【人事トラブル】退職勧奨に応じた社員から退職願の撤回を言ってきた
カスハラを現場任せにしてはいけない理由
会社が決めるべき対応ルールとは
カスハラ対応で一番危ないのは、現場の社員が
「自分の対応が悪かったのかもしれない」
と思い込んでしまうことです。
会社として基準がないと、真面目な社員ほど抱え込みます。
怒鳴られても、最後まで話を聞く。
同じ内容の電話が続いても、毎回ていねいに対応する。
担当者個人を責められても、我慢してしまう。
そして、ある日突然、
「もう電話に出られません」
「そのお客様の名前を見るだけでつらいです」
という状態になることがあります。
カスハラ対応は、現場の接客スキルだけで解決する問題ではありません。
会社が引き取る仕組みを作る必要があります。
現場任せにすると、対応がバラバラになる
会社として基準がないと、対応は人によって変わります。
ある社員は、かなり強い要求でも我慢して受ける。
別の社員は、早めに上司へ相談する。
別の社員は、感情的に言い返してしまう。
これでは、会社としての対応が安定しません。
お客様から見れば、
「前の担当者は対応してくれた」
「なぜ今回は断るのか」
という話になります。
社員から見れば、
「自分だけ我慢させられている」
「上司に相談してよいのか分からない」
「電話を切ったら怒られるのではないか」
という不安になります。
ここが決まっていない会社では、結局、
その日の担当者の我慢
に頼ることになります。
これは危険です。
真面目な社員ほど「最後まで対応しよう」とする
カスハラ対応で追い込まれやすいのは、いい加減な社員ではありません。
むしろ、責任感のある社員です。
「自分がきちんと対応しなければ」
「会社に迷惑をかけたくない」
「お客様を怒らせてはいけない」
「上司に相談するほどのことではないかもしれない」
そう考えてしまいます。
しかし、暴言や威圧、長時間拘束、過大な要求が続けば、心身に負担がかかります。
最初は少し落ち込むだけかもしれません。
でも、次第に電話が鳴るだけで緊張する。
同じお客様の名前を見るだけで不安になる。
出勤すること自体がつらくなる。
ここまで来てから対応すると、会社も本人も苦しくなります。
カスハラは「お客様対応」だけではなく、安全配慮の問題でもある
カスハラは、お客様とのトラブルであると同時に、社員の就業環境に関わる問題です。
研修資料では、カスハラによって労働者の就業環境が害されるとは、人格や尊厳を侵害する言動により、身体的・精神的な苦痛を受け、就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指すと説明しています。
つまり、会社が悪質な言動を知っていながら放置していると、単なる接客トラブルでは済まなくなる可能性があります。
会社には、社員が安全に働けるように配慮する責任があります。
「お客様のことだから」
「現場で何とかして」
という対応を続けると、労務管理上のリスクにもなります。
会社が決めるべきルール1
通常のクレームとカスハラを分ける
まず必要なのは、通常のクレームとカスハラを分ける基準です。
会社側に不手際がある場合は、事実確認をします。
必要であれば謝罪し、改善します。
一方で、次のような言動が出た場合は、通常対応から切り替えます。
大声で怒鳴る。
人格を否定する。
長時間電話を切らせない。
何度も同じ内容で来店・架電する。
土下座を求める。
担当者の解雇や異動を求める。
過大な金銭要求をする。
SNSへの投稿をちらつかせて脅す。
自宅訪問や私的な連絡を求める。
研修資料でも、カスハラに類する行為として、長時間拘束型、リピート型、暴言型、正当な理由のない過度な要求などが整理されています。
現場に必要なのは、
「これはもう通常のクレーム対応ではない」
と気づける目安です。
会社が決めるべきルール2
一人で対応させない
次に決めるべきことは、社員を一人で対応させないルールです。
たとえば、
10分、20分を超えて同じ主張が続く
暴言や威圧的な言動がある
担当者個人を攻撃している
金銭要求が出ている
何度も同じ人から連絡がある
対応者が不安や恐怖を感じている
こうした場合は、上司や責任者に引き継ぎます。
ここを曖昧にすると、現場は迷います。
「このくらいで上司を呼んでいいのか」
「忙しいのに迷惑ではないか」
「自分で何とかしなければいけないのではないか」
こう考えて、抱え込んでしまいます。
会社として、
この状態になったら必ず引き継ぐ
と決めておくことです。
会社が決めるべきルール3
対応を打ち切る基準を決める
会社は、どこまでも対応し続けなければならないわけではありません。
正当な苦情には向き合います。
ただし、暴言や威圧、業務妨害に近い言動が続く場合は、対応を区切る判断も必要です。
たとえば、次のような基準です。
「暴言が続く場合は、対応を終了する」
「同じ内容の繰り返しが続く場合は、書面での回答に切り替える」
「担当者個人への攻撃がある場合は、責任者対応に切り替える」
「脅迫的な発言がある場合は、警察や弁護士に相談する」
「今後の対応窓口を限定する」
現場が困るのは、
「もう電話を切ってよいのか」
「これ以上対応できないと言ってよいのか」
が分からないことです。
ここは、社員個人に判断させるのではなく、会社が決めます。
会社が決めるべきルール4
記録を残す
カスハラ対応では、記録が非常に重要です。
記録がないと、あとから事実確認ができません。
会社として対応方針を決めることも難しくなります。
最低限、次の項目は残します。
日時。
相手の氏名・連絡先。
対応した社員。
言動の内容。
要求された内容。
会社側の回答。
同席者や通話を聞いていた人。
その後の対応方針。
電話なら通話メモ。
来訪対応なら同席者の記録。
メールやSNSならスクリーンショットや受信データの保存。
録音を使う場合は、保存方法、利用目的、アクセスできる人、保存期間まで決めておきます。
ここは業種や現場の運用によって確認が必要です。
管理職が「それくらい我慢して」と言ってはいけない
カスハラ対応では、管理職の一言が大きく影響します。
社員が相談したときに、
「それくらい我慢して」
「お客様なんだから仕方ない」
「あなたの対応にも問題があったのでは」
と言ってしまうと、社員は次から相談しません。
管理職に求められるのは、まず社員の話を受け止めることです。
そのうえで、事実を確認する。
一人で対応させない。
必要に応じて交代する。
記録を残す。
会社としての対応方針を共有する。
対応後の社員の状態を見る。
ルールを作っても、管理職がこの役割を理解していなければ、現場では機能しません。
現場で使える言い方を決めておく
実際の場面では、とっさに言葉が出ないことがあります。
だからこそ、事前に使えるフレーズを決めておくと安心です。
たとえば、
「恐れ入りますが、大きな声でのお話が続く場合は、対応を続けることができません」
「ご意見は承りました。これ以上同じ内容でのやり取りが続く場合は、責任者から改めて回答いたします」
「担当者個人への発言はお控えください。以後は会社として対応いたします」
「ただいまの発言は、当社として看過できません。今後の対応については社内で確認のうえ、改めてご連絡します」
「安全確保のため、これ以上の対応は控えさせていただきます」
このような言い方を準備しておくと、社員は少し落ち着いて対応できます。
まとめ
カスハラ対応を現場任せにしてはいけません。
現場任せにすると、社員ごとに対応がバラバラになります。
真面目な社員ほど抱え込みます。
会社としての安全配慮や労務管理の問題にもつながります。
会社が決めるべきことは、まず次の4つです。
通常のクレームとカスハラを分ける基準。
一人で対応させないルール。
対応を打ち切る基準。
記録の残し方。
厚生労働省は、改正労働施策総合推進法の施行により、令和8年10月1日からカスタマーハラスメント対策が全ての事業主の義務になると公表しています。
「電話を切ってよい基準が分からない」
「どこから管理職が引き取ればよいか決まっていない」
「記録を残したいが、何を書けばよいか分からない」
こうした状態であれば、一度、社内ルールを整理しておくことをおすすめします。


