評価できない本当の原因は「目標のあいまいさ」にある/評価シートがあっても納得されない会社に足りないもの【人事トラブル相談室⑨】

桐生英美

桐生英美

テーマ:労務管理

今日もありがとうございます。
人事トラブルを整理する「人の専門家」
ハーレー好きの社労士 キャプテン ヒデです。

評価シートはある。
評価面談もしている。
それなのに、評価する側も、評価される側も、どこか納得できていない。

社員からも、

「自分では頑張ったつもりです」
「なぜこの評価なのか分かりません」
「何を見て評価されたのか分かりません」

という反応が返ってくる。

評価制度を作った会社ほど、意外とこの悩みにぶつかることがあります。

評価制度を整えたはずなのに、現場では納得感が生まれない。
その原因は、評価シートの形式や点数の付け方だけにあるとは限りません。

実務上、大きな原因になりやすいのが、
そもそもの目標があいまいなまま評価に入っていること
です。

評価の前に「何を評価するのか」が決まっているか

評価制度というと、どうしても次のような点に意識が向きがちです。

・どう評価するか
・何点をつけるか
・誰を高く評価するか
・賞与や昇給にどう反映するか

もちろん、これらも大切です。

しかし、その前提として、

・何を目標にしていたのか
・どこまでできれば達成なのか
・何をもって「よくできた」と判断するのか

が決まっていなければ、評価はどうしても感覚に寄ってしまいます。

たとえば、次のような目標はよく見かけます。

・今期も頑張る
・お客様第一で行動する
・ミスを減らす
・コミュニケーションを増やす
・業務改善を意識する

どれも、方向性としては悪くありません。

ただし、評価の基準として使うには少し弱い表現です。
なぜなら、達成したかどうかを判断しにくいからです。

上司と部下の間に生まれる「期待のズレ」

目標があいまいなままだと、評価面談で次のようなズレが起きます。

上司は、
「思ったよりできていない」
と感じる。

一方で、部下は、
「自分なりに頑張った」
と感じる。

このとき、どちらか一方が完全に間違っているとは限りません。

問題は、評価期間が始まる前に、期待する水準を具体的に合わせていなかったことです。

つまり、評価の場面で揉めているように見えて、実はその前の段階である「目標設定」の時点からズレが始まっているのです。

このズレを放置すると、社員は評価に納得しにくくなります。
上司への不信感が生まれることもあります。
場合によっては、モチベーション低下や離職の一因になることもあります。

もちろん、評価は社員の希望どおりにするものではありません。
ただ、会社がどの基準で評価したのかを説明できる状態にしておくことは重要です。

評価制度は「点数をつけるためだけ」の仕組みではない

評価制度は、単に人に点数をつけるためだけの仕組みではありません。

本来は、あらかじめ決めた目標に対して、どこまで到達できたのかを上司と部下で確認する仕組みです。

この考え方を押さえると、評価面談の意味が変わります。

「この人は優秀かどうか」
という漠然とした話ではなく、

「設定した目標に対して、どこまでできたのか」
「期待していた行動はどの程度できていたのか」
「次の期間に何を改善するのか」

を確認する場になります。

そのため、目標があいまいなままだと、評価の段階でどうしても判断がぶれやすくなります。

フィギュアスケートで考えると分かりやすい

少し例え話をします。

フィギュアスケートでいえば、演技の前に、どのジャンプに挑戦するのか、どの構成で滑るのかが決まっていない状態で採点するようなものです。

演技後に、

「なんとなく良かった」
「思ったより物足りなかった」

と言うことはできるかもしれません。

しかし、公平な採点は難しくなります。

会社の評価も同じです。

最初に「何を目指すのか」が決まっていなければ、最後は上司の感覚や印象に頼らざるを得なくなります。

これが、評価への不満や不公平感につながりやすいのです。

目標は「数値目標」と「行動目標」に分けて考える

では、どのように目標を設定すればよいのでしょうか。

実務上は、目標を大きく次の2つに分けて考えると整理しやすくなります。

1つ目は、数値目標です。
2つ目は、行動目標です。

1つ目は、数値目標

数値目標とは、結果を数字で確認できる目標です。

たとえば、

・売上
・利益
・契約数
・対応件数
・ミス件数
・納期遵守率

などです。

数値目標の良いところは、達成度を判断しやすいことです。

一方で、注意点もあります。
数字は、本人の努力だけで決まるとは限りません。

景気、顧客事情、担当エリア、引き合いの量、チーム体制など、本人だけではコントロールしにくい要素に左右されることがあります。

そのため、数字だけで評価しようとすると、

「たまたま結果が出た」
「努力していたのに結果が出なかった」

という問題が起きることがあります。

2つ目は、行動目標

行動目標とは、日々の行動や仕事の進め方に関する目標です。

たとえば、

・後輩指導を行う
・報連相を徹底する
・業務改善を進める
・マニュアルを整備する
・会議で改善提案を行う
・顧客対応の初動を早める

などです。

行動目標は、本人の成長や職場全体の改善につながりやすいという良さがあります。

ただし、こちらも注意が必要です。

「報連相を徹底する」
「業務改善を進める」

という表現だけでは、何をどこまで行えば達成なのかが分かりにくくなります。

そのまま評価すると、結局は、

「よくやっていたと思う」
「まだ足りないと思う」

という主観的な判断になりやすいのです。

数値目標と行動目標はセットで考える

評価制度を運用するうえでは、数値目標と行動目標のバランスが大切です。

数値だけを見ると、結果は分かりやすくなります。
しかし、なぜその成果が出たのか、次も同じように成果を出せるのかが見えにくくなります。

反対に、行動だけを見ると、努力や姿勢は評価しやすくなります。
しかし、会社として求める成果とのつながりが見えにくくなることがあります。

ですので、実務上は、

・どのような結果を目指すのか
・そのためにどのような行動をするのか

をセットで確認することが重要です。

たとえば、営業職であれば、

「新規契約を月3件獲得する」

という数値目標だけでなく、

・週10件の新規アプローチを行う
・商談後24時間以内にフォローメールを送る
・月1回、失注理由を整理して改善策を共有する

といった行動目標もあわせて設定すると、評価しやすくなります。

事務職であれば、

「月末処理を正確に行う」

だけではなく、

・毎月25日までに確認リストを使って処理漏れを確認する
・月1回、よくあるミスをチーム内で共有する
・手順変更があった場合は、3営業日以内にマニュアルを更新する

といった行動目標にすると、日々の仕事ぶりを確認しやすくなります。

管理職であれば、

「部下育成を行う」

だけではなく、

・月1回、部下との面談を実施する
・面談後に次月の行動目標を1つ確認する
・部下の業務負担を月1回見直す
・注意指導を行った場合は、内容と改善事項を記録する

といった形にすると、行動が見えやすくなります。

あいまいな目標を具体化する3つの方法

では、あいまいな目標をどのように具体化すればよいのでしょうか。

難しく考えすぎる必要はありません。
まずは、次の3つを意識するだけでも整理しやすくなります。

1. 数字にする

たとえば、

NG例:ミスを減らす
OK例:月のミス件数を3件以内にする

「減らす」という表現だけでは、どの程度減れば達成なのかが分かりません。

数字を入れることで、上司と部下が同じ基準で確認しやすくなります。

2. 回数・頻度を入れる

たとえば、

NG例:コミュニケーションを増やす
OK例:週1回、15分の1on1を実施する

「増やす」だけでは、人によって受け止め方が違います。

週1回なのか、月1回なのか。
5分なのか、30分なのか。

ここを具体化するだけで、評価時の認識のズレはかなり減らせます。

3. 成果物を決める

たとえば、

NG例:業務改善を意識する
OK例:マニュアル第3章を作成する

「意識する」という言葉は便利ですが、評価の基準としては使いにくい表現です。

実務では、

・何を作るのか
・何を提出するのか
・何を共有するのか

まで決めておくと、評価しやすくなります。

大切なのは、上司と部下の「握り」、つまり事前の認識合わせ

目標設定で特に大切なのは、上司と部下の「握り」です。

ここでいう「握り」とは、

何を、どこまでやれば達成なのかを事前に確認しておくこと

です。

目標は、会社や上司が一方的に押しつけるだけではうまく機能しません。

もちろん、会社として求める役割や成果はあります。
その意味で、すべてを本人任せにするわけでもありません。

大切なのは、会社が求める方向性を示したうえで、本人と認識を合わせておくことです。

この認識合わせができていると、評価面談で話すべきことが明確になります。

「なぜこの評価なのか」
「次に何を改善すればよいのか」
「どこまでできれば次の評価につながるのか」

を具体的に話せるようになるからです。

目標をあいまいにしたまま放置するとどうなるか

目標があいまいなまま評価を続けると、次のような問題が起きやすくなります。

・評価が感覚的になる
・上司によって評価の基準がぶれる
・社員が評価に納得しにくくなる
・不公平感が生まれる
・フィードバックが機能しにくくなる
・離職の一因になることがある

特に注意したいのは、評価制度そのものが悪いわけではないのに、運用の段階で信頼を失ってしまうケースです。

評価シートはある。
面談もしている。
でも、現場では納得感がない。

この状態になると、制度を作った意味が薄れてしまいます。

まとめ:評価制度は目標設定で大きく変わる

評価制度を見直すときは、評価シートや点数表だけを直しても十分ではありません。

まず確認したいのは、
そもそも評価できる目標になっているか
という点です。

今回のポイントを整理します。

・目標があいまいだと評価はぶれやすい
・評価は、目標に対する到達度を確認する場である
・数値目標と行動目標はセットで考える
・数字、回数、成果物を入れると評価しやすくなる
・上司と部下の認識合わせが重要である

評価制度の成否は、目標設定の段階で大きく左右されます。

次の評価面談で試してほしい一言

次の評価面談では、ぜひこの一言を使ってみてください。

「それって、具体的にどういう状態ですか?」

たとえば、

「頑張ります」
「改善します」
「コミュニケーションを増やします」

という言葉が出てきたときに、そのまま終わらせないことです。

「具体的にどういう状態?」
「何回できれば達成?」
「何を作れば完了?」
「いつまでに、どの水準まで?」

この確認をするだけでも、目標の質は変わります。

評価制度は、難しい理論から入る必要はありません。
まずは、あいまいな言葉を一つずつ具体化するところから始めてみてください。

ご相談について

評価制度の問題は、離職、採用、組織力にも少なからず影響します。

「評価シートはあるけれど、うまく運用できていない」
「面談はしているが、社員の納得感が低い」
「目標設定の仕方が管理職によってバラバラになっている」
「評価者によって判断基準が違っている」
「評価制度を作ったが、現場で使われていない」

このような段階でも、見直しは十分可能です。

評価制度は、作って終わりではありません。
現場で使える形に整え、管理職が運用できる状態にしていくことが大切です。

当事務所では、評価シートの見直しだけでなく、目標設定の作り方、評価面談の進め方、管理職への説明方法まで、現場で使える形に整理しています。

「評価制度はあるが、運用できていない」
「管理職によって評価のばらつきが大きい」
「社員が評価に納得していない」

という場合は、現状整理からご相談いただけます。

※本記事は一般的な実務整理であり、個別企業の状況により最適な設計は異なります。な設計は異なります。

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桐生英美
専門家

桐生英美(社会保険労務士)

日本経営サポート株式会社

民間企業での人事経験25年、社労士登録30年。労基署対応、労務トラブル対応など、現場実務を中心に支援してきました。経営と法令のバランスを考え、実務としてどう整えるかを経営者と伴走する社労士です。

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