはキャスト側の「罰金」「違約金」|遅刻・当欠・退店で引かれるお金は適法か、減給との違いについては風俗店の「罰金」に支払義務はある?|減給の条件とペナルティへの対処法もあわせてご覧ください。
請求を受けたときに確認すること
- 請求の名目と金額、その内訳。
- 根拠とされる誓約書や契約書の有無と、その写しを受け取っているか。
- 入店時に説明を受けた内容か、途中で一方的に変更されたルールか。
- お店に実際にどのような損害が生じたと説明されているか。
- 最後の給料や報酬がすでに差し引かれていないか、支払われていない分がないか。
- 支払いの期限や方法、連絡の際の言葉づかい。
特に見落としやすいのが、未払いの報酬との関係です。辞めた後に「罰金と相殺したので最後の給料はない」と言われることがありますが、雇用であれば賃金の全額払いの原則との関係で、こちらから未払い分を請求できる場合があります。請求を受けた側であっても、受け取るべきお金が残っていないかを確かめておくことが、その後の話し合いの土台になります。
避けたい対応
- 求められるままに借用書や新たな誓約書へサインすること。
- 「系列店で働いて返す」「戻って働く」といった約束をすること。
- 身分証や印鑑を持って一人で店に出向くこと。
- 支払うために消費者金融などで新たに借り入れること。
- やり取りを消してしまい、記録を残さないまま連絡を絶つこと。
辞めた後の請求では、もとの罰金を「借りたお金」に置き換えた借用書へのサインを求められる例が見られます。借用書の形になると、後から争う際の説明が複雑になることがあります。すでにサインしてしまった場合の考え方は脅されて署名した念書・示談書は有効か|「無効」と「取消し」の違いで解説しています。
「家族にばらす」「家に行く」と言われたとき
支払いを求める連絡の中で、「親に連絡する」「実家に行く」「お店で働いていたことを周りに知らせる」といった言葉が添えられることがあります。お金を払わせる目的でこうした言葉を使うことは、請求の根拠があるかどうかにかかわらず、恐喝や脅迫、強要にあたる可能性があります。
身の危険を感じる場合は110番を、差し迫った状況でなければ警察相談専用電話(#9110)や最寄りの警察署への相談を検討してください。メッセージの画面、着信履歴、通話の録音などは、日時が分かる形で保存しておくと相談の際に役立ちます。安全を確保しながら関係を断つ手順については「家に行く」「学校にバラす」と脅されている|安全に抜けるための手順もご参照ください。
すでに払ってしまった場合
怖くなってすでに支払ってしまった方もいるかもしれません。支払いの根拠とされた約束が無効であれば、払ったお金の返還を求められる場合があります(不当利得返還請求。民法703条・704条)。脅されて支払った場合には、意思表示の取消しという構成が考えられることもあります。
ただし、どの程度取り戻せるかは、約束の内容や支払いの経緯、残っている証拠によって大きく変わります。振込の記録や受け取った書面は捨てずに保管しておいてください。詳しくは払ってしまった示談金・違約金は取り戻せるか?返金請求の可否で整理しています。
相談先の使い分け
| 相談先 | 主に相談できること |
|---|---|
| 総合労働相談コーナー・労働基準監督署 | 雇用にあたる場合の罰金の控除や、未払いの賃金 |
| 警察 | 脅し、つきまとい、自宅への押しかけなど身の安全にかかわること |
| 弁護士 | 請求への回答、店との交渉、未払い報酬の請求、返還請求 |
弁護士にご依頼いただいた場合、弁護士がお店との窓口になり、ご本人へ直接連絡しないよう求めたうえで、請求の根拠や金額の妥当性について書面でやり取りを進めることができます。お店の対応はさまざまで、結果を約束できるものではありませんが、ご本人が一人で店と向き合う状態から離れられることは、精神的な負担を軽くするうえでも意味があります。
まとめ
- お店が刑罰としての罰金を科すことはできず、請求は契約にもとづく違約金や損害賠償として扱われます。
- 雇用にあたる場合、違約金や賠償額をあらかじめ定める約束は労働基準法16条に反するとされる可能性があります。
- 業務委託とされる場合でも、過大な金額や辞める自由を奪う内容は無効とされる余地があります。
- 辞めた後に新たな借用書や誓約書へサインすることは避け、やり取りの記録を残してください。
- 脅しの言葉が添えられている場合や、すでに支払ってしまった場合も、取れる手段が残っていることがあります。
店を辞めた後の請求は、在籍中のやり取りや入店時の書面が手元に残っていないことも多く、一人で判断するのが難しい場面です。払うべきかどうかを決める前に、請求の中身と手元の資料を整理するところから始めてみてください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


