ハラスメント対応の正解とは?被害者・加害者・会社リスクを同時に守る方法【人事トラブル相談室③】
今日もありがとうございます。
人事トラブルを整理する「人の専門家」、ハーレー好きの社労士 キャプテン ヒデです。
ハラスメント対策というと、
「上司が部下に対して気をつけるもの」
というイメージを持つ方も多いかもしれません。
もちろん、管理職の言動は職場に大きな影響を与えます。
上司から部下への指導や注意の仕方が、ハラスメント問題につながることもあります。
しかし、実際の職場では、ハラスメントの火種は上司と部下の関係だけで生まれるわけではありません。
同僚同士の何気ない一言。
休憩時間の噂話。
本人のいない場所での陰口。
冗談のつもりで言った言葉。
困っている人を見て見ぬふりする空気。
こうした日常の小さな言動が、職場の不信感につながることがあります。
ハラスメント防止は、会社や管理職だけが取り組めばよいものではありません。
従業員一人ひとりの行動も、職場の空気をつくっています。
今回は、ハラスメントを防ぐ職場づくりについて、一般社員の立場で意識したいポイントを整理します。
会社にはハラスメント防止措置が求められている
現在、企業には職場におけるハラスメント防止措置が求められています。
パワーハラスメントについては、労働施策総合推進法により、事業主に雇用管理上必要な措置を講じることが義務付けられています。
会社としては、たとえば次のような対応が必要です。
* ハラスメントを許さない方針を明確にする
* 社員へ周知・啓発する
* 相談窓口を設置する
* 相談があった場合に適切に対応する
* 相談者や協力者に不利益な取扱いをしない
* 研修などを通じて理解を深める
ただし、制度や窓口を整えるだけで、ハラスメントが完全になくなるわけではありません。
相談窓口があっても、日常の職場で陰口やからかいが放置されていれば、社員は安心して働けません。
研修を受けていても、
「これは冗談だから」
「昔からこういう職場だから」
と受け流してしまえば、職場の雰囲気は変わりません。
ハラスメント防止には、会社の仕組みと、従業員一人ひとりの日常行動の両方が必要です。
ハラスメントは日常の言動から生まれることがある
ハラスメントというと、怒鳴る、人格を否定する、長時間叱責するといった分かりやすい行為を思い浮かべるかもしれません。
もちろん、そのような言動は大きな問題です。
ただ、実際には、もっと日常的な言動がトラブルのきっかけになることもあります。
たとえば、
「太ったんじゃない?」
「まだ結婚しないの?」
「若いんだから残業できるでしょ」
「普通はこれくらい分かるよね」
「そんなことで休むの?」
言った本人は、軽い冗談や何気ない一言のつもりかもしれません。
しかし、受け取る側にとっては、傷つく言葉になることがあります。
特に、年齢、性別、家庭の事情、体調、容姿、プライベートに関する話題は、本人が触れられたくない場合もあります。
職場では、親しさのつもりで踏み込んだ発言が、相手には不快に受け止められることがあります。
大切なのは、
「自分に悪気があったかどうか」
だけで判断しないことです。
相手がどう受け止める可能性があるか。
職場でその発言をする必要があるか。
周囲が聞いたときにどう感じるか。
この視点を持つことが、ハラスメント防止の第一歩です。
従業員が意識したい5つの行動
では、従業員一人ひとりは、日常の中で何を意識すればよいのでしょうか。
ここでは、職場で実践しやすい5つの行動に分けて整理します。
1. 冗談のつもりでも、相手の受け止め方を考える
職場では、何気ない会話が人間関係を良くすることもあります。
一方で、冗談のつもりで言った一言が、相手を傷つけることもあります。
たとえば、
「最近、疲れた顔してるね」
「結婚しないの?」
「子どもはまだ?」
「若いんだから大丈夫でしょ」
「女性なんだから気が利くよね」
「男なんだからこれくらい我慢しないと」
このような言葉は、言った側に悪気がなくても、相手にとっては負担になることがあります。
特に、本人の努力では変えにくいことや、プライベートな事情に踏み込む話題は注意が必要です。
職場のコミュニケーションで大切なのは、相手との距離感です。
親しいつもりでも、相手が同じように感じているとは限りません。
「これは職場で言う必要があることか」
「相手が嫌な気持ちにならないか」
「周囲が聞いても問題のない発言か」
一度立ち止まって考えるだけでも、トラブルを防ぐことにつながります。
2. 噂話や陰口を広げない
職場トラブルの原因として多いのが、噂話や陰口です。
たとえば、
「あの人、上司に気に入られているらしい」
「最近休みが多いけど、何かあるのかな」
「評価が低かったらしいよ」
「あの人、家庭がうまくいっていないらしい」
「前の部署でも問題があったらしい」
こうした話は、本人のいないところで広がるほど、職場の信頼関係を壊していきます。
話している側は、軽い雑談のつもりかもしれません。
しかし、聞かされた側は、
「自分のこともどこかで言われているのではないか」
と不安になります。
また、噂話や陰口は、内容や広がり方によっては、名誉毀損やプライバシー侵害などの問題に発展する可能性もあります。
もちろん、職場で不満や困りごとを誰にも話してはいけない、という意味ではありません。
問題がある場合は、噂話として広げるのではなく、上司や相談窓口など、適切なルートで相談することが大切です。
「本人のいないところで話題にしてよい内容か」
「事実かどうか分からない話を広げていないか」
「面白半分で話していないか」
この意識が、職場の信頼を守ります。
3. 不適切な言動を見聞きしたら抱え込まない
ハラスメントを防ぐためには、不適切な言動を見て見ぬふりしないことも大切です。
ただし、ここで誤解してはいけないのは、必ずその場で注意しなければならない、ということではありません。
職場の人間関係や立場によっては、その場で指摘することが難しい場合もあります。
無理に注意しようとして、かえって対立が深まることもあります。
たとえば、誰かが不快な発言をされている場面を見たとき、状況によっては次のような対応が考えられます。
* その場の話題を変える
* 後で本人に「大丈夫だった?」と声をかける
* 上司に相談する
* 相談窓口に伝える
* 日時や内容を記録しておく
* 距離を取る
大切なのは、
「自分には関係ない」
と完全に切り離してしまわないことです。
不適切な言動が繰り返されているのに誰も反応しないと、職場では
「この程度は許される」
という空気が生まれてしまいます。
その場で強く注意することだけが、正しい対応ではありません。
抱え込まず、適切な相手に相談することも、職場を守る行動です。
4. 相手の立場や事情を決めつけない
職場では、さまざまな事情を抱えた人が働いています。
体調の問題。
家庭の事情。
介護や育児。
過去の経験。
仕事への不安。
人間関係の悩み。
周囲からは見えない事情を抱えていることもあります。
そのため、相手の事情を決めつける言葉には注意が必要です。
たとえば、
「最近休みが多いけど、やる気がないのかな」
「時短勤務だから楽でいいよね」
「独身だから残業できるでしょ」
「子どもがいる人は大変だね。でも周りも迷惑しているよ」
「若い人はすぐ辞めるからね」
こうした言葉は、相手の事情を一方的に決めつけるものです。
本人が言いたくない事情に踏み込んでしまうこともあります。
もちろん、仕事上必要な確認はあります。
業務の引き継ぎ、勤務時間、納期、連絡方法などは、会社として確認しなければならないことです。
ただし、その場合も、相手の人格や私生活を評価するのではなく、業務上必要な範囲で確認することが大切です。
「なぜ休むの?」ではなく、
「業務の引き継ぎについて確認させてください」
「残業できないの?」ではなく、
「この業務の期限について、どう調整できるか相談しましょう」
このように、相手の事情を決めつけず、業務上必要な確認に絞ることが、トラブル防止につながります。
5. 自分の言動が職場の空気を作ると意識する
良い職場は、制度だけで作られるものではありません。
日常の小さな行動の積み重ねで作られます。
たとえば、
* あいさつをする
* 感謝を伝える
* 忙しい人に声をかける
* 相談しやすい雰囲気を作る
* きつい言い方をしない
* 人によって態度を変えない
* 他人の失敗を笑わない
* 困っている人を孤立させない
こうした行動は、一つひとつは小さなことです。
しかし、職場の雰囲気には大きく影響します。
反対に、日常的に人をからかう、陰口を言う、失敗を責める、特定の人を避けるといった行動が続くと、職場は少しずつ息苦しくなっていきます。
ハラスメント防止は、特別な場面だけの話ではありません。
毎日の会話、態度、反応が、職場の空気を作っています。
「自分の言動も職場環境の一部である」
この意識を持つことが、安心して働ける職場づくりにつながります。
会社としては「個人任せ」にしないことが大切
ここまで、従業員一人ひとりが意識したい行動を整理してきました。
ただし、ハラスメント防止を従業員個人の心がけだけに任せるのは危険です。
会社として、ハラスメントを防ぐ仕組みを整える必要があります。
たとえば、
* ハラスメント防止方針を周知する
* 従業員向け研修を実施する
* 管理職向け研修を実施する
* 相談窓口を明確にする
* 相談があった場合の対応手順を決める
* 相談者や協力者を不利益に扱わないことを周知する
* 職場アンケートなどで実態を把握する
といった対応です。
特に中小企業では、相談窓口が形式的になっていたり、相談を受けた管理職がどう対応すればよいか分からなかったりすることがあります。
その結果、せっかく相談があっても初動対応を誤り、問題が大きくなることがあります。
従業員の意識を高めることは大切です。
しかし、それと同時に、会社として相談を受け止める体制を作ることが必要です。
まとめ|ハラスメント防止は日常の職場づくりから
ハラスメント対策は、上司だけの問題ではありません。
同僚同士の何気ない言葉、噂話、見て見ぬふり、相手への決めつけなど、日常の小さな言動が職場の不信感につながることがあります。
従業員一人ひとりが意識したい行動は、次の5つです。
* 冗談のつもりでも、相手の受け止め方を考える
* 噂話や陰口を広げない
* 不適切な言動を見聞きしたら抱え込まない
* 相手の立場や事情を決めつけない
* 自分の言動が職場の空気を作ると意識する
安心して働ける職場は、会社の制度だけでなく、日常の行動から作られます。
一方で、従業員の心がけだけに頼るのではなく、会社として研修、相談窓口、対応フローを整えておくことも欠かせません。
当事務所では、中小企業の実情に合わせて、
* 従業員向けハラスメント防止研修
* 管理職向けハラスメント研修
* 職場のコミュニケーション改善
* ハラスメント防止方針の周知文作成
* 相談窓口や社内対応フローの整備
* 職場アンケートを踏まえた課題整理
についてご相談を承っています。
「ハラスメント研修を実施したいが、何を伝えればよいか分からない」
「従業員の意識を高めたい」
「相談窓口はあるが、実際の運用に不安がある」
「職場の雰囲気を改善したい」
このような場合は、早めに社内体制を確認しておくことをおすすめします。
ハラスメント防止は、問題が起きてから対応するだけでは不十分です。
日常の職場づくりとして、継続的に取り組むことが大切です。
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根拠・参考情報
本記事は、以下の法令・行政資料を踏まえて作成しています。
* 労働施策総合推進法
事業主に対する職場におけるパワーハラスメント防止措置義務
* 厚生労働省
「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」
* 厚生労働省
「職場におけるハラスメント関係指針」
※本記事は、一般的な人事労務実務の考え方を整理したものです。実際の対応は、具体的な言動の内容、職場環境、会社の規程、相談体制、過去の対応状況によって判断が変わります。個別の事案では、最新の法令・行政資料を確認したうえで対応することが必要です。


