『マージン・ミックス』、ほとんどの人が知らない戦略的・活用術【商人舎magazine7月号】原稿
業績低迷に悩む地方スーパーマーケットは、値下げや人員増加だけでは改善できません。売場、商品、欠品、作業、組織、データ、KPIの7つの視点から、売上・粗利益・営業利益を改善する実践方法を、現場コンサルティングの事例をもとに解説します。
目次
地方スーパーマーケットの業績改善は、単純な値下げや販促強化だけでは実現できません。
売場、商品、欠品、作業、組織、そして数値管理までを一体で見直し、「売れる仕組み」と「利益が残る仕組み」を同時につくることが重要です。
地方スーパーの業績改善は「売場」と「数字」の両方を見ること
地方の単独店や中小スーパーマーケットから、
「売上が下がっている」
「利益が残らない」
「人手が足りない」
「競合店にお客様を取られている」
という相談を受けることがあります。
しかし、実際に私が店舗に入り、売場、商品、バックヤード、従業員の動き、在庫、そして経営数値を確認すると、業績低迷の原因が一つだけというケースはほとんどありません。
大切なのは、
売上を上げることだけではなく、営業利益が残る仕組みに変えることです。
私のコンサルティングでは、大きく次の7つの視点から店舗を確認します。
1.商品の価値が伝わっているか
2.売場レイアウトに問題がないか
3.売れる商品を欠品させていないか
4.商品力と価格設定は適正か
5.作業にムダがないか
6.社長や店長に依存しすぎていないか
7.売上・粗利益・人件費・営業利益を数字で管理しているか
これらを一つずつ改善していくことで、地方スーパーにもまだ大きな改善余地が見つかる可能性があります。
1.「商品が売れない」のではなく「商品の価値が伝わっていな
ある店舗の惣菜売場には、おからや切り干し大根などの和惣菜が並んでいました。
商品自体には十分な魅力があります。
しかし、ただパックに入れて並べているだけでした。
これではお客様に、
「なぜ、この商品を買うべきなのか」
が伝わりません。
そこで重要なのが、商品の価値を「見える化」することです。
例えば、
・どんな素材を使っているのか
・どこで作られているのか
・どんな味なのか
・どんな料理と一緒に食べるとよいのか
・どんなこだわりがあるのか
・テレビや雑誌などで紹介された商品なのか
といった情報をPOPなどで伝えます。
さらにPOPは、単に取り付ければよいわけではありません。
お客様が歩いてくる方向、胸の向き、視線の高さまで考えて設置します。
試食も有効です。
週末の午前中など、お客様が多い時間帯に定例化し、豚肉とタレなど関連商品を組み合わせれば、単品ではなく食卓全体を提案できます。
売場は、
立ち寄り率 → 接触率 → 買上率
という流れで考えることが重要です。
レイアウト、POP、試食を組み合わせることで、値下げだけに頼らず売上を伸ばせる可能性があります。
私はこれを、
「売る」のではなく「売れてしまう仕組みをつくる」
と考えています。
2.売上改善のヒントは、売場を歩くと見つかる
コンサルティングで私が重視しているのが、実際に店舗を歩くことです。
会議室で売上表だけを見ていても、分からないことがあります。
例えば、
「この商品が通路から見えているか」
「お客様がここで立ち止まる理由があるか」
「一等地に、本当に売りたい商品が並んでいるか」
「売れ筋商品が欠品していないか」
「POPが多すぎて、商品が見えなくなっていないか」
ということです。
陳列では、手前を低く、奥を高くして視認性を高めます。
エンドは通過率、視認率の高い重要な場所ですから、何を展開するかを明確にします。
また、商品がバラバラに並んでいるだけでも、売場全体が「売れ残っている」ように見えることがあります。
仕切り板を使って商品を整え、少ない在庫でも売場を美しく見せる。
こうした基本的な改善も売上に影響します。
小さな売場改善を店舗全体で積み重ねることが、大きな業績改善につながります。
3.単品ではなく「お客様の食卓」から商品を考える
例えば焼肉用のタン。
商品そのものは売れ筋でも、その魅力がお客様に十分伝わっていなければ、まだ販売数量を伸ばせる可能性があります。
そこで、
「試食をしてはどうか」
「ハラミやスペアリブと組み合わせてはどうか」
「特製のタレを一緒に提案できないか」
と考えます。
タンを1パック売ることだけが目的ではありません。
お客様に『今夜は焼肉にしよう』と思ってもらうことが重要なのです。
これはインストア・マーチャンダイジングの基本でもあります。
惣菜にも地方スーパーの大きなチャンスがあります。
天ぷらも同じです。
現在は、家庭で揚げ物をすることを面倒に感じる消費者も少なくありません。
これはスーパーマーケットにとって大きな販売機会です。
実際に、天ぷらをバラ販売に変更して売上1位になった店舗の事例があります。
紅生姜の天ぷらやかき揚げなど、
「この店に行ったら、これを買いたい」
という商品を育てれば、価格競争とは違う来店理由をつくることができます。
地方スーパーには、大手チェーンにはない「名物商品」をつくれる可能性があります。
4.「値下げ」ではなく、商品価値を上げて粗利益を改善する
業績が悪くなると、
「安くしなければ売れない」
という発想になりがちです。
しかし、値下げを繰り返せば粗利益率は下がります。
今回のコンサルティングでは、ポテトサラダやコロッケについても商品改善を行いました。
原料となるじゃがいもの品質を見直し、商品の価値を高めた上で価格を変更する。
その結果、値上げ後にも売上が増加した事例があります。
これは地方スーパーの業績改善を考える上で重要なポイントです。
お客様は、必ずしも「一番安い商品」だけを求めているわけではありません。
求めているのは、
価格以上の価値を感じられる商品です。
中小スーパーが大手ディスカウント店と価格だけで競争するのは簡単ではありません。
だからこそ、
美味しい。
便利。
新鮮。
安心できる。
ここでしか買えない。
という価値を高めることが重要です。
5.売上を増やす前に「欠品による機会損失」をなくす
意外に見落とされているのが欠品です。
例えば朝、お客様が食パンを買いに来たのに棚に商品がない。
これは明確な売上機会の損失です。
しかし「売れなかった商品」はPOSデータには表示されません。
だから私は、
「売れる商品を、売れる時間に、絶対に切らさない」
ことを非常に重視しています。
パン売場では、朝の品出し前に主要な食パンや菓子パンの欠品をなくす。
地域によって売れる食パンのスライス枚数なども分析し、発注精度を高めます。
また、あるクライアントでは運用を見直すことで、ロス率が15%から5.2%まで改善した事例も最近あります。
売上アップとロス削減は別々のテーマではありません。
発注→製造→補充→販売→在庫
を一つの流れとして管理することが重要です。
6.人手不足対策は「もっと頑張る」ではなく「仕事を変える」
現在、多くのスーパーマーケットが人手不足に悩んでいます。
しかし、
「もっと早く作業してください」
「もっと頑張ってください」
では、生産性は大きく改善しません。
重要なのは、
仕事そのものを変えることです。
今回の店舗でも、作業を、
「加工する作業」
と
「商品を補充する作業」
にチームを分ける方法を検討しました。
仕事内容によっては、分業によって作業時間を3分の1から4分の1に短縮できる可能性があります。
スーパーの生産性向上で必要なのは、
人を急がせることではありません。
・ムダな移動をなくす
・ムダな加工をなくす
・ムダな在庫をなくす
・売れない商品を作らない
・同じ作業を何度も繰り返さない
・標準作業をつくる
ことです。
これによって余裕が生まれた時間を、
売場改善、接客、商品開発、教育など、本当に売上と利益につながる仕事へ振り向けます。
7.営業利益をKGIにして、売上・粗利益・人件費を管理する
最終的な業績改善は、数字で確認しなければなりません。
私はクライアントに、
「売上をゴールにしない」 ことを繰り返しお伝えしています。
会社に最終的に残すべきものは営業利益だからです。
今回の店舗でも、
・売上高
・粗利益高・粗利益率
・人件費
・人件費率
・ロス率
・営業利益
などを前年同月と比較し、部門別に見えるようにしていくことを進めています。
そして、
KGI=営業利益 とし、
その達成に必要なKPIを設定します。
例えば、
「青果の粗利益率は適正なのか」
「精肉の人時生産性は高いのか」
「惣菜は十分な利益を生んでいるのか」
「鮮魚の赤字構造をどう変えるのか」
と部門ごとに考えます。
データだけでも、現場だけでも改善できない
数字を見ているだけでは、
「なぜ、その数字になったのか」
は分かりません。
逆に、現場だけを見ていても、
「その改善が本当に利益につながったのか」
を確認できません。
そのため私は、
データを見る
↓
現場を見る
↓
改善する
↓
再びデータを見る
という繰り返しを重視しています。
勘や経験だけでなく、データを使って「何をやめるべきか」まで判断し、売れていない商品を一生懸命作るような非効率を減らしていきます。
「社長が頑張る店」から「仕組みで動く店」へ
地方スーパーでは、社長が非常に優秀で働き者だからこそ、会社が維持されているケースがあります。
しかし、社長一人に依存する経営には限界があります。
社長が毎日の現場作業に追われていると、
経営戦略、商品政策、人材育成、店長育成、設備投資など、
本来、経営者が考えなければならない仕事に時間を使えません。
今回の店舗でも、
社長個人に依存せず、全従業員が主体的に動ける仕組みをつくること
を重要課題としています。
強い会社とは、
「社長が何でもできる会社」ではなく、「社長がいなくても正しい仕事が進む会社」
だと私は考えています。
スーパーマーケットの業績改善で重要な7つのポイント
地方スーパーの売上改善・営業利益改善を進める場合、まず次の7項目を確認してください。
① 商品価値
商品の美味しさ、素材、産地、こだわりが伝わっているか。
② 売場
お客様が商品を見つけ、立ち止まり、手に取りやすい売場になっているか。
③ 欠品
売れ筋商品をピーク時間に切らしていないか。
④ 商品・価格政策
安さだけでなく、価値を高めて適正な粗利益を確保できているか。
⑤ 作業生産性
ムダな加工、移動、補充、在庫が発生していないか。
⑥ 組織運営
社長や特定の社員だけに仕事が集中していないか。
⑦ 計数管理
売上だけではなく、粗利益、人件費、ロス、営業利益まで管理しているか。
一つだけ改善するのではなく、これらを連動させることが重要です。
よくある質問|地方スーパーの業績改善
Q1.地方スーパーの売上が低迷した場合、まず何から改善すべきですか?
まず、売場と数値の両方を確認することです。
売れ筋商品の欠品、商品の見え方、POP、重点商品の展開、ロス、在庫、人件費などを確認すると、比較的短期間で改善できる課題が見つかる場合があります。
Q2.価格を下げれば売上は改善しますか?
一時的に販売数量が増える可能性はありますが、値下げだけでは粗利益が減少する恐れがあります。
重要なのは、
商品価値を高め、その価値をお客様に伝えることです。
価格競争だけではなく、美味しさ、鮮度、便利さ、独自性などで選ばれる売場をつくることが、中小スーパーには重要です。
Q3.人手不足でも業績改善はできますか?
可能です。
人を増やす前に、加工、補充、品出し、発注、在庫などの作業工程を見直します。
特に、売れていない商品の製造、過剰在庫、二度手間、ムダな移動を減らすことで、生産性を高められる可能性があります。
Q4.スーパーマーケットで最も重要な経営指標は何ですか?
私は最終的なKGIとして営業利益を重視しています。
売上だけが増えても、粗利益が低下したり、人件費やロスが増えたりすれば利益は残りません。
そのため、売上、粗利益率、ロス率、人件費率、人時生産性などをKPIとして管理します。
業績低迷店ほど、まだ改善できる可能性がある
「人口が減っているから仕方がない」
「競合店が強いから仕方がない」
「人がいないから仕方がない」
もちろん、地方スーパーを取り巻く経営環境は厳しくなっています。
しかし、店舗を詳しく見ていくと、
まだ改善していない売場、
まだ伝えていない商品価値、
まだ削減できるロス、
まだ減らせる作業、
まだ防げる欠品、
が残っていることがあります。
私はコンサルティングで、
問題点を指摘するだけではなく、「どう変えるか」まで現場で具体化すること
を大切にしています。
現場を歩く。
商品を見る。
従業員の動きを見る。
在庫を見る。
数字を見る。
そして、
なぜ、この数字になっているのか。
何を変えれば改善するのか。
誰が、いつまでに実行するのか。
を明確にしていきます。
サミットリテイリングセンターのコンサルティング
サミットリテイリングセンターでは、中小・地方スーパーマーケットを対象に、
・売上改善
・粗利益改善
・営業利益改善
・売場改善
・商品政策
・インストアMD
・作業改善
・在庫削減
・ロス削減
・人時生産性向上
・KGI・KPI管理
・店長・幹部育成
などを、現場と数値の両面から支援しています。
業績改善で最も重要なのは、
「もっと頑張ること」 ではありません。
利益につながらない仕事を減らし、
売上と利益につながる仕事へ時間とお金を振り向けることです。
「自社の場合、どこから改善すればいいのか分からない」
という経営者の方こそ、一度、店舗全体を第三者の視点から見直してみる価値があります。
店の中に眠っている売上と利益の可能性を見つけ、営業利益を生み出せる仕組みへ変えていく。
それが、私が考えるスーパーマーケットの業績改善です。
サミットリテイリングセンター
スーパーマーケットコンサルタント 新谷千里


