風俗の後日高額請求・不当請求|客ができる対処法

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

 風俗店を利用して数時間後、あるいは数日後になって、店やキャストから突然の連絡が入る。「あの日のことで話がある」「◯◯万円を払ってほしい」——。その場では何も言われなかったのに、後日になって高額な請求を受けたという相談は少なくありません。

 後日に届く請求には、正面から向き合って清算すべきものと、根拠が乏しく金額だけが一人歩きしているものが混在しています。両者を見分けないまま、不安に押されてその場で支払ってしまうと、かえって問題が長引くことがあります。

 この記事では、後日請求を受けた利用者の側に立って、請求の中身をどう検証し、どの順序で動けばよいかを整理します。

なぜ「その場」ではなく「後日」に請求が来るのか

 まず押さえておきたいのは、後日連絡が来ること自体は、この業種では構造的に起こりうるということです。

 デリヘルのような無店舗型のサービスは、ホテルや自宅など、店のスタッフがいない場所で提供されます。密室で客と直接対立すればキャストの身に危険が及びかねないため、その場では何事もなかったように振る舞い、店に戻ってから報告するという運用をとっている店もあります。店舗型でも、キャストが後から店に相談し、そこから連絡が来ることがあります。

 つまり、時間が経ってからの請求であることは、「大した話ではない」ことの証明にも、「作り話だ」ことの証明にもなりません。時間の経過は、請求の当否とはひとまず切り離して考える必要があります。

 なお、店から電話がかかってきた段階での対応(出るべきか、無視してよいか、折り返すべきか)については、別の記事で詳しく扱っています。ここでは、すでに具体的な金額を提示された後の話に絞ります。

後日請求は、まず3つのタイプに切り分ける

 同じ「後日請求」でも、法的な検討の入口はまったく違います。

タイプA:心当たりのある行為についての請求

 本番行為、盗撮、プレイ中の負傷、備品の破損など、自分の行為に思い当たる節がある場合です。これは「払う・払わない」の問題ではなく、損害賠償・示談金の内容と金額をどう詰めるかという問題になります。刑事事件に発展しうる類型も含まれるため、放置は得策ではありません。

タイプB:心当たりのない請求

 「本番をしたはずなのに罰金を払っていない」と言われたが、そのような行為はしていない、というケースです。ここには、

  • 店やキャストとの間に事実認識のズレがある(誤解)
  • 実際にはなかった事実を前提に金額を上乗せしている(水増し)
  • 利用した店とは無関係の第三者が「店の関係者」を名乗って請求している(架空請求)

 といった複数の可能性が混ざっています。心当たりがないからといって、すべてを架空請求と決めつけて無視するのは危険です。誤解が原因であれば、放置している間に相手の被害感情だけが固まっていくことがあります。

タイプC:料金・規約に関する後日請求

 延長料金の未払い、キャンセル料、オプション代金など、金銭の性質が「サービスの対価」や「契約上の違約金」であるものです。これは不法行為ではなく契約の問題ですので、検討の筋道が変わります。この類型については、キャンセル料・チェンジ料・延長料金を扱った記事をご参照ください。

請求を受けたら最初に確認する5つのこと

 金額の高さに気を取られる前に、次の5点を整理してください。これは弁護士に相談する際の材料にもなります。

① 誰が請求しているのか

 店なのか、キャスト本人なのか、それとも「代理人」「顧問」などを名乗る第三者なのか。ここは後述するとおり、法的に重要な意味を持ちます。

② 名目は何か

 「罰金」「慰謝料」「損害賠償」「違約金」「迷惑料」——。名目によって、そもそも法的な根拠があるかどうかが変わります。

③ いつの、何についての請求か

 利用日、店名、コース内容、問題とされている行為の内容と時刻。相手の説明があいまいな場合、その点自体が検討材料になります。

④ 金額の内訳・根拠が示されているか

 「一律◯◯万円」としか言われず、内訳の説明を求めても応じない場合、その金額は交渉の余地が大きいと考えられます。

⑤ 支払期限と支払方法

 期限が極端に短い、振込先が法人ではなく個人名義、現金の手渡しを求められる、領収書を出したがらない——こうした事情は、後で問題になりやすい要素です。

「請求されている金額」=「支払う義務のある金額」ではない

 ここが最も誤解されやすい点です。相手が提示した金額は、あくまで相手の言い分にすぎません。支払義務の有無と範囲は、次の4つの視点に分解して考えます。

① 事実の有無

 そもそも、請求の前提となっている行為があったのか。同意の有無を含め、双方の認識が食い違っていることは珍しくありません。「早く終わらせたい」という理由で、身に覚えのない事実を認めてしまうのは避けるべきです。

② 法的な根拠

 金銭を請求するには根拠が必要です。故意または過失で他人の権利を侵害した場合の損害賠償(民法709条・710条)、契約上の義務に違反した場合の損害賠償(民法415条)などが典型です。

 なお、「罰金」は本来、国が刑事罰として科すものの名称であり、私人である店が客に「罰金」を科すことはできません。店が「罰金」と呼んでいる金銭は、実質的には損害賠償や違約金を指していると考えられ、その名目にふさわしい根拠と金額の裏づけが必要になります。誓約書や示談書にサインしてしまった場合の効力については、別記事で扱っています。

③ 損害の内容と因果関係

 キャストの治療費、通院に伴う損害、精神的苦痛に対する慰謝料などは、行為との因果関係が説明できる範囲で認められるものです。店が主張する「営業上の損害」も、その内容と裏づけが問われます。

④ 金額の相当性

 同種の事案で認められている水準からかけ離れた金額は、そのまま通るものではありません。相手の言い値に合わせる必要はなく、根拠のある金額まで下げる交渉の余地があります。

補足:店がキャスト本人の慰謝料を請求してくる場合

 見落とされがちですが、キャスト個人が被った損害の賠償を、店が代わりに交渉し受け取ること自体に法的な問題が生じうる点は知っておいて損がありません。

 弁護士法72条は、弁護士でない者が報酬を得る目的で、法律事件に関する法律事務(示談交渉の代理を含みます)を業として取り扱うことを禁じており、違反には刑事罰が定められています。2026年2月には、宮崎市内の無店舗型性風俗店の店長ら4名が、店の女性従業員とトラブルになった男性客と示談交渉を行い示談金を受け取ったとして、弁護士法違反の疑いで逮捕されたと報じられました。

 もちろん、個別のケースで違反にあたるかどうかは事情によります。ただ、「店が窓口になって示談金を決め、店の口座に振り込ませる」という進め方が当然に適法とは限らない、という視点は持っておくべきでしょう。

後日請求で特に注意したい4つの落とし穴

① 電話口の受け答えで、示談が成立してしまうことがある

 契約は書面がなくても成立します。「わかりました、それで結構です」と答えた会話が録音されていれば、その金額で合意が成立したと主張される可能性があります。

② 一部だけ払う・分割の念書を書くと、立場が変わる

 一部弁済や支払猶予の申し入れは、「その債務があることを認めた」という扱い(債務の承認)を受けることがあります。民法152条により、これは時効の更新事由にもなります。とりあえず少額だけ払って様子を見る、という対応は避けるべきです。

③ 一度払っても終わらないことがある

 支払後に理由を変えた追加請求が続き、結果として支払総額が膨らんだ、という相談は実際にあります。支払うのであれば、清算条項(この件についてこれ以上の請求をしない旨)を含む書面を取り交わすことが前提です。

④ 記録が残らない払い方をしない

 領収書も合意書もない現金手渡しでは、支払った事実自体を証明できません。後から「受け取っていない」と言われても反論が難しくなります。

不当な請求に傾いているサイン

 次のような事情が重なる場合、請求の正当性を慎重に見る必要があります。

  • 職場や家族に知らせると告げて支払いを迫る
  • 金額の根拠や内訳を、書面では一切示さない
  • 「今日中」など極端に短い期限を切る
  • 深夜に繰り返し電話をかけてくる
  • 法人ではなく個人名義の口座を指定する、領収書を拒む

 害を加える旨を告げて怖がらせる行為は脅迫罪(刑法222条)、それによって金銭を交付させれば恐喝罪(刑法249条)にあたりうるものです。

 ただし、「警察に被害届を出す」と言われたこと自体が直ちに違法というわけではありません。被害を受けたと考える人が届け出ること自体は、本来認められた行為だからです。問題になるのは、届出をちらつかせて根拠のない金額を飲ませようとする場合です。この線引きは微妙で、自己判断で「恐喝だから無視でよい」と結論を出すのは危険です。

実際にとるべき対応の順序

1. その場で認めない・約束しない・払わない
 即答を避け、「確認して改めて連絡します」と伝えて一度切る。これだけで防げるトラブルが相当あります。

2. 記録を残す
 着信履歴、留守番電話、メールやLINEのやり取り、届いた書面と封筒、提示された振込先。相手とのやり取りを録音しておくことも、後の証拠として有効です。

3. 請求の根拠と内訳を、書面で示すよう求める
 正当な請求であれば、根拠を示すことに支障はないはずです。逆に、書面化を避けようとする姿勢自体が判断材料になります。

4. 自分の記憶を時系列で整理する
 利用日時、店名、コース、当日のやり取り、相手の言動。記憶は時間とともに薄れます。早い段階でメモに落としてください。

5. 「無視してよいか」は請求の中身で決まる
 心当たりのある行為がある場合、放置すれば被害届の提出や民事訴訟につながる可能性があり、携帯番号から身元をたどられることもあります。無視の可否については、店からの連絡への対応を扱った記事もあわせてご確認ください。

6. 交渉の窓口を一本化する
 弁護士が代理人として入れば、以後の連絡先は法律事務所になります。自宅や勤務先への連絡を止められることは、家族や職場に知られたくない方にとって実務上大きな意味を持ちます。

時間が経った請求と「時効」

 後日請求の中でも、利用から半年、1年と経ってから連絡が来るケースがあります。ここで意識しておきたいのが消滅時効です。

  • 不法行為に基づく損害賠償請求権は、損害および加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年で時効にかかります(民法724条)。人の生命または身体を害する不法行為の場合、3年の部分は5年になります(民法724条の2)。
  • サービス料金などの一般的な債権は、権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年です(民法166条1項)。

 もっとも、時効は期間が過ぎれば自動的に消えるものではなく、援用(時効の利益を受ける旨の意思表示)が必要です(民法145条)。そして前述のとおり、一部でも支払ったり、支払いを約束したりすれば、時効は更新されて振り出しに戻ります(民法152条)。

 「古い話だからもう関係ない」と自己判断するのではなく、「時効が問題になりうる事案かどうか」を含めて確認する、という受け止め方が適切です。

おわりに

 後日の高額請求で最も避けたいのは、事実関係も金額の根拠も整理しないまま、不安に押されて支払ってしまうことです。一方で、心当たりのある行為について放置を続けることも、状況を悪化させます。

 やるべきことは、「即答しない」「記録を残す」「請求の中身を分解する」の3つです。そのうえで、支払うべきものは相当な金額で清算し、根拠のない部分は根拠がないものとして扱う。この切り分けを一人で行うのは容易ではありませんので、早い段階で弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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